No.602189

Seiren

麗華さん

ティアは思い出す・・・クロウとの思い出を・・・

2013-07-27 18:45:12 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:616   閲覧ユーザー数:613

1・夢の始まり

静かでどこまでも蒼い海・・・空から差し込む太陽の光に照らされながら

沈んでいく2人。

もう息をしていない男性と差し込む太陽の光を見ている少女。

離れないように少女は男性を抱く、優しく・・・そして2度と離れないように強く・・・。

「・・・ねぇ、綺麗よ・・・海は・・・」

「・・・また笑いかけて・・・欲しかった」

静かに海の底へ沈んでいく少女“ティア”・・・ティアは目を静かに閉じる・・・。

静かな海の中でティアはクロウとの思い出を思い出し始めた・・・。

 

2・クロウとの出会い

「・・・ここは?」

少女はゆっくりと目を覚ます。

自分は柔らかいベッドの上で寝ていた、そして見知らぬ部屋。

そして椅子に座っている見知らぬ男性が目の前に居た。

「目を覚ましたんだね、大丈夫かい?」

男性は少女に優しく問うが少女は覚悟を決めた表情をした。

「・・・いいわ、貴方が私を殺すのね?」

少女は静かに目を閉じながら自分の首を男性の目の前に差し出す。

「そんな・・・君を手にかけたりしないよ」

男性は困った顔で両手を上げ言う。

「どうして?」

少女は首をかしげ男性に尋ねる。

「君は悪い子じゃないだろ?」

男性は微笑みながら返答する。

「僕はクロウ、君は?」

クロウはまだ少し警戒している少女に優しく問う。

「・・・ティアです」

「ティアか・・・かわいい名前だね」

「・・・」

ティアはクロウの笑顔に込み上げてくるものがあった。

「手当てはしたけれどまだ痛むところはあるかい?」

「・・・大丈夫です」

「そうか、良かった・・・」

ティアがそう返答すると安心したのかクロウは優しく微笑む。

「・・・」

ティアはクロウの笑顔を見つめる。

「じゃあ、まだ安静にしていてね」

そう言いながらクロウは座っていた椅子から立ち上がる。

「何処へ行くの?」

ティアは勇気を出して尋ねてみる。

「台所だよ」

クロウはまた微笑む。

「・・・私も一緒に行っていい?」

「えっ?・・・動いて大丈夫かい?」

クロウは心配そうに聞いてくる。

「うん、平気」

「そうか、でも無理はダメだからね」

ティアはクロウが自分の事を心配したり、優しくしてくれたりする理由が知りたかった。

「さて、ティアは好き嫌いがあるかい?」

「・・・ないわ」

「偉いね、それならおいしいご飯を作らないとな」

クロウが調理を始めた、ティアはテーブル席に座るようにとクロウに言われたので

テーブル席から調理をしているクロウの後姿を見ていた。

見ず知らずの自分を優しく介護してくれた、その証が優しく丁寧に巻かれていた。

どうしてなのか?どうしてこんなに暖かいのか?優しいのか?

「・・・ティアは海は好きかい?」

「えっ?」

いろいろ考え事していたティアにクロウは優しく微笑みながら訊いてくる。

「好きよ」

「そうか、良かった」

「?」

ティアは首をかしげる。

その後に出来上がった食事を食べ終えたティアは窓から空を見上げていた。

青い空に流れていく雲や小鳥が飛んでいく。

平和で静かな世界だった、ティアはしばらくその世界を見ていた。

「ティア、何をしているんだい?」

ティアが振り向くとそこにはテーブル席に座っていたクロウが居た。

「空を見ていたの」

「空か・・・綺麗だよね、空」

クロウもティアのバックにある、窓に切り取られた青き世界に視線を移す。

「綺麗だよね・・・」

「うん」

2人はしばらく空を見ていた、憎しみや悲しみ、恐怖が無い世界。

「・・・クロウは空を飛んでみたい?」

「うん、飛んでみたいな」

「・・・そう」

ティアはクロウという存在が気になり始めていた。


 
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