No.608076

真・恋姫†無双 異伝 ~最後の選択者~ 第一話

Jack Tlamさん

『真・恋姫†無双』を基に構想した二次創作です。
無印の要素とか、コンシューマで追加されたEDとか、
その辺りも入ってくるので、ちょっと冗長かな?

無茶苦茶な設定とか、一刀君が異常に強かったりとか、

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2013-08-12 21:17:31 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:6263   閲覧ユーザー数:5087

第一話、『突然の来訪者』

 

 

――及川と別れた俺は、急いで家に帰った。なるべく早く、という朱里のお願いに応えるためと、ぶっちゃけ腹が減ったからだ。

 

『なるべく』などと言ってはいるが、その実『今すぐに帰ってきて欲しい』という意が込められているのは間違いない。朱里は

 

そういう子だ。長い付き合いだし、今ではもう家族同然の存在。その位の機微は手に取るようにわかる。

 

繁華街から家まではそんなに遠くない。オリンピック選手もかくやとばかりの速度で、俺は夕闇に染まる街中を疾走した――

 

 

 

(side:一刀)

 

――10分と少しばかり走ったか、俺は自宅に到着した。

 

この家から学園の敷地までは歩いて30分位の距離だ。訳有りらしいためにあまり人が住みたがらず、物好きばかりの土地なので、

 

住宅街として見てもかなり閑散としている方だと思う。夕陽も落ちたこの時間ともなれば、歩いている人間などごく僅かだ。

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさい、一刀様」

 

聖フランチェスカ学園の生徒の殆どは寮生活だが、学園外で生活している者も居ないわけではない。尤も高校生の身で既に一軒家

 

持ちというケースは幾らなんでも稀だろうけどさ。

 

「調べ物は終わったのかい?」

 

「もう殆ど終わりました。やっぱり色々と違いがあったようですね……さて、今日の夕食は何でしょう?」

 

外史から帰還した俺達は精神的に非常に辛い状態に陥り、殊に朱里は俺以上に辛そうだった。そんな状態で日々を過ごしていたが、

 

校医の竜禅寺先生と偶然出くわした際に見咎められ、その後先生を通じて学園長に話が行ったので、既に住まう場所があることも

 

あり、学園外生活の許可申請はあっさりと受理された。先生も何かと気にかけてくれている。有り難いことだ。

 

「……この見た目からすると天津飯のように見えるけど、実は違ったりするか?」

 

「正解です♪実はオムライスなんですよ」

 

「成程、納得のアレンジメントだ」

 

夕食は天津飯――に見せかけた中華風オムライスだった。勿論(タン)付き。元々料理好きでかなりの腕を持っていた朱里だが、此方の

 

世界に来てからは世界中の料理を調べ、自分なりにアレンジしたりして作ってくれる。勿論あの外史で食べていたような食べ物も

 

作ってくれるし、ばあちゃん仕込みの和食も……と、バラエティに富んでいる。

 

もう華琳や流琉といい勝負、どころの話ではない。作れるバリエーションの豊富さが違う。故に発想も違う。今の朱里が彼女達と

 

勝負したら、間違いなく勝てるだろう。

 

 

 

――以上、北郷一刀によるノロケでしたー。

 

 

 

 

……まあ、嫁自慢はさておいて。

 

夕食を終えた俺達は、明日の予定を話し合ったりなど、とりとめのない話をして過ごしていた。

 

これがあの頃であればもっと緊張感のある会話もあっただろうが……戦乱が身近で起こり得ない日本にいる以上、そんな話をする

 

必要は無い。それにあの外史を去った俺達は、もうこの世界の住人。思い出話をすることこそあれ、そんな緊張するような話まで

 

無理にする必要は無いのだ。

 

俺は『天の御遣い』の使命を終えたのだし、朱里もあの世界から解き放たれた以上、天才軍師・『諸葛亮 孔明』ではなくなった。

 

日々を普通に過ごし、ごく当たり前にある幸せを求めていければ、それで良い。今はそう思っている。

 

 

「……そういえば、一刀様。郵便受けにこんなものが」

 

