この作品はキャラ設定が崩壊しております。原作重視の方はご注意ください。
オリジナルキャラクターが登場します。
時代背景などもめちゃくちゃです。
一刀くんがチート的な強さです。
それでも良い方はどうぞ。。。
鴉が去りその場に残された一刀、凪、貂蝉、卑弥呼の四人は互いの顔を見合うと、それぞれの得物を収めた
貂蝉「二人とも色々訊きたいでしょうけど、こんなところで立ち話もあれよね?」
一刀と凪の二人は、貂蝉と卑弥呼に色々聞きたいことがあったが、貂蝉のこの一言により、開きかけた口を閉じ頷き返すこととなった
~一刀side・始~
貂蝉、卑弥呼と名乗った二人の人物の話をまとめると、鴉は俺と同じようにこの世界ではない世界から来たらしい。そして、俺たちには想像もつかないような特殊な能力を持っていることや極度の変態であることなど。二人が知っているであろうことを全て教えてもらった
凪の前だからだろうか。二人はこの世界…外史という世界と管理者というものについて触れることは無かった。俺自身、その話題について二人が話し始めない限りは触れようとも思っていなかった
凪「危険……ですね。華琳様にも報告したほうが」
「そうだな。だが魏の全員がこの話を信じるとも思えない…。話すのは華琳だけにして、全員に話すかどうかは華琳に任せたほうがいいだろうな」
凪「ですが、そうすると有事の際に対応が遅れるかもしれません…」
「そこは俺たちが頑張ればいいだろ」
俺が凪のほうを見ながらそう言うと、凪は考え事をするように俯き黙ってしまった
自信が無い…といったところだろうか。それもそのはずだ。敵の戦力や実力が把握できてないのに、自信を持つことはできないだろう。それに…
凪「少なくとも、私と、一刀さん並みの実力を持つ貂蝉、卑弥呼の三人の攻撃を捌くだけの実力があるのは確かです」
そう。俺と凪の二人は動揺していたとはいえ、貂蝉、卑弥呼の二人の攻撃を鴉は俺に話しかけながら受け流していたのだ。貂蝉も卑弥呼も決して弱くは無い。むしろ、この大陸内で勝てるやつがいるのかという領域の実力者だ
「今ここで悩んでても仕方ないな。なるべく早く魏に戻るとしよう」
凪「はい」
迷いを振り払うような俺の言葉に凪も頷き返してくれる。今は呉への使者をさっさと終わらせてなるべく早く魏へ戻るとしよう
~一刀side・終~
鴉「さて~。あの二人はどうなってるかな~?」
そう言いながら辺りを見回している鴉は、左慈と于吉を置いてきた場所へと来ていた。まるで楽しいことを探すような表情で辺りを見回している鴉
左慈「どうも何もあるか…この糞蟲」
于吉「いや~。かなり苦しかったですね左慈。しかし、あの苦痛も左慈の愛と思えば…」
鴉「おぉ! 二人とも無事で何よりだよ~」
相当暴れまわったのか、左慈と于吉の服はボロボロになっていた。そんな二人を歓迎するかのように鴉は両手を広げて二人を出迎えた
左慈「ふん。貴様としては死んでから傀儡として蘇らせたほうが良かったんじゃないのか?」
擦り寄ってくる于吉を鬱陶しそうに振り払いながら、横目で鴉を睨む左慈
鴉「いやいや、傀儡は所詮傀儡。生きた人間みたいに成長させにくいものなんだよ」
左慈「そういうものなのか」
于吉「そういうものなのですよ。能力面を強化出来ても、意思の無い人形では経験が蓄積されませんからね」
左慈が鴉から于吉へと視線を移すと、于吉はわざとらしい溜め息を吐きながら肩を落として首を振った
鴉「さて、次の目的だけど…。いよいよ拠点を手に入れたいと思いま~っす!!」
于吉「おや? いままで宿泊していた宿屋の一室ではだめなのですか?」
鴉「それでもいいならいいけど…これから兵力を増やしていくことを考えるともっと大きいほうが便利じゃない?」
左慈「確かにな。それで、どこを拠点とするんだ?」
左慈の質問に対し鴉は笑顔を浮かべ、とある方向を指差す
