No.601734

ALO~聖魔の剣~ 第1剣 VR技術

本郷 刃さん

第1剣です。
原作にはないオリジナルの話になっています。

どうぞ・・・。

2013-07-26 09:14:37 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:12719   閲覧ユーザー数:11460

 

 

 

 

 

 

 

 

第1剣 VR技術

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和人Side

 

12月20日、土曜日の午後2時半前。

今日の午前授業も終わり、東京駅のホームで腕時計を使って時間を確認する俺。

実は待ち合わせの為にある人を待っているところだ。

お相手は女性だが、恋人の明日奈ではない……勿論、彼女も知っている人物なので許可を得ている。

まぁ、今の明日奈はおそらく立ち上がるのも困難かもしれないが…(黒笑)

 

「か、かず、と…くん……の、ばかぁ…/////////」

 

「ん?……気のせいか…」

 

なんか明日奈の声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

気のせいじゃなかったとしたら彼女の本心だろうけど(笑)

真昼間から御盛んだって? 褒めるなよ…(作者:褒めてねぇ!)

 

「あ、ごめんなさい、キリト君。待たせてしまったわね」

「いえ、大丈夫です。お久しぶりです、凜子さん」

「ええ、久しぶりね」

 

声を掛けてきた女性。俺が待っていたのは茅場晶彦の元恋人であり、彼の後輩の1人にして、

現在はアメリカのカリフォルニア工科大学で研究を行っている神代凜子さんだ。

 

「どうかしら、最近の調子は?」

「体調の事を言っているのなら、まぁ私用(明日奈と色々)で少し疲れているくらいですね。

 勉学の方なら成績は問題無し、いまは機械好きなメンバーで集まって『視聴覚双方向通信プローブ』というのを設計しています」

「へぇ、面白そうね。どんなものなの?…って、まずは場所を変えましょうか。よかったらデザートでも奢るわよ」

「それではお言葉に甘えて…」

 

俺達は駅から少し離れた喫茶店へと足を運んだ。

 

 

喫茶店へと移動して凜子さんにプローブについての説明を行った。

 

「VR世界から現実世界の様子が見られる、か…いいわね、それ。

 現実と仮想、2つの世界を繋げる事を目標にしているキミらしい狙いね」

「一応未完成ですが、基礎などは出来上がっているんです。

 ただ、もう少しパーツ類など必要で、先日そのパーツを発注したところなんです」

「頑張っているのね…。ま、かくいう私もVR技術の新しい発展の為に、色々と試行錯誤しているのよ」

 

彼女もまた根っからの科学者なのだ。

茅場が残した『ザ・シード』を後世へと受け継がしていく為に頑張っているのだろう。

俺も明日奈とユイの為に頑張らなくてはいけないな。

 

「そういえば、凜子さんはどうして日本に?」

「母校である東都工業大学の講義に招かれたの。あとは『メディキュボイド』の被験者方の様子を窺おうと思ったのよ…」

 

理由を聞いてみて前者には納得がいったが、後者はどういう意味だろうか?

 

「メディキュボイドというと、確か医療を目的としたフルダイブ機器のコードネームですよね?

 まぁ、現状は終末期医療(ターミナル・ケア)の状態に近いらしく、完成には程遠いみたいですが…」

「辛辣だけど、さすがに良く調べているわね。

 なら、そのメディキュボイドの心臓部である超高密度信号素子の基礎設計を提供して開発したのが私で、

 その設計を行ったのが茅場君だとしたら?」

「なっ……いや、そうか…。ナーヴギア並みの性能であるのに、

 他に彼を除いた人間に設計出来るはずがない、俺としたことが失念していた…」

 

疑問を解くべく聞いてみれば、返ってきた言葉は驚きのもので、しかし何処か納得できるものだった。

そうだ、当時のフルダイブ技術においては茅場以外にそれを成せる者などいなかったはずだ。

須郷でさえ、ナーヴギアを入手する事でアミュスフィアを完成させたのだろうし、

確かあと1人だけ茅場と須郷に続く天才と呼ばれる人物がいるはずだ。

確か名は、『比嘉 タケル』だったと思うが…彼でも、当時では不可能だっただろう。

 

「私としては、一瞬でそこまでに考えが至るキリト君は十分凄いと思うわよ」

 

苦笑しながら凜子さんが言い、俺もまたそれに微笑で応じる。

 

「講義に招かれたのだけど、良かったら貴方も来ないかしら?