「何だ?……手紙か。まさか、またなのか」

 

「はい。おそらくそうだと思います。ハート形のシールで封がされていますから」

 

……元の世界に戻ったらモテる要素皆無な筈の俺。でも何故か定期的にラブレターが送られてくる。今では聖フランチェスカ内で

 

俺達カップルは有名だ(色々な意味で)。だから、幾らラブレターを送ってきたところでそれに良い返事が出来る筈も無い。だが、

 

下駄箱に入っているだけなら兎も角、家のポストにまで入っているとは流石に想定していなかった。

 

これは場合によっては学園への連絡が必要かもしれない。聖フランチェスカ学園は平穏な学園だが、こうしたトラブルが全く無い

 

というわけでもないのだ。元々女子校だったこともあり、まだ男子生徒が少なく、割とこういった関係のトラブルは起きやすい。

 

朱里曰く俺は十人並みの容姿で、纏っている雰囲気も他の男子とは明らかに違うし、それに性格も落ち着いている――と、モテる

 

要素満載の人間らしい……本当にそうなのか?まあ、そう見ていてくれるのは満更でもないが、俺にはもう朱里がいる。差出人を

 

確かめて、釘を刺しておかねば。朱里に危害が及んだら一大事だ。そうなったら俺は悪鬼羅刹になってでも犯人を捜し出すだろう。

 

そう思って、封を開けた――

 

 

 

――手紙には、やたらとでかいハートマーク(しかも微妙に歪んでいる)が描かれていた。しかもそれだけ。

 

 

 

「……なんだこりゃ」

 

「そこはかとなく危険な香りがします。悪意は無さそうですが、これは……」

 

「悪意が無いって……差出人の名前も書いてないじゃないか。これはラブレターじゃなくて単なる嫌がらせに近いぞ」

 

「それに、この紙……わかりませんか?」

 

「……似てるな、あの頃に使っていた紙と。随分と古風な趣味を持ってるんだな」

 

手紙に使う紙にしては随分と手が込んでいる。普通に便箋で済ませれば良いものを……どうしても古風に演出したければ和紙でも

 

使えば良いのに。こんな紙、逆の意味で高価な貴重品じゃないか?

 

「聖フランチェスカには歴史研究部がありましたよね?そこの方ではないでしょうか?」

 

「歴研?あそこって共学になった今でも男子禁制で謎が多いんだよ。というか、あそこは百合の園だって及川が言ってたぜ。寧ろ

 

 朱里が狙われそうだ。可愛いし……」

 

「……百合の園……ゴクリ」

 

「……朱里?」

 

「はわわっ!?な、なななななんでしゅか、かかか一刀しゃま!?」

 

「……カミカミのバレバレだ」

 

「はぅ……」

 

というか、反応するのはそこなんですか。普段は生真面目で理知的な朱里だが、どうにもちょっとズレた面があるよな。

 

「……漫才はさておき。宛名は俺だし……どうするか……」

 

「……えっと、差出人が名前を明かしていない以上、返事をする必要性は無いかと思います。一刀様の仰る通り、只の嫌がらせの

 

 可能性もありますから。文章が無いので明確には断定出来ませんけど……でも、これでは何がしたいのかわかりませんね」

 

朱里の賛同も得たことだし、こいつは破棄しよう。なんだか凄く面倒臭そうな予感がする。そういうわけで、まあくしゃくしゃに

 

するのもあれなので、折り畳んで燃えるごみのゴミ箱に放り込んだ。

 

「でも、一刀様に言い寄る方は一向に減りませんね……聖フランチェスカに、まだ男子生徒の数が少ないというのもありますけど」

 

ふと、朱里が不安そうに呟く。

 

「外史に居た時はそれはもう多くの方がいて、それを受け入れてはいましたが……今はこの世界で生きていて、一夫一妻が当然と

 

 いう価値観の中にある以上、そんなことは無いとわかってはいるのです。けど……」

 

「……」

 

――ああ、もう。俯いて不安そうにしながら実は嫉妬の炎を燃やしてるなんて可愛過ぎるじゃないか。俺はごく自然に朱里の隣に

 

