No.594587

IS−インフィニット・ストラトス−黒獅子と駆ける者−

トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!

2013-07-05 16:54:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:655   閲覧ユーザー数:631

 

 

 

episode187 守る為の力

 

 

 

「・・・う、うぅ」

 

 一夏は小さく呻くと、目を開ける。

 

 最初に目に映ったのは、白い天井であり、ここが病室であるのにそう時間は掛からなかった。

 

「ここは・・・」

 

 首を左右に振って辺りを見る。

 

「気が付いたようだな、一夏」

 

「・・・・?」

 

 と、声がする方向を見ると、一夏が寝かされているベッドの近くの壁に隼人がもたれかかっていた。

 

「隼人・・・」

 

「相変わらず悪運は強いな」

 

「・・・・」

 

「特に身体に異常は無いそうだ。後遺症も無いとの事だ」

 

「・・・・」

 

 

 

「・・・なぁ、隼人」

 

「なんだ?」

 

「・・・何が・・・あったんだ?」

 

「・・・やっぱり、何も覚えてないのか」

 

「・・・・」

 

 一夏はゆっくりと頷く。

 

 

 

「覚えているとしたら・・・父さんが――――――」

 

 と、一夏はハッとして一気に半身を起き上がる。

 

「そうだ!あの後どうなったんだ!父さんが死んだ後は!?」

 

「・・・・」

 

 隼人は視線をずらす。

 

「・・・覚悟を決めて聞いてくれ、一夏」

 

「・・・・」

 

「ショックは相当大きいだろうが・・・」

 

「・・・・」

 

 

 

「インフィニティーに付着していたナハトヴァールの破片がお前の怒りと悲しみに反応して、一夏を取り込もうと侵食し始めたんだ」

 

「な、ナハトヴァールだって!?」

 

 一夏は驚きの表情を浮かべる。

 

「で、でもあれはお前が倒したはずだろ!?」

 

「あの時点ではな。だが、まさかやつが種をインフィニティーに密かに仕込んでいたとは想定外だった」

 

「・・・・」

 

「不覚だったよ。俺としてはな」

 

「・・・・」

 

 

 

 

「・・・・!」

 

 と、一夏はあることに気づいてとっさに右手首を見る。

 

 そこにはいつもあったはずの相棒の姿が無かった。

 

「白式が無い・・・?」

 

「・・・・」

 

「やはり気付かれたか」と、小さく呟く。

 

「隼人。白式は今何所にあるんだ?」

 

「・・・・」

 

「修理中なのか?」

 

「・・・・」

 

「・・・何があったんだよ。白式に・・・」

 

 隼人の表情を見て不安が過ぎる。

 

「・・・・」

 

 隼人は腹をくくって口を開く。

 

 

 

「さっきの話の続きだ。

 ナハトヴァールが完全ではないが復活し、お前諸共支配されたインフィニティーは暴走した」

 

「・・・・」

 

「お前がナハトヴァールに完全に取り込まれるのも時間の問題だった。

 ・・・それを何としても防ぐ為に、俺はお前を助ける為に―――――」

 

「為に?」

 

 

 

 

「――――――インフィニティーを・・・白式を破壊した」

 

 隼人は言いづらかったも、何とか事実を言い出した。

 

「っ!?」

 

 一夏は目を見開いて衝撃を受ける。

 

「な、なんだって・・・?」

 

「・・・・」

 

「白式を・・・破壊した!?そ、そんな・・・」

 

「すまない、一夏。お前を救うには・・・これしか方法が無かった。いや、それが精一杯だった」

 

「・・・・」

 

 

 

「何で・・・」

 

「・・・・?」

 

「・・・なんでだよ。何でっ!!」

 

 一夏はベッドから降りると、隼人の胸倉を掴んで壁に押し付ける。

 

「・・・・」

 

「何で白式を破壊したんだよ!!隼人!!」

 

「・・・・」

 