鴉「五胡だよ。あそこは力こそ全てだからね。左慈くん辺りが現頭領をご自慢の腕っ節でズババーンとやっつけてくれれば」
大袈裟なジェスチャーと共にそう言った鴉に、左慈は不敵な笑みを浮かべた
左慈「五胡か。あそこの力こそ全てといった考え方は好きだ」
于吉「五胡滅ぼすべし」
鴉「嫉妬でこれから利用する勢力滅ぼそうとしないで貰っていいですか、于吉さん……」
三人は無駄話をしながらゆっくりと歩きながら、五胡へとむかった
一刀「はぁ……ようやく着いたって感じがするな」
凪「はい。すぐに城へ向かいますか?」
一刀「いや、急がなきゃいけなきゃいけないんだろうけど、少し休んでから行こう。久しぶりに寝台で寝たいよ」
そう言って溜め息を吐いた一刀を見た凪の顔に、自然と笑顔が浮いてきた。長い時間を、二人きりで過ごした一刀と凪の距離は確実に近づいていた
凪「ではまず宿を探しましょう」
一刀「飯よりも宿。旅の基本だな」
そんな一刀の言葉とは逆に二人の宿探しは、予想に反して難航した
宿主「二部屋? え~…っと」
二人は宿主が空き部屋を調べる様子を黙ってみていた。だが、二人の表情にはどこか諦めにも近いものが浮かんでいた
宿主「一部屋しか空いてないね~」
凪「そうですか…」
凪は宿主の言葉に肩を落として一刀のほうを見た。二人がこの言葉を言われたのはすでに数十回目であり、ここが最後の希望でもあった
一刀「どうするかな…。この辺りで二部屋くらいあいてそうな宿屋ってありますかね?」
宿主「いや~。俺には思い当たらないな。何せ今日は祭りだから…むしろ一部屋以上空いている宿屋を探すほうが難しいんじゃないかな」
宿主の言葉に一刀は思わず苦笑した。これまで訊ねてきた宿屋は、どれも一部屋だけ空いており、どこの宿主も同じようなことを言っていた
一刀「う~ん…」
一刀が何か手はないかと悩んでいると…
凪「その部屋に寝台はいくつありますか?」
突然凪が宿主にそう尋ねた
宿主「二つちゃんとあるよ」
凪「ではその部屋で」
一刀「凪さん!?」
驚いた表情で凪を見る一刀。しかし、凪はそんな一刀を意に介さぬかのように宿主から部屋の鍵を受け取っていた
凪「空いていないものは仕方ありませんから…行きましょう」
一刀「確かにそうかもしれないけどさ…」
宿主「ごゆっくりどうぞ~♪」
笑顔の宿主に見送られつつ、凪と一刀は部屋へと向かった
凪「ふぅ……」
一刀「疲れた…」
部屋へつくなり寝台に横たわる一刀と凪。しばらくの間二人は黙って寝台に横たわっていた
一刀「飯…食いに行くか」
凪「はい!!」
一刀の言葉に反応し、勢いよく起き上がった凪が元気な返事をする。そんな凪に少し驚きながらも一刀は凪に笑顔を向け、二人は祭りで賑わう街へと繰り出した
~凪side・始~
私は今まで様々な経験をしてきた
だが、その中のどんな経験を思い出しても
今日ほど緊張している日はないだろう………
一刀「この店にしようか」
そう言って一刀さんは歩みを止めて私の方へと振り返る。私は黙って頷き返すと、一刀さんが腰掛けた机の一刀さんのちょうど向かい側となる椅子へ腰掛けた
一刀「それにしても、さすが呉の本城がある建業。賑わってるね…出来れば祭りじゃない日に来たかったところだけど」
苦笑する一刀さんの顔を今の私は直視することが出来なかった。活気に溢れた声もどこか遠く、私の頭の中はただ…
「(ど、どうしよう…一刀さんと一緒の部屋で寝る…)」
そのことばかりを考えていた
正直自分でも驚いていた。気がついた時には宿主から部屋の鍵を受け取っていて…
「そ、そうですね…」
上手く言葉も浮いてこない…
一刀「……。さてと、何食べるかな」
そんな私のことなど気にもしてないのか、一刀さんは店員を呼ぶと注文を済ませていく
一刀「凪はどうする?」
「え、えーと。じゃあ麻婆で」
