No.602706 ソードアート・オンライン 黒と紅の剣士 第十三話 怖れと不安やぎすけさん 2013-07-29 02:09:28 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1535 閲覧ユーザー数:1473 |
大地視点
明日菜に絶剣の入院する病院を教えてから3日後、彼女はカズがメカトロニクスコースの友達と共同開発した通称【視聴覚双方向通信プローブ】を使って、絶剣ユウキを俺たちの学校に入学させるということを行った。
学校側も以外にすんなりとそれを認め、ユウキは3年ぶりに学校に通うことになった。
医師の診断によれば、ユウキの容態は安定しており、このままの状態であれば、後2ヶ月は問題ないということなので、薬は間に合いそうだ。
放課後、俺は荷物をまとめてリュックに入れ、いつも通り珪子の待つ校門に向かう。
大地「お待たせ。珪子。」
俺が声をかけると、振り返った珪子がいつものように笑顔を見せてくれる。
珪子「いつもよりは早かったので許してあげます。」
大地「悪い。じゃあ・・・」
「帰ろうか。」と続けようとしたその時、携帯端末から着信音が流れた。
大地「ん?電話だ・・・誰からだ?」
ポケットから端末を取り出し、電話番号を確認するとそこに表示されていたのは、
一瞬躊躇ってから、俺は電話に出る。
大地「もしもし?」
空[やあやあ我が弟よ。元気だったかい?]
本性とは裏腹に陽気な声が耳に響く。
俺は苛立つのを感じながらも、できるだけ冷静に問う。
大地「何の用だ?まだ完成する時間ではないはずだが?」
空[こらこら大地君、僕をあまく見ないで欲しいね。既に薬品の67.8631984%は完成しているんだよ。とは言っても完成まではまだ時間が掛かりそうだけどね。それより君がなぜ急に薬なんて欲しがったのか気になって少し調べさせてもらったよ。君のハッキング経歴までね。]
大地「そうか・・・なら俺がこれから何を注文しようとしているかも予想できてるな?」
空[もちろん。“スリーピング・ナイツ”のメンバーを助けたいんでしょ?心配しなくても、全員分の特効薬は熱血開発中なのだよ。]
大地「珍しいな。」
空[何がだい?]
大地「お前が命を救おうとするのも、そんなことを知らせるためだけにわざわざ連絡してくるのも。」
空[ちょっと間違ってるぞ我が弟よ。命を救おうとしているのは、君と君をその気にさせた君の友達だ。僕は弟の欲しがっているおやつを作っているだけさ。ちなみに連絡した理由は初期注文以外の薬が必要かどうか確認しておきたかっただけさ。]
大地「ふん、相変わらずつかめない奴だ。」
空[ふふん、カッコいいだろ?謎の人物って感じで。あぁ、そうそう、今度
その言葉を言い残し、空からの電話は切れた。
端末を耳から離し、再びポケットに押し込む。
大地「待たせたな。さあ、帰ろう。」
珪子「はい・・・」
沈んだような返事をする珪子の手を握ると、珪子はぎゅっと手を握り返してきた。
大地「珪子?」
珪子「行きましょう。」
強がっていると一目でわかるくらい辛そうな笑顔を見せた珪子は、俺の手を引っ張って走り出す。
そのまま走り続け、人気のない通りに差し掛かったところで珪子は足を止めた。
大地「どうしたんだよ?」
手は握ったまま声を掛けると、振り返った珪子は今にも泣きだしそうな顔をしていた。
困惑する俺に、珪子はゆっくりと口を開いた。
珪子「大地さん・・・どこにも行かないでくださいね。」
大地「えっ・・・!?」
突然の言葉に俺はさらに困惑する。
そんな俺に、珪子は続ける。
珪子「最近の大地さん、何だか変です。ずっと何か考えてるみたいですし、
大地「悪い。最近いろいろあって・・・」
珪子「あたし、怖いんです。大地さんがどこか遠くに行っちゃうような、もう会えなくなるような気がして・・・」
そう言って俺のこと見つめる珪子の瞳から、二粒の雫が零れ落ちる。
その様子に、最近の俺はまともな状態ではなかったことを悟った。
考えてみれば、最近はみんなと会話することも少なかったし、
大地〈なんであいつのことになると、冷静でいられなくなるのかな・・・〉
薬品製作を頼んで以来、俺は
だが、よくよく考えてみれば、
もし今彼女との間に亀裂を作ってしまえば、それは
俺は握っていた手を離し、今にも崩れ落ちてしまいそうな珪子をそっと抱きしめた。
珪子「えっ・・・」
涙を浮かべたままの綺麗な瞳が、不思議そうにこちらを見上げてくる。
大地「俺はお前を置いてどこかに行ったりはしないよ。」
珪子「本当ですか・・・?嘘だったら・・・許しませんよ・・・」
大地「もちろんだ。俺はお前とずっと一緒にいたい。だから、一緒にいさせてくれ。」
最後の言葉とともに俺は、腕に力を込めた。
もう二度と、この子を悲しませないと誓うように。
あれからしばらくして、再び帰路に着いた俺たちは特に何も話すこともなく、ただ手を繋いだまま歩き続けた。
あっという間に珪子の家まで辿り着き、俺は彼女に別れを告げて立ち去ろうとした時、握っていた手を強く引っ張られる。
振り返ると、顔を真っ赤にした珪子が俯き気味にこちらを見ている。
大地「どうした?」
珪子「あっ・・・あの・・・その・・・わ、わがままを言ってもいいですか?」
大地「どうぞ。」
珪子「その・・・今日、お父さんもお母さんも出掛けてて、あたし家に独りなんです。だから・・・大地さんの家に泊めてくれませんか・・・?」
大地「はい・・・?」
やけに言いにくそうにしていると思ったら、予想外の要求が飛んできた。
大地〈そんなに恥ずかしいのか?〉
そんな疑問を抱きながらも、別に断る理由はないので、俺はただ「いいよ。」と言って微笑んだ。
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久しぶりに彼女の出番です。