『・・・・と・・・対する・・・謝罪・・・・記録』
-全ての事の発端- 前編
これは、今まで知られる事の無かった記録である。
この記録は『公式』には存在しない。
ただ、「『公には』という形で存在しない」という事になっている。
ある一人の青年に向けた『謝罪』という名の『映像記録』である。
最初に画面に映ったのは・・・・・・
――――ザーーー!
何も写っていない乱れた映像だけだった。
――――ザーーー!
記録を残したディスクに問題があるのか、乱れた映像しか見る事が出来ない。
――――ザーーー!
何も映らない乱れた映像が延々と続くと思っていた……その時だった。
――――・・・・私・・・・・名前・・・・・つ・・・
一瞬、何かの声が聞こえた。
――――・・・・・派・・・・者・・・・です・・・・・・
映像が、少しずつではあるが鮮明になって行き、声も聞き取れる様になって行く。
そんな、状態が何回か続いた後・・・・・・遂に『ソレ』は映し出された。
「貴方が、この映像を見ているという事は……おそらく『真実』知ったという事でしょう」
映し出された人物は長身の男性で、長髪の黒髪で眼鏡を掛けていて、服は昔の時代で着る礼服or儀式で着る様な格好だった。
「最初に、私は貴方に謝罪をしなければ行けません」
眼鏡を掛けた男性は、顔を下に俯きながら物凄く後悔している表情をしていた。
「貴方を……私の……私達の身勝手な『エゴ』に巻き込んでしまった事を・・・・・・」
男性は静かに、ただ淡々と話してはいる様に見えるが……その言葉からは悲痛な感情が篭っている様に感じた。
「貴方自身、今まで何度も何度も思った事でしょう。 「何故、自分が『此処』いるのか?」、「何故、『自分』だったのか?」、「何故、自分は『彼女達』に出会う事となったのか?」という事を・・・・・・」
それは、『真実』という名の答えを・・・・・・
「今こそ、話しましょう。 『あの日』貴方が選ばれた理由を……『あの日』貴方に伝える事の出来なかった『本当の真実』を!」
まるで、誰かに語り掛けるかの様に……男性は語りだした。
そう・・・・・・・
『あの日』の『真実』を・・・・・・
「っと、その話をする前に……少し、昔の話をしましょう。 『ソレ』を話さないと話が繋がりませんからね」
「ハッ」っとした顔をした後、男性は笑いながら、自身の昔の話を始めた。
「あれはまだ、私達が「外史の管理者」になる前・・・・・」
「まだ、「外史」という物を知らず……「ある外史」の住人だった頃の話です」
「私には、大切な人がいます。 子供の頃から何時も一緒で、何処へ行くのも何をするのも何時も一緒で、時には笑い、時には涙を流し、時には喧嘩をして、私が困って泣いている時に何時も助けてくれた……大切な「幼馴染」で「友人」で「親友」で『家族』だった人が・・・・・・」
男性の表情は、まるで・・・・・
「彼は真っ直ぐで、いつも明るく、私の憧れだった」
昔を懐かしむ物だった。
「でも、そんな大切で掛け替えの無い、幸せな日々がずっと長く続いて行くと私は思っていたのですが、それは突然……終わりを告げたのです」
男性は眼鏡を『クイッ』と直しながら、「私達、二人の人生を大きく変える最初の出来事がね」っという言葉と共に・・・・・・。
「ある日、彼と私が住む村に賊が襲撃して来たのです。 私達の村は、それまでも幾度と無く賊の襲撃を受けて来ましたが、その度に村の大人達が賊を撃退していました。 しかし、その時の賊は未だ嘗て無い程の『大軍勢』だったのです。 村の大人達は何とかして、賊を食い止めている間に年老いた老人や女性に子供達を逃がそうとしましたが……それは出来ませんでした」
男性は当時の事を思い出したのか、俯きながら悲しげに語る。
「彼と私は生まれ育った村の住人達が殺されていくのを……逃げ惑いながら見ていました。 遊び仲間の子や、近所のおじさんにおばさん、普段は優しいけど怒ると物凄く怖い……だけど、誰よりも村の子供達の事を愛し、大切にしていた長老様。 彼と私は、逃げながら「助けて!」「殺さないでくれ!」という彼らの悲痛な叫び声を聞いていました。 そして、逃げ惑う中で彼と私は……自分達の両親を……賊によって無残に殺された……『両親』だった……『死体』を……見つけたのです」
悲しそうに・・・・・・
「……私は、未だに『あの日』の出来事を思い出す度に、全身の血が凍りつくのを感じます。 もう、昔の事だと言うのに・・・・ッ」
両手を握りしめ顔を俯かせながら、そう語る男性。
「私達は目の前が真っ暗になりました。 村の皆の死だけでなく、両親の死を目の当たりにしたのだから当然でしょうね」
その顔は、何処か哀愁の漂う物だった。
「私は呆然と両親の亡骸の傍で泣いていました。 その時の私は、もう逃げる気もありませんでした。 両親が死に、村の皆が死んだ今……『今更、此処で逃げて何の意味があるのか』っと思っていたからです。 ならば、いっその事『此処で死んでしまった方が家族に会える』とさえ考えてしまう程に生きる気力を失っていたのです」
「でも」っと、続けて・・・・・・
「そんな私の考えを……弱さを……否定したのが、『彼』だったんです」
「彼も両親の死を目の当たりにして辛い筈なのにも関わらず、私を励ましてくれたんです。 彼は私に言いました『今、此処で俺やお前が死んでも俺の父さんや母さんに、お前のおじさんやおばさんは……村の皆は絶対に喜んだりしない! 俺達は生きなきゃいけないんだ!? 皆の分も生きなきゃいけないんだよ!?』って、それを聞いても……なお弱音を吐く私に対して彼は……『弱音を吐いてんじゃねえ!?』って、スッゴク痛い『蹴り』をくれましたよ(苦笑)」
男性は、苦笑いでそう語る。
「その後、私達は奇跡的に賊に見つかる事も無く村を出て二人の遊び場でもある村近くの森に向かいました。 普段から森で遊んでいたので、魚の捕まえ方は熟知していましたし、木の実やキノコもあったので食べ物には困りませんでしたよ。 寝床は、いつも一緒に遊んでいた村の子供達と作った隠れ家(っと言っても大分昔に使われていたであろう小屋を見つけ、その小屋の中を皆で協力して掃除して使える様にした物)を使ってました。」
「最初は、本当に寂しかったですね。 昨日まで、「何時も一緒だった友達も両親も村の皆も居ない」という現実を突きつけられて私は泣いてました」
「そんな私を彼は励ましてくれました。 ……ええ、思いっきり私の背中を蹴りながら(遠い目)」
何処か遠くを見ながら、サラリと告げる男性。
「そんな日々が続いたある日、私達の人生を大きく変える『二度目の出来事』が起こりました。 正直、あの頃に戻りたいと思った事が何度もありましたよ。 『あんな事』が起こると分かっていたのならば、彼は「あんな風」にはなら無かったし、私もあんな後悔をする事は無かっただろうと・・・・・」
そう語る男性の顔は、本当に悔しげで……悲しそうで……激しい後悔をした者の顔で・・・・・・。
「私が・・・・・・」
「『彼』を・・・・・・」
「『左慈』を・・・・・・殺したのも同然なのですから」
『外史の管理者』で「否定派」の『于吉』は、そう告げるのだった。
―――――This story is to be continued
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どうも、こんにちは劉邦柾棟です。
この暑さで、汗っかきな当方は、毎日毎日汗だくです。
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