「……ま………きろ!」
…ん?この声は愛沙か?
「おい……きろ……………だ!」
…なんか怒鳴っている様だが、寝ぼけているから何を言ってるのかさっぱりだ。
―――プツン――――
…あれ?今何か切れた気が。
「…………コロス」
…………………へ?
「おわぁ!?待て待て待て待てぇ!?」
「…やっと起きたか。」
「ってか起きなかったらどうするつもりだったんだよ…」
「我が青龍偃月刀の錆となっていたであろう。」
んなキッパリと…
俺がそんな事を考えてると、
「ところで」
「ん?何?」
そういうと、愛沙はキッとこちらを見据え、とんでもない事を聞いてきた。
それは――――――
「貴様は何者だ?」
………………はぁ?
「あのさ、愛沙。冗談を言うならもう少しわかりy「貴様ぁぁぁ!!」…へ?」
何なんだ?さっきから愛沙の様子がおかし過ぎる。
「あ、愛沙さん?」
「まだ私の真名を…それに貴様、何処で我が真名を知った!」
「お、落ち着けって愛沙!一度、深呼吸を――――ッ!」
そこまで喋って俺はある異変に気がついた。
「あー、あー」
…さっきは動転してて気づかなかったが声がかなり高くなってる。
「声変わり…じゃないよな?」
「何をごちゃごちゃ言っている!それにこの部屋にいたお方を何処にやった!」
「いや、ここ俺の部屋だし…」
「ふざけるなぁ!私の…私達のご主人様を何処へ――!」
ちょうど、その時だった。星と翠が部屋に押しかけて来たのは。
「何事だ、愛…沙?」
「ったく、こんな朝早くから…騒…いでん…なよ…。」
凄いな…。あの星が呆気にとられてる。
だが、次の二人の言葉で俺は呆然とした。
「「なぁ、愛沙…誰なんだ、その女」」
…………………は?
女だって?俺がか?
「皆一体何を…」
そう言って立ち上がろうとしたとき、ふと、俺の視界に鏡が入った。
いや、それ自体は別にどうでもよかった。
問題は、鏡に映った人影だった。
そこには『女の子』が一人映っていた。
「……………ぬぁんじゃこりゃあぁぁぁ!?」
「…つまり、貴女は我らが主にして天の御使いである『北郷一刀』本人だとそう言うのか?」
「うん。」
「にわかには信じ難いな。」
「やっぱそうだよなぁ」
なんせ当の本人である俺が信じられないのだから。
「だったらさ、証明してもらえばいいんじゃねぇか?こいつがホントにあたし達の知ってるご主人様なのかを。」
「成るほど。翠にしては名案だな。」
「なんか言ったかメンマ野郎!」
「ふっ、聞こえなかったか?猪武者。」
そう言い合うと、二人は互いに己の得物を取り出し…って!
「ち、ちょっと待った!仲間同士でなにやってんだよ!」
「うるせぇ!」
「元はといえば貴様が原因だろう!」
何故!?何をどうしたらそんな解釈ができるんだ?
「と、とにかく!俺が北郷一刀だって事を証明すればいいんだろ?」
「あぁ、そうだとも。」
お、星は落ち着きを取り戻した様だな。
「でも、一体どうやって…」
「ふむ…では、我らと主しか知らない事を喋ってもらう、というのはどうだ?」
「お、いいじゃん。あたしは賛成。」
「私も否はない。」
「よし。では…」
そう言うと、三人は俺の方を見据えて来た。
さて、俺と皆しか知らない話と言うと…
―――数刻後―――
「成るほど、確かにそれは主と我らしか知らぬな。」
「ってことは、つまり…」
「あぁ。信じ難いがこの女性が主なのだろうな…」
「………」
「ん?どうしたのだ愛沙よ。」
「…私は…私はご主人様になんと恐れ多い……ブツブツ」
「…まぁこやつは放っておくとして...主よ、何か心当たりはありませぬか?」
「心当たり...」
俺は昨日の出来事を振り返る。
「えっと、確か昨日は朝から政務で、一段落ついた辺りで朱里が薬を持って来てくれてそれから…」
と、そこまで言ったところで星が待ったをかけた。
「主、その薬というのはどういった物で?」
「?えっと、朱里が作ってくれた薬で、なんでも疲労や寝不足に効くんだって。でも、それがどうかしたの?」
「いや、なに。」
そういうと、星は何やら考えそして意を決した様に、
「では皆で朱里の所へ参りましょう。」
そう言った。
「星はその薬が怪しいと、そう思っているのだな?」
いつの間にか回復した愛沙が星に尋ねた。
「あぁ。朱里のことだから故意にやった訳ではないだろうが…」
「けどよぉ、あの朱里がそんな失敗するかぁ?」
「天下の諸葛孔明も万能ではないからな。そのような失敗があっても不思議ではない。」
そう言って星、愛沙、翠の順番に扉の方へ行ったので、俺もそれに続―――けなかった。
「ん?どうしたんだよ、ご主人様。」
「あのさ、俺の事、なんて説明するんだよ?」
「「「…あ。」」」
誰も考えてなかったのかよ!
