No.610058

『もう誰にも頼りたくない』

資源三世さん

魔法少女まどか☆マギカ 二次創作。作者HPより転載

2013-08-18 20:20:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:562   閲覧ユーザー数:562

 それは暁美ほむらが幾度と繰り返した時間の中で見た一幕。時の迷い子の見たそれは夢か現か……。ただ、一つ言えることは……

 

 

 メガネに三つ編み姿、更におどおどとした態度でほむらは、恥ずかしそうにきりだす。

 

「あ、あの…… わ、私と、その…… い、一緒に、戦って…… 戦ってくれませんか? 巴マミさん」

 

「え?」

 

 驚きの声をもらすマミ。何故か、ふらふらと後ろによろめき、息を荒くしながら自分の両手をみつめる。

 

「ゆ、夢じゃ…… 夢じゃないわよね?」

 

「は、はい……?」

 

 妙な雰囲気ながらもマミはしっかりとほむらの手を握り締め、涙目になりながら嬉しそうに微笑みかける。

 

「ええ! 一緒に…… 一緒に戦いましょう! これでもう体育の時間に二人一組になるのも、クラス内でのグループ分けのときも、宿題を忘れた時であろうと、もう何も怖くない!」

 

「え? いや、ちょっと…… クラスどころか学年違うから、そういうのはちょっと……」

 

「大丈夫よ! あなたが宿題忘れたときは私のを写させてあげるから!」

 

「は、はぁ……」

 

 繰り返す時間の中でQBの次にまどかに影響を与える存在…… 巴マミ。メンタルに不安が残るものの、彼女の実力は間違いなく一級だ。ならば、彼女と敵対せずに協力者になってもらえれば、まどかが魔法少女になることを阻止する布石としても、ワルプルギスの夜との戦いでも重要なファクターとなるはず。

 

 そう考えたほむらは、一人ぼっちの心の隙間を埋めるような『頼ってくる後輩』を演じてマミに近づいたのだが……

 

「そうだ、今日は大きなケーキを買ってパーティを開きましょうね。私と暁美さん、魔法少女コンビの結成をお祝いして! 体が軽い、こんな幸せな気持ち初めて! もう一人ぼっちじゃないもの!」

 

 予想以上に好意的に受け入れられすぎて、何かを間違えてしまった感が拭い去れないほむらであった。

 

 そして、その不安は予期した通りとなり……。

 

 

――翌日

 

「しまっ――!」

 

「危ない、マミさん!」

 

 魔女の攻撃をマミが受けそうになった直前に、ほむらは時間を止め、かろうじて助けることに成功する。

 

「ありがとう、暁美さん。助かったわ」

 

「いえ、マミさんが無事でよかったです」

 

 

――翌々日

 

「きゃっ!」

 

「危ない!」

 

 次々に襲い来る使い魔達の攻撃にマミはついにかわしきれなくなる。ほむらはすぐさま銃で援護射撃をして、その場はなんとか凌ぎきる。

 

「ありがとう、暁美さん。助かったわ。一人だったら、どうなっていたことか」

 

「いえ、間に合ってよかったです」

 

 

――一週間後

 

「はうっ!」

 

「あー、もう!」

 

 魔女の結界内で足を踏み外し、高所から落ちそうになるマミ。ほむらは既に予測していたらしく、あっさりとそれを拾い上げる。

 

「ありがとう、暁美さん。おかげで助かったわ。今日もあなたに助けられちゃったわね。もう、先輩の私がもっとしっかりしなくちゃいけないのにね。てへっ」

 

 そう言って、マミは自分の頭をこつんと小突く。

 

「……はぁ」

 

 NPCとして登場していたときは圧倒的な強さを見せつけていたくせに、いざ仲間になったらまるで別人のように弱くなる。RPGだとよく見かけるが、まさか現実にもそんな人がいるとは、さすがのほむらも予想できなかったのだった。

 

