No.606361

真・恋姫†無双 異伝 ~最後の選択者~ 序章ノ二

Jack Tlamさん

『真・恋姫†無双』を基に構想した二次創作です。
無印の要素とか、コンシューマで追加されたEDとか、
その辺りも入ってくるので、ちょっと冗長かな?

無茶苦茶な設定とか、一刀君が異常に強かったりとか、

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2013-08-07 21:48:16 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:6693   閲覧ユーザー数:5212

序章ノ二、『去りし日々 ~一刀編~』

 

 

「――で、俺は何が哀しくて男二人で街に繰り出してうろついてるんだ?」

 

聖フランチェスカ学園から然程離れていない繁華街。メールで及川に呼び出された俺は、真昼間から二人でうろついていた。この

 

繁華街は賑わっているが、学園の生徒は殆ど見かけない。今は夏季長期休暇中で、普段は寮生活をしている生徒達は実家に帰って

 

いるか、夏期講習で寮と校舎を行き来する生活を送っている者が殆どだ。それに、まだ共学になってから一年と少し。元々お嬢様

 

学校である聖フランチェスカなので、生徒がこうして街に繰り出すケースというのは多くはない。

 

況して、良家の息女も多い学園なのだ。心理的にも女子生徒には難しいだろう。まあ、男子生徒にはあんまり関係ないけどな。

 

「固いこと言うなや、かずピー。ワイかて彼女とデートしたいわい」

 

お互い彼女持ちであるにも関わらず、何故こうして男二人で街に繰り出してうろついているか。その答えを愛すべき悪友・及川に

 

問い質したが、はっきり言ってイラつく答えが返ってきた。デートしたいならすれば良い……俺は何のために呼び出されたんだよ。

 

イラつきを抑え込みながら、言葉を返す。

 

「じゃあデートすればいいじゃないか。お互い彼女持ちなんだからさ」

 

「あの子、今実家帰っとんねん。親戚皆の集まりがあるからーゆうて、一昨日帰ったさかい。せやから、かずピー誘ったんや」

 

「お前、彼女出来てからも妙に付き合い良いよな」

 

「かずピーは男やからな、浮気の心配しのーてすむゆうて、あの子も容認してくれるっちゅうわけや」

 

浮気の心配がない――確かにそうだ。しかし及川の奴、話を聞く限り最近あまりデートをしていないような気がするんだが……?

 

「お前、最近あんまりデートの話とか聞かないけど、どうしてるんだよ?」

 

「あんな、ワイらかて四六時中くっついとるわけちゃうわ。彼女出来たからーゆうて、そんな節操も無い」

 

「えー……」

 

及川に「節操」なんて言われた。こいつ前の彼女に振られてから二十名を超える女子に告白しまくった挙句、悉く撃沈したくせに。

 

幸い学外で出会った子と上手くやれているとはいえ、こいつにそんなことは言われたくなかった。

 

「かずピーかて他人のこと言われへんやん。同棲やで、同棲。しかもあんn――フゴッ!?」

 

「その辺にしとけ。朱里には祈祷師染みた力があるから、お前の頭上に雷を落とすくらいのことはやりそうで怖いからな」

 

「んなアホな」

 

主に俺が巻き添えを食いたくないという理由で及川の口を塞ぐ。

 

 

 

――まあ、二十人どころじゃない嫁が居たりした俺が言っても、説得力なんてまるで無いが。

 

 

あの外史からこの世界に帰還して1年の月日が経った。

 

一度はこの世界に戻って来ていた筈――いや、何度か戻ってきていたのかもしれない。だが、俺は何度も何度も繰り返される外史、

 

めくるめく輪廻の円環の中を彷徨い続けることになった。何故そうなったのかは、今以てわからない。

 

 

最初の外史では統治者となり、英傑達を操って俺を殺そうとした謎の敵と戦い、物語を終えた。

 

蜀の外史では指導者として皆を率い、天下三分の計を成し遂げた。

 

魏の外史では主君と共に覇道を歩み、歴史の流れを変え過ぎてしまったために一足早く次の輪廻に飛ばされた。

 

呉の外史では大切な人を次々に失いながらも、乱世を駆け抜け、家庭を築いた。

 

後、他にも何かあった気がするが……考えないでおこう。

 

 

孫策――雪蓮が命を落とした時、脳裏に瞬いたのはかつての記憶。俺はこの時、全てを悟ってしまった。俺の目の前で雪蓮が命を

 

落としたこの展開ですら、幾度となく繰り返された物語の一部に過ぎないのだと……微妙な変化こそあっても、同じような歴史が、

 

同じような物語が限りなく繰り返される世界。

 

