No.607203 無表情と無邪気と無我夢中9-12013-08-09 23:31:34 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:913 閲覧ユーザー数:904 |
【無表情と無邪気と無我夢中9-1】
なのはなの。
あれから幾日か経って、今はアリサちゃんと一緒にすずかちゃんの家でお茶会。
私が落ち込んでいると思って元気付けてくれる会とのことらしいです。
おうかちゃんは、熱は下がったんだけど未だに意識不明の状態でしばらく入院。
一緒に入院していたあらしちゃんは退院したけど、何があったのかあまり詳しく話してくれない。
本人いわく、気になることが多すぎるから整理してから話すとのこと。
さらにはあの日ユーノ君には申し訳ないことをしたと思う。
ただ、ユーノ君が現場に行った時はもう別の誰かにジュエルシードが封印されたらしく、何もなかったらしい。
ユーノ君の他にも集めている人がいるってこと?
ただ悪用されたら大変だから全部を任せるわけにはいかないみたい。
だから可能な限り自分が集めたいとのことだ。
謝罪の意味も込めて、協力出来る時は協力すると私は言った。
『なのは、ジュエルシード反応!この屋敷の庭からだ』
頑張ろう。
私は私の出来ることをするんだ。
現場に行ったらそこには。
全長約10mぐらいある巨大な猫と。
「あーっはっはっはっはっは!!」
一人のバカっぽい子がそのでっかい猫の頭の上で腕を組み仁王立ちしていた。
「やっと巡り会えたね。我がライバルになりうる存在……」
最初に印象に残ったのは纏っているバリアジャケット。
私の聖祥学園初等部の制服のデザインと全く同じにしてしまったこのデザインとは違う。
黒いノースリーブとピンクのスカートにプラスして手甲にブーツと、少し本格的なデザインが目を見張り、持っている鎌のようなデバイスがまるで死神を連想させるよう。
さらにはポニーテールにした金色の長い髪が風になびいて美しさとかっこよさがにじみ出ていた。
でもそれ以上に目に焼き付いたのは、とても見覚えのある顔。
同一人物と納得することが出来ない。
顔は九割同じなんだけど性格や見せている表情が違いすぎる!
「さあ、いざ尋常に勝負をしようじゃないか!」
あの子は、フェイトちゃんはもっとおとなしくてぽけぽけしていて。
「君はいくつジュエルシードを集めたの?」
それでいて細かい仕草が可愛くてでもちょっとだけ天然さんで。
「それを賭けていざデュエルだ!!」
間違ってもあんなバカっぽくないの!
「君は何でジュエルシードを集めてるんだ!?」
「ユーノ君……」
「聞きたいかい?聞きたくば僕を倒す事、それが条件だ!!」
カッコ良く人差し指をズビシッとこっちに差して決めてるんだけど、猫が「なあ~ご」って気の抜けた鳴き声を出すから変な空気になってるの。
「どうするユーノ君……?」
「戦うしか、ないんじゃないかなぁ……心苦しいけど」
「決まりだね!―――よ~しお前、今から僕は決闘に行ってくるからおとなしく待ってるんだよ」
なでなで、ぽんぽん。
優しい子なんだね。
巨大猫はやさしくあやされるとその子の言う通りおとなしくなってその場に伏せた。
これまで何個かのジュエルシードを封印するためにジュエルシードモンスターと戦って運良く勝ってきたけど。
人と戦うのは初めて。
勝てるのか不安になった。
こういうのはおうかちゃんの方が得意なのになぁ。
私に力を貸しておうかちゃん!
カコンッ!
カコンッカコンッ!
「やるね、君!」
「貴女も!」
私達は空中に浮く空き缶が落ちないように、交互に魔力弾を当てていく。
回数は合わせて50回を越えている。
最初これを言い渡された時、張り詰めた緊張感は抜けてかつ安心感が芽生えた。
直接魔法を撃ち合うわけじゃない。
でも負けられない戦いであることは同じ。
もう一度言います、おうかちゃん、力を貸して!!
「勝ったあ!!」
「そんな……」
空き缶浮かし対決。
私の勝ち!
