No.599093 【東方】吸血鬼の夜 -第一幕-2013-07-19 01:41:59 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:617 閲覧ユーザー数:615 |
近頃、人里では人間から大量の血液が抜かれる事件が多発しているらしい。
聞くところによると、被害は家畜や獣に集中し、人間の被害は余りないとか。もっともそれも死亡者が出ていない程度のもので、貧血で動けなくなるくらいの量は抜かれており、悪ければ昏睡状態になっている者もいるらしくそれなりの騒ぎにはなっているらしい。
そのため、里の人間達は頼れるものにはあらかた頼り、また自ら捜索兼犯人討伐隊を組み犯人の検挙に勤めているらしい。
これには博霊の巫女やら、普段は厄介者扱いされている森の魔女、果ては永遠亭の知識人まで狩り出されて大変苦労しているらしい。
これが私が現状で知りえるこの事件に関するすべてであり、私の前で仁王立ちしている博霊の巫女が剣呑とした笑顔で私に知らせたすべてでもある。
「でっ、そういうことなんだけど。あんたが犯人じゃないでしょうね。」
なるほど、そういうわけかその発想はわからなくもないが早計が過ぎるだろう。ちなみに彼女自身、被害者の一人であり、なんの色気もなく寝込みを襲われた上に血色の悪くなった顔を歪ませながら役をこなしているらしい。ご苦労なことだ。
「期待に添えないで悪いけど、私ではないわ。私はそんなに見境なく吸血行為をするほうじゃないし、詳しくは言えないけど協定によって必要な分の養分は供給されているわ。でも、そうね。」
巫女はテンポの合わない私に焦れているのか段々、目が釣りあがっている。
もっとも彼女が今回のように露骨に感情をあらわすのはめったに見ることはできないのでもう少しからかってみようと思う。
「いただくなら、あなたのをいただこうかしら。」
「ふん、知らないならいいわ。邪魔したわね。」
どうやら、こちらの冗談に付き合ってはくれないらしく足早に部屋の出口へと向かっていく。
「あら、もう帰ってしまうの。せっかく咲夜が紅茶を淹れてくれたというのに。」
いって、私はカップに注がれた真赤な紅茶を口に含む。
私の言葉がわずらわしく聞こえるのか、巫女はカップを鷲掴みにすると一気に口に流し込んだ。そして、そのまま踵を返して窓へと向かった。
「そうそう、霊夢。」
私は、窓枠に足を掛け、今にも飛び出そうとしている彼女を呼び止めた。
「犯人になにか目星はついているのかしら。」
「ないわ。そんなのついてたら真昼間からこんなところに来たりしないわ。」
確かに道理だ。吸血と聞いてとりあえず私を問いただしにきたということか。直感に頼った推理。いつもの彼女らしいがどうやらその勘も貧血では正常に機能しないらしい。まぁ、いい。今回はこちらにも一応の事情がある。たまには手を差し伸べてもいいだろう。いつぞやの借りを返すにもいい機会だ。
「そう、なら私にも協力させてもらえないかしら。」
「珍しいわね、あなたそんなに活発な方でもないでしょうに。まぁ、人では大いに越したことはないし、お願いするわ。」
「ええ、私がやるからには宝船にでも乗った気持ちでいなさい。」
「そう、じゃあ、。よろしくね、レミリア。」
窓枠に屹立した巫女はフワリと浮き上がるとこちらに一瞥した。
「そうだ、霊夢。」
「なによ。忙しいんだから手短にお願いするわ。」
これだけは言っておこう。いくら人里離れた異界だからといっても守るべき礼儀というものはあってもいいと思う。
「今度からは玄関からいらっしゃい。」
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連作予定
ある日人の里で謎の吸血事件が勃発する。
当然、真先に疑われるのは吸血鬼たるレミリア・スカーレットとその一行
さてしも、自身は犯人ではない。しかしその証拠もない、となれば自分で犯人捜しをするしかない。
安楽椅子探偵(外に出れないので)レミリアの事件解決の物語が始まる。