一刀さんを直視せずに済むように視線を落としていた品書き。しかし、注文を済ませてしまったからには、品書きをずっと見続けるわけにはいかない
一刀「…………」
一刀さんはこちらを気にすることなく、ただずっと民を見つめているようだった
「私のことも多少は気にしてくれても……」
一刀「ん? 何か言ったか、凪?」
「い、いえ。何も言ってません!」
手を大きく振りながら否定する私に、一刀さんは首を傾げていた
「(あぁ…何をやっているんだ私は…)」
自らの行動に思わず泣きたくなる…
少しすると、注文した料理が運ばれてきた。私と一刀さんは微妙に噛みあわない会話を一旦止めて、料理を食べ始めた
意外とお腹が空いていたのだろうか。私と一刀さんの二人は、決して少なくない量の料理をあっという間に食べ終わり、食後のお茶をゆっくりと飲んでいた
少し間を置いたからだろうか。私の心もだいぶ落ち着きを取り戻し、一刀さんと自然な会話が出来るようになった
???「相席いいかしら?」
そんな時、私と一刀さんの会話に割り込むように声をかけてきた人物がいた。声につられるように顔を上げると
「そ、孫策!?」
驚きのあまり上ずった声を上げてしまう私
一刀「どうぞ。祭りですし、席の確保も大変でしょう」
笑顔を浮かべて席から立ち上がった一刀さんは、私の隣の椅子に座りなおした。孫策は笑顔を浮かべながら席に着き、孫策の脇に控えていたもう一人の人物、周瑜は一礼すると席に着いた
「か、一刀さん…」
私はなんとも言えぬ空気をどうするべきか分からず、一刀さんの上着の裾を引っ張りながら声をかけた
一刀「少し前から俺たちを監視してる人がいたからね、誰かしら声をかけてくるだろうとは思ってたけど…。まさか孫呉の王自ら来るとはね」
周瑜「ほう。監視の目には気がついていたか」
一刀「なんとなくね。それで、わざわざ俺たちと相席したのは、飯を食べるためかい?」
孫策「北郷って人間が気になってねー。直接話をしてみたいなと」
そう言った孫策は目を細め真っ直ぐに一刀さんを見つめていた。相手の何もかもを見透かそうとするかのような視線を、一刀さんはただ黙って受け止めていた
一刀「なるほどね。孫呉の王としてかい?」
孫策「いえ、孫伯符としてよ」
一刀「質問あるならどうぞ」
周瑜「では、まず今日ここに居る理由は?」
お茶を飲みながら一刀さんがそう言うと、周瑜が一刀さんにそう質問した
一刀「魏からの使者として。まぁ、詳しい話は後日城を訪ねるから…その時にでも」
周瑜「ふむ。では、この大陸…乱世の情勢をどう見る?」
周瑜の一言に一刀さんの目が鋭くなる。しばらくのまま黙って見つめ合っていた二人
周瑜「魏の将ではなく、北郷としての意見を聞きたい」
一刀「まぁいいか」
「一刀さん!?」
思わず立ち上がりそうになった私の肩を、一刀さんの手が押さえていた。私には時々この人が何を考えているのかが分からなくなる
一刀「魏の勢力は、馬騰治める涼州を除いた北方全てだ。現状の兵力や資源のみで考えたとしたら、大陸内で魏に単独で勝つのはどの勢力でも難しい」
周瑜「単独では……な」
一刀「荊州の辺りを呉か蜀が統治出来れば状況は変わってくるだろうけど…。あの辺りはどの勢力も狙ってくる」
周瑜「無理をすればその隙に魏が狙ってくる」
一刀「周瑜ならどうすればいいかとか…もう考えがあるんじゃないの?」
周瑜「どうだろうな」
会話を区切り、周瑜と一刀さんの二人は見つめ合っていた…さっきから孫策や周瑜と見つめ合いすぎじゃないか…
……
………
…………
「行きましょう、一刀さん!!」
胸の中に湧いてきた不快感を隠すこともなく、私は一刀さんに怒鳴っていた。勘定を机に叩き付ける様に置くと、一刀さんの手を掴みその場を離れた
~凪side・終~
孫策「あらら、怒っちゃった」
周瑜「初々しいものだな…」
孫策「冥琳、年寄りくさい…」
周瑜「さて雪蓮。そろそろ城へ戻りましょうか。たっぷりと仕事が残っていますからね」