―――数刻後―――
結局俺は、自室待機することになった。
「では、我らは朱里を探して参りますので、くれぐれも部屋を出ないでくださいまし。」
「ん、了解。」 俺がそう言うと、
「では。」
「いって参ります。」
「ちゃんとおとなしくしてろよ。」
と、三者三様の対応をして部屋を出た。
思えば、この時誰か一人でも部屋に留めておけば、こんな事にはならなかったと思う。
「少し寝てるか。」
そう思って布団に横になってしばらくしたとき…
コン、コン
「…ん?今何か物音が」
コン、コン
「…あぁノックか。星か愛沙かな?」
この時、俺は浅はかだった。なんせ三人の内の誰かが帰って来たとしか考えてなかったのだから。
「愛沙?星?それとも、大穴で翠だったり…」
そこで俺は固まった。目の前に居たのは愛沙でも星でも翠でもなく、唖然としている詠だった。
「………」
「あの〜詠さん?」
「ハッ!あ、アンタ誰よ!何処から入って来たのよ!なんであいつと同じ格好をしてるのよ?!そもそもなんであたしの真名を知ってるのよ!?」
「え、えっと…」
しまった。相手が詠じゃ下手な嘘は通じない。かと言って事実を伝えても信じてもらえるか…
俺がそんな葛藤を繰り広げていると、詠は何かに気づいて口を開いた。
ただ、その内容が問題だった。
「我らが主、北郷一刀の部屋に侵入者だ!?であえ、であえ!!」
「なに!?侵入者だとッ!」
「真ですか、文和様?!」
やばっ!近くにいた兵士がぞろぞろと集まってきた。
「えぇ。さっさとあの女を取っ捕まえて尋問に――「待て!」――…へ?」
「ん?」
この声は…!
「愛沙!」
「お待たせ致しましたな。」
「まぁ結果オーライってことで勘弁な。」
「星!それに翠も!」
「ち、ちょっとあんた達何和んでるのよ!侵入者なのよ!侵・入・者!!」
「ち、違うんです!そのお方は侵入者なんかじゃありません!!」
「なっ!朱里まで何言ってんのよ!あんたがそんなんじゃ―――「その人はご主人様なんですぅ!」―――…は?」
「…悪かったわよ」
「いや詠も悪気があった訳じゃないし気にしなくていいよ」事情を話すと意外にも詠は納得してくれた上に俺に謝ってくれた。
「にしても、まさか女になっていたとはねぇ…しかもそれが朱里の仕業だなんて。」
仕業ってわざとじゃないんだから…
「はぅ〜」
「ほら、朱里も泣かないで。」
「あぅ…すみません。」
「良いって。それでさ、朱里。元に戻る方法なんだけど…」
「そ、それが…」
言って朱里は口を濁した。
「そんなに難しい方法なの?」
まぁある程度の事なら元に戻るためだしやってみせるが…
だがそんな希望は次の朱里の一言で打ち砕かれる事となる。
「…解らないんです。」
「………は?」
「で、ですから元に戻る方法が解らないんです!」
「「「えぇ!」」」
そ、そんな…
朱里にさえ解らないんじゃ…
「で、ですが!」
「ん?」
「元はと言えば私の未熟さが招いたこと。必ずやご主人様を元に戻して見せます。」
「朱里…」
「…あたしも手伝うわよ。」
「「詠(さん)!!」」
「か、勘違いしないでよ!?べつにあんたの為なんかじゃないんだからね!?」
「…ありがとう、二人とも。」
―――――こうして
『ご主人様を元の姿に戻そう大・作・戦』が決行された。
…そこ!名前がそのまんまじゃんとか言わない!
果たして北郷一刀は元の姿に戻れるのか
次回へ……続くのかな?
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またまた、駄作!