No.609617

ビヨンド ア スフィア ~トラウマティック・ダガー~

ざわ姐さん

遅くなりましたが、続きを書いてみました。宜しければ御一読してくださいませ。

2013-08-17 16:23:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:482   閲覧ユーザー数:482

国民は国民に向かって剣を上げず、彼らはもはや戦いを学ばない

 

-詩篇 46:9

 

「18:45、本、ファーストアロー作戦の終結を全隊に通達、戦闘終了。」仮設発令所に戻った「海堂要」は米軍を含む全隊にそう指示を出し、撤退の準備を各部隊班長に発令する。その命令の外で密かに動いているのは、グリュックスブルク財団の息の掛かったSAMTの者たちだった。作戦の終結を待たずにロボットを回収して、さっさとトレーラーを移動させ引き上げたり、いきなり米軍のヘリをチャーターして乗りつけたりやりたい放題である。「あの連中、なんとかならんものですか?」そう要に進言するのは半下石陸佐だ。「あの連中だけ命令系統が超法規的なのよね・・・・・」独り言を呟くように要は答える。「あの時のレーザー攻撃、あれはあれで助かったと言えばそうなんだけどね。ただ、やりかたは気に入らなかったよね。」と続ける。「指令があの少女を助けに飛び出した時は冷や冷やしましたよ。指令がそんなとっさに行動する人だったとは知りませんでした。」攻撃時の話を振られたので、回想しながら半下石はそう答えた。「そうかしら?私意外と熱血漢なのよ?」と冗談なのか本気なのか突っ込みに困る事を言う要だった。

 

「派手に壊しましたね・・・・・」覆っていたシートを剥がしその姿を目の当たりにしたSAMT技術開発部第一課主任・「野中仁」は開口一番そう言った。「本当ならこの機体は使う予定は無かったはずだったんですけどね・・・」そう言いながら、両腕の無くなった、黒く煤けたロボットを固定しているパレットの周りを一周し、言葉を続ける「両腕は肩から全交換、前面装甲も上部は全部・・・・・腰周りも全部かな・・・下部は膝から下は交換しなくても平気な様だな・・・」そう言ってポケットから小型のライトを取り出し、ロボットの内部にライトを当てて細かくチェックを始めた。「CEOには1週間で元通りにすると伝えておいてください」後ろにいた西園寺ななの秘書「袖山桜」の無言の視線を感じた仁は背中越しに告げた。「いつもながら察しが良くて助かります。CEOにはそのように伝えておきます。よろしくお願いします」後ろを向いている仁には見えない事は承知の上で軽い会釈をした桜は、踵を返して第一開発部の工場を後にして、ポケットから携帯を取り出しCEO「西園寺なな」にXMQI-07A「シルシックMK1」の補修進捗状況を報告するため連絡を取る。

 

補修の為に早、搬出されていたUCLS(アンマンネッド・コンバット・ランド・ウォーリャー・システム)とは裏腹に、自衛隊とWITOのどちらが「森永未来」の身柄を保護するかでもめていた。「我々が身柄を拘束したんですから、我々で保護します」そう意見するのは海堂要である。一方、「WITOの指揮する作戦だったのだから、当然WITOで身柄を保護する」と言って引かないのはグリュックスブルク財団の総帥「レオナ・マルグレーテ・リュクスボー」だ。当の本人を差し置いて話を強引に進められ、未来は完全に蚊帳の外である。「まあ、処遇はすぐに決定すると思うけどね」とレオナは意味深に言う。要には引けない確固たる理由があった。それは今後の自衛隊のWITOに対する発言権がこの一件に左右される恐れがあるからだ。そして財団が未来を執拗に欲している事がひっかかっていた。だがしかし、要はこの議論に関してさほどの意義を感じてはいなかったのも事実。なぜなら相手は国家をも動かす力を持ったグリュックスブルク財団だ。ここは周到に策を講じていると考えられる。案の定、携帯に着信が入る。相手は内閣官房長官だ。「WITOからの通達です。財団の意向に従ってください。」とのお達しだった。「頂いていくよ。」レオナはニヤリと笑みを浮かべ未来を連れて仮設野戦病棟を後にする。レオナと未来の出て行った仮設テントの中に残された要は「予想通りとはいえ、自衛隊のアピールはできたし良しとしますか。」と呟いた。

