No.601160

がちゆり-結衣・あかり-誕生日用

初音軍さん

あかりの誕生日用に書いたものです。この二人は癒しオーラが豊富でいい感じだと思います。他の組み合わせも好きですが♪

2013-07-24 20:43:54 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:525   閲覧ユーザー数:519

 

 

 

 今日はあかりの誕生日。家にみんなを招いて賑やかな日になると思いわくわくしていた。

ところが約束の時間に来たのは結衣ちゃんだけだった。

 

「あかり、誕生日おめでとう」

「う、うん」

 

 いつものようににこやかで優しい笑顔を見せる結衣ちゃん。

その顔を見てると安心出来て傍に居たくなってしまう。…じゃなくて。

 

「なんで結衣ちゃん一人なの!?」

「あー、なんか京子もちなつちゃんも用事できちゃったらしくて」

 

「ふぇぇ、そんなぁ…」

「仕方ない、今日はみんなの分まで楽しむぞ。あかり!」

 

「う、うん…」

 

 すっかりみんなでパーティーな気持ちになっていたのが見事に崩れ落ちたけど

考えてみると結衣ちゃんと二人きりなんてすごい久しぶりじゃないかな。

 

 考えれば考えるほど胸が痛んで、でも嬉しい気持ちで溢れる。

何なんだろう…これ。

 

 

 

【京子】

 

 本当は途中まであかりの家に行く予定だった私とちなつちゃんは今

ゲーセンに寄って遊んでいた。

 

「京子先輩!いいんですか、あかりちゃんのとこ行かなくて」

「いいんだよ、こういう日だからこそ特別にさせたいでしょ?」

 

「え…?」

「ここ最近、あかりから結衣に向ける視線が熱かったのがわかったんだよ」

 

「うそ…」

 

 私の言葉に青褪めるちなつちゃんは頬に両手を当ててやや俯き加減で立っていた。

私も晴れたような気持ちにはなれずにモヤモヤしていた。

 

 二人はUFOキャッチャーでぬいぐるみを取ろうとしていたがどこか上の空だから

ただ金ばかりがどんどん減っていくのがわかる。

 

 それが勿体無いとかそういう気持ちすら湧かない。ちょっと重症だ。

 

「それに結衣もまんざらじゃないみたいだし。ずっと見てきたからわかるんだ」

「いいんですか、京子先輩はそれで!」

 

「ちょっと寂しいよね。結局片想いだったわけだし…」

「先輩…」

 

 私は少し肩を落とすように喋るとちなつちゃんが私の肩に手を置いてくれた。

それがとても暖かい。これ以上空気を悪くしたくないから、私は振り返って

ちなつちゃんを抱き締めた。

 

 いや、それだけじゃない。結衣のことは残念な気持ちも少しばかり残ってるが

それ以上に愛情を注ぎたくなる相手が目の前にいるのだ。

 

「乙女は恋愛の切り替えは早いのだー!ちなつちゃん大好き!」

「ちょっと、京子先輩!私の気持ちはどうなるんですかあああ」

 

 ちなつちゃんのその華奢な体からどれだけの力があるのか。私はあっさりと

引き剥がされると息を切らしたちなつちゃんが睨みつけるように私を見てきた。

しかも顔を真っ赤にして。

 

「嫌だった?」

「嫌・・・じゃないですけど・・・」

 

「うん、それでもいいよ。試しに私と付き合ってくれませんか、お姫様」

「う…。わ、わかりました。お試しなら仕方ないですね」

 

 私が王子様風に手を差し伸べるとちなつちゃんもゆっくりと私の手に触れて

二人で手を取って笑いあって。歩き出した。

 

「ちなつちゃんが振り返ってくれるまで私がんばるから」

「もう、京子先輩ったら…」

 

 結衣の方は上手くいってたらいいな。

未練は全くないといえば嘘になるけど、それ以上に二人には幸せになって

貰いたかった。

 

 

「今日お姉ちゃんはちなつちゃんのお姉さんとお出かけしてるんだよ」

「へ~。この料理はあかりが全部?」

 