勝負を賭けた一撃は上手い具合に地面に触れる直前でヒットして。
相手の一撃が当たる前に空き缶は地面に落ちて音を立てた。
「はぁ、はぁ……さあ、約束通り教えてもらうよ!」
疲れた。
今までの戦い以上に集中力と体力を使って疲れた。
ギリギリの瞬間を見極める力はお菓子作りにて、そして体力はある意味ここ最近の早起きによるお店の仕込みの手伝いによるもの。
だと思うの。
でも何とか勝てたの。
「約束、か……わかった」
すごくドキドキしてる。
相手の秘めていることを聞き出すってこんなに緊張するんだ。
「集めている理由、それは―――」
ゴクッ
つばを飲み込む低音が意外と大きく身体に響いた。
「―――危ないからじゃん。平和な生活壊されたくないもん」
単純に、私でも思い付く理由だ。
もっと深い、誰かのためとかそういう大きい事を抱えてるのかと思ってたけど考えすぎてた。
「僕なら出来る。ならやるしかない。見過ごせないし」
「ねぇ……」
私は自然と口を開いていた。
ちょっと勇気いるけど、私だって同じ理由だもん。
「じゃあ私と一緒に集めない?」
まだ名前も知らない彼女は少し驚いた後、手を顎に当てて考え始めた。
私なりにいい案だと思うんだけど。
「一ついい?」
何だろう。
私はコクンと頷いた。
「さすがにずっと前から魔法使ってたわけじゃないよね?この世界には魔法文化なんてないし。君、魔法に触れて何ヶ月?」
「えっと……一週間くらい前、かな」
「え、一週間……一週間であの技量……?」
あ、さらに考え込んじゃった。
今度はこめかみを叩き始めてる。
「じゃあ、明日、君んちのお店、翠屋に行くから待っててくれる?」
「え、うん」
「んじゃ決定―――おまたせお前」
「なぁ~」
猫さんあの子に撫でられてゴロゴロしてる。
……可愛いの。
「そうだ……名前何て言うの?」
「え、僕の名前?ん~……」
「なぁ~なぁ~」
「―――それ、僕の名前?」
なんか、猫さんと会話してるの。
おもての性格は全然違うけど真ん中の方は意外と似てるかも。
「うん今決まった。僕の名前は“ナナ”、ナナ・テスタロッサだ!!」
「今ってどういうこと!?それにただの猫さんの鳴き声だったでしょ!」
「何だよ!コイツがつけてくれたんだ、文句言うな!」
「いやいやいや」
「―――名前くれたお礼だ。元に戻してあげるね」
急展開な状況の流れに上手くついていけないの。
その、ナナちゃんは手際よく猫さんを傷付けないようにジュエルシードを切り離して封印した。
「はい」
て、なんでこっちに投げてきたの!?
それを手の上でお手玉してしまったけど、なんとか確保。
「何でって、勝負の報酬」
これから一緒に集めるのに、その辺律儀なんだ。
「んじゃ明日ね~」
えっと、ナナちゃん?はそう言って飛んで去っていった。
結構マイペースな子だったの。
テスタロッサ、ってことはフェイトちゃんと姉妹なのかな。
似てるから私とおうかちゃん、はやてちゃんとあらしちゃんと同じ双子かも。
明日から一緒に。
一人じゃなくなることへの安心感と仲間が出来たことに不思議と笑みが零れていた。
でもあのバカっぽい所に不安も覚えるけど、とりあえず明日なの。
「あれ、ユーノ君は?」
「なのは助けて~」
辺りを見るとユーノ君はさっきの元に戻った猫さんに馬乗りされてペロペロ舐められていた。
ユーノ君、あの時の勇ましい姿はどこにいったの?
翌日なの。
未だに意識が戻らなくて入院し続けているおうかちゃんの代わりに、お店の手伝いをしながらナナちゃんを待つ私。
ナナちゃん、翠屋の場所知ってるよね。
カランカラン
「いらっしゃいませ―――あ!」
「やっほー」
来た。
今日はポニーテールじゃなくてストレートに髪を下しているナナちゃんは手を振って入店してきた。
「お、いらっしゃいアリシアちゃん」
あれ、アリシア?