 

「こちらのモニターは一瞬で消えてしまって、破損表示もチェックする時間は無かったよ。」DDG-85マックキャンプベル艦橋内、衛星電話に向かって語りかけるのは、「西園寺なな」だ。通話の相手は袖山桜。「本当なら米軍から供与されたMK5のバノダイン・モデルで対応するはずだったのに、「シルバラ」を使う破目になってこっちは大損害だよ。アレはまだ武装が一つも完成していないから「ED(イレブン ディメンション)エフェクト」以外何もできない。丸腰で力比べするなんて想定外の使い方だった。」「シルバラ」とはXMQI-07Aの事である。SAMTではシルシックMK1の事をこう呼称している。「それもあんな無茶苦茶な事して・・・財団に修繕費用を請求して。厳重抗議もね。」そう付け足すと、口調を変え「武蔵野の工場にもMK5か最新型のMK8を配備できるように手配するわ。WITOに掛け合う必要ができたから、できるだけ早く戻る。本部にアポを取っておいて。あと、「シルバラ」の修理はそれでいいわ。急がなくていいから元通りに復元するように伝えておいて。アレは最後の切り札になるかもしれないんだから常に完璧を期して。」そう言い終えると通話先の桜から短く「承知しました」と返ってくるのを確認して通話を切断した。「それにしても・・・再活動の原因はなんだったのかしら・・・・・」作戦が大きく変更された事に疑問を感じていたななは、独り言を呟く。

 

仮設テントを後にしたレオナと未来の二人。未来はその入り口の外にいた護衛のPMF二人をレオナに紹介される。「サム・イーノスだ。よろしく。」「ティム・ターナーだ。」短い挨拶だったが二人とも流暢な日本語だった。そして二人とも挨拶と同時に握手を求めて手を差し出してきた。それに答えて手を差し出す未来。握手自体はほんの一瞬だったが、思いっきり握られた。すごく痛かった。「これがアメリカン握手・・・・・・」と心に刻んだ一瞬だった。挨拶を済ませた未来は湖畔に無理やり駐機している米海軍のSH-60Mに案内される。「これで第二臨海副都心まで遊覧飛行するよ」とレオナに背中を押されるのだが、ヘリに近づくにつれて制服のスカートが派手に捲くり上がるのを手で押さえながら、轟音を上げ、すぐにでも飛び立つ準備ができていると想像されるSH-60Mの中に押し込まれる。中に搭乗した未来は、海兵にヘッドセットを手渡される。これを着けろということらしい。ヘッドセットを着けると驚くほど静かで、先ほどまでのヘリのエンジンやローターから生み出される騒音が無くなり、体に伝わる振動だけが気になるようになった。「乗るのは初めて?」ヘッドセットから聞こえるレオナの声に未来は頷いた。というか、普通軍用ヘリに乗ったことがある人なんてそうそういないだろうと考えていた時、SH-60Mは離陸を開始した。「童貞卒業オメーw」と訳の分からないことをレオナに言われた。てか、童貞じゃないし。まだ今も処女だし。ていうか、下品な人だな・・・とか心の中で呟く。あっという間に高度を上げたSH-60Mの外を見ると、薄暗い東京の町並みに明かりが灯る姿が見える。「綺麗・・・」と、思わず呟く。するとなぜかレオナが「それほどでも・・・」と、頬を赤らめ、両手を頬に添えて答えた。何言ってんのコイツ・・・とか心の中でツッコミを入れつつ、華麗にスルーを決め込む未来だった。そしてほんの数分で第二臨海副都心に到達すると「あれがJAPAN・WITO第二臨海副都心本部基地だよ」と言って、レオナが地上の一際明るい海沿いの建造物を指差す。あっという間に遊覧飛行は終わりJAPAN・WITO第二臨海副都心日本本部基地の駐機場にランディングする。「さ、降りて降りてー」と、またもレオナに背中を押されながらヘリを降りると、駐機場の外には待ち構えていたかのようにWITOの職員がずらりと待機していた。その中の医療棟の職員と思しき数人に囲まれて、有無をも言う余裕も無く、第一緊急病棟に連行される未来。「検査、がんばってねー」と言われてレオナに背中から見送られる。そしてレオナは別のWITO職員に案内され本部に向うのだった。