「他に方法があったはずだろ!!なのになんでそんな方法を取ったんだよ!!」

 

「・・・・」

 

「答えろよ!!」

 

 と、一夏は勢いよく右拳を突き出し、隼人の左頬を殴った。

 

 

 

「・・・・」

 

「・・・・!」

 

 一夏は「ハッと」なって冷静になると、隼人を見る。

 

「気が済んだか」

 

 隼人の左頬は赤く腫れ、口角から一筋の血が流れ落ちる。

 

「・・・・」

 

 殴ってしまった事に動揺し、震えながら後ろに下がってベッドに座り込む。

 

 

「俺だって・・・他の方法を模索したさ。だが、それでも無かったものは無かったんだ」

 

 隼人は流れ落ちる血を左手の甲で拭い取る。

 

「・・・・」

 

「それに、仮に白式を破壊せずに救えたとしても、ナハトヴァールに侵食された白式をお前の元に置かせる訳には行かない。

 いつ爆発するは分からない爆弾を常に持っているようなものだ」

 

「・・・・」

 

「最低限、コアだけは回収している。だが、第三形態移行したコアが同じように作っても他の外装に馴染むかどうかは分からないがな」

 

「・・・・」

 

 そのまま一夏は俯く。

 

「・・・だが、なぜそこまで白式にこだわる」

 

「・・・・」

 

「いや、聞くまでも無かったか」

 

「・・・・」

 

「守りたい者を守る為の力を失ってしまったから、か」

 

 

 

 

 

「そうだよ。力が無かったら、誰も守れないじゃないか」

 

「・・・・」

 

「また・・・俺は守られっぱなしになるじゃないか。あの時の様に!!」

 

 拳を握り締める。

 

「・・・一夏」

 

「俺は誓ったんだ!千冬姉も、仲間達も、箒も・・・みんな守るって・・・。なのに・・・」

 

「・・・・」

 

「力が無くなって、もう俺はどうする事も出来ないだろ・・・」

 

 更に力を入れて拳を握り締め、小刻みに震える。

 

 

 

 

「・・・一応、千冬さんと輝春さんにお前が起きた事を伝えておくぞ」

 

「・・・・」

 

「お前の気持ちは分かるが・・・いつまでも不貞腐れるなよ」

 

「・・・・」

 

「それに、まだ可能性が消えたわけじゃないんだ。希望を持て」

 

「・・・・」

 

 隼人はそのまま病室を出た。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

「やっぱり、ショックは大きかったんだね」

 

「えぇ」

 

 それから移動し、ネェル・アーガマ内にある束のラボに来ていた。

 

「それで、殴られちゃったってわけ、か」

 

「当然の報いですよ」

 

「どうかな?それって逆恨みってやつだよ?」

 

「・・・・」

 

「むしろ恩を仇で返したって言う見方も出来るよ?」

 

「かもしれませんね。でも、その理由を作ったのは俺ですからね。

 ですから、何も言えません」

 

「そっか・・・」

 

 

「それで、どうでしたか?」

 

「はっくんの言う通り白式のコアを精密検査してみたよ。ウイルスに関連するものは確認されてない。無論、危険な物もね」

 

「そうですか」

 

 隼人は目の前で透明なケースに入れられている白式のコアを見る。

 身体を失っても、コアは宝石よりも綺麗に輝いていた。

 

「新しくボディーを作っても、今の白式に合うかどうか」

 

「・・・やっぱりここまで成長していると、他のボディーを拒絶する可能性が大きいですか」

 

「まぁね。

 理論的にISの形態移行は第三まではあるんだけど、実際に行ったのは白式が初めて。だから分からない事が多いんだよ」

 

「理論的に、か」

 

「だから、そうなると次の手は・・・コアを初期化して新しいボディーに馴染ませるって言う強引な技があるけどね。

 ただ―――――」

 

「ただ?」

 

「・・・試しにやってみたんだけど・・・白式が初期化コマンドを受け付けないんだよね」

 