座り、彼女の頭を抱き寄せる。

 

「ど、どどどうされました?」

 

「いや、どうもしないよ。ただこうしたかっただけ」

 

「は、はわわ~……」

 

真っ赤になる朱里。可愛い。

 

俺達はそれから一時間近くイチャイチャしていた……(最近の剣道部員からの俺の渾名は『一途系リア充』である)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――悪い予感とは、当たってしまうものだ。それが悪ければ悪いものであるほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、インターホンが鳴らされた。

 

我が家のインターホンは最近よく見かけるカメラ・モニター付きの奴ではない。いずれ替えようとは思っているが、今は玄関まで

 

行って確認しなければならない。応答用の受話器も玄関にあるし、居間からは確認が出来ないのだ。

 

「こんな遅くに何方でしょうか?近所の回覧板はこんな遅い時間に回しませんよね、普通」

 

「悪戯かもしれないな。取り敢えず、覗き窓から見た方がいいな」

 

俺は立ち上がって玄関に向かい、ドアの覗き窓から来訪者の姿を見る――

 

 

 

――何か浅黒く焼けた巨大な肌色が見えた。

 

 

 

「……」

 

「……一刀様?どうされたんですか?」

 

「……」

 

俺は無言で朱里に手招きする。すると朱里は可愛らしく首を傾げながらトテトテと玄関までやって来る。

 

「……朱里よ。外にある何かを見ても絶対に大声あげるなよ。もう遅いからな」

 

「え?あ、はい……ええと」

 

そういえば、朱里の背丈では覗き窓まで届かないんだったな。今でこそ142センチとそれなりに背が伸びた朱里だが、この家の

 

覗き窓はそれよりも高い位置にあるので、朱里には覗けないのだ。今度、台でも日曜大工で作るか――朱里が拗ねそうだが。

 

「よっと」

 

「はわわ、お、お姫様抱っこ……」

 

「ほら、覗いてみな」

 

「はい……?……!!!???」

 

声を上げるなと言ったためか、朱里は思わず大声を上げそうになった自分の口を両手で覆っていた。だが、眼が雄弁に語っている。

 

(どうして……!?)

 

どうやら、朱里も状況を理解したらしい。今は玄関の外にいる、突然の来訪者の正体も。

 

「……開けるべきかな?」

 

「……はい」

 

俺は朱里を降ろすと、ドアを開けた――

 

 

 

――そこには、浅黒く焼けた肌色の巨大なアイツが、しなを作って途轍もなく気持ち悪い姿で立っていた。

 

 

 

「……久しいな、貂蝉」

 

「おぉぉぉぉ久しぶぅぅぅりぃぃぃぃねぇぇぇぇん……ごぉぉぉ主人様ぁぁ、朱里ちゅわぁぁん……」

 

スキンヘッドの漢女――貂蝉。

 

あの外史で俺達を見守り続け、外史から去るその時までサポートしてくれた、肯定派管理者だった――

 

 

あとがき(という名の言い訳)

 

 

読者のみなさんこんにちは、Jack Tlamです。

 

 

今回いよいよアイツが出た!

 

ということではありますが…

 

 

当方、イチャイチャを描くのは良いのですが、割と湿り気が多くなりがちなので、ソフトなイチャイチャは

 

あんまり多くはできません。

 

湿り気のあるものなら………お任せください(マテ

 

 

あまり長く伸ばしてもあれなのと、この話は序章の終わり部分に過ぎない導入エピソードなので、

 

短くなりました。

 

次回からは長めになって来るかと思います。

 

 

ちなみに、このカップルは夜の生活も順調ですが、生きている社会の通念上、あの外史に居た時のようには

 

やれないのが実情です。

 

百合の園設定の歴史研究部は当然当方の創作ですので、間違ってもググらないでくださいね。

 

 

文才ゼロの私ですみません。誰か才能の欠片でもいいから分けてーーーーっ…

 

 

次回は再会した貂蝉との会話、そして孔明の罠(?)となります。

 

 

それでは、また次回。


 
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