「苦労しているみたいだね、マミ」

 

「あら、QBじゃない」

 

「……」

 

「何をイラついているのか知らないけど、挨拶がわりに僕に銃を向けるのはやめてもらえないかな、暁美ほむら」

 

「……ちっ」

 

 マミもいる手前、ほむらは舌打ちしながらも銃をしまう。もっともいつでも狙い撃てるように視線でのターゲットは外さない。

 

「ワルプルギスの夜が近付いているせいかしら? 最近、魔女が強くなってるみたいなの」

 

「そうなのかい? それじゃあ、やっぱり魔法少女を増員――」

 

 再びほむらの銃口がQBを狙う。

 

「こら! ダメよ、暁美さん。魔法少女を増員されたら、私が新しく入った子に取られちゃうのが怖いからって。みんな仲良くしなくちゃダメよ!」

 

「……こいつは」

 

「でも、増員はもう少し様子をみてからにしましょう。ワルプルギスの夜を相手に未熟な魔法少女がいても悲しい結果にしかならないじゃない」

 

「それもそうだね。僕としてもせっかく魔法少女になってもらっても、死なれては困るからね。でも、このままじゃ君たちもワルプルギスの夜に勝てないんじゃないかな」

 

 マミがこんな状況だ。認めたくはないが、ここはQBの言うとおりである。しかし、マミは自信にあふれた笑顔で首を振る。

 

「その様子だと…… なにか策があるのかい?」

 

「えぇ。今までの戦いの中で足りなかったもの…… 私がいつまでもそれに気づかずにいたとでも思うの?」

 

「……もちろん」

 

 ほむらの呟きに気づくこともなく、マミは立ち上がるとびしっとほむらを指差す。

 

「足りなかったのは暁美さんの必殺技、そして二人のコンビネーション必殺技よ!」

 

「……は?」

 

「なるほど、その発想はなかったよ。これは興味深い」

 

「……え? なんで納得してるのよ」

 

「私の『ティロ・フィナーレ』のように暁美さんにも必殺技が必要なのよ! 暁美さんに必殺技が出来れば、私と暁美さんの必殺技のコンビネーションも生まれるでしょ?」

 

「……何か理論的に間違ってはいるようで間違ってないような気がするけど、やっぱり間違ってるでしょう、これは」

 

「しかし、コンビネーションっていうのは二人の息があってないとダメなんだろう? 僕の見る限り、君達は名前の呼び方からして距離があるみたいだけど」

 

「言われてみれば、私たち二人とも『さん』付けで呼んでたわね。そ、それじゃあ…… これから暁美さんのこと、ほむほむって…… 呼ぶわね」

 

「え? 嫌です」

 

「わ、私のことは…… そ、その…… マ、マミマミって呼んでいいから」

 

「まっぴらごめんです」

 

 マミは頬を染めて恥ずかしげに言うが、ほむらはそれをばっさりと切り捨てる。もっとも、そんなことを言っても聞いてるマミではなかった。

 

「そ、それじゃあ、ほ、ほむほむ! やっぱり、いきなりは恥ずかしいわね」

 

「そう思うならやめてください」

 

「それでね、ほむほむ。あなたの必殺技の名前はもう考えてあるの! 炎をイメージしてね『フィオーマ・ディ・インフェルノ』なんてどうかしら?」

 

「技の中身より先に名前だけ先に考えてどうするんですか」

 

「あら、気に入らなかったかしら? 大丈夫、あと候補は百個くらい厳選してきたから! 次のは『暗黒獄炎時間支配』と書いてね……」

 

「名前なんてどうでもいいけど、なんか黒いイメージばっかりなんですが?!」

 

「まったく、人間というのはいつも名前にこだわるね。全くわけがわからないよ」

 

「巴マミを人間の代表みたいに扱わないで……」

 

「もう、ほむほむったら。巴マミじゃなくて、マミマミって呼んでっていってるでしょ?」

 