「白式が・・・初期化を拒んでいる?」

 

「そう。いくらやっても、どんな手を使っても、白式はうんともすんとも言わない」

 

「・・・・」

 

 隼人は顎に手を当てる。

 

「こんなの初めてだよ。コアがここまで意思を表面化したのは・・・」

 

「・・・・」

 

「束さんでも、もうお手上げの状態」

 

 と、束は両手を上に上げる。

 

「束さんでも駄目ですか」

 

 隼人は白式のコアを見つめる。

 

(やはり白式は予想以上に進化し続けているな。いづれユニコーンやバンシィの様に明確な意思が現れ、もしかすれば実体化するかもしれんな)

 

 

 

 

 

「束さん」

 

「なに?」

 

「白式の第一から第三形態までのデータはありますか?」

 

「白式のデータ?まぁ全部揃っているけど・・・?」

 

「でしたら、それを全て俺にください。無論、例の動力機関のデータも含め」

 

「・・・まぁ、はっくんが言うなら別に良いけど・・・何に使うの?」

 

 束は疑問を口にしながら、白式のデータをすぐに掻き集め、外部メモリー端末にコピーを始める。

 

「見直しってやつですよ」

 

「見直し?」

 

「もし新しくボディーを作るのなら、第一から第三形態の長所を持った新しい白式を作れます。」

 少なくとも可能性はまだ潰えたわけではないので」

 

「まぁ、確かに出来ないってわけじゃないけど・・・」

 

 

「あぁそれと、紅椿と展開装甲のデータも一緒に添えてくれますか?」

 

「えぇ!?あれも!?」

 

 さすがの束も驚きを隠せなかった。

 

「・・・もしかして展開装甲を搭載した白式の設計図でも作る気なの?」

 

「悪くは無いと思いますが?」

 

「・・・そりゃ、私だって一時期は白式にも展開装甲を搭載しようかなぁって言う事も考えん事もなかったけど・・・。

 でも、それだと燃費が劣悪を極めてしまうから没にしたんだよ」

 

「でも、あの動力機関があれば、問題は万事解決となります」

 

「そりゃ解決するんだろうけど、あの動力機関のデータを持っても猫に小判になるだけな気がするよ?」

 

「どういう意味で?」

 

 怪訝な様子で聞き返す。

 

「白式にあのインフィニティーってのが入ってからあの動力機関は完全なものになった。だからデータも揃って完全な物が作れるようになっても、それを作る為の材料が無い」

 

「・・・・」

 

「それでも必要なの?」

 

「えぇ。使い道はありますからね」

 

「使い道、ねぇ」

 

 束は少し疑惑の目で隼人を見るも、データをコピーしたメモリー端末を差し出す。

 

「はっくんの事だから悪用する気はないとは思うけど、一応言っておくよ。

 絶対に外部に流出させないでよね」

 

「もちろんですよ」

 

 隼人はメモリー端末を束より受け取る。

 

 

「・・・ところで、あの機体はどうするんですか?」

 

 隼人の視線の先には、台の上に仰向けになって横たわるフリーダムが居た。

 

「一応保管はしておくよ。ちーちゃんにきーくん、いっくんのお父さんだしね」

 

「・・・・」

 

「調べてみたけど、内部機構はオーバーテクノロジーの塊だったよ」

 

「・・・・」

 

「心臓部は完全に破壊されているから、修復は不可能だし、何より調べた範囲内でもかなり複雑に出来ている」

 

「・・・・」

 

「今後も精密に調べていくつもりだよ。何か分かるかもしれないし」

 

「そうですか」

 

 隼人はため息に近い息を吐く。

 

「それにしても、本当に信じ難いよ」

 

 束は少し悲しそうな目でフリーダムを見る。

 

「ちーちゃんときーくん、いっくんのお父さんの魂があの機体に宿っていたなんて」

 

「・・・・」

 

