作られた外史――。
それは新しい物語の始まり。
終端を迎えた物語も、望まれれば再び突端が開かれて新生する。
物語は己の世界の中では無限大――。
そして閉じられた外史の行き先は、ひとえに貴方の心次第――。
さあ、
外史の突端をh……
幽州五台山
「ほらぁ~、二人とも早く早く~!」
村も何もない荒野。
そこには三人の少女がいた。
先頭を行く、温かみのある赤髪の天然そうな少女。
肢体は見事なもので、細身でありながら胸は母性と包容力を示すかのように豊かで、その大きさを隠し切れない。
「お待ちください、桃香様。お一人で先行されるのは危険です。」
桃香と呼ばれる少女を追いかける黒髪のしっかりしていそうな少女。
この少女も、負けず劣らずナイスバディというやつだ。
「そうなのだ。こんなお日様一杯のお昼に、流星が落ちてくるなんて、どう考えてもおかしいのだ。」
燃えるような真っ赤な髪に、虎をデフォルメ化した髪飾りをしているつるぺた幼女が、追いかける。
よく言えば天真爛漫、悪く言えば馬鹿そうな少女だ。
「鈴々の言う通りです。もしやすると妖の類かもしれません。慎重に近付くべきです。」
黒髪の少女が、先頭を行く少女に注意する。
すると先頭の少女は困惑しているような顔をする。
「そうかなぁ~?……関雲長と張翼徳っていう、すっごい女の子たちがそういうなら、そうなのかもだけど……」
「お姉ちゃん、鈴々たちを信じるのだ!!」
「そうです。劉玄徳ともあろうお方が、真っ昼間から妖の類に襲われたとあっては、名折れというだけではすみません。」
「うーん……じゃあさ、みんなで一緒で行けば怖くないでしょ?だから早くいこ♪」
少女たちはそんな話をしながら流星が落ちたと思われるほうへと歩いていく。
しばらく歩いた後、先頭を歩いていた劉備が立ち止り、周りをきょろきょろ見回す。
「流星が落ちたのって……この辺りだよね?」
すると関羽が劉備に説明する。
「私たちが見た流星の軌跡は、五台山の麓に落ちるものでした。我らの眼が誑かされていたので無ければ、この辺りでまず間違いは無いでしょう。」
「だけど周りには何も無いのだ。……って、あにゃ?あんなところに人が倒れてるのだ!!」
張飛は周りを探し、少し遠くに何か光っている物があると思ったら、それが人だったのを発見し、そこへ向かって走っていく。
「えっ!?あ、ちょっと、鈴々ちゃん!!」
「ちょっ……!まったく!二人ともどうしてああも猪突なのだ!!」
劉備がそれについて行き、関羽はやれやれと言いながらもついて行く。
「あやー……変なのがいるよー?」
「男の人だね。私と同じくらいの歳かなぁ?」
「二人とも離れて。まだこの者が何者かわかっていないのですから。」
「でも危ない感じはしないのだ。」
そこには青年が気絶している。
青年の服は太陽の光を浴びてキラキラしていて、この時代には無い素材で作られているのは一目でわかる。
「ん……」
こうして、天の御使い北郷一刀と劉元徳の物語が始まる筈だった。
北郷一刀と劉備、関羽、張飛は食事をするため街へと向かっていた。
「おい、お前!!さっさと金をよこしな!!」
「そうなんだな。金さえよこせば殺しはしないんだな!!」
「まぁ、金が少なければそれも保証できないかもな。」
頭に黄色の布を巻いたガラの悪い三人組に絡まれる、黒色のマントを羽織り、ボロボロでダボダボのズボンを穿いて、マントの隙間から見える、白色ですこし高級そうな上着を着る優男。
「ケケッ、金ですか……まぁ、無いこともないですが。」
優男は脅えた風でも無く、平然と答える。
すると三人組の男の髭面の男が、腰に差している大きめの剣を優男の首に少しあてる。
「だから、それをよこせって言ってんだろうが。」
優男はまだ平然としていると、三人組の男の後ろから声が上がる。
「そこの賊!!何をしている!!」
関羽は持っていた武器『青龍偃月刀』を構え、三人組を威嚇する。
すると三人組は操り人形のように関羽のほうを向く。
「わー、ヤバい。あいつは黒髪の山賊狩りだ―(棒)」
「逃げるぞ、お前らー(棒)」
「なんだなー(棒)」
三人組はそう言うとあっという間に逃げて行った。
「「「え?」」」
劉備、張飛、関羽の三人はポカンと間抜けな顔をする。
「今、あの人の首に刀を……、本当にここは…」
三人のさらに後ろにいた北郷一刀はブツブツと何やら呟く。
「それより、そこの御仁。大丈夫でしたか?」
「あぁ、黒髪の山賊狩りさん、ありがとうございました。」
優男は関羽に軽くお辞儀をして、感謝する。
関羽達はまだ戸惑っているが、ブツブツつぶやく北郷一刀と、お辞儀をし続ける優男の二人を見ると、さっさとこの場を何とかしようということですぐに落ち着けた。
「ま、まぁ、とにかく頭を上げてくれ。」