孫策「え、ちょ、冥琳? うえあああああ」
周瑜に襟首をつかまれずるずると引きずられていく孫策を、民達は笑いながらただ見ていた
手を掴んだまま無言で歩く凪。そんな凪の様子を変に思いながらも、一刀は黙って手を引っ張られていた
凪「いいですか一刀さん。私たちは呉に対して助言をするために建業に来たわけではありませんし、ましてや呉の将と見詰め合うために来たわけではないんですよ」
一刀「いや、別に見詰め合っては…」
凪「見詰め合ってました!! それはもうじっくりと見詰め合ってました!!」
一刀「ご、ごめんなさい」
凪「まったく…」
凪のご機嫌をなんとか良くしようと、一刀は視線を周りの屋台へと向けた。そして、一つの屋台に目をつけると
一刀「なぁ、凪。あそこの肉まん買わないか?」
そう凪に声をかけながら、屋台を指差す一刀
その屋台に書かれた『辛口肉まん』の文字につられたのか、凪は黙ったままその屋台へ向かった
一刀「(手は繋いだままなのね…)」
おじさん「いらっしゃい。ウチの肉まんは美味しいよ~」
一刀と凪の二人が屋台の前に立つと、おじさんが元気よく二人に声をかけた
おじさん「お、お兄さん。可愛い恋人連れてるね~」
凪「こ、恋人…///」
おじさんの言葉に、凪は赤面しながらあらためて自分と一刀が手を繋いでいることを認識する。瞬間、思わず手を話しそうになるのを凪は必死に抑えた
一刀「いや、俺たちはそんな―いたっ!」
一刀がおじさんの言葉を否定しようとすると、おじさんからは見えない角度で凪のローキックが一刀の太ももを捉えた
驚きながらも凪のほうを見た一刀の事を、凪は頬を膨らませながら睨んでいた
一刀「(な、なんで俺睨まれてるんだ…)」
凪「辛口肉まんを二つ」
おじさん「はいよ。あれ? こりゃ困ったな…」
凪の注文を受けたおじさんは、肉まんの在庫を確認すると申し訳なさそうな表情で
おじさん「辛口肉まんはあと一個だけみたいなんだ。普通の肉まんならあるんだけど…」
一刀「じゃあ、辛口肉まん一つと普通の肉まん一つください」
おじさん「すまないね。お詫びにゴマ団子付けとくよ。ほい」
一刀がおじさんに代金を渡すと、おじさんは袋を一刀に渡した
おじさん「ありがとうございやーしたー」
おじさんの声を背後に聞きながら、凪と一刀は再び街中を歩き出したのだが…
一刀「手を放してくれないと、俺肉まん食べられないんだけど…」
左手を凪につかまれ、右手を肉まんが入った袋に塞がれている一刀は凪にそう話しかけていた
凪「そう…ですね」
少し残念そうにそう呟いた凪。ゆっくりと一刀の手を放すと、一刀から辛口肉まんを受け取り
凪「こうすれば、袋を持って肉まんを食べられますね」
そう言いながら一刀の腕に自分の腕をからめた
一刀「っ///」
一刀の腕に柔らかな感触が押し付けられ、一刀は思わず息を呑んでしまう
そんな一刀の様子を嬉しそうに見つめながら、辛口肉まんを食べる凪に、一刀もどこか嬉しそうな笑顔を浮かべながら自分の分の肉まんを食べ始めた
祭りを満喫した二人は、日が落ちると部屋へと戻っていった。祭りを楽しんでいた二人は完全に失念していたのだ…一緒の部屋で寝泊りしなければならないということを…
凪「ぜ、絶対に見ないでくださいね!」
一刀「わかってるよ。そんなに俺信用ないかな…」
ぶつぶつと文句を言いながら凪に背を向けて目を閉じる一刀。凪はそんな一刀を警戒しながら着替えを始めた
一刀「(3.14159265368979323846……)」
耳から入ってくる服のこすれる音に、思わず変な妄想をしそうになった一刀は、なんとか考えを別のほうへ向けようと必死になっていた
凪「もういいですよ一刀さん」
一刀「あ、あぁ」
凪は着替え終わると一刀にそう声をかけ、一刀と同じように背を向けて目を閉じた
凪「(うぅ…緊張する…)」
一刀「もう大丈夫だよ」
