雨音がただただ強かった。
白い手が俺の首へと忍び寄り、絞めつける。
部屋は真っ黒だが、その白い手だけはハッキリと見えた。
「うっ……あ……」
白く細い指は次第に力を入れて確実に俺の首を絞めつける。指が力む度に俺は呼吸が困難になり呻く。
だが、呻くだけで抵抗はしなかった。
首を絞めているのが誰で、何故首を絞めているというのが分かっていたから。
「り……うっ……」
俺は、首を絞めている白い手の本人の名前を呼ぶ。だけど、すでに呼吸の逃げ道がない俺には声が出せない。
ドクンドクン、と脈を感じながら気が遠くなる。
「が……っ」
俺は最後の力を振り絞って手を伸ばす。そして白い手の本人の頬に触れる。
その頬は冷たく濡れていた。そう、泣いていた。
「もう……終わりだ……」
そう言って、俺は何もかもを手放した。
「はっ……ゲホッ!」
俺は勢い良く飛び起き、咽せた。
飛び起きて見た景色は、寝室。時計は午前3時を指していた。
「またか……」
「んー……どうしたの?」
俺の横で寝ていた女が目を覚まし、起き上がる。
「なんでもない、ただ夢を見ていただけだ。昔の夢をな」
俺は、ベッドの横に置いてあったミネラルウォーターを開封し、飲む。女はシーツで自らの体を隠しながら、どんな夢だったのかを俺に問う。
俺はミネラルウォーターを飲み干して、空の容器を机に置く。そして、女の許へ寄り添う。
「首を絞められる夢だ、だがしかし、所詮昔のことだ。お前には関係ない」
そう言って俺は女と深い口付けを交わす。
「もう、そうやってごまかすんだから……って、く、首に……」
女は俺の首を見て顔面が蒼白になる。
俺が鏡で確認すると、首には……
手形の痣がくっきりと残っていた。
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習作で書いた、ショートショート。
色んなシチュレーションがかけるように頑張りたい……