「お兄ちゃんも早く戻ってくるのだ!!」
そして、なんか変な流れで出会った優男も飯屋に向かうことになった。
たっぷりとご飯を食べる劉備、張飛、関羽、北郷。
それに比べ、優男は少ししか食べない。
優男は何かを思っているようで、あえて少ししか食べていないという様子だ。
「ふぅ~」
北郷は自分の分を食べ終えたようで満腹と息をつく。
「それでね……」
劉備が姿勢を正して、男二人に話しかける。
「さっきも説明した通り、私たちは弱い人たちが傷つき、無念を抱いて倒れることに我慢が出来なくて、少しでも力になれるのならって、そう思って今まで旅を続けていたの。」
劉備は熱弁し、その本気さが窺える。
「でも……三人だけじゃもう、何の力にもなれない。そんな時代になってきてる……」
「官匪の横行、太守の暴政……そして弱い人間が群れをなし、更に弱い人間を叩く。そういった負の連鎖が強大なうねりを帯びて、この大陸を覆っています。」
「三人じゃ、もう何も出来なくなってるのだ……」
「でも、そんなことで挫けたくない。無力な私たちにだって、何か出来ることはあるはず。……だから」
北郷が喉を鳴らす。
優男は目を細め、黙っている。
「私たちに力を貸してください!!」
劉備は力を込めて言う。
「ほわっ!?」
北郷は間抜けな声を上げ、椅子から落ちそうになる。
「ふむ、北郷殿はわかりますが……、なぜ僕もなんですか?」
優男は少し疑うように、ゆっくり言う。
「先ほど絡まれている時、全くあの賊たちに引きを取らなかった。しかも、我々と共に、歩んでくださる同志は多いほうが断然良いです。」
しばらくの間、静かになる。
すると優男が机をバンと叩き、立ち上がる。
「感動しました!!今の世の中の辛さに負けず、周りの人間に目を向ける。素晴らしいです!!僕は子供のころから軍略や政治を学んでいます!!これも運命でしょう、ついて行かせてください。ぜひ劉備様の下でこの力、使わせてください!!」
優男は凄い早口で、力強く言う。
しかし、どこか優男の言葉は薄っぺらく感じる。
「本当ですか!!」
劉備達はうれしそうな顔をするが、北郷は悩んでいるような顔をしている。
「北郷殿もそう思いませんかな?」
優男は北郷に質問すると北郷は困ったように返す。
「だけど……俺は君たちのように戦うこともできないし、軍略もできない。普通の、どこにでも居る学生だ。……そんな人間が人を助けるなんてこと、出来るのかな……?」
北郷は人を助けるという行為の重さを感じて、答えを出すのを躊躇っているのだろう。
「北郷殿、これは僕個人の考えなのですが、天の御使いという可能性により、北郷殿は名声、風評、知名度などといった人を引き付ける力を持っていると思います。名声、風評、知名度はすぐにあげることは出来ない。しかし、北郷殿にならできる。それは北郷殿にしかできないことだと、僕は思います。」
優男がそう言うと、的を射ていたようで、三人が説明を続ける。
「山賊を倒したり賞金首を捕まえたりしても、それは一部の地域での評判しか得ることができないのだ。」
「そう。本来ならばその評判を積み重ねていかなければならない。……しかし大陸の状況は、すでにその時間を私たちにくれそうもないのです。」
「一つの村を救えても、その間に他の村の人たちが泣いている。……もう、私たちの力だけじゃ限界が来てるんです。」
北郷は黙って聞いている。
その表情は戸惑いと迷い、そして自分の力を貸してあげたいという気持ちが混ざり合っている。
また沈黙が続く。
そして北郷は大きく深呼吸をし、返答を決めた。
「……分かった。俺で良ければ、その御輿の役目、引き受けるよ。」
「本当ですか!?」
劉備達は嬉しそうな声を上げ、優男は優しく笑う。
「ああ、一宿一飯……正確には一飯かな?その恩義だってあるし。俺でよければ」
その時、劉備たちの顔に疑問が浮かぶ。
「一般の恩?」
「一般の恩……ですか」
「一般の恩……」
「やっぱりですか。」
優男が考えていたことは当たっていたようだ。
「ん?何?一飯って言葉、何かまずかった?」
北郷はまたポカンと間抜けな顔をする。
「え、あの……んとですね、天に住んでた人なんだからお金持ちかなーと思って、ですね。」
「天の御使いのご相伴にあずかろうと……」
「つまり鈴々たちはお金を持っていないのだ♪」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
そして、大声でしゃべっていたため、話の内容を最初から聞いていた女将が、厨房からやってくる。
「……ほぉー」
「げぇっ、なのだ!!」
北郷は着ている服を確認し、劉備たちはアワアワとしている。
「女将さん、僕がお支払いしましょう。」
