No.605394

ALO~聖魔の剣~ 第11剣 ヨツンヘイム解放

本郷 刃さん

第11剣です。
今回は3姉妹から報酬を受け取るところまですすみます。

どうぞ・・・。

2013-08-05 10:15:32 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:10476   閲覧ユーザー数:9576

 

 

 

 

 

 

 

 

第11剣 ヨツンヘイム解放

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

俺が氷塊を斬り裂く為に回転させながら投げ飛ばした『聖剣エクスキャリバー』は、

重さの割にはゆっくりと落ちていっているように感じる。

一方でトンキーが円盤とのホバリング降下をやめ、落下が停止し、俺達は宙を舞う黄金の剣を見やった。

 

「いつか取りに行くとするか」

「そうだね、その時はわたしも一緒だよ!」

「わたしがバッチリと座標固定をしてみせます!」

 

俺の言葉にアスナとユイはハッキリと同調し、見送ることにした……が、諦めていない者が1人いた。

 

「まだ、終わらせない!」

「……シノン、何を…」

 

その言葉と共にシノンは俺達の前に躍り出、ハジメは彼女の様子に眼を向ける。

勿論、俺達も彼女が何をするつもりなのかそれが気になるが。

シノンは長大なロングボウを構えると銀色の矢をつがえる。

 

「私は、返せていないから…!」

 

彼女はそのままスペルを詠唱し、矢は白い光に包まれた。

その矢を落下するキャリバーの下方に向けて放ち、銀のラインを引きながら駆け抜けた。

あのスキルは確か、弓使い専用の種族共通(コモン)スペル、矢に強い伸縮性と粘着性を持つ糸を付与し、

使い捨てた物の回収や届かない距離にあるオブジェクトを引き寄せることに主に使う魔法である《リトリーブ・アロー》のはず。

だがこの魔法は糸が矢の軌道を歪めたり、ホーミング性がない為に基本は近距離にしか用途がない……しかしだ、

まさか彼女は約200mもある距離の落下しているものに、当てるというのか!?

 

「お、おい、こりゃあ…」

「もしかすると…」

「もしかするかもっす…」

 

クラインとリーファとルナリオがその矢の軌道と成り行きを見守りながら呟く。

勿論、アスナとユイも静かに矢を見つめ、俺でさえ息を呑んで見据える。

ハジメは何処か自身有り気である、シノンを信じているということか。

そして白い光を纏う矢は、たぁんという音ともに見事、黄金の剣に命中した。

 

「ん、それっ!」

 

シノンは右手から伸びた魔法の糸を思いきり引っ張る。

すると黄金の剣は落下をやめて減速し、みるみるとその姿を完全な剣の姿にして、シノンの腕の中に納まった。

 

「重いわね…」

 

そう呟いてこちらを振り返った彼女は笑顔を浮かべている。そんな彼女に俺とハジメ以外の5人は…、

 

「「「「「シノンさん、マジかっけぇ!」」」」」

 

声を揃えてそう叫んだ。

 

「いやまさか、本当に当てて回収するとは…」

「……シノンなら出来ると思っていた」

 

俺は俺で可笑しさ半分呆れ半分という感じの反応、一方でハジメはさも当然と言わんばかりの態度。

そこにはシノンへの絶大な信頼と、彼女がみんなに賞賛されていることへの嬉しさがあるのだろう。

しかし、もう1つの意味でいまのシノンの神業をコイツも出来たかもしれないということだが…。

 

「はい、キリト。受け取って」

「いいのか?」

 

俺にキャリバーを渡してくるシノン。

正直、欲しくないと言えば嘘になるが彼女の射撃がなければこの剣はいまこの場にはない。

それを思うと別に断ってもいいかもしれないと思ったが、次の言葉を聞き、受け取らなくてはと思った。

 

「これは、『死銃事件』で私とケイを助けてくれて、大澤さん親子に会わせてくれたお礼。

 キリトとアスナが動いてくれなかったら私もケイも、多分踏みとどまったままだったと思うから……だから、受け取って」

「……私からも頼む」

「…分かった。ありがたく、受け取らせてもらうよ」

 

そんな彼女の真摯な言葉とハジメの強い願い、それを聞いたら受け取らない方が失礼に値するというものだ。

俺はシノンからしっかりとキャリバーを受け取り、腕に抱えた。

 

―――くおぉぉぉぉぉん…

 

