No.592988 IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜ドラーグⅡさん 2013-06-30 20:43:21 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:858 閲覧ユーザー数:828 |
オータムが部屋に閉じ籠ってからこの秘密基地内を重い空気が漂っていた。
「……………」
「……………」
秘密基地って言っても誰も寄り付かない廃墟の建物の一室だ。チヨリちゃんの沈黙が伝播してなんか俺も話しちゃいけないみたいな空気ができちまっている。
それにしてもチヨリちゃんはさっきから難しい顔をしてパソコンとにらめっこしてるけどなにを見てるんだろう?
「ふーむ……」
「…なぁ、チヨリちゃん」
「ん? なんじゃ?」
「さっきから何見てるんだ?」
「あぁ。さっきの映像をな。この映像が撮られた場所が何処なのか探っておったんじゃよ」
「見つかりそうか? スコールの居場所」
俺の問いにチヨリちゃんは首を横に振った。
「映っている場所が漠然としすぎじゃ。こんな地下室、この世界にごまんとあるわ」
「所在特定信号は使えないのか?」
「ダメじゃ。その情報の交換はやっておらん。スコールが決めておった」
「ダメか…」
所在特定信号を使えないとなればスコールのIS、セフィロトの居場所はわからない。
正直言うとスコールが生きているかどうかさえわからない状況だ。もうとっくにお陀仏ってのもありえる。
(どうしたもんか……)
首を触れば俺のセフィロトがチョーカーとなって巻きついている。
「…セフィロト……?」
そこから俺は瞬間的にある考えに至った。
「そうだ! サイコフレームだ!」
「へ?」
突然大声を上げた俺にチヨリちゃんがきょとんとした目を向ける。
「サイコフレームを使うんだよチヨリちゃん!」
「さ、サイコフレームが…なんじゃって?」
「サイコフレームの共鳴現象! あれを使うんだよ!」
するとチヨリちゃんがハッ目を大きく開いた。
「スコールとお前、二つのセフィロト、二つのサイコフレームを共鳴させて場所を探ろうということか?」
「そういうこと! 上手く行けば分かるかも!」
「じゃが…そんな都合のいい事が起こり得るのかのぉ…」
「やってみなけりゃわかんないって。ここでなにもしないよりはマシさ。それにチヨリちゃんも言っただろ? 俺のセフィロトのサイコフレームは他のサイコフレームへのカウンターだって。やってみる価値はあると思うぞ」
「なるほど…確かに、やってみる価値はあるな」
チヨリちゃんはパソコンを置いた。
「早速始めようかの。瑛斗、サイコフレームの発動はできるな?」
「もちろん! けど、発動する時に叫んじゃう癖があって…外なら大丈夫かな?」
「我慢せんか。外で叫ばれた方が目立つわい」
「叫ばないようにか…頑張ってみる」
チョーカーに意識を集中させると黒い光が溢れ出して俺の体を包み込んだ。
「いくぞ…!」
サイコフレームが装甲の内側から青色の光を放っている。
(セフィロト…!!)
装甲がスライドしてサイコフレームが露出した。
「やればできるではないか」
「なんか物足りないけどな」
「言うとる場合か。早くスコールを探すんじゃ」
「おう」
「で、どのようにして探すんじゃ?」
「スコールをイメージしてみる」
チヨリちゃんの前に立ってスコールの姿を思い浮かべる。
金色のIS、セフィロトを使うスコール。
俺にツクヨミを破壊したのは自分だと言ったと思ったら、チヨリちゃんからはそんなことはしていないと言われて、あいつが何を考えてんのかなんてさっぱりわからない。
知らない事が多すぎる。だから本当の事を知りたい。
体が奥の方から熱くなっていく。
青い光が膨らむ。
チヨリちゃんの驚いた顔がぐにゃりと歪んだ。
たまらず目を閉じてしまい、もう一度開けると、俺は何処かを飛んでいた。
サイコフレームを発動させたセフィロトを展開して黒いトンネルを進んでいる。
「ここは…?」
左右を見てもただ無数の楕円形の光が横切って行くだけ。
前を見ると黒いトンネルの出口が白い光になっていた。
距離はぐんぐん近づいて、すぐに光の中に飛び込むことになった。
光の向こう側に現れたのは、巨大な建物だった。灰色の空に虚ろにそびえる建物の外壁のいたるところに蔦が伸びて、荒れ果てている、という言葉がふさわしい様相だ。なんつーか、チヨリちゃんの秘密基地よりボロボロだ。
