No.595980

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 550

soranoさん

第550話

2013-07-09 09:12:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:918   閲覧ユーザー数:872

~港湾区~

 

「おら、青坊主!気合い入れてかかってこいや!」

「言うまでもないさっ、行くぞ!」

ロイド達が港湾区に駆けつける少し前、サーベルバイパーの青年とテスタメンツの青年がワジやヴァルド、仲間達に見守られながら1対1で戦っていた。

「あれは………何をしているのかしら?」

「それほど険悪な雰囲気では無さそうですけど………」

「ただのタイマンってわけじゃなさそうだが………」

青年達が戦っていると、ロイドと共にエリィ達がいつの間にかかけつけ、状況を見て戸惑っていた。

「とにかく事情を聞こう。幸い、ワジもヴァルドも来ているみたいだし―――」

そしてロイドが提案しかけたその時

「ちょっとちょっと!あなたたち、何してるのよ!?」

エステルとヨシュアがワジ達の背後に現れた。

「あん………?」

「………へえ………」

エステルとヨシュアを見たヴァルドは眉を顰め、ワジは興味深そうな様子で2人を見つめた。

「まったく、連絡を受けて見に来てみればゾロゾロと………あなたたち、旧市街のテスタメンツとサーベルバイパーね?喧嘩は終わり!とっとと解散しなさいよね!」

「あんだ、てめぇらは………」

エステルの言葉を聞き、戦っていた青年達は戦いの手を止めて、ヴァルド達と共に睨んだ。

「遊撃士協会に所属する者です。あなた達が喧嘩をしていると連絡を受けて、仲裁に来ました。」

「遊撃士だとぉ………!?」

「エステル・ブライトにヨシュア・ブライト………フフ、雑誌で何度か見かけた事があるね。………おっと。”ブレイサーロード”ファラ・サウリン卿と言った方がいいかな?」

そしてヨシュアが名乗るとヴァルドは驚き、ワジは静かな笑みを浮かべて呟いた後、エステルに視線を向けた。

「そりゃどうも。それと何度も他の人達に言っているけど、その呼び方はやめて。………えっと、あなた達が両チームのリーダーってところ?」

「一応ね。僕はテスタメンツのワジ。こっちはバイパーのヴァルドさ。」

「情報通りだね。見た所、喧嘩をしている訳じゃなさそうだけど………?」

ワジの話を聞いたヨシュアは頷いた後、ワジに尋ねた。

「フフ、単なるお遊びさ。せっかくの記念祭だからね。どうせだったら普段と違うことをしようと思ってさ。それで勝ち抜きタイマンバトルをしようって事になったわけさ。」

「か、勝ち抜きタイマンバトル~?」

「………両チームから5人ずつ出して1対1の勝負で勝ち抜き戦をさせる。大将はワジと、そちらのヴァルド。最終的に負けた側が、勝った側の記念祭での飲食費を払う取り決めだ。」

「なるほど、試合みたいなものね。それなら別に構わないか―――って、違う違う!試合をするのはともかく、こんな所でしちゃダメでしょ!?ここは人通りも多いんだし、別の場所でやればいいじゃない!」

アッバスの説明を聞いて一瞬納得しかけたエステルだったが状況をすぐに思い出して、ヴァルド達を睨んで言った。

 

「ハッ、そんなのは俺らの勝手だ。しかしてめえ………遊撃士だか何だか知らねぇが随分と偉そうなクチを叩きやがるな。調子に乗ってんじゃねえのか、アア?」

「あのね………調子に乗ってるのはあなた達でしょ。あたしは常識的なことを言ってるだけじゃない。」

「このアマ………どうやら少しばかり痛い目に遭いたいらしいな?そこの黒髪の野郎と一緒に可愛がってやってもいいんだぜ……?」

エステルの言葉を聞いたヴァルドはエステルの正面に来て、睨んだ。

「う、うーん………ヨシュア、どうしよう?」

「まあ、周りの目もあるし。あまり大人気ない事はしない方がいいと思うけどね。」

「やっぱり?」

「てめえら………何ブツクサ言ってやがる!この”鬼砕き”のヴァルド・ヴァレス様が恐くねえのか!?」

エステルとヨシュアの会話を聞いていたヴァルドは2人を睨んで怒鳴ったその時

「―――やめときなよ、ヴァルド。そのお姉さん、武術込みだったらたぶん君より強いよ?」

ワジが3人に近づいてヴァルドに忠告した。

「なにぃ………!?」

「へえ、わかるんだ?」

忠告を聞いたヴァルドは驚き、エステルは不敵な笑みを浮かべてワジを見つめた。

「何となく、だけどね。そちらのお兄さんは実力的には更に上なのかな?」

「はは………総合的な戦闘力で言えば、エステルの方が上だけどね。」

そしてワジに視線を向けられたヨシュアは苦笑しながら答えた。

「むー………魔術やラピスやサティアさん達の力無しの状態でヨシュアの方が上っていうのは確かにそうなんだけど………決めつけられると、それはそれでちょっと納得行かないわねぇ。」

「まあまあ、遊撃士の仕事は何も戦闘だけじゃないんだし。」

「ククク………こんな小娘が俺より上だと?ハッ………だったら証明してみせろや!」

エステルとヨシュアの会話を聞いていたヴァルドは怒りの表情になった後、エステルの肩を掴んだ。

「エステル………」

「大丈夫、任せて………せーの!」

そしてヨシュアに見つめられたエステルは頷いた後、ヴァルドの腕を掴んで地面に叩きつけた!

