これで、開放される・・・だろか。
互いに互いを刺した瞬間に、いにしえからの記憶が蘇るなんて。
出来過ぎじゃあないか。
貴様はどうだ?
聞きたくとも、もう声は届かないだろう。両膝を大地に付いて崩折れた貴様を貫いた剣を介して・・・届くと、いいな。
私の胸を貫いた貴様の剣は、私がこのまま抱いて逝こう。
記憶が蘇った奇跡を繋ぐ為に。
初めて差し違えた奇跡が、此の忌まわしき他者の欲で紡がれた怨磋からの開放に繋がりますように。
遠くなる空を見上げるように。
独り崖から落ちてゆく。
次はどうか幸せでありますように。
次こそは、お互い肩を組んで笑える世界でありますように。
どうか・・・
僕は死を認められていない。
其の命を全うするまで・・・生き続けなければならない。
もう役目は終わったではないか。
この世は愛と平和に満ちたではないか。
もう、無用の長物ではないか。
勇者という存在は、正義という色が穢れぬ限り、一切不要じゃないか。
人の言う【悪】は滅んだじゃあないか。
僕が・・・この手で滅ぼしたじゃないか。
僕が、殺したじゃないか・・・
何故。
役目を終えた僕を自由にしてくれないんだ。
もういいじゃないか。
生きる意味も目的もなくなった僕が今此処でこの世界で生きてゆく意味があるのだろうか?
何故死ねない。
何度自ら命を絶っても時間を巻き戻されて何度も生かされる。
何故死ねない?
生きている意味などないじゃあないか。
何故?
この世界は平和なのだろう?
どうして?
悪は滅んだのだろう?
なら・・・
僕という【存在】など必要ないじゃないか。
もう自由にさせてくれよ。
死なせてくれよ・・・!
(あんたがいないこの世界に生きる意味はないんだよ)
(どうしてあの時ちゃんと刺し違えてくれなかったんだよ)
(お人好し)
(待って)
僕をおいて行かないで・・・
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今の勇者から何代か前の勇者の話って位置で。魔王を倒したらハッピーエンド。じゃあエンディングを迎えた勇者はそれから幸せになれたのだろうか?ってのを模索した短文。命を閉じる者と死を認められていない者の呟き。雰囲気重視。