No.609453

恋姫†無双 関羽千里行 第3章 30話

Red-xさん

恋姫†無双の二次創作、関羽千里行の第3章、30話になります。 この作品は恋姫†無双の二次創作です。 設定としては無印の関羽ルートクリア後となっています。
帰省先にネット環境などなかった。
お盆をまたぐことをすっかり忘れておりました。更新を待ってた下った方がいらっしゃったら申し訳有りませぬ。
それでは、よろしくお願いします。

2013-08-17 01:16:37 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2054   閲覧ユーザー数:1739

第30話 -成都にて-

 

 まだ霞と馬超が討ち合っていた頃、

 

張松「ハァッ、ハァ、ハァ...」

 

 撤退中の張松の頭上には、矢の雨が次々と降り注いでくる。部隊は半壊、後方で本郷軍の進撃を抑えている残りも僅かな部隊が破られれば、追いつかれるのは時間の問題だ。その間に成都にはいることができるか。それが彼にとっての今一番の関心ごとである。息は上がり、馬を握る手綱にも汗が滲んでくる。思考力も鈍ってくる中で、

 

長松「(最悪なのは城内に奴らを引き入れてしまうこと...何よりもそれだけは阻止せねばならん!最低でも街道に布陣した軍を呼び戻す伝令だけでも出立させねば...)」

 

 あの劉璋が、この領域内に街道を通らず敵が侵入してくるなどということを想定しているわけがない。彼はあの道が敵に知られていないと信じきっているのだ。張松にその存在を教えたのも、万が一街道での戦闘に苦戦したら使うようにという意図であった。ならば、運良く城の警備兵がこちらに近づいてくる部隊に気づいたとて、報告を受けた劉璋は張松が帰ってきたくらいにしか考えないはずだ。こんな時は利用しやすくとも無能な人間というものに死ぬほど嫌気が差してくる。常に最悪の事態を想定する軍師としては、その最悪が全て起こることこそ、苦々しいものはない。またそんな状況に陥るというのも、ある意味劉璋には天運がなかったということだろう。そんなことは初めからわかりきっていたのだが、ここまでひどいとその道を選択した自分すら呪わしい。

 

張松「ハァッ、ハァ、ハァ...」

 

 既に自分の乗ってきた馬は流矢にあたって倒れた。転げながらも這い出した張松は息を切らせてただひたすらに走る。時々上がる断末魔の叫びと、徐々に減っていく足音を聴きながら。

 

星「疾く速く駆けよ!絶対に城内に入れさせるなっ!」

 

 時折襲い来る兵をなぎ倒しながら進んでいく。ここで時間を取られてはいけないと時に一撃で、時に相手を無視して突っ切って行く。奇襲が察知されてしまった以上、敵が守りを固める前に城内に攻め入る必要があるからだ。そうして進んでいくと、程なくして戦闘を走る集団を目の端に捉えるが、それと同時に開け放たれた城門が見えている。

 

星「間に合うか!?」

 

思春「造作も無い、任せろっ!」

 

 並走していた思春が抜剣したまま一気に駆け抜ける。

 

張松「はっはっ、へ、閉門だっ!門を閉じよ!敵襲であるっ!」

 

城壁に登っていた兵士が事態に気づき閉門作業を始める。左右から重厚な扉がだんだんと閉じられていく。

 

思春「させんっ!」

 

 思春は開いた片手で、腰に下げたベルトから投剣を器用に指に挟んで三つ取り出すと、門扉を閉じようとする兵に向かって、素早い動作で振りかぶりそれを投げつける。

 

兵士「ウッ...!」

 

 それらは全て門扉を閉じる兵士たちの脳天に直撃する。倒れた兵の亡骸が門扉の間に倒れ、このままでは門を閉じることができない。そして閉門が一瞬遅れた隙に思春は城門に飛び込み、

 

思春「ふっ!!」

 

 残りの門を閉めていた兵士たちを倒す。その間に星も兵を率いて城内に雪崩れ込んでいく。

 

星「敵城内だ、総員抜かるなよっ!」

 

兵士「応っ!」

 

 騒ぎを聞きつけた城の常駐兵たちもいたるところから現れ、城内は早くも乱戦の様相を呈していた。

 

劉璋「騒がしいぞ、何事だ?」

 

衛兵「確認してまいります。」

 

 軍靴が慌ただしく廊下を駆けガチャガチャと音をたてるのに、劉璋はうんざりしたように近くにいた衛兵に尋ねた。そうして衛兵と入れ替わりに入ってきたのは、出立したはずの張松だ。