「そうだよ、ほむほ――」

 

 乾いた銃声が幾度となく鳴り響き、QBは蜂の巣とされる。

 

「あなたにまでその名で呼ばれたくないわ」

 

「残念だけど、今のはQBが悪かったわ。ほむほむと呼んでいいのは私だけなのよ」

 

「それは悪かったね。でも容赦なく銃で撃ったりしないで欲しいな。代わりはいくらでもあるけど、勿体無いじゃないか」

 

 そう言ってQBは何事もなかったかのように新しい体で現れる。

 

「はぁ…… なんでこうなったのかしら。まったくわけがわからないわ……」

 

 

――そして、ワルプルギスの夜との決戦の日が訪れて

 

 ワルプルギスの夜。その強大な力の前にマミマミもほむほむもQBもまるで為す術がなく、敗れ去ったのだった。

 

 残されたのは瓦解した街の中、不自然な程に青い空の下で倒れる姿であった。

 

「……私たち、もうおしまいね」

 

「グリーフシードは?」

 

 その問いにほむほむは無言で首を振る。

 

「そう……。ねぇ、私たち、このまま二人で怪物になって…… こんな世界、何もかもメチャクチャにしちゃおっか?」

 

「僕としてはそれは好都合だよ」

 

「嫌なことも悲しいことも、全部無かったことにしちゃえるぐらい、学校とか、学校とか、学校とか壊しまくってさ……」

 

「君はどれだけ学校に思い入れがあるんだい? それはそれでいいと思うけどね」

 

 そういって悲しげに微笑むマミマミに、ほむほむは一つのグリーフシードを見せ、それで自分のソウルジェムの穢れを取り除く。

 

「さっきのは嘘。一個だけ取っておいたの」

 

「それは!」

 

「馬鹿な! 君たちのグリーフシードは全部、僕が盗んでおいたはずなのに!」

 

「あなたにはできなくて、私にできること。やらないといけないから」

 

「……うん」

 

「過去に戻るわ。こんな終わり方にならないように、歴史を変えてくる」

 

「約束するわ。次も絶対にあなたと友達になってみせる。何度繰り返すことになっても、必ずあなたと友達になって、あなたを守って見せる!」

 

「ちなみにQBに騙される前のあなた助けるのは無理だから。時間的にそこまで戻れないから」

 

「騙したなんて人聞き悪いなぁ」

 

「う、あぁ!」

 

 そこでマミマミのソウルジェムに完全に穢れてしまう。ついに時間が来てしまった。魔女化の苦しみがマミマミの体を襲う。

 

「私、マミマミを魔女にしたくない! 嫌なことも、面倒くさいこともあったけど、もっと前の時間で守ってもらったことだって、たくさんあったから」

 

「なんか今の時間の私は全否定された気がするけど…… 気にしないでおくわね」

 

「うん……」

 

「それと…… ほむほむ、やっとマミマミって呼んでくれたね。嬉しい……な」

 

「そ、それはつい…… そ、その! う、うわあぁぁー!」

 

 恥ずかしさを誤魔化すために放たれた一発の銃弾がマミマミのソウルジェムを砕く。これでマミマミの魔女化は阻止され、その時間の戦いは終を告げるのだった。

 

 マミマミの遺体を背に、ほむらはそのまま過去へと向かう。

 

「歴史を繰り返し、またマミマミとワルプルギスに挑むつもりかい?」

 

「巴マミの協力を仰いでも、むしろ面倒なだけだったわ。もう誰にも頼らない、もう誰も死なせない! 全ての魔女は私一人で倒してみせる」

 

「ほむほむ…… 君はまさか」

 

 ほむらの銃弾がまたQBを蜂の巣にする。

 

「私をほむほむと呼んでいいのはあなたじゃないわ……」

 

 そうして、ほむらの戦いは続く。当初の目的を忘れてしまいながら……

 

――Fin――


 
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