凪「は、はやいですね」
一刀「そうかな? とりあえず寝ようか。今日は疲れた」
凪「そうですね」
短い会話を終えると、部屋の明かりを消し一刀と凪は寝台に寝転んだ
暗い部屋の中で、一刀と凪の二人はただ黙って天井を見上げていた。お互いに話したいことがあったのに、話す機会を見つけることが出来ずにいた
一刀「…っ。またか」
そんな中、一刀がふと口を開いた。苛立ちを含むその声色につられるように凪は一刀のほうを向き…
凪「一刀さん…それは…」
ゆっくりと寝台から起き上がり、そう口にした凪の視線の先では、一刀がどこか苦しそうにしながら、今すぐにでも消えてしまいそうな左腕を見ていた
一刀「初めて見る……って感じじゃないね。そりゃそうか」
凪に優しく微笑みかけながら、一刀は近くの机に置いてある水筒を、左手でとろうとした
凪「あ……」
しかし、一刀の左手が水筒を掴むことはなく、まるでそこに手など存在しないかのように、水筒は一刀の左手をすり抜けた
一刀「今のところ戦場ではないけど…発作みたいにこうしてたまに起こるんだ…まぁ、本来ならもうこの世界に俺はいなかったかもしれないんだけどね」
その言葉に、俯きかけた凪の顔が上がる
一刀「凪なんだろ? 鴉から箱を渡されて、開けたの…」
一刀の言葉に凪はただ頷き返すだけだった。そんな凪に一刀は困った様な表情を浮かべると、再び寝台に寝転がり
一刀「寝るか」
そう呟いた
しばらくして、一刀から寝息が聞こえてくると凪は寝台を出て、一刀の側へと近づく
凪「一刀さん?」
声をかけても反応をしない一刀を見て、凪は一刀の寝る寝台にそっと腰掛けた
凪「きっと…一刀さんは聞きたかったんですよね…。私が鴉から箱を貰っていたのか…そして、その箱を開けたのか…」
俯き、肩を震わせながらも凪は続けた
凪「私は確かに、さっきのを見たことがあります。その後に…鴉から黒い箱を受け取りました。その箱を開ければ一刀さんが助かる…私にとっては…」
肩越しに一刀を見た凪は、一刀の背中に寄り添うように寝台に横たわる
凪「私にとっては、この世界も…一刀さんも…どっちも大切で…。でも、一刀さんが消えそうになってるのを見たら…」
その光景を思い出したのか、涙目になりながら一刀にさらに寄り添う凪。いつの間にか、一刀の背中にそっと額を当てていた
凪「私は、一刀さんも、この世界も守って見せます。どんな敵が相手でも…」
そのまましばらくじっとしていた凪が、今度は一刀の体を確かめるようにさわり、抱きしめた
凪「好きです…一刀さん。愛してます。……寝ている時に言っても伝わりませんよね…」
自嘲気味な笑顔を浮かべる凪
一刀「いや、伝わってるよ…恥かしいくらいに…」
凪「な、なななな。か、一刀さん!?」
自嘲気味な笑顔から一転、頬を真っ赤に染めて慌てだす凪
一刀「あはは……」
そんな凪の反応に困ったような笑顔を浮かべる一刀、互いの表情は見えないが、お互いに鼓動が速くなっていることは感じていた
静かな時間が過ぎる。恥ずかしさから、凪が寝台から出ていくと考えていた一刀であったが、一向に寝台から出ていこうとしない凪に、少し動揺していた
凪「好きです…一刀さん。本当に好きなんです…」
この状況で意を決したのか、凪は一刀の背中に手を当て、力強く一刀の服を掴んだ
一刀「凪が開けてくれたんだな…あの箱」
凪「はい。鴉からあの箱を開ければこの大陸中の人が不幸になるということも聞きました。でも、城壁の上で一刀さんの腕が消えているのを見て…私は…」
今まで溜め込んでいたものを吐き出すかのように、凪の言葉は続く
凪「私は…、この大陸中の人が不幸になったとしても…一刀さんに傍に居てほしかった。一刀さんの居なくなった世界なんて、今の私には考えられないから」
背中で服を掴んでいた凪の手がゆっくりと動き、一刀のことを背後から抱きしめる
一刀「大丈夫だよ…」