 

劉璋「子喬、この騒ぎは何事だ。それになぜお主がここにおる。」

 

 ひどくやつれた様子に、劉璋は玉座に入るのにふさわしい格好ではないと少々の嫌悪感を示す。張松にも、そう考えているであろう劉璋のことはわかっている。だが、今そんなことは張松にとってどうでもいいことだ。

 

張松「そ、それが...敵兵が城内に侵入しております。敵は、劉璋様のおっしゃっていた山道を使い、成都への侵入を狙っていたようでございます。」

 

劉璋「馬鹿な。あの山道は秘中の秘。あれが他の者に知られるなどということはありえぬ。よもや...」

 

 驚き、どうして敵に知られたのか考えている様子だが、そんなことは今は二の次だ。まずは一刻も早く街道に布陣している軍をこちらに呼び戻さなければならない。既に先ほどの衛兵に言伝はしておいたことを報告しようとしたところで、劉璋がどこかこちらを訝しむような視線を自分に向けていることに気づいた。劉璋は少し溜めを作った後、

 

劉璋「お主が敵に吹聴したのではあるまいな?」

 

 ブチッ。

 

 その言葉に、今まで張松の中で抑えられてきた何かがはじけた。

 

 その少し後。

 

思春「出口は封鎖した。伝令が出る前に抑えられているはずだが...」

 

星「となると、あとは劉璋を抑えるだけだな。」

 

 城内はまだ混戦しているが、追い付いてきた雛里の部隊が、城壁から再び援護射撃をしてくれたおかげでかなり有利に傾いてきている。あとは、星の言うとおり、敵の頭を抑えれば作戦はほぼ完了だ。

 

思春「何人かついてこい!劉璋は奥の広間にいるはずだ!」

 

雛里「ま、待ってください~、はっはっ。私も、はっはっ。い、行きます~。」

 

 息を切らせて走ってきた雛里が二人の前で停まり、きつそうに肩で息をする。護衛がいるとはいえ、この乱戦の中でここまで来るのは大変だっただろう。

 

星「軍師殿も無理をなさる。しかし...その様子では、軍師殿はここで待っておられたほうがよくないか?」

 

雛里「こ、ここまでくれば、り、劉璋さんを説得して街道に布陣した、へ、兵隊さんたちを、ぶぶ、武装解除させることができるかもしれないので...」

 

思春「それはいいが...その様子では交渉相手にも足元を見られるだろう。ゆっくり行くから、その間に息を整えておくといい。」

 

 それでいいな?と星を見返す思春に、星はやれやれと言った表情であったが、戦わないで済むならそれに越したことはないだろうとすぐに了承する。それから三人は部隊を連れて、混戦する城内を奥へ奥へと進んでいった。

 

思春「しかし...本拠地だというのに思ったより兵が少ないな。家臣に裏切られてばかりいるというのなら、もっと身辺警護のためにも兵を待機させていると思っていたが。」

 

雛里「そうですね...何か罠があるのでしょうか...」

 

星「ふむ。その可能性を念頭に進んでおいたほうがいいだろうな。とりあえず背中は開けておかないほうがいいだろう。」

 

 警戒しつつ進んでいくが、奥に行けば行くほど敵の兵は減っているように感じられた。裏切りを恐れた劉璋が一箇所に兵を集めず分散して警護させていたのが原因でもあるのだが、それを知る由は今の三人にはない。やがて、城の中心部にある広間へと続く、大きな扉まで辿り着く。衛兵もいないことに三人は頭をかしげるが、

 

思春「...血の匂いがするな。」

 

 思春のその言葉に三人は再び警戒感を強め、お互いに頷くと一気に扉を開け放った。そこには、

 

張松「お待ちしておりました、北郷軍の方々。」

 

 頭をさげ、一礼しこちらを見つめる男が一人中心に立っていた。その後ろには配下と思われる兵士たちが跪いている。

 

思春「(あれが劉璋か?)」

 

星「(いや、違うな。)」

 

雛里「(軍師の張松さんではないでしょうか?やり手だと聞きましたが...)」

 

張松「おや、どうかされましたか?」

 

 状況が状況なだけに、三人は目の前に立つ人物によりいっそう警戒感を強めるが、張松は貼り付けたような笑みを浮かべたままだ。その光景は少し不気味にも感じられる。意を決して雛里がその人物に話しかける。

 