そこでトンキーが何処か嬉しさを思わせる啼き声を上げた。

グレートボイドから離れ始めて安全圏に入ったので、

上空に聳えていた氷の城スリュムヘイムへと視線を向けると、完全に崩壊して丸ごと落下を始めた。

風圧に耐えかねてその崩落も激しさを増していく。

 

「あのダンジョン、一回の冒険だけでなくなるんっすね…」

「もったいないよね~、まだ行ってない部屋がたくさんあったのに…」

「マップ踏破率は37.2%です…」

 

ルナリオとリーファ、ユイの3人は実に残念そうにそう言葉を漏らした。

それはハジメとシノンも同じようで苦笑しており、俺とアスナも顔を見合わせて苦笑する。

 

「ま、楽しかったからいいじゃねぇか」

 

クラインが少し満足気なのは、あのダンジョンに挑んだのが俺達だけだからだろうと、俺はそう思う。

 

「あ…みなさん、見てください!」

 

ユイが大きな声を上げて、スリュムヘイムが落下していったボイドと世界樹の根を交互に指差した。

そこには、驚きの光景が広がっていた。

 

巨大な大空洞となっていた大穴の底から、青く揺れて輝くような光を反射させながら、

透き通るような水が溢れ、大穴を水で満たした。

天蓋まで萎縮していた世界樹の根は生き物のように揺れながら太さを増し、

水で満たされた泉にその根を下ろし、大波を立てながら放射状に広がり、先端は岸にまで達した。

泉に根が下ろされたことで、その根からは芽が息吹き始め、根の上全てに黄緑色の葉を広げる。

いままで吹き荒れていた吹雪や木枯らしは止み、暖かな春のそよ風が吹き渡った。

天蓋で薄らと発光していただけの水晶群は、小さな太陽のような白く強い発行を始める。

雪と氷に閉ざされていた大地や川、雪と氷は全て解け、大地には新芽が息吹き、木々は生い茂り、川はせせらぎを奏でる。

そして、泉の中からは囚われていた(倒されていた)と思われるトンキーの仲間達、

丘の巨人族(動物型邪神)達が次々と現れ、緑豊かな大地を闊歩し始めた。

最早その大地には霜の巨人族(人型邪神)の姿は1つもなくなっている。

ヨツンヘイムが、全ての時を取り戻したのだ。

 

ヨツンヘイム再生の時を見ていた俺達は感動に包まれていた。

 

―――くおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!

 

「よかった、良かった、ね…トンキー。みんなが、友達が、戻って、きて……」

 

喜びを表す高らかな声を上げるトンキーの背中を、座り込んだリーファが嬉し涙を流しながら優しく撫でている。

掛ける言葉も途切れながら、それでも笑顔を忘れない妹。

彼女を背中から優しく抱き締めるのは優しい笑顔を浮かべるルナリオ。

ハジメの背中に顔を埋めるシノンは彼の肩に手を乗せながら震えている。

涙を堪えているのかもしれない、ハジメは彼女の手に自身の手を重ねる。

クラインは鼻を啜り、眼の端には薄らと涙が溜まっているのに気付く。

アスナは俺の肩に身体を預けながら涙を流し、俺は彼女の肩をそっと抱き寄せる。

ユイは胸ポケットに入り込み、静かな声で泣いている。

かく言う俺も、グッと胸に込み上げるものがあるわけだ…。

 

「見事、成し遂げてくれましたね…」

 

その言葉とともにトンキーの頭の奥に金色の光に包まれた人影が浮いている、ウルズだ。

今度の姿はどうやら実体のようである。

 

「エクスキャリバーが取り除かれ、イグドラシルの“霊根”は母の元に還りました。

 樹の恩寵が大地に満ち、ヨツンヘイムはかつての姿を取り戻せました。そなたたちのお陰です」

「トールが良いとこ取りしたけどな」

 

優しげな表情で語る彼女の言葉に俺が皮肉を込めて言うと、ウルズは真剣な表情に変え、そっと頷いた。

 

「彼の雷神の力、私も確かに感じ取りました。ですが気を付けるのです、妖精達よ。

 彼らアース神族は霜の巨人族の敵ですが、そなたらの味方ではありません」

「あの…スリュムも言っていましたけど、それはどういう「やめておけ、リーファ」お兄ちゃん?」

「いまはまだ、知るべき時じゃないだろうからな」

 