「うん!」

「すごいじゃん」

 

 驚いて嬉しそうにして褒めてくれる結衣ちゃんの言葉に胸がこそばゆくなる。

あかりが笑顔でいると喜んでいたのも束の間、結衣ちゃんが気まずそうに言った。

 

「これだけあると私とあかりじゃ食べきれないよね…」

「うん…」

 

 それはそうだ。だって京子ちゃんたちが来ることを前提に作っていたのだから。

それから少しの間沈黙が包み込んだけれど、あかりが無理しないでほどほどにしようって

言ったら、そうだねって結衣ちゃんが笑いながら言ってくれた。

 

 本当に結衣ちゃんが笑うだけであかりも一緒に笑みがこぼれていた。

楽しいなぁ~。嬉しくてわくわくしてたけど少し寂しい。そんな複雑な気持ちだった。

 

「あかり、美味しかったよ」

「ありがとう~」

 

「ぷっ」

「え、何どうしたの?」

 

「あかりの誕生日なのに私がご馳走になってるのが変だなぁって」

「そういえばそうかも」

 

 一つしか違わないのに小さい頃から頼りになるお姉さんって感じで

すごく憧れていた。それなのにいつからか、それとは違う感情に芽生えて

結衣ちゃんの言動行動の一つ一つを目で追っているのに気づいて。

 

 あかりは結衣ちゃんのことが好きなんだなぁって気づいた。

結衣ちゃんはあかりに対してそんな感情ないってわかってるけど。

妹みたいな存在なのかもしれないって漠然と思ってた。

 

「あかり、プレゼント」

「ありがとう、嬉しい…」

 

 結衣ちゃんはあかりの好きなものを知ってる。可愛いものだったり

ためになるものだったり。だけど、あかりが思っていたのより遥かに

嬉しいものが中に入っていた。

 

ポタッ

 

 中身を確認すると目から涙が自然と零れ落ちていた。

悲しいとか痛いとかじゃない涙。嬉しい時でも今まで出たことがない涙。

 

「指輪…」

「おもちゃだけどね、ほら。同じやつ」

 

 同じ模様の…少し色の違う指輪を左手の薬指に嵌めて見せてきた。

 

「嬉しい…」

 

 あかりと同じ気持ちだったのかな…。目の前が霞んで見えなくて、傍に結衣ちゃんの

気配を感じて指に嵌めてもらうのを感じることができた。

 

「結衣ちゃん…」

「あかり、好きだよ…」

 

 そっとあかりが嫌がらないように結衣ちゃんは軽く口付けを交わした。

そういえばちなつちゃんと練習をしていた時、もっと激しいことされそうになった

ことがあるのを思い出して体が強張った。

 

 敏感にあかりの反応を感じ取った結衣ちゃんは苦笑しながらあかりの頭を

優しく撫でてくれる。どこまでも優しい結衣ちゃんに私は甘えてしまいそうで。

 

「私達はゆっくりやっていこう」

「え?」

 

「これまで姉妹のように育ってきたからね、京子も含めて」

「うん…」

 

「急ぐ必要はないよ。自然にできるようになるまで。この愛をゆっくり育んでいこう」

「結衣ちゃん…」

 

「もう、今日のあかりは泣き虫だなぁ」

「だって結衣ちゃんが…」

 

 こんな素敵なプレゼントをくれるから…。あかりの願いを叶えてくれるから…。

あかりの頭を結衣ちゃんはゆっくり両手で引き寄せて胸元に当たるのを感じる。

言葉は交わさなくてもこうやって感じることはできる。

 

 近くにいる結衣ちゃんの呼吸の音がとても心地良い。

 

 結衣ちゃんありがとう…。どんなプレゼントよりも嬉しかった。

あかりにとって今年の誕生日は特別な日になった。

 

 二人で手を繋ぎながら願った。

 

 幸せになろう。将来ずっと仲良く一緒に暮らせるようにって。

そう、目を瞑りながらあかりは願ったんだよ。

 

お終い


 
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