 夕方の4時からなのだけど……あとは、その後のメディキュボイドの方も…」

「是非、同行させてもらいます。いまは出来るだけ多くのことを学びたいですから」

「そういうと思ったわ。大学の方にも連絡は入れてあるから、もう少ししたら行きましょう」

 

この後の予定が決定したので、しばしデザートに舌鼓を打ってから、

俺と凜子さんは東都工業大学へと向かい、彼女は講義を行い、俺はその講義に聞き入る事になった。

 

 

「さすがでしたよ、凜子さん」

「そうかしら? キリト君こそ、熱心に聞いてくれたみたいね」

「学べる事を多く聞けましたから。お誘いいただき、ありがとうございました」

「どういたしまして」

 

講義を終えた俺達は大学を後にして別の場所、神奈川県横浜市都筑区にある横浜港北総合病院へとタクシーで向かっている。

時刻は既に5時半を超え、それでもメディキュボイドに興味のあった俺はついて行く事を決めたのだ。

 

「医療用のフルダイブマシン、現状では大きな成果を見る事は出来ないですが、今後の流れ次第ではその成果も見出せそうですね」

「そうね……ただ、個人的にはもっと早くに提供できれば良かったと思っているわ…。

 被験者の方、詳細は話せないけどまだ10代の子なのよ。それなのに…」

「そう、ですか…」

 

俺の言葉に凜子さんは悔しそうに呟いた。その様子を見るに、その被験者である子はそう長くは…。

しばらくの間、沈黙が流れ、それを機に丁度タクシーが病院へと辿り着いた。

タクシーから降りた俺と凜子さんは受け付けを済ませてから、4階にある待合スペースへと通され、

そこに1人の男性医師が歩み寄ってきた。

 

「はじめまして、神代凜子博士ですね? 僕は倉橋と申します」

「はじめまして、倉橋先生。こちらは桐ヶ谷和人君、メディキュボイドに興味があり、

 VR技術の研究を目標としていて、私がお誘いしたんです」

「はじめまして、桐ヶ谷です」

 

男性医師の名前は倉橋といい、凜子さんも挨拶に応じて俺を紹介してくれたので、頭を下げて一言。

 

「確か桐ヶ谷君は高校生でしたね? 神代博士に呼ばれるということは、やっぱりそれなりの技術を?」

「彼、私の講義を平然と理解できる程なんですよ」

「それはまた、凄いですね…」

「恐縮です」

 

倉橋医師の疑問にあっさりと答えた凜子さん、それに驚く彼に対し、俺は苦笑するしかない。

それから俺と凜子さんは先生にラウンジへと案内され、そこで話をする事になった……のだが…。

 

「俺、席を外しましょうか? 患者さんのプライベートな話になるでしょうし…」

「あぁ、いや…大丈夫だよ。

 そこまでの話しにはならないと思うし、良かったらメディキュボイドについての意見も欲しいところなんです」

 

さすがに遠慮しなければと思い、そう言ったのだが、倉橋医師は構わないと言ってくれた。

 

「VR技術を研究しているお二人の前でこういう事を言うのも申し訳ないのですが、

 僕はフルダイブ技術がアミューズメント用途で開発されたことが残念でならないのです。

 このテクノロジーが最初から医療目的で研究され、政府が出資していてくれれば、

 現状の研究成果よりも、2年近くは進んでいたと思います」

 

彼の言いたい事は解る。確かに人の命を預かり、

その病を治す事に尽力している人達にとってはアミューズメント目的の技術よりも、

命の方を優先したいだろう……だが、だ…。

だからこそ俺は言わなければならない、今は亡き者達の為に…。

 

「倉橋先生。アミューズメント技術に用いたのはあくまでも世間であって、

 開発者である茅場晶彦の思想は別の、新たな世界の創造なんです。

 純粋に、VRMMOゲームという括りではなく、人の営みがある世界…。

 それが、真の製作者である茅場晶彦の思いです」

「…何故、桐ヶ谷君はそこまで彼に思い入れを…?」

 