優男はマントの中、白い服の胸ポケットから財布を取り出す。
「なんか、さっきの賊とそんなに変わらない気がしますねぇ……。」
その後、話し合いによりこの街付近を治めている、公孫賛の義勇兵に参加し、盗賊を懲らしめることになった。
そして公孫賛の下に向かう途中、劉備がきょろきょろしだす。
「この辺り、かなぁ~?」
「女将から聞いた場所はこの辺りですね。」
「きっと丘の向こうにあるんじゃないかなー?」
「それが一番可能性がありますねぇ。」
「じゃあ行ってみよう。」
女将にもらった酒瓶を手に一歩一歩、踏みしめるように丘を登る。
「おお――――――」
眼下に広がる一面桃色の世界。
「これが桃園かー……凄いねー♪」
「美しい……まさに桃園という名にふさわしい美しさです。」
「本当だな。……御苑の桜みたいだ。」
ワクワクした表情を浮かべた張飛が、北郷の周囲をクルクル走り回る。
「さぁ酒なのだ―!!」
「……約一名、ものの雅を分からぬ者もいるようですが」
「あははっ、鈴々ちゃんらしいね♪」
張飛が酒を飲むことに驚く北郷。
しかし、口に出すと絶対に、子ども扱いしたと言われるため、北郷は表情だけにする。
「あれ?さっきから一人足りない気が」
北郷が顎に手を添えて考える。
「結構冷たいんですね、北郷殿。」
北郷から声がする。
「うわぁ!?」
「これから兄弟になるというのに。」
「あぁ、ごめん。決して忘れていたとかそういうものではない・・・よ?」
優男がジト目で北郷を見ると北郷は頭を下げまくって謝る。
「まぁ、北郷殿。そんなことは置いといて、早速始めませんかな?」
「賛成なのだー!!」
張飛は手を上げて喜ぶ。
「そうだ、真名を交換するのを忘れていたのだ!!」
「ま、真名ぁ?……真名って何?」
北郷は軽くしゃべり方がおかしくなる。
「我らの持つ、本当の名前です。家族や親しき者にしか呼ぶことを許さない、神聖なる名……」
「その名を持つ人の本質を包み込んだ言葉なの。だから親しい人以外は、例え知っていても口に出してはいけない本当の名前。」
「みなさんを信頼していますからねぇ。交換しても何もおかしくないでしょう。」
北郷は驚いたような顔をした後、とてもいい笑顔になる。
「分かった。みんなのその真名を大切にさせてもらう。」
四人は北郷の顔を見て頷く。
「我が名は愛紗。」
「鈴々は鈴々!!」
「私は桃香!!」
劉備たち三人が真名を言う。
「僕の真名は『ソウ』と言います。」
一人一人の顔を見て北郷は頷く。
「何をすれば良いのか。何が出来るのか。……今もまだ、俺には分からない。分からないけれど、俺は君たちの力になれればと、そう強く思う。」
四人は北郷の顔を見る。
「だから……これからよろしくお願いします。」
「じゃあ、結盟だね!!」
劉備がそう言ったのを聞くと関羽は掌で包んでいた盃を、空に向かって高々と掲げた。
「我ら五人っ!!」
それに劉備が続く。
「姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは!!」
次は張飛が元気良く。
「心を同じく助け合って!!」
ソウが真面目な顔であり少し楽しそうに言う。
「皆で力無き民を救い!!」
劉備がさらに気合を入れて言う。
「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!!願わくば同年、同月、同日に死せんことを!!」
北郷が待っていましたと言わんばかりに声を出す。
「乾杯!!」
「「「「乾杯!!」」」」
先ほどソウが居なかった時。
「旦那、報酬のほうお願いしますぜ。」
ソウは先ほどの三人組と会っていた。
「棒読みでしたが……まぁ、いいでしょう。」
ソウは自分の腰の裏に手を回す。
「「「へ?」」」
その瞬間、三人組の首は体と離れた。
三人組の体と首からは鮮血が飛び散り、桃園の木を赤に染める。
「ケケッ、報酬は今後の辛いことを体験しなくていい『死』ですよ。」
ソウは手に持った鎌を、また腰の裏へと隠す。
マントに血が付いていないことを確認して、四人の下へと歩きはじめる。
「義昭さんよりも楽しめそうですねぇ。あぁ、早く彼らの死に顔を拝みたいものです。」
ソウを漢字で書くと『装』
いままで何度も装い、騙し、親しい人間を殺してきた。
『死神』と呼ばれた男。
「本当に、とても楽しそうです。」
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恋姫夢想の二次創作です。
ダーク主人公なので好き嫌いが分かれると思います。
基本的には原作を進んでいきます。
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