 

暗い、吸い込まれそうに暗い海をじっと見つめていた「南月はづみ」だったが、実際に引き込まれそうになる錯覚に陥り我に返る。少々船酔いしているようだ。はっとして二歩後ずさり背中を護衛の海兵に支えられる。DDG-85 マックキャンプベルの前甲板上、MK-45・5inch主砲の右脇に立ち、海を見つめていたはづみは、その海の向こうにあるであろう日本に着くのが待ち遠しい。そんな雰囲気を全身から発しているのが米兵たちにも見て取れたのか、それを察した艦長が、特別に護衛を付けて前甲板へ出る事を許可していたのだ。時刻は日本時間で20時を過ぎていた。「ごめんなさい・・・」背中を支えた海兵に、通じているかはわからないが日本語で謝る。海兵はニッと微笑み背中を押すように手を離す。昼間着用していた白のCWU-X94/Pカバーオールとは違い、海軍独特のAOR2ネービーピクセルカモフラージュのユニフォームに、サイズの大きいPCUのレイヤー5を身に着け、夜の冷やりとした空気と、前進する艦の起こす心地良い風を、頬で感じ取っていた。しばらくして寒気を感じるようになったはづみは、艦内に戻ることにする。海兵に付き添われて艦内の自室へと案内されると、会釈をして兵と別れ自室へと入る。はづみはベッドに身を投げるように横になると目を閉じ、連日の疲れがどっと出たのか、あっという間に眠りに付くのだった。

 

「このまま次の採血採るからねー」左腕に刺さっている注射針のアンプルを看護士が差し替える。これで5本目の採血だ。未来は口には出さなかったが、このまま体中の血液を抜き取られるのではないかなどと冗談で考えていたら、つい、口元に笑みがでてしまう。「何本採るんですか?」と尋ねる未来。左腕の注射針が刺さっているところがむず痒い。「これで終わりだから」看護士がそう答えるとアンプルを抜いてスタンドに立てかけ、エタノールの染込んだ脱脂綿を注射針の刺さっている腕に当て、針を抜き取る。「しばらく押さえててね」そう言って腕に当てられた脱脂綿を押さえているように促され、看護士はアンプルの入ったスタンドを持って別室へと消えていった。仕方ないのでここは病室のセオリー通り、天井の染みの数を数えて待つ事にする未来だったが、そこへレオナ・リュクスボーが現れる。「採血は済んだ?血の色は赤かった?青くなってなかった?w」未来の不安そうな顔を見て、冗談を言うレオナだったが、その反応は味気無い。未来はレオナの事をちら見した後俯き「いつまで検査するんですか?」と質問する。「異常が無いか分るまでだよ」口元にニヤリと笑みを浮かべながら答えるレオナ。レオナと二人きりの検査室で気まずい雰囲気を感じていた未来だったが、疑問に思っていた事を思い切って話しかけてみることにする「リュ・・・・・リュ・・・・」「リュクスボー。レオナ・マルグレーテ・リュクスボー。正式な名前はレオナ・マルグレーテ・シュレースヴィヒ・ホルシュタイン・ゾンダーブルク・グリュックスブルク。」胸を張って名前を名乗るレオナだった。「その・・・レオナさんはぶっちゃけ何者なんですか?」実にストレートに質問する未来。「私はグリュックスブルク財団の総帥。曽祖父からの家督を譲り受けただけだけどね。このJAPAN・WITO第2臨海副都心基地を初めとする世界中のWITOに資金提供と支援をしているグリュックスブルク財団の頂点に立っている偉い人だよ。なかなか会って話ができる人じゃないんだよ」と、偉ぶって更に胸を張る。そしてこう付け足す「まだ17歳だけど。」「マジで?ってか、タメだよね?平成3年生まれ?」レオナの年齢を聞いて親近感を覚えた未来は聞き返した。「タメタメw91年生まれw」と答えるレオナ。すっかり高校の同級生気分で会話するようになってしまった未来であった。そこへ先ほど採血を行った看護士が検査室に戻ってくる。「これから心電図を撮りますね。こっちに来てベッドに横になって待っててね」そう言ってカーテンに囲まれたベッドに案内される未来。ニヤニヤしながら「いってらっしゃい」と見送るレオナだった。