先生の言葉の意味は解る。俺の隣に座る凜子さんは複雑そうにしながらも、真剣に聞き入っている。

 

「俺は『SAO生還者(サバイバー)』です。もしも『ソードアート・オンライン』の世界を否定するなら、

 それはあの世界で志半ばに、無念に散って逝った者達への冒涜になります。

 SAOは、いえ…VRMMOという世界は、全てがそこに存在する現実なんです。

 ただの(・・・)アミューズメントと言われてしまうのは、俺は納得できません」

「そう、ですね…。すみません、少しばかり無神経でした…」

「あ、いえ…俺こそ、熱くなってしまって…」

 

俺の言い放った言葉に先生は申し訳なさそうにし、俺自身も謂い過ぎた感じがしたので頭を下げておく。

気まずい空気が流れるが、まだ伝えておきたいことがある。

 

「それに、政府が医療だけを目的とした投資をするとも思えません…」

「それは、どういう意味か聞かせてもらえますか?」

「私も、聞いてみたいわ」

 

深い意味を込めた俺の台詞に先生も凜子さんも食いついた。

確かに、気になるように業とこういう言い回しをしたからな。

俺は自分の考えを告げる事にした。

 

「現在、海外ではVRMMO技術を用いた軍事訓練が行われています。

 恐らく、一部の国では犯罪者などを利用した人体実験も行われているでしょう、『ALO事件』のように…。

 それらの目的はやはり、戦争に向けての訓練だけでなく、VR技術を利用した遠隔操作技術の進歩、

 それを媒介とした新兵器の開発、戦争時の人材派遣の減少、

 そういったものへの着手がどうにも見え隠れしているとしか思えないんです。

 あくまで、個人的観点での見解ですが……あの、どうかしましたか?」

 

倉橋医師も凜子さんも呆然と困惑、そこに妙な納得の表情を混ぜた顔をしている。

 

「いや、まさか、その年でこんな考えに至るとは…」

「規格外を行くとは、まさにこのことね」

 

どうにも年齢不相応だと思われているが、こればかりは性格と周囲の環境の影響なのでどうしようもない。

まぁ、この考えに至る人間はそれなりにいるだろうとは思うが、

俺がそう思ったのは単純にVRMMOで全ての動作を行えたら、と…14歳の時にそう考えついてしまったのだ。

 

「では、メディキュボイドについては、どう思いますか?」

「ナーヴギア以上のパルス発生素子、それらを考えるに痛覚などの完全遮断も可能なのですから、

 極稀にリスクが発生する麻酔も必要なくなりますし、

 身体を動かせない人達でもVRワールドを通して社会への交流が可能になりますから、

 いまの段階から派生し、強化することが出来れば、間違いなく医療の発展になるとは思います」

「そこまで理解していただけるとは…。僕としても、そのレベルには到達できると信じています……ただ…」

 

先生の問いかけに俺なりの考えを話してみれば、嬉しさを滲ませる表情を浮かべた。

けれどそれも少しのことで今度は浮かないものへと変わった。

 

「もしかして、現状におけるメディキュボイドの最も得意とする分野、ターミナル・ケアのことですか?」

「はい……いま、メディキュボイドを臨床してくれている子は、既に十数年ものあいだに亘って闘病生活を続けています。

 ですが、そんな彼女の現状は…っ」

「既に終末期医療の段階へと入ってしまっている、ですね…?」

「……ええ…」

 

やはり予想した通りだったか…しかも、いまの先生の言葉を聞けば、どうやら患者の子は女性であるらしい。

どうにも世界は、(まま)ならないものにしたいらしい……当然と言えば、当然なのかもしれないが…。

 

 

 

それからしばらくの間、それらについて話しをしたあと、俺は席を外して凜子さんと倉橋医師の話しが終わるのを待った。

理由は簡単、そこからは患者のプライベート情報が出るからだ。

20分ほど経った時、待合スペースで待っていた俺の元に2人がやってきた。

 