「あ…」
錠前の壊れた門の横の壁に重要なものを見つけた。日本語だ。壁に日本語の看板がかかっている。
「…『桐野』……?」
俺の苗字と同じなのはただの偶然かな。まだ続きがあるけど蔦が覆って隠れてしまっている。
手を使って蔦をどかす。
「桐野第一研究所……」
そしてその看板に書かれた文字を読み上げた時だった。
「ぐっ!?」
頭を思いっきり殴られたみたいな痛みが走った。
建物の奥、ずっと奥。意識がそこに吸い込まれる。
曲がりくねる回廊を飛び、扉をすり抜けた。
「この部屋は…」
周囲を見渡しても無機質な壁が囲んでいるだけだ。
「!?」
いや、あった。いた。
手を鎖でつながれて、壁に磔られている金色の髪の毛の女。
「お前は…!」
俺の声に反応するように垂れていた頭が上がった。
その瞬間、また強い力に引っ張られた。
視界が風船みたいにしぼんで、そして真っ黒になった。
「うぅっ!?」
水の中にいたみたいな苦しさを感じて俺は意識をはっきりさせた。
心配そうに視線を投げかけてくるチヨリちゃんと目が合う。
「だ…大丈夫か?」
「なんとか…」
深く呼吸をするとサイコフレームは黒い装甲の内側に消えた。
セフィロトの展開を解除して額の汗を拭う。
「チヨリちゃん、どれくらいたった?」
「三分と経ってはおらんぞ」
「マジで?」
「サイコフレームが一瞬強く光って、お前がなんの反応も示さないからワシは気が気ではなかったぞ」
三分経ってない? 俺は体感時間で三分以上はあの建物に…
「それで、なにか分かったか?」
チヨリちゃんの言葉に本来の目的を思い出した。
「あぁ。日本だ。スコールは日本にいる」
「根拠は?」
「『桐野第一研究所』って書かれた看板をつけたデカい廃墟があった。その建物のどこかにスコールはいるんだよ」
「…つまり、日本語の看板があったから、ということじゃな?」
「すげーざっくり言ってるってのは分かる。でももうそうとしか考えられないんだ」
「いや、お前の考えは正しい。スコールが日本にいる可能性が高いな」
「じゃあ、日本に行くしかないみたいだな」
「明日には日本にいたい。瑛斗、すぐにここを引き払うが、問題ないか?」
「別に平気。でも、問題は…」
振り返って、ある一点を見た。オータムの部屋の扉だ。
「問題はオータムだ」
あの女をどうにかせにゃならん。
「心配しとるのか? あれほどいがみ合っとったのに」
「そりゃ心配にもなるだろ。さっきのアイツ、この世の終わりみたいな顔してたぜ」
「…それは、確かにそうじゃったな」
「チヨリちゃんはなにか知らないのか? オータムとスコールの関係とか」
「すまんが、ワシもそれは知らんな」
チヨリちゃんは何も知らないんだろうと見切りをつけてもう一度オータムがその内側に消えた扉の方を見る。シンと静まりかえって、まるで『部屋には誰もいない』んじゃないかとも思える。
「……………」
これは俺の勝手な印象だけど、静かだ。静かすぎる。なんだか、すげー嫌な予感がした。
行動に移るのは早かった。俺は扉へと歩き出す。
「お、おい瑛斗? どうしたんじゃ?」
「オータム」
ノックして呼びかける。反応がない。
「オータム、入るぞ」
返事を待たずに扉を開けた。
窓をカーテンで閉ざしてるだけでなく部屋の明かりもついてなくて一瞬オータムの姿を確認できなかった。
「……………」
いた。ベッドの隅で膝を抱えている。
「おーた………」
そこで俺は体が強張った。オータムの手に、鋭く光るナイフが握られていたからだ。
「おい、オータム?」
聞こえていないのかはたまた気づいてるけど無視してるだけなのかわからないけど、オータムはなんの反応も示さない。
おもむろにオータムが腕を動かした。オータムの腕が、ナイフが、オータムの首元に近づいていく。
「オータム!?」
俺はオータムに飛びかかってナイフを止めようと腕を掴んだ。
抵抗されるかと思ったけど、簡単に組み伏せる事ができた。
「お前…お前バカじゃねぇの!? なにしてんだよ!!」
上から両手を押さえつけて、オータムの顔を見る。虚ろな目で俺をぼんやりと見ていた。
「今そのナイフで何をしようとした!?」
問いかけたけど俺はなんとなく理解していた。ISには操縦者を守るシステムがある。オータムもそれを知っていたからナイフを使おうとしたんだ。
