No.599378

【恋姫二次創作】死神の毒 初陣~前編~

恋姫夢想の二次創作です。

ダーク主人公なので好き嫌いが分かれると思います。

基本的には原作を進んでいきます。

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2013-07-19 23:34:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1135   閲覧ユーザー数:1059

~北郷side~

 

侍女に呼ばれ、城門に向かった俺たちの目の前に、武装した兵士たちが整列をしていた。

 

「うぉぉ……こりゃ壮観だなぁ……」

 

兵士たちが微動だにせず並んでいる様に、ちょっとした感嘆が漏れる。

 

「すごーい!この人たち全員、白蓮ちゃんの兵隊さんなのー?」

 

「勿論さ。……とは言っても、本当は正規兵半分、義勇兵半分の混成部隊だけどな。」

 

「そんなに義勇兵が集まったんだ……」

 

「それだけ、大陸の情勢が混沌とし、皆の心に危機感が出ているということでしょう。」

 

「ふむ……。確かに最近、大陸各地で盗賊だなんだと匪賊が跋扈しているからな。」

 

「いったいこの国はどうなっていくのだ―……」

 

「民のため、庶民のため……間違った方向にはいかせやしないさ。……この私がな。」

 

そう呟いた趙雲の瞳に宿る真剣な光。

 

その光には、単に自信という言葉以上の強い煌めきがあった。

 

その横顔は凛々しく、そして誇り高い輝きに、思わず見とれていると、

 

「……趙雲殿。」

 

俺と同じことを考えていたのだろうか?

 

愛紗が真剣な表情で趙雲に話しかけていた。

 

「ん?どうされた?関羽殿。」

 

「あなたの志に深く感銘を受けた。……我が名優になって戴けないだろうか。」

 

「鈴々も、おねーさんとお友達になりたいのだ!」

 

「ふっ……志を同じくする人間、考えることは一緒ということか。」

 

「……??どういうことだ。」

 

「関羽殿の心の中に、私と同じ炎を見たのだ。そして志を共にしたいと……そう思った。」

 

穏やかな微笑みを浮かべてそう言うと、趙雲は愛紗に向かって手を差し出した。

 

「友として、共にこの乱世を治めよう。」

 

「ああ!!」

 

「治めるのだ!!」

 

「あー!!私も!!私もだよ!!」

 

がっちり握手している三人の姿を見て、急いで駆け寄った劉備が、自分の手を三人の手に乗せる。

 

ソウもその握手に混ざると思ったが、少し離れたところで顔を青くしていた。

 

「みんなで頑張って、平和な世界を作ろうね♪大丈夫、力を合わせれば、ドーンッ!!ってすぐに平和な世界が出来ちゃうんだから♪」

 

「平和な世になったらまた……」

 

「ん?どうしたの?ソウさん。」

 

「あっ、いえ。それならしっかり劉備殿には頑張ってもらわないといけませんからねぇ。」

 

「まっかせてー!!」

 

「ふっ……なかなかどうして。そういうお気楽さも時には必要というものだ。」

 

「そうだな。……我が名は関羽。字は雲長。真名は愛紗だ。」

 

「鈴々は鈴々!!張飛と翼徳と鈴々なのだ!!」

 

「劉備玄徳、真名は桃香だよ!!」

 

「僕はソウと申します。よろしくお願いいたしますねぇ。」

 

「我が名は趙雲。字は子龍。真名は星という。……今後とも宜しく頼む。」

 

五人は、がっちりと握手を交わし、これからの友誼を誓い合う五人に、

 

言いにくそうな顔をしながら、白蓮が俺たちの方へと近付いてきた。

 

「あ、ごめん、白蓮ちゃん!すっかり忘れてた。」

 

「うぅっ、別に良いけど。……私だって、救国の志はあるんだから。忘れないでくれよな。」

 

「ふふっ、拗ねなくても良いではありませんか。」

 

「す、拗ねてなんているか!ふんっ……」

 

顔を赤くしつつ、プイッと横を向いた白蓮の姿に、皆が思わず噴き出した。

 

そんな風に会話を楽しんでいるうちに、ようやく陣割が決まった。

 

「我らは左翼の部隊を率いることになりました。新参者に左翼全部隊を任せるとは、なかなか豪毅ですな、白蓮殿も。」

 

「白蓮殿は凡愚ではなく、むしろ万能な人間ですからねぇ。経験もたくさん積まれてきているようですし。」

 

「つまり、万能な白蓮ちゃんにそれだけ期待されてるって思って良いのかな?」

 

「そうだろうね。……鈴々、頼むよ?」

 

「任せろなのだ!!」

 

どんっと胸を叩いて自信満々な鈴々の頭を撫でていると、

 

「諸君!いよいよ出陣の時が来た!!」

 

軍の先頭に立っている白蓮の演説が始まった。

 

「今まで幾度となく退治しながら、いくつも逃げ散っていた盗賊共!!

 

今日こそは殲滅してくれよう!!

 

公孫の勇者たちよ!!

 

今こそ攻名の好機ぞ!!