雛里「私は北郷軍の龐統と申します。貴方は、もしかして軍師の張松さんでいらっしゃいますか?」

 

張松「おや、噂に名高い龐士元殿が、このように愛らしい方だとは存じませんでしたな。貴方のご明察通り、私が張子喬にございます。以後、お見知り置きを。」

 

 歯の浮くような台詞、そして崩れない笑みに雛里は怖気が走るが、表にはださぬよう冷静に対応してみせる。

 

雛里「この国の主、劉季玉殿にお目通り願いたいのですが、取り次いでいただけないでしょうか。」

 

張松「残念ながら...今となってはそれはかないませぬ。」

 

雛里「それはどういうことでしょう...」

 

張松「...あれをここに。」

 

 そう張松が言うと、後ろからやってきた一人の兵士が、張松に何かを手渡した。どうやら桐の箱のようだが、その中身を想像して三人は息を呑んだ。案の定、前に進みでた張松が開け放ったそれには...

 

張松「この国に巣食う諸悪の元凶、劉季玉はこの私が直々に処断致しました。そしてこれを貴殿らに献上し、これをもって我らは北郷軍に全面降伏致します。今街道にいる者達も、私が説得いたしますのでどうか...」

 

 うっと嗚咽を漏らし口を抑え視線をそらす雛里。そして残る二人の反応は、

 

思春・星「...」

 

 いつのまにか、思春も星も張松の後ろに背を向けて立っていた。その手には刃を赤く染めたお互いの獲物が握られていた。

 

思春・星「下衆が。」

 

 ぼそりと吐き捨てるように放たれた台詞に、一瞬なにが起きたか理解できなかった張松とその部下たちであったが、張松だったものがごとりと音を立てて床に倒れると、

 

張松部下「貴様らぁっ!!!」

 

 成都陥落の報を受けて、しばらくにらみ合いを続けた街道に布陣していた蜀軍残兵と北郷軍であったが、戦闘継続を不可能と判断した蜀将が降伏を受け入れたことで、一刀はほっと胸をなでおろした。

 

 徹底抗戦にでもなっていれば、双方にかなりの被害が出たかもしれない。殺し合いなんてできるかぎりない方がいいんだ。

 

愛紗「以上が、雛里たちからの報告になります。」

 

 劉璋は最後の最後で、腹心の張松の裏切りにあって殺されたらしい。その首をもって助かろうとした張松も、星と思春によってその場で切り捨てられた。恐らく、ウチにいる誰がその場にいてもそうなっただろう。

 

一刀「ありがとう。とにかく、みんなが無事でよかったよ。」

 

 こちらにも被害が出たが、予想とはうって変わりその被害は少なかった。だが、一歩間違えばこちらの損害はもっと恐ろしいものになっていたに違いない。それこそ、再起がかなわないほどに。

 

愛紗「それと降伏してきたものは基本的に受け入れていますが、本当によろしいので?」

 

一刀「雛里がそこらへんを調べてみてくれてるみたいだし、大丈夫じゃないかな。危ない人は放逐する方向でいいと思うよ。」

 

愛紗「わかりました。それと、劉循と張任ですが、馬超の身の安全が保障されない限りはこちらにくだらないと申しております。」

 

一刀「そっか、翠もいい友だち持ったな...」

 

愛紗「...全く。こちらでも翠は変わりませんね。」

 

 今は別の天幕で治療を受けているであろう彼女を思う。そこへ、

 

雛里「...戻りました。」

 

 申し訳なさそうに天幕の入り口に立つ雛里と思春、その後ろには星が立っていた。

 

星「今戻りました主。」

 

思春「処分は如何様にも。」

 

雛里「...覚悟はできています。」

 

 跪く。しかし一刀の反応は、

 

思春・雛里「!?」

 

一刀「...無事でよかったよ。」

 

 二人の間で二人を肩で抱き喜んでいた。

 

雛里「し、しかし私たちは...」

 

一刀「みんなはこの先のウチのことを考えてやってくれたんだろう?俺が責められるわけないじゃないか。」

 

 心底嬉しそうにする一刀に二人は顔を赤らめタジタジになるが、

 

星「主は昔からこういうお方だ。諦めろ。」

 

愛紗「全くだ。」

 

 にこやかにそういう星と、呆れ気味だが柔らかい表情を浮かべる愛紗の言うとおり、二人はおとなしく抱きしめられていることにした。そこに、残りのメンツもちょうど戻って来た。

 

霞「おお?なんやお邪魔だったかいな。」

 