その無意味さを悟った時、俺は狂った。精神崩壊寸前まで行ったと思う。だが僅かばかり残った理性でどうにか自分を繋ぎ止めて

 

居た時に現れた貂蝉との対談が、俺に福音を齎した。あの時、貂蝉が現れてくれなければ、遠からず俺は完全に狂っていただろう。

 

貂蝉はこう言っていた。

 

 

『外史は望まれる限り無限に新生し続けるの。それがどのような形であれ……ね。この外史の主はご主人様だけど、外史の新生は

 

 物語が終端を迎える度に……ご主人様が規定された終端に立てば、再び突端へと繋がるようになっているの。そこにご主人様の

 

 意志は殆ど反映されないわ。プロットに従って動かざるを得ない……』

 

 

プロット――かつて『始まりの外史』で于吉が言っていたことだ。

 

ならば……俺があの時外史を脱することも、再び外史へと迷い込むことも、そして永遠とも思えるほどに輪廻の中を彷徨うことも。

 

その全てが規定されていたというのか?

 

その質問にも、貂蝉は答えてくれた。

 

 

『全部が全部そうではないわ。始まりの外史の中で、ご主人様が外史を去るような物語にならなかった場合もあるの。後は皆して

 

 外史を越えた時なんかもそうね。でも、繰り返すこと自体は規定されてしまっているわ。そしてその度にご主人様も、他の皆の

 

 記憶もリセットされ、再び物語を繰り返す……』

 

 

愕然とした。俺は、途方もない修羅を背負いながら、それを忘れて繰り返し続けていたというのか。自分で真相に辿り着いたとは

 

いっても、やはり管理者である貂蝉から告げられるそれは全く重みが違った。俺は再び狂いそうになったが、直後の貂蝉の言葉が、

 

俺の思考を吹き飛ばした。

 

 

『ご主人様が真相に気付いた……これは輪廻の終焉を意味するわ。『天の御遣い』としての役割を終える時が、とうとう来たのよ。

 

 周囲に居る『超越者』……この場合は孫権ちゃん、陸遜ちゃん、甘寧ちゃん、孫尚香ちゃん、周瑜ちゃん……この五人ね。あの

 

 子達も遅かれ早かれ気付いてしまうわ。心の準備をしておきなさい。おそらく、劉備ちゃんの許にいる誰かが、真相に気付いて

 

 近いうちに接触してくる筈よ……いえ、最初にあなたと一緒に外史を越えた子が気付く筈』

 

 

最初に俺と一緒に外史を越えた者――朱里。この外史において『諸葛亮 孔明』としての役割を規定された少女。

 

俺はすぐ動こうとした。だが劉備――桃香達は弔問の使者こそ送ってきたが、同盟については孫権――蓮華の人柄がわからないと

 

いう理由で破棄されてしまい、接触は叶わなかった。

 

そのまま孫呉は呂布――恋との戦闘に入り、桃香達の所まで落ち延びた恋の引き渡し要請に応じなかった劉備陣営と孫呉との間で

 

起きた戦闘。そしていきなり現れた曹操軍。同盟再締結のために周瑜――冥琳と共に赴いた劉備軍の陣中で、俺は朱里と再会した。

 

その時はまだ朱里は気付いていないかもしれないと思い、同盟の話だけを済ませて建業に引き上げた。

 

そして赤壁の戦いを前に開かれた軍議の前に、漸く俺は朱里と話す機会を得ることが出来た。言葉に気を付けながら会話しようと

 

思ったが、朱里の放った一言で、俺は彼女が真相に気付いていることを知った。

 

 

『――お久しぶりです、ご主人様』

 

 

朱里は、曹操軍が現れた後、同盟のために冥琳と一緒に現れた俺を見て全ての記憶を取り戻したらしい。それ以前は徐々に戻って

 

来る虫食い状態の記憶に苦しめられ、俺と同様に精神崩壊寸前だったという。朱里は貂蝉と接触を持たなかったようだ。

 

同盟破棄の判断を下させてしまったのは自分のせいと言って俯いていたが、そうなるように規定されていたんだと励まし、赤壁の

 

戦いに臨んだ。

 

 

 

そして俺達は曹操軍を打倒した。その後は曹魏の領土を併呑していき、大陸東部を孫呉が、西部を蜀が治めることになって数年の

 

年月が経過した頃――その数年の間に色々なことがあったが、俺は蓮華をはじめ、複数人との間に子供を儲けていた。連日の政務

 

やら何やらで慌ただしい日々を過ごしていたが、朱里が建業を訪ねてきた時、俺はこの外史を去る時が来たことを悟った。

 

 

