episode186 失われた希望
「・・・・」
闇の色に染まったインフィニティーはマスターフェニックスを睨む。
「・・・何だ。この威圧感は」
あまりもの威圧感に少したじろぐ。
「・・・うぅ・・・・があぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
叫びを上げるとアロンダイトを振るい、一気にマスターフェニックスに向かって飛び出す。
とっさにバインダーソードを前に出すも、アロンダイトが衝突した途端に吹き飛ばされる。
「っ!?」
更にマスターフェニックスと一瞬で距離を詰めると左手で右腕を掴むと、掌のビーム砲をゼロ距離で放ち、右腕を吹き飛ばず。
「ぐっ・・・!」
苦し紛れに下がり、落ちていくバインダーソードを蹴り飛ばすも、インフィニティーはアロンダイトを横に振るって真っ二つに切り裂くと、左手に右肩のビームブーメランの取っ手を掴んで投擲する。
マスターフェニックスはとっさにバインダーソードを振るいビームブーメランを弾き飛ばすも、ビームブーメランは軌道を変えてそのままマスターフェニックスの背面を切り付ける。
「があぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そのまま背中左側の長距離ビーム砲を展開し、トリガーを引いて高出力のビームを放ち、マスターフェニックスの左脚をかすれ、装甲表面が蒸発する。
(何だ!?さっきまでと動きやパワーが違う!?)
その変化に戸惑うも、とっさに猛攻を避け続ける。
――――――――――――――――――――
「・・・・」
その光景に隼人は息を呑む。
(・・・あれが一夏だって言うのか)
あまりもの変化に唖然としていた。
「隼人君!」
『隼人!』
『隼人さん!』
と、後ろよりユニコーンとリインフォース、ツヴァイがレギナを撃破しながら向かってくる。
「一体何が起きているの!?何で一夏君のインフィニティーがあんな姿に・・・!?」
「俺にも一夏の身に何があったのか分からない」
「でも、あれって・・・!」
「あぁ。唯一分かる事と言えば――――――」
と、マスターフェニックスに容赦なく猛攻を仕掛ける黒いインフィニティーを見る、
「今のインフィニティーに・・・見覚えのある姿だという事だ」
「・・・・」
「リインフォース。お前は気づいているか?」
『・・・えぇ。先ほど感じました』
「そうか・・・」
『どういう事なんですか?』
怪訝そうにツヴァイが聞いてくる。
「インフィニティーが変化してから・・・どういうわけかナハトヴァールの感覚が出てきた」
『えぇっ!?』
「ナハトヴァールの!?で、でもあれは!」
二人が驚くのも無理は無い。
ナハトヴァールはあの時太陽に向けて吹き飛ばし、消滅させたはず・・・
「確かにナハトヴァールはあの時完全に消滅させた。
なのに何でインフィニティーからやつの反応が出てきたのかが全く分からない」
「・・・・」
「もしかしたら・・・」
ユニコーンには思い当たる節があった。
「何か思い当たるのか、ユニコーン?」
「確証は無いけど、あの時ナハトヴァールが暴走して戦っている最中に、一夏君があいつに触手で捕まったよね」
「・・・そういえば」
『確かにあったな』
『私も覚えがあります』
三人は記憶を辿ってそんな事があったことを思い出す。
「もしかしたら、その時に自らの意思を宿らせた破片をインフィニティーに付着させていたんじゃ・・・」
「何?」
『自らの意思を宿らせた破片を・・・?』
「もし一夏君が怒りか悲しみが頂点を超えた時に、発動するように仕込んでいたのなら・・・」
「・・・このような状態になる」
『だが、その状態では完全な復活はできないはず』
『それに、強さなら隼人さんのほうが上のはず。取り付く事が出来るのなら、わざわざ一夏さんに取り付く必要は――――』
「だからこそ、一夏に取り付いたんだ」
『どういう事ですか、隼人?』
怪訝な様子で隼人に聞き返す。
「俺に取り付いても、もう俺は悲しみを感じなくなっているから、発動条件が満たせない」
『・・・そうでした』
「でも、一夏君なら発動条件を満たす事ができる」
「それに、ナハトヴァールに対抗する為のインフィニティーが一緒なら、これほど好都合な復活条件は無い」
『・・・・』