お父さんがナナちゃんをそう呼んだの。
「こんにちは士郎さん。今日はシュークリーム買いにきたんじゃないんです」
「そうなのかい?でもごめんな、まだおうかは……」
「実はなのはと話しをしにきただけなので」
「なんだ。今日のなのはの相手の子ってアリシアちゃんだったんだな。じゃああっちの空いてるテーブル使っていいよ」
「ありがとうございます―――行こ、なのは」
???
雰囲気がナナちゃんじゃないの。
フェイトちゃんでもなければ、私はアリシアちゃんって子は知らない。
でも私が約束した相手はナナちゃんで。
なのに来たのはナナちゃんやフェイトちゃんと瓜二つなアリシアちゃんって子で。
でも約束のこと知っていて。
私はアリシアちゃんとは初めて会うはずなのに私のこと知ってるみたいだし。
「どうしたの?」
「あ、えっと、アリシアちゃんと私は会うの初めて、だよね?」
「え?……あ、あ~」
アリシアちゃんは額を抑えて、一言ゴメンって言った。
「そうだ、私はまだなのはには直接“会ってはいなかったんだ”。翠屋来るときはいつもアリシアだったからいつもの調子で来ちゃった。ちょっと待ってて」
どうゆうことなの?
直接会ってはいなかったとか、言葉の意味自体理解が出来ないの。
私が混乱している中、アリシアちゃんは目を閉じて少し集中し始めた。
すると。
「お待たせ、なのは」
え?
急に雰囲気が変わったの。
しかもこの雰囲気はよく知っている。
「フェイト、ちゃん?」
「正解」
アリシアちゃんがフェイトちゃんになった。
つまりアリシアちゃんはフェイトちゃんだったのかとか、じゃあいまここにいたアリシアちゃんはどうなったのとか色々疑問が浮かんだ。
えーと、今目の前にいるのはフェイトちゃん、さっきまで目の前にいたのはアリシアちゃん、今日約束を交わしたのはでナナちゃん。
ますます訳がわからなくなってきている。
「簡単に説明するから、座ろ」
ロングヘアーをリボンで二つに分けて、いつものツインテールになったフェイトちゃんが私の向かいに座ってケーキを食べながら説明中。
「多重……人格?」
「簡単に説明すると、そう」
「じゃあナナちゃんもその一人なの?」
「う~ん……そこはまた説明が難しいんだけど……」
アリシアちゃんとフェイトちゃんは双子の姉妹って訳じゃなくて、同一人物。
二人の仲では姉妹っていう定義らしいけど。
その中でアリシアちゃんっていう人格とフェイトちゃんっていう人格が一つの体に共存してる。
ただ、ナナちゃんに関してはまた違う事情があるみたい。
また別の人格であることは確かみたいなんだけど。
「また、ナナ?が説明してくれると思う」
ナナちゃんの名前を言う時の疑問形が気になったけど、つまりはフェイトちゃんもよくわかってないのかな。
いやそんなことより、約束の本幹、これからのジュエルシード集めについて話すの。
「で、フェイトちゃん。今後のことなんだけど……」
「そうだった。ついてきて」
自然にごちそう様をして普通に席を立ち、そのままスタスタとフェイトちゃんはお店の外に出てっちゃった。
ちょっちょっちょっ、マイペースすぎるの!
下手したら食い逃げの行動にあっけにとられた私はわたわたと焦りテンパる。
「フェイトちゃんのケーキは奢りでいいし、なのはも行ってきていいよ」
お父さんがそう言ってくれて私は安心し、フェイトちゃんを追いかけるべくいってきますと声をかけ、エプロンを脱いでお父さんに預け一目散に外へ出た。
待ってよ~!
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9話目。しばらく主人公は目覚めません(笑)
代わりに彼女が登場!でも、でも、でも、書き進めて行けば行くほどやっぱりモデルとかけ離れていく。
仕方ないじゃない!
勝手に動いちゃうんだもん!!!
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