「それほど・・・三人の成長を見たり、真実を伝えたかったんだね」

 

「・・・・」

 

「一度死んで転生した、はっくんはどう思う?」

 

「・・・さぁ。どうでしょうね」

 

「・・・・」

 

「ただ言える事は、人間の執念は科学を超えた現象を起こしうるって事ですね」

 

「執念、か」

 

「・・・・」

 

「信じ難いけど、ありうるかもね。現に目の前にそういう人が居るんだから」

 

 と、不敵な笑みを浮かべる。

 

「そうですね」

 

 隼人も「ふっ」と鼻で笑う。

 

「では、俺はこれで」 

 

 隼人は束に一言言って、ラボを出る。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

「隼人・・・」

 

 と、自室に戻る途中で、廊下で箒とばったりと会う。

 

「箒か。どうした?」

 

「・・・・」

 

 

「・・・一夏の事か」

 

 箒の表情から聞きたい事を察する。

 

「あ、あぁ」

 

 少し歯切れが悪く答える。

 

「それより、その傷は?」

 

 箒は隼人の左頬が赤く腫れている事に気付く。

 

「まぁ、怒りを受けた痕って所だな」

 

「・・・殴られたのか?」

 

「まぁな。やられて当然さ」

 

「・・・・」

 

「かなりショックを受けている。まぁ、その原因を作った俺が言うべきじゃないんだろうが・・・」

 

「・・・隼人」

 

「・・・・」

 

 

 

「・・・一応、ユニコーンから事情は聞いている」

 

「・・・・」

 

「隼人はやれるだけの事をやったんだ。

 そう落ち込まなくても・・・」

 

「だからと言っても、親友から戦う力を・・・大切な人達を守る為の力を奪った事に変わりは無い」

 

「それは・・・」

 

 箒は言おうにも、言葉が続かなかった。

 

「・・・出来るだけ一夏を支えてやってくれ。今は少し顔合わせが出来づらい」

 

「あ、あぁ。分かった」

 

 箒は頷くと、病室の方へと向かっていく。

 

 

 

 

「・・・・」

 

 隼人はため息に近い息をゆっくりと吐く。

 

(どうにかしないとな・・・)

 

 右手に持つメモリー端末を見る。

 

(うまく行く保障はないが・・・あれしかないだろうな。白式を復活させる可能性は・・・)

 

 

 

 

「お父さん!」

 

「・・・・?」

 

 すると後ろから声を掛けられて隼人が振り返ると、ヴィヴィオがこっちに来ていた。

 

「ヴィヴィオ。そう走っていると――――――」

 

 

 隼人が言い終える前に、ヴィヴィオは案の定躓いてこけた。

 

「やっぱりか・・・」

 

 すぐにヴィヴィオの元に走り寄る。

 

「大丈夫か?」

 

「う、うぅ・・・」

 

 ヴィヴィオは頭を上げると、顔を赤くし、涙目になっていた。

 

「もう少し早く言うべきだったな」

 

「お、お父さん」

 

 少し泣くじゃくるも、泣くまではしなかった。

 

「大丈夫だ。幸いかすり傷もないから良かった」

 

 隼人はヴィヴィオを抱き抱える。

 

「でも、今度からは気をつけろよ」

 

「・・・うん」

 

 涙目になりながらも、頷く。

 

「ところで、どうしてここに?」

 

 そもそもヴィヴィオが自分から部屋を出る事はあまりない。

 

「・・・お父さんを・・・探しに・・・」

 

「どうして?」

 

「・・・・」

 

「・・・寂しかったから?」

 

 こくりと縦に頷く。

 

「そうか。分かった」

 

 隼人はヴィヴィオを下ろすと、左手を差し出す。

 

「今部屋に戻る所だったからな。一緒に行こう」

 

「・・・うん!」

 

 ヴィヴィオは笑顔を見せ、隼人の左手を握って一緒に部屋に戻っていく。

 

 

 

 

 

 


 
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