祭「ふむ。もしや次は儂の番か?」

 

愛紗「ああ、祭は私が抱いてやろう。ほら、よかったなっ!」

 

祭「ちょ、やめろ愛紗!痛い、痛いというにっ!年寄りはもっと労らんかぁっ!」

 

霞「あ、ええなぁ、祭。愛紗、うちもギュッとしたって!」

 

愛紗「こ、こら、くっつくなぁ!」

 

風「ああ、雛里ちゃん。助かったみたいでよかったですねぇ。」

 

星「なんだ風、軍師殿とは知り合いだったのか。」

 

風「実は向こうにいた時、街の本屋で出会って意気投合しまして。そのままナンパされちゃったのですよ。風も罪な女ですね。」

 

星「ほう。通りで随分こちらの事情に詳しいと思ったらそういうことだったのか。」

 

風「まあそういうことだったのですよ。」

 

 いつものがやがやとした雰囲気が久しぶりに戻ってくる。そこへ、

 

華雄「久しぶりに揃ったと思ったらもうこれか。おい北郷、馬超を連れてきたぞ。」

 

 部外者に恥ずかしいところを見られまいと全員居住まいを正そうとするが、今更遅すぎる。

 

馬超「ぷっ!」

 

霞「ちょ、華雄なんてとこで連れてきたんや!ばっちんに笑われてしもうたやないか!」

 

馬超「ばっちんって、それあたしか?はっはは!」

 

 こらえきれずに笑い出す馬超に、なんか変なコト言った?と周囲に無言の確認をとる霞だが、皆から返ってくる反応が同じなので、テヘッっと笑ってみせる。

 

愛紗「ん、んんっ!」

 

 早く本題に入れと促す愛紗につられて、一刀は馬超に向き合う。

 

一刀「初めまして。俺は北郷一刀。一応、この勢力の代表ってことになってるよ。」

 

馬超「あたしは西涼連合の...はもう違うな、姓は馬、名を超、字を猛起。ばっちんでも何でも、好きに呼んでくれ。」

 

一刀「それじゃ、馬超。単刀直入に言おう。俺達の仲間にならないか?」

 

 心底意外そうに驚く馬超だったが、

 

馬超「あのさ、無礼を承知で言うけど...あんたはあたしにとって敵の一人だぜ?んなこと普通言うかな。あたしを拘束もしないし...見た感じ、今すぐあたしがあんたの命を奪うことだってできるんだぜ?」

 

一刀「馬超はそんなことするような人じゃないよ。」

 

馬超「随分敵に信用されたもんだな。それにさ、そこのあんたも、あたしの...紫燕の時もそうだったけど、命取れたのに取らなかっただろ?」

 

 馬超が流す視線の先にいる愛紗はその質問に対し堂々と答える。

 

愛紗「貴公は既に疲れきっていたからな。どうせなら貴公が回復してから正々堂々やってみたいと思っただけだ。その時はしっかりその首を貰い受ける。」

 

馬超「どうだか。」

 

愛紗「なら私も貴公に問おう。随分先ほどと様子が違うようだが、どうかされたのか?」

 

馬超「あたしの様子がおかしいって?そりゃさ、自分をぶっ飛ばした相手にあんな風に労られれば、怒るもんも怒れないって。」

 

愛紗「...覚えていたのか。」

 

 思い出して、少し顔を赤らめる愛紗と動揺に馬超の頬にも少し赤みがさす。

 

馬超「うっすらね。あんなふうにされたの、母上が生きてた時以来だよ。そしたらさ、なんかこう憑物が落ちるっていうか...悪いな、うまく説明できない。」

 

 一刀以外の者からすれば、その場にいなかったのだから何があったのか想像もできないだろう。特に馬超と直接殺り合った霞からしてみれば、馬超の変わり様は凄まじいはずだ。

 

馬超「勝敗は兵家の常だ。それをいつまでもグズグズ引きずってたあたしが悪いんだ。それに父上たちが殺されたのは悔しいし、できれば敵を討ってやりたいとも思ってる。だからさ、」

 

 馬超は一刀に向き直る。

 

馬超「一度は死んだ身だ。そのあたしが欲しいってんなら是非もない。あんたたちにくっついてけば、曹操と戦えることもあるだろ。ただし、一つだけ条件がある。」

 

一刀「なんだい?」

 

馬超「今すぐじゃなくてもいい。いつか涼州を曹操から取り返してくれ。恨みとか関係なく、あそこはあたしの故郷だからさ。」

 