蓮華達『超越者』は、赤壁の戦いが終わった後に真相に気付いていたので、悲しみはしたが、理解してはくれた。けれども他の皆、

 

つまり『超越者』ではない皆に説明するのにはひどく苦労した。それはそうだろう――共に乱世を駆け抜け、家庭を築いた存在が、

 

永遠にいなくなってしまう。なまじ雪蓮や冥琳といった大切な存在を失ってきた皆にとって、それは一層堪え難い現実だった筈だ。

 

祭は三日も無言になったし、明命は三日も顔を泣き腫らしっぱなしだったし、亞莎に至っては三日も何も口にせず、部屋でずっと

 

泣いていた。

 

それでも、蓮華をはじめ皆の説得により、俺は朱里と共に往くことを許された。

 

孫登ら娘達と別れるのは本当に悲しかったが、俺も父親として涙を見せず、蓮華達も母親として旅立つ俺を笑顔で見送ってくれた。

 

 

 

旅立つ直前、蓮華は『輪廻が終わるのなら』と言って、布で梱包された古錠刀を渡してくれた。赤壁の戦いが終わった後も、俺は

 

部隊を率いて賊に対処したり、劉備軍と連携して五胡の侵攻を度々退けるなど各地で戦っていた。その時に使っていたのが孫家に

 

伝わる名刀・古錠刀だ。嘗て孫文台が用いていたというそれを俺が使うことを許されたのは、小蓮の発言によるものだった。

 

孫呉の象徴とも言える剣・南海覇王は蓮華の腰にある。

 

蓮華だけでなく全員に言われたのだが、俺も孫呉の未来を切り開いた英雄として、また蓮華の夫として相応の風格を持たなければ

 

ならないと言われ、割と焦ったのだが、小蓮が放った一言が全てを解決してしまった。

 

 

『――お母さんが使ってた古錠刀を持ってみれば?』

 

 

俺は思わず孫堅さんの戦友たる祭の方を見やったが、意外にも祭は乗り気で、笑いながらこう言ったのだ。

 

 

『――うむ。これほどの男が息子となったのだ。ならば北郷が古錠刀を腰に佩くことを、堅様も喜ぶじゃろう』

 

 

思春と明命は無言でうんうんと頷いているし、穏や亞莎も特に異を唱えなかった。困り果てた俺は蓮華の方を見るが、

 

 

『――名案ね。母様も喜ぶわ。シャオ、よく思いついてくれたわね』

 

 

蓮華にそう言われては、ぐうの音も出なかった。

 

 

そういうことがあって、古錠刀はあの外史からこの世界へと持ち帰ってきた。今は我が家の押入れの奥で、木箱に納められている。

 

銃刀法に引っかかって没収されるのは嫌なので、秘匿することにしたのだ。時折取り出しての手入れは怠っていないので名刀たる

 

風格は失われておらず、俺には勿体無いくらいの威厳を放っている。

 

俺にとっては義母に当たる人の遺品の一つ。俺があの外史に確かに存在し、生き抜いたという証。それを持って泰山神殿に赴くと、

 

あの鏡があった。

 

否定派管理者の連中が邪魔をしてくるかと思いきや、出てこなかった。泰山まで同行してくれた貂蝉も、頂上に着いた途端に姿を

 

消していた。これで最後の別れとなるだろうに、挨拶もしていかないとは……意外だったが仕方ない。

 

鏡の使い方は分かっていた。二人でそれを持ち、この世界の情景を念じる。加速する光が俺達を包み込み――気が付くと、俺達は

 

聖フランチェスカ学園の中庭で倒れていた。嘗てこの世界に戻って来たときとは違い、俺の方が先に目を覚ました。傍らの朱里も

 

程無くして目覚め、俺達は学園を後にした。

 

暫く使っていた住まいはそのまま残っていたので、俺達は再びそこに住み、聖フランチェスカの学生として日々を過ごしている。

 

 

「――なあ、聞いとるか、かずピー」

 

不意に及川の声が聞こえて回想が中断される。とはいえ直前までトリップしていたので、俺の反応は思ったよりも随分と遅れた。

 

「……ん?」

 

「ん?やあらへんて。こっちがずーっと喋っとんのに、反応の一つも返さんと、何考えとったんや」

 

「あ、ああすまん。ちょっとトリップしてた。それで、何の話だ?」

 

「何時デートしとるんかっちゅう話やろ」

 

先程迄の回想に比べてえらく軽い話だった。気持ちを切り替え、俺は話に応じる。

 

「ああ、そうだった。俺達は自宅で一緒に生活してるし、休日は二人で出掛けたりするから良いけどさ、お前のそういう話は最近

 