ウルズの言葉に疑問を感じていたのか、泣き止んだリーファが問いかけるが、俺が制止を掛ける。

だが俺は知っている……幾つかの伝承、『神々の黄昏(ラグナロク)』の先に、

巨人とその仲間達がどうなったのかを、アース神族のある種の目的を…。

 

「どうやら、私の妹達からもそなたらに礼があるそうです」

 

ウルズの右隣が水面のように揺れ、姉よりかは僅かに小さい身長(それでも長身)、

同じく姉と同じだが少し短め(それでも長髪)の金髪、深い青の長衣を着た“優美”と評せる顔立ちをした女性が現れた。

 

「私は『ベルザンディ』。もう一度、緑のヨツンヘイムを見せてくれて、ありがとう。まるで夢のよう…」

 

運命の女神ノルンの1柱、『現在を司る女神ベルザンディ』か…。

彼女が右手を振ると俺達の前に大量のアイテムやらユルドが出現し、テンポラリ・ストレージに入っていった。

今までのボス達とスリュムとの戦いで相当な数が埋まっているはずだから、上限が心配になるな…。

そして今度は左隣に一陣の旋風が巻き起こり、鎧兜姿でヘルメットの左右とブーツの側面から白い翼があり、

束ねられた細い金髪、身長に至っては俺達と同じくらいのサイズ、その顔は美しく勇ましい。

 

「我が名は『スクルド』!礼を言おう、妖精の戦士達よ!」

 

運命の女神ノルンの1柱にして、ワルキューレにも名を連ねる『未来を司る女神スクルド』。

彼女も姉の1人と同じように手をかざし、報酬アイテムとユルドの滝が出た。

ストレージギリギリのアイテム量となったようで、容量注意の警告が点滅した。

2人が左右に退くと最後にウルズが微笑を浮かべながら前に歩み出て、言葉を掛けてきた。

 

「私からはその剣、『聖剣エクスキャリバー』を授けましょう。しかし、決して『ウルズの泉』には投げ込まぬように…」

 

彼女からの報酬は目的としていた『聖剣エクスキャリバー』、俺のアイテムストレージへと入った。

同時に注意事項も受けたが、その意味を知っているので答えてみるか。

 

「分かっている。不純物を投げ込めば、強力な浄化作用のバランスが乱れ、樹勢が保てなくなるからな。

 そうなると、イグドラシルは枯れてしまうだろ?」

「ふふ…」

「あら…」

「ほお…」

 

俺が微笑を浮かべて放った言葉に、3姉妹は感心したように笑みを浮かべた。

なんか隣から不穏な気配を感じるが、後でなんとか宥めておこう。

 

「賢き妖精よ…そなたには、コレも渡しておきましょう」

 

するとウルズが何かほぼ透明な液体の入った小瓶のようなものを俺に渡してきた。

 

「それは『ウルズの泉水』、きっとそなたの役に立つ時が来るでしょう…。

 それでは……ありがとう、妖精達。いずれ会いましょう……【漆黒の覇王】キリト」

「再び会える日を楽しみにしているわ……【黒の聖魔剣士】」

「さらばだ、また会おう! 【鍍金の勇者】殿!」

 

3姉妹が別れの言葉を告げると、視界中央にクエストクリアのメッセージが現れ、彼女達は身を翻して飛び去っていった。

というか……えぇ~?

 

「キ、キリトくん…?」

「パ、パパ…?」

「さ、さすがの俺も、なにがなんだか…」

 

先程まで嫉妬の想いを向けていたアスナ、愛娘兼AIであるユイ、他のみんなも口を開いてはいないが、呆然としている。

俺だって訳が分からん……なぁ、アンタなら何か知っているんじゃないのか、茅場…。

 

 

「打ち上げ兼忘年会でもするか?」

「「「「「「「賛成!」」」」」」」

 

取り敢えず、そうすることにした。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はい、今回で『女王の請願』というクエストは終わりました~・・・キリトがキャリバーを入手です♪

 

さらにこの作品ではオリジナルのアイテムとして『ウルズの泉水』を貰いました、一応ですが今後で出す予定です。

 

さらにさらに、最後にキリトの異名を告げて去っていったノルン3姉妹、どんな意味があるのでしょうかね~w?

 

ウチの言語モジュール・エンジンを扱うAIのみなさんは表現豊かですからね~w

 

次の打ち上げ兼忘年会の話しでキャリバー編は終了となります。

 

それでは次回で・・・。

 

 

 

 

 


 
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