一刀「わかった、約束するよ。」

 

馬超「ありがとな。私の真名は翠ってんだ。これからよろしくな、ご主人様。」

 

 こうして、一刀はまた新たに心強い仲間を得た。皆がお互いがお互いを紹介し真名を交換していると、

 

兵士「北郷様、申し訳ないのですがちょっと来ていただけないでしょうか?」

 

一刀「どうかした?」

 

兵士「それが...」

 

地和「みんな、いっくわよ~っ!」

 

民衆「ほああああああっ!」

 

一刀「どうしてこうなった...」

 

 先ほどまで戦闘があったとは思えないほど、成都はどんちゃん騒ぎになっていた。通りに面した広場に集まる人だかり。その中心にいるのは、ステージ衣装に身を包んだ張三姉妹であった。

 

兵士A「それが、先ほどまで住民たちの救護や炊き出しにあたっていたのですが、お手伝いしてくださっていた天和様たちが皆元気がないのを気になさって...」

 

 戦争の後はどうしたって辛気臭くなる。家族や友人を失い、悲しむ人もいる。その空気は三人にとっても、戦場に初めて参加した時のようにある意味衝撃だったのかもしれない。

 

兵士B「天和ちゃん、私たちにもできることがあるって仰り...うう、ぐすん。」

 

 感動にむせび泣いているところからすると、この人も元黄巾の一人らしい。だが、成都の民衆や元蜀軍の兵士たちまで巻き込んで、皆を明るい笑顔で包んでいる彼女たちは、実は物凄い力をもっているのかもしれない。

 

雛里「これは...」

 

風「使えますねぇ。」

 

 冷静に状況を分析する軍師二人。何やらお互いに意見を交換し、あーでもないこーでもないと議論を始める。

 

地和「あー!ごしゅ...一刀も来たわね!向こうじゃ、私たちの麗舞見そこねたんだから、たっぷり見て行きなさいよ!」

 

 一瞬刺すような視線がこちらにたくさん向けられるが、直ぐに三人の歌につられてそれもそれる。その間にも、

 

星「主ー、主も一緒に飲みましょう。」

 

 いつのまにか崩れた飯店からテーブルと椅子を引き出してきて、どこから持ってきたのか三人の歌を聞きながらいっぱい引っ掛けている星、霞、祭のトリオ。星が酒瓶を片手にこちらに手を振っている。そしてそこで半ば巻きこまれるようにして霞に無理やり飲まされている華雄。哀れ華雄。君のことは忘れないよっ!

 

愛紗「貴様らっ!まだ敵兵が残っているかもしれぬのだぞ!一刀様、ここは堂々と皆を

...」

 

 真面目な愛紗がそんな彼女たちを諌めようとするも、

 

翠「まあいいじゃないか。あたしらも飲もうぜ。な、ご主人様?」

 

愛紗「離せっ、翠、私は酒は...」

 

翠「いいからいいから。それにまだ出会ったばっかなんだし、色々腹割って話そうぜ。」

 

愛紗「そ、それは構わんが酒が...う、か、一刀様~!」

 

 どうやら翠にも懐かれたらしい。愛紗の肩を捕まえ、反対側を待ってましたと霞ががっちりと捕まえる。そうして引きずられて行く愛紗を見送る。さらば、愛紗。霞には気をつけるのだぞ。

 

思春「全く、ここには馬鹿しかおらんのか。一刀様、奴らに構わずここは二人で本営に...」

 

 と、そこまで言いかけて肩を誰かにつかまれる思春。

 

星「抜け駆けとは武人のやることではないな。ささ、主も一緒に。」

 

思春「この私が...気配に気づけなかった、だと...」

 

 いつのまにか背後に回り込んだ星にずいずいと背中を押されていく思春。そして片方の手で、星は俺の手を取る。

 

一刀「全く、しょうがないなぁ。」

 

 口ではそう言いつつも、一刀は皆がいつもの空気に戻ったことが嬉しくてしょうがなかった。

 

 -あとがき-

 

 読んでくださった方はありがとうございます!コメントくださった方、支援くださった方も有難うございます。今夜も深夜更新失礼しますね。

 

 なんとかこの章を終わらせることが出来ました。なんやかんやで女の子をゲットしていく一刀君。罪な人ですね。次回からは拠点パート、また更新が週一くらいに戻るかと思います。

 

それでは、次回もお付き合いくださる方はよろしくお願いします。

 


 
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