「あ”………?」

地面に叩きつけられたヴァルドは呆けた様子で起き上がり

「ほら、言わんこっちゃない。」

ワジは呆れた表情で溜息を吐いた。

「ヴァ、ヴァルドさんが!?」

「な、なんだあの娘………!?」

「すごい………!」

「あれが遊撃士………!」

「…………」

サーベルバイパーやテスタメンツの青年達が驚いている中、ヴァルドは黙り込んだ。

「えっと、大丈夫?」

その様子を見たエステルが声をかけたその時

「ククク………ハハハハハハハッ!」

ヴァルドは凶悪な笑みを浮かべて大声で笑った後立ち上がって武器を肩に乗せ

「―――悪かった。侮ってたみてえだったな。だがよ………さすがにナメすぎじゃねえか?」

「………!」

「オラァッ!!」

エステルに強烈な一撃を放った!

「あ、危な……!」

「エステル………!」

ヴァルドの攻撃をエステルは回避し、ヨシュアはエステルを庇うかのような位置に移動した。

 

「やれやれ………―――君達もちょっと調子に乗り過ぎじゃない?」

その様子を見ていたワジは呆れた後、静かな笑みを浮かべてエステル達を見つめ

「ああ、そうみたいだね。だからと言って謝るのもスジが違うとは思うけど………」

見つめられたヨシュアは答えた後、真剣な表情になった。

「クク………目の色が変わりやがったな。わかるぜ―――てめぇは相当強い。そういったヤツを叩きのめすのが俺は何よりも楽しみでなぁ!とっとと抜けや、アア!」

「………………………」

そしてヴァルドに怒鳴られたヨシュアは厳しい表情でヴァルドを睨み

「ちょ、ちょっとヨシュア!あたしは大丈夫だからあんまり本気にならないでよ!?」

(まったく……こういう所は全然成長せんな……)

(まだまだですわね………)

ヨシュアの様子に気付いたエステルは慌て、エステルの身体の中にいた狐のような姿をした生物と天使は呆れた。

「―――待った!」

するとその時、ロイド達がかけつけた。

 

「あれ………」

「ロイド君達………?」

かけつけたロイド達に気付いたワジとエステルは驚いた。

「話は聞かせてもらったよ。双方とも………まずは落ち着いてくれ。」

「ハッ!落ち着いていられるかよ!遊撃士!いいじゃねえか!噂には聞いてたが、まさかここまでゾクゾクさせてくれるとはなぁッ!!」

「だから落ち着いてくれって言ってるだろう………そもそも、ここは公共の場所だ。タイマン勝負にしてもスジを通すにしても他の場所でやってくれ。」

ヴァルドの言葉を聞いたロイドは溜息を吐いた後、注意したが

「んー、そうは言ってもねぇ。ここまで盛り上がった以上、ハイ解散ってのもアレじゃない?」

「ワジ………!?」

「ヴァルドは頭に血が上ってるしお姉さん達もお仕事で来ている。お互い勝負するくらいしかスジは通せないんじゃないかな?」

「クク、その通りだぜ………!」

「………あたしも何だかちょっと腹が立って来たわね。そっちがその気なら決着を付けてもいいんですけど?」

「上等だ………!」

「ああもう………!ヨシュア!君も何とか言ってくれよ!」

「……ごめん。僕もちょっと退けないかな。」

「うっ………」

勝負する気満々であるヴァルド達やエステル達を見て表情を引き攣らせた。

 

「フフ、それじゃあ僕はヴァルドに加勢しようかな。さすがの君も、その2人を相手にするのは難しいだろうし。」

「ケッ……勝手にしろや。」

「だあああ~っ!だから何でそうなるんだって!」

(こ、困ったわね………)

(このままだと凄い乱闘騒ぎになってしまいそうですね………(というかラピス姫やサティアさん達の力を宿しているエステルさんが暴れたら、周りの被害がとんでもない事になるのが目に見えているんですけど………しかもこんな時に限ってストッパー役になってくれそうなミントさんやフェミリンスさんがいないですし。))

ワジとヴァルドの会話を聞いたロイドは大声を出して2人を睨み、エリィは疲れた表情で溜息を吐き、ティオはジト目でエステル達を見つめた。

「―――あのよぉ。そんなにやり合いたいんなら別の方法でやればいいんじゃね?」

するとその時、ランディが提案した。

「え………」

「ふぅん……?」

「せっかくの祭りだ………遺恨を残してもつまらねぇだろ。だったらスカッとする方法で決着を付けるっつーのはどうだよ?」

「スカッとする方法だぁ………?」

「えっと………ランディさん、どういうこと?」

ランディの話を聞いたロイド達はそれぞれランディを見つめた。

「ああ、そいつはな――――」

ロイド達に見つめられたランディは口元に笑みを浮かべて説明し、その後ロイド達はランディの提案を実行する為に旧市街に移動した………

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択