凪の手にそっと自分の手を添える一刀、僅かに震えていた凪の手を、凪のことを落ち着けるためにも
一刀「誰も不幸になんてさせないさ。だって俺や凪、華琳や魏のみんなが居るんだからさ」
凪「…はい」
しばらく二人はその体勢のままじっとしていた。すると、凪から寝息が聞こえ始めた
一刀「この状況で寝れるのか……俺、寝れるかな?」
未だに治まらない鼓動に苦笑を浮かべながら、一刀も目を閉じるのであった
翌朝
凪「な、ななななななな。なんで私と一刀さんが同じ寝台に!?」
一刀「あ、おはよう凪」
凪「おはようございます、一刀さん。って、そうでなはなく!」
慌てて一刀から距離をとった凪は、自分の身体を一刀の視線から隠すようにすると
凪「何も…してないですよね?」
一刀「何もしてないよ…」
凪「何もしてくれなかったのですか!!」
一刀「どうすればいいんだよ!」
凪「う~…」
恨めしそうな表情で一刀を睨み続ける凪。しばらくの間、二人の間に沈黙が流れ
凪「はぁ、意気地なし…」
そんな凪の一言が沈黙を破り、一刀はがっくりと肩を落とした
~凪side・始~
朝食を済ませた後、私と一刀さんは孫呉の本城へと向かった。その城はとても立派で、そして…
「攻められた時のこともしっかり考えられてますね……」
思わずそんなことを私は呟いていた。すると、隣にいた一刀さんが小さく笑い
一刀「凪も将軍らしい思考になってきたね。いいことだ」
「ありがとうございます」
一刀さんに褒めてもらえると、素直にうれしく思う。そして、もっとこの人に認めて、褒めてもらいたいと思う私がいた
少し歩くと、城門の前に人が立っているのが見えた。雰囲気や着ている衣服からして、兵卒ではないようだが…
一刀「これはこれは、お出迎えにしては立派すぎる人がいるな…」
そう言って不敵な笑みを浮かべる一刀さん。今では城門の前に立っている人物の顔もはっきりと見えるが、私にはその人物が誰かがわからなかった
???「孫策様がお待ちだ。来い」
一切の愛想もなく、無表情でそう告げた一人の女性。身のこなしや雰囲気で只者ではないことは分かる
一刀「お久しぶりですね、甘寧さん。てっきり嫌われているのもだと思ったんですが…。そうでもないのかな?」
甘寧「私は命令に従っているだけだ」
そう言って一刀さんを睨みつける甘寧。鈴の甘寧と言えば、大陸でも有名な武人…そんな人と知り合いだなんて…こんな美人と…
一刀「だろうね」
いつの間に取り出していたのか、一刀さんは自分の武器を甘寧に差し出していた
一刀「ほら、凪も渡して」
「あ、はい」
一刀さんに言われて、私も少し慌てながら甘寧に『閻王』を渡した
甘寧「確かに預かった」
私たちの武器を受け取ると、甘寧は近くにいた兵にそれを預けた、甘寧も兵も私たちの武器を大切そうに扱っているのを見ると、根は悪い人ではなさそうに感じた
一刀「案内、お願いね」
甘寧「…………」
一刀さんに返事をすることもなく、甘寧は背を向けて歩き出してしまう。そんな甘寧を面白そうに見ている一刀さん
なぜだろう……胸の奥が騒めく……
甘寧の後ろに続いて、しばらくの間歩いていると、一際豪華な大広間へと通された
そして、玉座にあたるであろう場所には、孫策が座っていた
私たちの前を歩いていた甘寧が脇へとずれると、玉座に座る孫策に一礼して玉座の間を去った
一刀さんが玉座に座る人物に一礼したため、私もその動きに合わせて一礼する
孫策「先日ぶりね、北郷」
一刀「いや、初めましてのほうが適切だと思いますよ。孫呉の王、孫伯符さん…」
柔らかな笑みを浮かべる孫策は、一刀さんの言葉に笑みを濃くしていた
周瑜「確かに、先日街で会った時は孫伯府として、その前は、まだ袁術の配下だったからな」
孫策の脇に控えていた周瑜が一歩前にでる。ふと、私と目が合うと笑みを浮かべてくれた。その笑顔はとても綺麗で、思わず見とれてしまうほどだった