 

要は各部隊長たちに現場を任せ、今作戦中の抗議をする為と未来の安否確認も兼ね、市谷駐屯地へ戻らずに直接WITO本部へ直行した。そこで待っていたのは意外にもレオナ本人だった。「あなたを出してくるということは、暖簾に手押しってことなのかしら?」開口一番、嫌味っぽく言う要。「意見は真摯に受け止めさせてもらうよ?w」と、政治家のTVコメントのような決まり文句を言うレオナ。「でも、まあ、用があったから私が出迎えてるんだけどね。」と続ける。「私に用が?何です?」要は聞き返す。「ここじゃ、アレだから着いてきなよ。」とロビーから別室へと案内するレオナ。案内されたのは本部発令所だったが、中はほとんど人払いされていた。発令所に入るとレオナは歩きながら背中越しにいる要に「今、未来ちゃんの検査を第一緊急病棟で進めてるところ。もうすぐ検査結果が出ると思うよ。あの娘の事が気に掛かっていたから来たんでしょ?もちろん、それだけじゃないんだろうけど。」と言った。「確かにそれはありますが、あの作戦自体が何だったのかがはっきりしていない。それを追求する為に来たと言う方が正しい。」要はあくまで自分の目的はその反対であると主張したものの、うまくレオナに話を乗せられてしまい抗議自体が有耶無耶になってしまった事を少し後悔した。レオナは頷いて据え付けられているパソコンのキーボードを叩き、ログインして、マウスを操作してプリンターにファイルを出力する。出力された2枚の画像ファイルを無言で要に手渡す。画像には「TOP SECRET」の文字と共に、得体の知れない「KEEP」の赤文字のテープで全体を封された不気味な物が写っていた。レオナは2枚の画像を一枚一枚指差し「これが事故前に撮影したプラント20690の中身。こっちが事故後、米軍がC-130Eの残骸回収時にSEALが撮影した写真」と言った。「なんですか?これは?」要は手渡された写真を交互に見て質問する。「さっきレーザーで燃やしたのがそれだよ。」と、事故前の写真を指差して答えるレオナ。「あの黒い何かが霧散した後に現れた人型には見えませんが・・・」どう見ても胸から上の上半身ぐらいの大きさしかなく、腕に相当する部位も両方肩口から無いように見え、更に胸の部分に1インチはあろう杭がアイボルトによって上下から突き刺さって固定されているその写真を眺めながら、要は答えに対し、再び質問口調で答えた。「エレメント・コアの力で再生したと思われます」そう答えたのは白衣を着たWITOの職員だ。「割れていたコアが再び引っ付かないように、橋梁に使う超鋼ワイヤーと同じ超高張力鋼でできた杭で前後から固定してたんだけど、効果無かったみたい。」と2枚目の写真を指差してレオナが付け足す。その2枚目の写真には、千切れて破断した超鋼がアイボルトにぶら下がっている。要領を得ない回答ばかりなので再び「何なのですか?これは?」と要は聞き返した。パソコンのマウスをカチカチ操作して、モニター上にいくつかのファイルを映し、それを発令所の大型モニターとプロジェクター画面に次々と投影しながら、レオナが答える。「これが、米軍が「タイニースター」のコードネームを与えている人類の敵、いやオプティマイザー達の敵だよ。」モニターにはかなり古い写真も混ざっていて不鮮明なところも多いが、あきらかに人とは違う物体が多数あったり、凄惨な殺人現場のような写真も映し出されている。機密と思しき文書の数々も同時に投影されていた。「オプティマイザーとは・・・・・?これは・・・1908年?100年前のものですか?」一つのファイルに目がいった要はファイルが投影されている虚空に向かって問いかける。