 聞かないなと思ってな。お前は寮暮らしだし、彩萌さんにしたって家がちょっと遠いから、結構大変だろう?」

 

「……なあ、笑わずに聞いてくれへん?」

 

「ああ」

 

何やら事情がありそうだ。しかし「笑わないでくれ」という及川の要請こそ、爆笑要素があることを証明する何よりの証拠になる。

 

「……前にな、デートでま○だ○け行ったんや」

 

「……で?」

 

既に俺の肩は震えている。悪いな、及川。数瞬の後、俺は爆笑するだろう。下唇を噛みしめ笑いを必死でこらえながら、俺は続く

 

及川の言葉を待った。

 

 

 

「――あの子、腐女子やったんや……」

 

 

 

「……」

 

これは笑えなかった。及川の話なのに笑えなかった。俺の方にも思い当たる節があり過ぎたからだ。

 

「それ自体はええよ?ええんやけど、その後が問題なんや。あの子、ワイに小説見せてくれはってん。自分で書いたモンなんやと。

 

 で、その内容っちゅうのが問題だったわけや……」

 

「……」

 

思わず唾を飲み込む。及川の口から語られる衝撃の事実とは――

 

 

 

 

「――ワイと……かずピーを……題材に……した……BLやったんや……やったんや……」

 

 

 

 

その途切れ途切れの言葉が、事態の深刻さを如実に物語っていた。

 

「なんだってぇーーーーーーーーーぇえーーーーーーーーーぇっ!!!????」

 

妙に裏返った絶叫が俺の口から迸る。

 

「それ見てからなあ、ワイ、彼女との距離を測りかねとるんや!どないしよ、かずピー!?」

 

「俺に訊くなよ!」

 

まさか、俺と及川を題材にしたBL小説が存在していたとは。世の中は広いものだ。しかし、ノンケの俺にはたまったものではない。

 

「それで俺と一緒に居たら、益々彼女が暴走するだろうが!それは考えなかったのかよ……ハッ!?お前まさか、本当に……!?」

 

「……………変なこと言わんといてくれや!ワイはノンケなんや!」

 

当然だ。そうでなくては困る。俺が。主に朱里関係で。

 

 

 

――ん?今及川の奴、三点リーダ五回分くらいの間を置いて反応したな……ッ!?

 

 

 

「想像したのかよっ!?」

 

「思わずや、思わず!」

 

「なんてものを想像してくれてんだよお前はーっ!?」

 

戦場に身を置いていた時よりも修羅場かもしれない。恐るべし、BL――八百一の脅威。はっきり言って怒った華琳よりも怖いぜ。

 

一方、及川は急に黙ってしまった。

 

「……おい、及川?」

 

「……ポッ」

 

「何故に頬を微かに染め、顔を背けるか」

 

その微妙に熱い横目をやめれ。

 

 

その後数分が静かに経過――俺達は互いに言葉が見つからず、会話の切欠を見失っていた。

 

「……な、なあかずピー……もうええ時間やし、帰った方がええんちゃうか?朱里ちゃん待っとるで」

 

時間という切欠を漸く掴んだらしい及川の言葉が耳に届くと同時、ポケットに入れていた携帯が振動する。俺は家の中でなければ

 

常時マナーモードだ。いきなり鳴り出すと割と迷惑だったりするからな、特に電車とかバスの中。だから着信はほぼバイブレータ。

 

着信音?ああ、『黒電話』に設定してあるよ。

 

開いてみると、

 

 

『――夕飯の支度がもう少しで終わります。なるべく早く帰ってきてくださいね』

 

 

とのメールだった。

 

「丁度良いタイミングで朱里からのメールだ。夕飯の支度がそろそろ終わるみたいなんで、俺は帰るぜ」

 

「おう、はよ帰ったれや幸せもん」

 

「ああ、じゃあな!」

 

まあ、こんな会話が出来るのも平和だからだな。戦場に長く生きた身としては、それがどれほど有り難いものか身に染みてわかる。

 

そんな平和な街中を、俺は旋風のように駆け抜けていった。

 

 

あとがき(という名のなにか)

 

 

はい、飛ばしてしまいました。Jack Tlamです。

 

及川君がせっかく出てくれるので、ここはお互いの彼女が両方腐女子という設定を

 

ぶちかましてみました。

 

 

…予想外にひどいことになったorz

 

 

一刀が今作で使う武器は古錠刀だけではありません(むしろ古錠刀は使用頻度「低」)

 

 

なんかいろいろすいませんでした。

 

 

では、次回からいよいよ本編に入ります。

 

四人目の登場人物は誰か?


 
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