孫策「さて、早速だけど曹操から預かってるもの、見せて頂戴」
私が華琳様から預かった書簡を取り出すと、どこに居たのか、甘寧が私の傍に現れ、書簡を受け取ると孫策へと渡していた
孫策「なるほどね。まぁ、予想通りの内容ね」
そう言って孫策が書簡を周瑜へと渡す。書簡を受け取った周瑜は、その内容に目を通すこともなく丸めると、甘寧へと渡した
孫策「魏に呉が降ることはない」
先ほどとは一変し、威圧感のある眼差しで私たちを見る孫策
一刀「それは魏の兵力を考えての発言ですか?」
その一刀さんの問いに、孫策ではなく周瑜が答える
周瑜「当然」
一刀「魏は呉よりも領土も兵力も多いと思いますが」
周瑜「敵も……な」
一刀さんの言う通り、魏は呉よりも多くの領土と兵力がある。だが、領土が広がったことにより、多数の勢力と隣接することになった…
孫策「二人とも、その辺にしときなさい」
孫策の一言で、周瑜と一刀さんの表情が一気に和らいだ。私にもなんとなくわかっていた、周瑜と一刀さんは遊んでいたのだ、武人同士が軽く手合せするように
孫策「とりあえず、この書簡の内容に関する返事は拒否よ」
書簡を読んだ時とは、また雰囲気が一変する孫策。王としての雰囲気が消え、穏やかで、人を惹きつける雰囲気だ
周瑜「雪蓮……、もう少し王としての振る舞いを」
孫策「この二人には別にいいじゃない。この間、会ってるんだし」
一刀「一応、魏の使者として来てるのですけどね、今日は」
孫策「そう言う北郷だって、随分砕けた雰囲気になってるじゃない」
まるで不貞腐れたように頬を膨らませる孫策。その姿からは、とても孫呉の王とは思えなく、私はどこか親近感のようなものを感じていた
周瑜「まぁ、曹操もこんな書簡で私たちが魏に下るとは思ってないでしょう」
一刀「どう思う、凪」
急に話を振られた私は、少し慌ててしまう
書簡の内容を見たわけではないが、周瑜の言葉を聞く限り、おそらく呉に対して魏に下るよう告げるものだろう
周瑜や一刀さんの言う通り、魏と呉が一対一で対決するとなれば、魏が勝つだろう。しかし…
「はい。華琳様…曹操様が、その書簡で孫呉が下るようなことがあると考えているとは思えません」
呉が魏に対して一対一で挑んでくるとは思えない。現状を考えるに蜀あたりと同盟して、兵力の差を少しでも拮抗させようとしてくるはずだ
一刀「よしよし、分かってるな」
まるで子供を褒めるかのように私の頭を撫でる一刀さん。これは……悪くない
その後、多少の談笑を交えると、私と一刀さんはその場を後にした
なんというか、あまりにも気の抜けた外交だったと思う…
しかし、あの人柄が孫呉の民に、臣下に愛される孫策の魅力なのかもしれないなと、私は感じた
華琳様とは違った魅力。もし華琳様に会う前に孫策に会っていたら…
ふと、そんなことを考えてしまうくらいに、魅力的な人物であった
「でも、それだと…一刀さんとも出会えてないのかな」
一刀「ん? 何か言ったか?」
「いえ、なんでもありません」
思わず呟いてしまっていた内容を、一刀さんに聞かれなかったことを安堵しながら、先を進む一刀さんの隣に並んで歩き出した
~凪side・終~
孫呉への使者を終えた一刀と凪は、急いで魏へと戻った。そして、二人は孫呉の返答と鴉について報告した
華琳「孫呉の返答は予想してたけど…」
凪「いきなりな話で信じていただけないかもしれませんが…」
華琳「確かに、一刀だけでこの報告をしていたら信じてなかったかもしれないけれど、凪からの報告とあれば信じるわ」
一刀「本人を目の前にそういう事を言うかね」
不安げな表情をする凪に笑顔を向ける華琳。そんな華琳の言葉に呆れ顔な一刀。そして、そんな二人のやりとりに、凪は思わず苦笑していた
華琳「とりあえず、この話はしばらく皆にするつもりはないわ。二人も、そのつもりで」
凪「はい」
一刀「わかった」