「…な……よ」
小さな声がした。
「え?」
「邪魔…すんなよ……もう…どうでもいいんだよ……」
オータムの目から涙が零れた。
「もう…いいんだよ……こんな世界…いらねぇよ………」
「だからってそこまでする必要ないだろ!」
「もうダメだ……スコールは私の生きがいだった…だけど……スコールは…スコールは私の事…!」
コイツは心底スコールを信頼してるみたいだ。だけど、俺はスコールの本性を知っている。
「こんな事言うのもなんだけど、あれがスコールなんだ。マドカ…Mもあいつは簡単に切り捨てた」
瞬間、オータムの目に怒りが燃えた。
「うるせぇ!! あんなガキと私を一緒にすんなよ! スコールは私を助けてくれた! 暗闇で独りだった私を!」
怒りの言葉が段々震えていく。
「だから私はスコールのこと愛してた…! スコールもそれに応えてくれてると思ってた…!!」
「けど、裏切られた…か?」
「嘘だったんだよ…! スコールは私のことを道具だとしか思ってなかったんだよ…!」
オータムの声が、悲痛になる。
「もう…生きてる意味なんてねぇよ……死なせてくれよ………死なせて…!」
「ダメだ!」
即答してた。
「お前を死なせるわけにはいかない」
「なんでだよ…お前が決めることじゃないだろ……」
「かもな。でも目の前で死のうとしてる人を止めないようなヤツは人間じゃない」
オータムの腕を掴む両手に力が入った。
「……………」
「ワシも、今お前に死なれたら困るのぉ」
扉の近くにチヨリちゃんが立っていた。
「ワシの半分も生きとらん小娘が命を投げ捨てるのは見ておれん」
オータムに近づいて、チヨリちゃんはナイフを握る手に触れた。
「オータム、スコールは生きておる」
「え………」
「俺のセフィロトとスコールのセフィロトのサイコフレームを共鳴させた。スコールは今、日本にいる」
「スコールが…生きて……?」
「スコールを見つけて、本当の事を聞けばいい。スコールの本心を聞いてそれでも死にたいと思ったなら、ワシは止めん」
チヨリちゃんはオータムをまっすぐ見つめて言った。
「ナイフを放せ。オータム」
「……………」
オータムはゆっくり手を開いて、ナイフをチヨリちゃんに渡した。
やれやれ、危なかったぜ。
「ふぅ…ところで、瑛斗はいつまでオータムを押し倒しとるつもりなんじゃ?」
「え…」
「なっ…! さ、さっさと離れろ!」
ゴスッ!
「ごひっ!?」
こ、コイツ…! 腹に思いっきり膝蹴り入れてきやがった…!
「お、お前…! いきなり…!!」
ベッドから転げ落ちて腹を抑えてのたうち回る。
「わ、私が体を許すのは…スコールだけだ……」
腕で自分を抱くような仕草をするオータムが、なんか、妙に女っぽかった。あ、女か。
でも腹キックは許さねぇ…!
とまぁ、てんてこ舞いで散々な感じになったけど、そんなこんなで俺はオータムとチヨリちゃんを連れて日本に戻ることになった。
「やれやれ、チケットを用意しておいてよかったわい」
窓際の席のオータムと通路側の俺の間の席のチヨリちゃんが息を吐いた。
「それにしても…こんなダイナミックなトンボ帰りがあっただろうか」
行き当たりばったりなせいでスケジュールが殺人的だ。
「なんにしても、IS学園に戻ったらどうすっかなぁ…ラウラあたりがいろいろ聞いてきそうだし」
「あー…そのことなんじゃが」
「ん?」
チヨリちゃんがバツが悪そうに頬を掻いた。
「すまん。もう少し付き合ってくれ」
「…それは、どういう……?」
「IS学園には戻らずに…このままワシたちと件の廃墟に向かってもらいたい」
「廃墟の場所が分かったのか?」
「お前が建物の名前を教えてくれたからの。ワシの情報網を駆使して見つけることができた」
「いつの間にそんなことを…」
「ワシをなめたらいかんぞ?」
チヨリちゃんが薄く笑みを浮かべたら、飛行機が出発するアナウンスが聞こえた。
「……………」
窓の方に顔を向けているオータムを見やる。表情が確かめられないけど、終始無言だから心配だ。
(でも、声かけたら怒るんだろうなぁ…)
面倒なやつだぜ、まったく。
日本へ向かう飛行機の乗客が寝静まった頃、オータムは受け取った毛布を膝の上に置いたまままだ眠らずに窓の外を見ていた。
(スコール…)
この場合はスコールに思いを馳せていると言うべきだろうか。
(私のこと…どう思ってるのかな…)