「オプティマイザーは端的に言えば、エレメントコアを唯一完全制御できる人間の事です。言うなればタイニースターにとっては天敵になりうる存在です。現在の所11人存在が確認されていて、過去にも多数存在していましたが、タイニースターによって殺害されています。それともう一つの回答ですが、タイニースターがどこから、どうやって来たのかを仮説する有力な調査資料に1908年のツングースカ大爆発時に宇宙から飛来したという説があります。」要が漏らした疑念にWITO職員が端的に答えた。要はその信じがたい話に苦笑いをしながら「宇宙人が100年前に飛来していたと?」と自問するように言った。「正確には宇宙人、「人」とは言いがたいです。次元の違う生命体で、我々から見れば機械に近いと言った方がしっくりきます。」「今回倒した目標は、九次元にその身を置く最初に出現したアナスタシアタイプです。何かの拍子で再生して活動を再開したものと思われます。」「米軍がアラスカで80年間管理してきた物でしたが、ベンド・ホライゾン計画により太平洋の海上で消却処分する予定でした。」「横田基地に空輸中に活動を再開したものと思われます。」白衣姿の研究者と思しきWITO職員数人が交互に語る。「なぜ、日本に?」要は疑念をそのまま口に漏らす。「日本のオプティマイザーの評価試験を兼ねた、お披露目と実験が目的だったんだよ」とレオナが答え、米軍の作戦指令ファイルをスクリーン上に表示する。「太平洋上に日本のオプティマイザーが一人、タイニースターを倒すために待機&退避していたんだけど、その計画が大きく狂った・・・ってところかな。」と続け計画書を表示する。そこには遠隔操作でオプティマイザーがUCLSを起動させ、タイニースターへ攻撃を行うシュミレーションが映し出されている。次々に提示されていく信じがたい情報を、追いつかない思考をフルに使って思案する要だった。「元々、横田基地から横須賀へ、そこから船で洋上に搬出する予定だったんだけどね。なぜか輸送中の東京上空で再生を始めて再活動しちゃったみたい。そこでその原因なんだけど・・・・さて、なんでしょう?」レオナは要にクイズを出すかのように質問する。要はそこでピンと来る。「未来」の存在がキーになっていると。「あの娘は何なの?」予想通りの回答が出てきたことで、レオナは察しの良い要に説明を省略して話を進めた「たぶん、12番目のオプティマイザーだよ。」そう言ってニヤリと微笑んだ。

 

XMQI-07A「シルシックMK1」の解体作業を進める第一開発部の者たちは、特殊遮蔽工場内にある十字架を象った特別製の懸架台に吊るしたMK1の胸部装甲の排除に取り掛かっていた。すでに両手両足は取り外され、その間接可動部分の開いた穴にタングステン合金で出来たロックボルトが貫通し、十字架上の懸架台に全身を固定されていた。専用工具を使い、装甲を取り外すと中に十字の形をした部品が埋め込まれている。「慎重に取り外せ・・・・・」作業をしている工員に別の工員が指示をする。十字の部品を取り外す。取り外した十字の部品の中央部には「SILBALA」と刻印が打たれている。「コアシステム解体完了、補修作業に移行します」無線で工場の別室にある分厚い防弾ガラス越しに見ている作業員に報告する工員。「エレメント・コア搬出用意、プラント30330へ送致準備。」ガラスの向こう側にいる作業員が特殊遮蔽工場の中の工員に指示を出す。作業の一部始終を防護室の一角で固唾を呑んで見守る野中仁の姿がそこにあった。

 

ゴシック ファントムへ続く

 


 
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