華琳「秋蘭や霞も明日には帰ってくるでしょうし、近いうちに軍議を開くからそのつもりで」
華琳の言葉に再度一刀と凪の二人は返事をし、二人は玉座の間を後にした
後日、魏の主要な将を再度召集し軍議が開かれた
そして…
華琳「涼州と孫呉を同時に攻めるわ。皆、準備は怠らないように」
華琳の言葉に皆がうなずき返すと、その場は解散となった
華琳「一刀、あなたは話があるから残りなさい」
華琳に呼び止められた一刀を除いて
一刀「涼州制圧を詠と月にねぇ……」
華琳「えぇ。彼女たちはあくまでも一刀の付き人であり、部下だから。もちろん、無理にとは言わないわ」
華琳の言葉に、顎に手をあてて少し考え込む一刀
一刀「わかった。ただし、一つ条件がある」
華琳「何かしら?」
一刀「涼州の統治を月に任せることだ」
一刀の言葉に、今度は華琳が考え込む。そして、考え終わったのか顔を上げると
華琳「いいわよ。涼州攻略に関することはそちらに一任するから、必要な兵数や兵糧は桂花たちと相談して頂戴」
一刀「わかった。話はそれだけか?」
華琳「あと、実際に統治するのは月だけど、名目上は一刀が統治者ということにさせてもらうわよ」
一刀「月がいきなり出てきたんじゃ、反発も強そうだからな。わかった」
一刀の返事に華琳は笑顔を浮かべた。そして、玉座から立ち上がると一刀の隣に並ぶ
華琳と一刀の二人はそのまま並んで玉座の間を後にした
詠「私と月が涼州攻めね…。問題ないわよ」
鋭い目つきでお茶を啜りながら、詠は一刀のほうを見ることもなくそう答えた
一刀「そうか、もう少し渋るかと思っていたんだが」
詠「だいぶ前から話は聞いていたから。月も納得してるし」
一刀が月に視線を向けると、月は深くうなずき返した
月「華琳様が涼州を攻めることは避けようがないことで、それなら涼州の地に詳しい私たちが統治したほうがいいかと思って」
一刀「月はしっかりしてるな」
詠「当たり前でしょ」
月が褒められると、詠は自分が褒められたかのように胸を張った
一刀「この戦は月と詠に任せるつもりだから、荀彧あたりと相談して準備を進めてくれ」
詠「わかったわ。あんたはどうするの?」
一刀「兵士の様子を見てくる。涼州出身の兵士も少なくないからな」
詠「そうね、故郷を攻めるとなると士気に影響があるでしょうから。その辺りも考えなきゃ。月、行こう」
月「うん、詠ちゃん」
詠は急ぎ足で部屋を出ていき、その詠に手を引かれた月は一刀にかるくお辞儀をしながら、二人とも部屋を後にした
一刀「生き生きとしてるな」
そんな二人の、特に詠の様子に一刀は笑みを浮かべていた
どうもkarasuです。
まずはお詫びを
私が投稿した、凪√だけでなく様々な作品においてオリキャラが出ているにも関わらず、オリキャラが出ているといった説明、タグ付けがされていなかったことにより、一部読者の方々に不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます。
本当に申し訳ありませんでした。
さて、いかがだったでしょうか、楽しんでいただけたでしょうか?
また半年ぐらい空いてしまいましたね…すみません。次こそは…と思いながらも気長にやりますww
大佐がたからリクエストいただいた単発ものも書いてますよ。おかげさまでモチベーションは高いです!
では、また次の投稿で………
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
これからもほそぼそと続けさせていただきたいと思います。
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投稿です。
過度な期待はせずに生暖かい目で読んでください。
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