「でも、皮肉なものだね」
と、ユニコーンは目を細めて黒いインフィニティーを見る。
「ナハトヴァールに対抗する為のインフィニティーが、まさかあいつに奪われて自らの力にするなんて」
「全くだな」
『・・・・』
「だが、何てしつこいやつなんだ」
「全くだね。もう呆れ返るほどだよ」
『・・・・』
「むしろ、もう凄さを感じるよ。そのしぶとさに」
『・・・・』
「このままだと一夏君は心身ともにナハトヴァールに侵食され、そのまま第二のナハトヴァールになってしまう」
『そ、そんな・・・』
『織斑が・・・ナハトヴァールに・・・』
「・・・・」
隼人は黒いインフィニティーを見る。
「もう、手段は残されてないな」
『隼人?』
隼人の呟きにリインフォースは首を傾げる。
「どう考えても、あいつを救うにはこれしかないな」
「・・・・」
「リインフォース、ツヴァイ」
『はい?』
『何でしょうか?』
「・・・ツインユニゾン。いけるな?」
『『っ!?』』
その言葉を聞き、二人は驚愕する。
『で、ですが!?』
『隼人さん!?』
二人は食い下がる。
「もうそれしかないんだ。一夏を確実に救う方法は」
『で、でも、そんな身体でツインユニゾンは負担が大きすぎます!』
『そうですよ!ただでさえツインユニゾン隼人さんへの負担が尋常ではないのに、今の状態でツインユニゾンを行ったらどうなるか!』
「・・・・」
隼人は視線を逸らす。
「やっぱり・・・そういう事だったんだね」
ユニコーンはさっきの会話で隼人の今の状態を察した。
「あの時一瞬だけ表情が歪んでいたのは、今までの戦いで受けた負担による影響なんだね」
「・・・やっぱり、隠し切れなかったか」
と、ため息を付く。
「それに、リインフォースにも気付かれていたか。いや、気付かれて当然か」
『隼人・・・』
「・・・分かっていて、やるんだね」
「あぁ」
『なぜ・・・そんな無茶な事ばかり』
リインフォースの声には不安の色があった。
「二人が俺を心配するのは分かる。だが、今回ばかりは無茶を通してもやらなければならない」
「・・・・」
「あいつには関係の無い事なのに、それに巻き込ませるわけにはいかない」
『それは・・・』
「それにな、あんな化け物を仕留め切れなかった俺の責任もある」
『・・・・』
「こうしている間にもナハトヴァールはどんどん一夏に侵食している。後悔する前にやらなければならない」
『・・・・』
『・・・・』
「無論限界時間までに終わらせるつもりだ。もしそれ以上を越したのならお前達から強制解除してもいい
俺が無茶しないようにエネルギーの制約を付けてもいい」
『・・・・』
『お姉ちゃん』
『・・・分かりました。やりましょう』
「・・・ありがとう」
『でも、決して無茶だけはしないでください!』
『リインもです!』
苦渋の決断の様に、リインフォースとツヴァイは渋々承諾する。
「すまないな、二人共」
そうして二人は隼人に近付くと、肩に手を置く。
『『「ツインユニゾン・・・インッ!!」』』
三人は光に包まれると、一つになって形状が変化し、光が弾け飛ぶ。
そして光の中よりツインユニゾンによって誕生するアルティメット・ゼロが出現する。
「・・・一夏。待っていろ」
隼人は右手に持つホフヌングを一回振るうと、背中のウイングを展開し、黒いインフィニティーへと向かって飛び出す。
――――――――――――――――――――
「・・・一夏」
「・・・・」
千冬と輝春はマスターフェニックスに肉薄するインフィニティーを見て呆然としていた。
輝春の腕の中には事切れたフリーダムが抱えられていた。
二人も止めに行きたいのだが、現状を考えて今飛び込むのは無謀だった。
少なくとも性能の差がありすぎる上に、暴走している。自殺行為に等しかった。
「・・・私はどうすれば・・・」
と、レヴァンティンを握る右手を柄がきしむぐらい握り締める。
(どうする事も出来ないのか・・・俺達は・・・)
何も出来ない自分が悔しく、奥歯を噛み締める。
――――――――――――――――――――
「――――――!!」
一夏は言葉にならない獣の様な叫びを上げながらマスターフェニックスにアロンダイトを連続で振るっていくも、必死にかわしている。
それでも何回か身体のあちこちに切り付けられている。
(さすがにこいつはまずいか・・・!)
