管輅曰く、
「この戦乱の世を鎮める為天より平和の使者が流星と共に現れる」と―――――
「…へぇ。街ではそんな噂が流行ってるんやなぁ。」
「えぇ。まぁ言っていたのがあの管輅だから信憑性はかなり薄いけどね。」
「管輅?管輅ってあのエセ占い師とか言われてる?」
「そう、その管輅。」
「うわぁそれ絶対当たらへんやん。」
「張遼もそう思う?」
「まぁな。」
張遼と呼ばれた女性がそう応える。
もう一人の少女も、その応えを予想してたのか、「だよねぇ」と応えた。が、少女は想った。
もしも…もしも本当に、『天の御遣い』などというのがあらわれてくれるのなら…
この荒んだ世界を…
苦しむ人々を…
そして、何よりも、大切な…大切な友達を、仲間を救ってほしい、と。
その時、
「ん?なぁ賈駆っち。」
張遼に呼ばれ、賈駆と呼ばれた少女は顔を上げる。
「どうしたの、張遼?」
「いや、こんな真昼間に流れ星が…」
「…アンタねぇ。こんな時間から酒なんて呑んでるからそんな幻を――「ちゃうって!ホンマやって、ほら!」――はぁ?そんな物一体何処に……へ?」
賈駆は確かに見た。
真昼間という明るさのなか、一際輝き、『こちらに向かって』落ちてくる『何か』を…
「「………え?」」
こちらに向かって?
「そ、総員退避!」
「早うせい…って!あかん!間に合わへん!」
「ちょっ嘘でしょ!?」
光で視界が真っ白になり、賈駆と張遼は死を覚悟した。
そして、辺りを完全に光が覆い――――
「……あれ?」
生きてる?でも間違いなく流星が…
ボクがそんな事を考えていると
「…ん、う〜ん」
「!!ち、張遼!?ちょっとしっかりしなさいよ!」
「う〜ん…ここは…天国?」
「馬鹿ッ!違うわよ!ほら起きて!」
「いたた…ん?ここってさっき、うちらがいた…」
「そうよ。どうやら兵達も無事なようね。」
「ほぅ、そら良かったわぁ。なんせ、いきなり星がこっちに向かって落ちてきよるんやもん、ビックリしたで。」
「まったくだわ。」
「…ところで賈駆っち?」
「ん?どうかしたの張遼?」
「いや…そろそろ、どかんとそいつ窒息死すんで?」
「ハァ?一体なんのこと?」
「賈駆っち」
「何?」
「自分の足元見てみぃ。」
「足元?」
張遼に言われるがままボクは自分の足元を見た。
そこには、人の頭が…って!?
「キャアァァァ!!」
「おっと、賈駆っち大丈夫?」
うぅ…ボクとしたことが、思わず張遼に抱き着いてしまった。しかもあんな悲鳴をあげて...
にしてもここが城の外でホントに良かった。月にはこんな情けないところ見られたくないし、陳宮なんて絶対からかってくる。華雄と呂布は触れて来ないだろうけど、それが逆につらい。張遼は…
「♪〜〜〜」ニヤニヤ
…手遅れだったようね。
そんな事を考えてた時だった。
「…ん、う〜ん」
「「――ッ!!」」
え?なに?起きるの?
「……スー」
…こいつ一発ぶん殴って良いかしら?
「起こしてみるか、賈駆っち?」
「…そうね。このままジッとしてても事態は変わらないし。」
「よっし!じゃあ賈駆っちはうちの後ろに隠れとき!」
「わかったわ。くれぐれも用心を怠らないでね。」
「わかっとるって心配性やなぁ賈駆っちは。…さてと。」
ユサユサ
「おーい兄ちゃんこんなとこで寝とったら風邪引くで〜」
…ん?誰だよ、俺の体を揺すってんのは?
…ははーん、さては及川だな?あの野郎人の貴重な睡眠時間を削ろうとはいい度胸だ。そっちがその気ならこっちは徹底無視してやるぜ。
「う〜ん、こいつ起きひんなぁ…しゃあない。」
ザッザッザッ
お、及川の奴諦めた様だな。
…ダダダ
…ん?何だこの音?
「えぇ加減に目ぇ覚ませやーー!!」
ゲシッ!
「ぐはぁ!」
い、今もろに蹴り入れやがったなあの野郎!