「ごめんなさい、待たせてしまって…」

「大丈夫です。付いていくと言ったのは俺ですから」

 

彼女にそう言われるも、俺が決めてここに来たのだから特に気負う必要はないので、そう返答しておく。

 

「桐ヶ谷君。僕は今日、キミと話す事が出来て良かったと思っています。

 今後のメディキュボイドの発展についても、凄く参考になりました。ありがとうございました」

「いえ。こちらこそ、色々と勉強になりました。ありがとうございました」

 

俺と先生はそれぞれ礼を述べてから握手を交わし、再び受付で帰りの手続きを済ませてから、

倉橋医師に見送られて病院を後にした。タクシーの中でも俺と凜子さんは話しをしている。

 

「今日は色々とありがとうございました。本当に勉強になりましたよ」

「どういたしまして。こちらこそ、貴重な意見を聞かせてもらえたわ」

 

彼女に礼を告げ、そこから少しのあいだ言葉を交わした。

そこから、これからのVRMMOについて、俺が考えていることを話してみることにした。

 

「アミューズメント、仕事やあらゆる分野での交流、

 社会補助などにも流用する医療、明るい表面での発展は眼を瞠るものがあります。

 ただその反面、新兵器の開発や実験といった軍事産業なども、発展してしまうのは辛いですね」

「そうね…。彼が夢見た世界が進むのは嬉しいけれど、裏の面も成長してしまうのは悲しいわ。

 それも必然といえば、そこまでなのかもしれないけれど…」

 

俺の言葉を聞いた凜子さんの言。

俺も同意ではあるが、仕方がないという一言で済ませてしまうにはあまりにも惜しい。

けれどそれも、技術の進歩の代償の為か、人の業か、どのように纏めても仕様がないな。

 

「アミューズメントやリラクゼーションを目的とした設置型マシンの第一世代機。

 その後継機であるヘッドギア型のナーヴギアとアミュスフィアの第二世代機。

 医療を目的としているメディキュボイドの第三世代機。

 現行での第四世代候補とされ、研究・開発中のブレイン・インプラント・チップ。そして…」

 

一度区切り、そこから彼女の眼を見て、言葉を紡ぐ。

 

「茅場の脳を焼切ったと思われる現行における最後のVRマシン、これがおそらく第五世代候補……そうは思いませんか?」

「っ、キリト君…。あなたは、何処までその考えを…」

 

驚く凜子さんに応える為に、さらに続ける。

 

「簡単ですよ。ナーヴギアで脳を破壊する事は可能ですが、

 それをフラクトライトに変換するなど、ナーヴギア程度で行えるはずがない。

 つまり、それ以上の性能で、変換を目的とした機器でなければ、魂の変換を行えるはずがないんです」

「貴方は、彼が電子の世界に、生きている、と…?」

 

震える声で喋る彼女。信じられるはずもない、けれど凜子さん自身が一番信じたいはずであるから。

だから俺は推測した仮説を話し、彼女がさらに先へ進む為の言葉を与えた。

 

「そうでなければ、『ザ・シード』なんて遺しませんよ」

「ぁ…そう、ね…そうよね…」

 

俺の確信を込めた言葉、それが凜子さん自身への喜びに変わり、彼女は少しだけ涙を流した。

その後、タクシーで自宅へと送られた。

 

「キリト君、もしもALOで貴方が被験者の彼女、紺野木綿季さんと出会う事があれば、

 少しでもいいから気に掛けてもらえないかしら?」

 

何故、被験者の少女の名を俺に…?

 

「ですが、分からないような気がするんですけど…」

「分かるはずよ。貴方なら、絶対にね…それじゃあね」

 

その言葉を残して凜子さんはタクシーで帰っていった、今日はホテルに泊まると言っていたし。

俺も、夕食を取って身支度整えてから、ALOに行くとするか。

 

和人Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

原作とは違い、凜子さんがかなり前向きに道を歩んでいます、ウチの和人さんとの出会いが切っ掛けですからね。

 

しかもメディキュボイドによる伝手を使い、和人とあの娘に繋がりを結ばせました。

 

さて、次回はほのぼの?回になるといいな~w

 

それでは・・・。

 

 

 

 

 


 
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