状況的にも自分が不利と言うのは明らかだった。
(癪に障るが、ここでやられるよりマシだ)
と、マスターフェニックスは周囲にいるレギナを大量に呼び寄せると、黒いインフィニティーに向かわせ、攻撃を掛ける。
「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一夏は勢いよく回転しながらアロンダイトを横に振るい、ビームファンを手にして切りかかってくるレギナを四機以上を切り裂く。
「・・・この借りは必ず返すぞ」
その間にもマスターフェニックスはそこから一気に飛び出し、宙に出来た裂け目に入って撤退する。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
一瞬の内に大量に居たレギナは撃破され、一夏は肩で息をしていた。
「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
そのまま空に向かって身が裂けんばかりに叫ぶ。
「・・・・」
と、何かに気付いて後ろに振り返ると、アルティメット・ゼロが近付き、距離を離して止まる。
――――――――――――――――――――
「・・・・」
隼人は黒いインフィニティーを見つめる。
「一夏・・・」
「・・・・」
黒いインフィニティーはゆっくりと身構える。
「まさかお前がこんな事になるとは・・・」
「・・・・」
すると一気にそこより飛び出し、隼人にアロンダイトを振り下ろすが、ホフヌングを前に出して斬撃を受け止める。
「・・・俺はどこまでも詰めが甘いな」
そのまま黒いインフィニティーを押し返して左腕のアイゼンの後部スラスター三基を噴射して先端にある杭を突き出して胸部に叩き付ける。
しかし手加減してリボルバー式の弾倉の炸薬は破裂させてない。
「グアァァァアァァァァァッ!!」
一夏は攻撃を諸共せずに左手を突き出すも、隼人は左手を右足で蹴り上げ、更に頭部右側面に左足を振るい、蹴り飛ばす。
体勢をすぐに立て直すと背中の四枚の赤い光の翼より無数の赤い羽根を飛ばすも、隼人はホフヌングを振るって衝撃波を放って赤い羽根を消し飛ばす。
「ナハトヴァール。お前のしつこさには呆れ返るよ」
隼人はボソッと呟くも、黒いインフィニティーは一気に飛び出してアロンダイトを振り下ろすが、隼人はアイゼンで斬撃を受け止める、
「むしろそのしつこさに凄さを感じる」
そのまま黒いインフィニティーを押し返し、ホフヌングを振るってアロンダイトのビーム刃部を通り越して本体を切り裂く。
「だが、お前は一つだけ大きな間違いをした」
少し殺気だった声で呟くと、ホフヌングを二つに割って両手に持ち直して構える。
「それは・・・・・・俺の親友に手を出した事だ」
そしてアブソリュートエクストリームモードを発動させ、アルティメット・ゼロが金色に輝く。
「一夏を利用した事が、お前の最大の失敗だ!!」
隼人は一瞬の速さで黒いインフィニティーの横を通り過ぎる際に腹部を切り付ける。
「っ!?」
驚いている間にも隼人は次々と黒いインフィニティーに切り付けていく。
直後に上下を飛び交い、背中の翼とマウントラックを切り裂くと、更に両手首を切り裂く。
《アブソリュートブレイカー・・・起動》
するとアルティメット・ゼロの金色の輝きが増し、胸部のコアとツインアイが赤く発光する。
本来ならバンシィ・ノルンの単一能力であるが、ベースが同じである為にアルティメット・ゼロでも使用可能である。
そして最も違う点は、バンシィ・ノルンでは思いデメリットがあるが、アルティメット・ゼロではデメリットが無い。
「今度こそ、完全に消滅しろ!」
隼人は更に一瞬の速さで飛び出すと、ホフヌングを連結して大剣にし、連続で黒いインフィニティーに切り付ける。
数回切り付けると大きく迂回して再度黒いインフィニティーに接近し、一番重い一撃を加える。
隼人が黒いインフィニティーの後ろで止まると、金色の輝きが消えると、そのままユニゾンアウトしてリインフォースとツヴァイが出てくる。
インフィニティーは細かく震えると、身体中にヒビが入っていく。
「・・・・」
そして次の瞬間に、インフィニティーは光を放ちながら粉々に砕け散る。
その中より気を失った一夏が出てきて、とっさにリインフォースが抱き止める。
「・・・・」
隼人はデストロイモードからユニコーンモードに戻すと、ゆっくりと後ろに振り返る。
『・・・大丈夫です。ナハトヴァールの反応は全くありません』
「そうか・・・」
と、隼人は一夏の右手首を見る。
本来ならあったはずの白式の待機状態である白いガントレットが無かった。
「・・・・」
『隼人さん・・・』
「・・・一夏には・・・どう言ってやればいいんだろうか」
『・・・・』
「何とかこいつだけは回収できたが・・・」
隼人は右手に握っている物を見る。
それは第三形態移行して輝きが増した立体菱形の形をした白式のコアであった。
『コアがあっても、それを囲う殻は・・・もう・・・』
「・・・・」
(バインドを倒す希望は・・・潰えてしまった、か)
少し離れた所でユニコーンは深くゆっくりと息を吐く。
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!