映像の中のスコールの言葉が、今まで感じたことのない激痛だった。
(会いたいな…スコール……)
「飲み物はいかがですか?」
「あ?」
他の乗客を起こさないような小声で話しかけられた。
「…お前は……」
しかし顔を向けるとそこにいたのは見知った顔だった。
「さっきはどうも。あの熱攻撃すごい効いたわ」
日向海乃。数刻前に自分と瑛斗を相手に戦闘を繰り広げた亡国機業のメンバー。それが目の前でキャビンアテンダントの姿をしてこちらを見ていた。
「なんだ? 殺されに来たのか?」
「いいえ、私も帰るの。もとからこういう予定だったのよ」
「ハン、そうかい。それも連中の命令ってか」
「やっぱりダメね。長いことああいうのやってないから。もう十分かも。それに、何日もあっちでの仕事放っておくことも出来ないし。水族館での仕事も楽しいのよ」
「知るか。ここでやり合う気はねぇからとっとと失せな。特に欲しいもんもねぇ」
手をヒラヒラと振って追い払う仕草をする。
「じゃあ、これだけ言っておくわ」
「なんだよ」
「『良い旅を』」
「……………」
「じゃあね」
海乃はそのまま視界から消えた。
「…フン」
オータムは海乃への注意を消し、再び窓の方へ視線を向けた。
窓の外側に、水滴が付いていた。
一瞬セイレーンのナノマシンかと思ったが、それはすぐに否定された。
ポツリポツリと水滴が窓にどんどん付着していく。
「雨、か…」
安心したオータムはシートに深く座り直した。
ふいに眠気が襲って来て、オータムは毛布を広げるのだった。
瑛「インフィニット・ストラトス〜G-soul〜ラジオ!」
一「略して!」
瑛&一「「ラジオISG!」」
瑛「読者のみなさんこんばどやぁー!」
一「こんばどやぁ」
瑛「いやぁ、今回はダイナミック日帰り旅行だった」
一「本当いろんなところ行くよな。マイルとか貯めてみたらどうだ?」
瑛「はは、すっげー貯まりそう」
一「海外なんてそう何度も行けないぜ普通」
瑛「行くはいいけどロクな目に合ってないけどな。オランダ行ったの覚えてるだろ?」
一「確かに…」
瑛「ま、そんな話は置いといて、今日の質問行ってみよう」
一「えー、カイザムさんからの質問! 瑛斗に質問です。IS学園に入学する前はずっと宇宙で暮らしてたそうですが、地球で生活するようになって、重力のある環境で暮らせるようになるまで、やはり苦労はありましたか? だって」
瑛「ほー、来たようで来たことない質問だな」
一「お前と初対面した時は地面に突っ伏してたよな」
瑛「ツクヨミにも重力ブロックがあって重力自体に適応力はあったんだけど地球の重力が想像よりも凄くてな。立てなかった」
一「でも入学式あたりは普通に動いてたよな?」
瑛「まぁな、体を慣らすまで大変だった」
一「入学式より前から学園には居たみたいだけどトレーニングとかしてたのか?」
瑛「いや。あの時はそんな気力もなくて…」
一「あ…そうか……」
瑛「しばらくは寝て起きたら身に覚えがない天井で驚いたり、体が重かったり、そっちのほうが大変だったかな」
一「…なんか、ごめん」
瑛「気にすんな。それに、本編じゃスコールにツクヨミの真実を聞くために絶賛東奔西走中だし、もうすぐ分かるかも」
一「そうか、頑張れよ!」
瑛「あぁ! よし! それじゃあエンディング!」
流れ始める本家ISのエンディング
瑛「今日はそこで会った女の子二人に歌ってもらったぞ」
一「たい焼きの入った袋持ってる金髪の子と、あの小学生くらいの女の子か?」
瑛「あぁ。なんでも金髪の子は宇宙最強の殺し屋だとか」
一「マジで?」
瑛「横の子が言ってた。でもたい焼きあげたらOKしてくれたぜ」
一「へ、へー」
瑛「さて、そろそろ時間みたいだ。みんな、質問じゃんじゃん送ってちょうだい! それじゃあ!」
一「みなさん!」
瑛&一「「さようならー!!」」
???「良かったね、たい焼き貰えて」
???「はい」
???「ヤミさぁぁぁぁぁん!」
???「うわっ!? な、なんか変な人が!?」
???「……………」
ボゴーンッ!
???「ぐはぁっ!?」
???「…えっちぃのは、嫌いです」
???「あはは…」
一「え、瑛斗! 一瞬でパンイチになったおっさんが、金髪の子の髪の毛にぶっ飛ばされたぞ!?」
瑛「さすが宇宙最強の殺し屋…ってことにしとこ?」
Tweet |
|
|
1
|
0
|
追加するフォルダを選択
フィーリング・フォーリング