「及川、てめぇ何すんだよ!」
「ハァ?誰やねん、その『おいかわ』って?」
「ハァ?!誰ってお前以外にいる訳…え?」
「ん?どうかしたん?」
「…あのぅ」
「なんや?」
「どちら様でしょうか?」
「あんなぁ、兄ちゃん。人に名前を聞くときはまず自分から名乗るもんやで?」
ごもっとも
「あ、それもそうだね。」
と、俺が名乗ろうとした時だ。
「張遼、そいつ大丈夫そう?」
「ん?おぉ、賈駆っち。もう全然問題無いで。今から名前聞き出そうとしてたとこや。」
「そう。…で?」
「で?って何が?」
「名前よ、名前!」
「おぉ、そやったそやった。」
そういうと、関西弁の女性が再び俺の方に向き直り、
「じゃあ兄ちゃん、改めて名前頼むわ。」
「あ、あぁ。えっと俺の名前は北郷一刀っていうんだ。よろしく。」
「おぉ、よろしゅうなぁ!んじゃ次はうちらの番やね。」
そういうと、関西弁の女性は咳ばらいを一つしてから、
「オホン、では。うちは姓は張、名は遼、字は文遠や。」
「ボクは、姓は賈、名は駆、字は文和。」
…………………は?
「ごめん、姓名だけでいいからもう一回言ってもらえる?」
「おぉ、えぇで。うちの名は張遼や。んで、こっちの眼鏡かけてんのが賈駆。」
「…ねぇ。それはなんかの冗談なの?もしそうならもう少しわかりやすいのにした方が…」
「ハァ?アンタなに言うとんねん?」
「いや、だって…ん?」
そこで俺は違和感に気づいた。
「…東京にこんな見渡しの良いとこあったか?」
そう、そこは見渡す限りが陸地だった。
ということは、ここは日本…少なくとも東京都ではない。
「ねえ。アンタ大丈夫?」
「ん、大丈夫。ところで、ここ何処?」
「ここは洛陽よ。ほら、少し行けば街があるわ。」
「…マジか。」
「さてと、今度はこっちが質問する番やな。」
「ん、どうぞ。」
「ほんならまず一つ目。兄ちゃんの名前やけど、姓が北、名が郷、字が一刀でええんか?」
「いや、姓が北郷で名が一刀。んで、字っていうのは無し」
「字が無いん?なんや、華雄みたいやな。」
そう言って張遼と名乗った女性はケタケタと笑った。
「まだ終わりじゃないわよ。」
そういうと、今度は賈駆と名乗った眼鏡をかけた少女がこちらに詰め寄ってきた。
「アンタ何者?」
「えっと、聖フランチェスカの二年生だけど」
「なによ、その『せいふらんちぇすか』って。」
「何って学校だよ」
「がっこう?」
…う〜ん、説明した方が良いのかな?
「なぁ一刀?」
「ん?」
ってかいきなり呼び捨てっすか…
「自分これから行く宛てあるん?」
「…無い。」
「これからどうするかは?」
「…決めてない。」
「ふぅん。…なぁ賈駆っち?」
「ん?なに張遼?」
「いや、ちょっと相談したい事が…」
ちょいちょいと手招きをして張遼は賈駆と相談してた。
所々で賈駆が、「でも…」とか「だけど…」とか渋ってたけど張遼の「大丈夫やって」という言葉に渋々納得してた。
「よっしゃ!おーい一刀〜!」
ん?何だろう?
「あんなぁ一刀!一刀さえ良かったらうちらと一緒に暮らさへんか?」
「え?良いの?」
特に賈駆が。
「別に良いわよ。アンタ見た感じ悪い奴には見えないし、何より占いが当たったのかも知れないしね。」
「占い?」
「あぁその辺はあんまし気にせんでえぇよ。」
「ふぅん?」
「じゃあ、改めて自己紹介ね。ボクの名前は賈文和。真名は詠よ。」
「真名って?」
「真名っちゅうんは大切な人や信頼した仲間ぐらいにしか教えへんとても神聖な名前で、例え知ってたとしても、その者が認めた奴やなかったら絶対口にしたらあかん名前や。あぁついでにうちの真名は霞や」
「って事は俺って結構信用されてるって事?」
「まぁ、そうなるわな。」
「そっか。じゃあ」
そういって俺は手を差し出した。
「なによ?その手は」
「握手だよ。これからよろしくって意味で。」
「おぉ、よろしゅうなぁ一刀!」
そういって俺の手をブンブン振り回す霞
正直凄く痛いです。
「いてて…っと。詠もよろしく。」
「え?!あぁ、こ、こちらこそよろしく。」
目の前にいる賈駆、張遼と名乗る少女達。そして、現代とは思えない地名や格好。夢のような現実。
これから一刀に待ち受ける事件とは…
元の世界には帰れるのか…
――――すべては天のみぞ知る――――
次回へ続く
Tweet |
|
|
79
|
9
|
追加するフォルダを選択
真・恋姫無双やってて董卓軍ルートがあったら良いのに、と思い自分なりに懸命に書きました。
…多分