 

各々存分に手柄をたてぃ!!」

 

 

 

「「「「「うぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」」」」」

 

 

 

大地を揺るがす鬨の声を満足げに聞いていた白蓮が、

 

「出陣だ!!」

 

高々と剣を掲げ、出陣の号令を出した。

 

意気揚々と城門から出発する兵士たちと共に、俺たちも一隊を率いて移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「盗賊相手に初陣かぁ……」

 

「どうかなされましたか?」

 

「いや……こういうの、初めてだからさ。」

 

自分の手の震えを見せながら、不安な心情を正直に吐露する。

 

「俺が住んでいる世界じゃ、戦いなんて他人事だったんだ。なのに今、俺はその戦いに身を投じようとしている……ちょっと怖くてね。」

 

ちょっと、と強がって言ったものの、本心で言えばもの凄く怖い。

 

今だって、手が震え、足が震え……桃香たちが近くに居なければ、ヘタヘタと腰が抜けてもおかしくはないんだ。

 

「天の世界には戦争ってなかったの?」

 

「天の世界とか言っても、所詮は同じ人間が住むところなんだ。戦争とか、争いとか、そういうものは当然あったよ。

いつも世界のどこかで戦争が起こってる。だけど俺の周りは平和でさ。喧嘩ならあるけど、戦いってものは無かった。

どこか他人事だったんだ。……だけど、考えたこともなかった現実が今、目の前に突き付けられてる。」

 

戦い。

 

それは人と人とが殺し合うこと。

 

戦争だの、紛争だの。

 

言葉でのみ知っている単語が、現実となって自分の前に現れ、否応なく対峙しなくてはいけない。

 

恐れるなってのが無理なものだ。

 

「愛紗や桃香、鈴々にソウだって平気そうなのに。……天の御使いって言われてる俺が怖がってれば、世話ないよな、ははっ……」

 

「そんなことはありません!戦いを怖がるのは、人として当然ですから。」

 

「そうだよ。戦うっていうのは人を傷つけるってことだもん。……本当はやっちゃいけないこと。」

 

「だけど不条理な暴力を見つけたら、それに向かって敢然と立ち向かうしかないのだ。」

 

「うん。私たちだって正直に言うとちょっと怖いけど……でも、私たちが怖がっていたら、力のない人たちを助けることができないから。」

 

「だから勇気を振り絞り、暴虐と対峙するのです。」

 

「しかも、一番怖いのは戦争に慣れてしまうことですねぇ。怖くなくなると、人は人ではなくなる。だから怖くていいんですよ一刀殿。」

 

「……強いな、四人とも。」

 

「えへへ、私のはカラ元気だけどね♪……愛紗ちゃんや鈴々ちゃんみたいに、武芸の嗜みがある訳じゃないし、ソウさんみたいに、軍略や政治ができるわけじゃないしなぁ~」

 

「そうなんだ?じゃあ桃香よりも俺の方が少しはマシなのかな。」

 

「ほお。ご主人様は何か武芸の嗜みか、軍略、政治ができるのですか?」

 

「これでも一応、剣道部員だしね。それに爺ちゃんから剣術をたたき込まれていたから。……ただし木刀しか扱ったことないけど。」

 

「木刀って木で作られた剣のことー?」

 

「うん。真剣は扱ったことないんだ。」

 

白蓮に貰って腰に佩いている安物の剣を、おっかなびっくり撫でてみる。

 

「これを抜けば人が傷つく。そう考えると、なかなか抜けないなぁ……」

 

「しかしご主人様の身を守る術は、腰間に佩く三尺の秋水のみ。……お優しいのも結構ですが、己の価値というものを考えてみてくださいね。」

 

「そうそうなのだ。お兄ちゃんと、弱い者イジメをする悪者とでは、命の価値が違うのだ。」

 

「そ、そうなのかなぁ?」

 

良く、命の価値は平等って聞くけど。

 

……だけど、俺だって死にたくは無い。

 

「なら戦うしかない、か」

 

平和なときなら、偽善ぶるのもありかもしれないけど……。

 

でも、やっぱり俺は死にたくないんだ。

 

なら戦うしか無い。

 

「………」

 

だけど……俺に人を殺すことが出来るのだろうか――――。

 

ジッと掌を見つめながら考える。

 

「心配なさらずとも、ご主人様は私と鈴々が命に替えてもお守り致します。」

 

「そうそう。だから安心するのだ♪」

 

「私だって頑張っちゃうもん♪」

 

「なら、僕も頑張りますねぇ。」

 

「……ありがとう。」

 

出会ったばかりで何もできない俺を、こうも励まし、そして包み込んでくれる四人の優しさが心に染みいる。

 

それと同時に、もっとしっかりしなくては……という、責任感にも似た感情が湧き上がる。

 

「自分で決めたことだもんな。……俺ももっとしっかりしないと。」

 

現状を認め、自ら選んだ道だ。都合の良い言い訳に心を任せていては、何かを為すことなんてできるはずがない

 

パシッと一度、頬を叩いて、弱気になった自分自身に気合を入れる。

 

「頼りにしてるよ、みんな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある城で…

 

「装!!装はどこに居るの!!」

 

「――様、装様はまた大陸に行かれましたです。」

 

「まぁ、いつも通りのことですな。」

 

「なんで誰も止めないの!!」

 

「シシッ、だって俺たちより、装様の方が偉いし~」

 

「もぅ!!また帰ってくるのを待ち続けるしかないの!?」

 

「シシシッ、まあそう云う事ですね~」

 

「ん、そういえば『大陸』では最近妙な占いが流行っておりますな。」

 

「占いですか?――殿。」

 

「うむ、『流星と共に天の御使いが五台山の麓にやってくる』というものですな。」

 

「っ!?また、あいつが来たの?それとも、もっと前の剣の達人かしら?」

 

「いえ、別の人間のようですな。何でも光り輝く服を着ているとかですな。」

 

「シシシシッ、へぇ~、そりゃあ装様が大陸に行くわけだ~。」

 

「くっ、仕方ないです。ここで装が帰ってくるのを待ちましょう。」

 

「「「了解」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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