とある恋姫の転生SSを読んだらムラムラしたので書いた。後悔はない。
多分初めて書く転生?外史。一刀は(男前)チート。
城壁から見下ろす街には、乱世とは思えぬほどの安穏とした空気が流れている。
「此処を一人の男が訪れた時、半分朽ち果てた空城がただポツンと聳えるだけだった」
城壁の上を歩く、三つの集団。
時折届く子供の遊ぶ声。鉄火場に立つ男達の怒号。商いを営む人の声。
「凄い……」
「た、たった一人ですか?!」
思わず感嘆の声を上げた劉備に、併せる様にして確認をとったのは、臥竜と持て囃さる大軍師。
「この街は、ただ此処だけで機能している。 畑も、水も、魚も、銅も、鉄も。 全てが自給自足出来る様に整備してある」
問いには答えず、しかし誇るような声色では決してない。
この都市の名目上の主である曹操は、どこまでも心を持って行きそうな青空を仰ぐ。
「―――この街はもはや国。 私や劉備、孫策。英雄では決して作れなかった国」
「言い返せないのが、ちょっと悔しいわね」
苦虫を噛み潰した顔で、心底悔しそうに歯を噛み締めながら孫策が零す。
彼女の視線は、城壁と呼ぶには余りにも低い囲みに守られた街に注がれていた。
「この場所に立つと良く分かる。 街の景色どころか、働いている民の顔すら一瞥出来そうな程に、計画的に配備されている。
監視する為ではない、慈しみ、何時如何なる時であろうとも、駆けつけられるようにだ」
「……あの城壁も、良く考えられております。 呉が攻めあぐねた原因の一つですから」
感心するように首を動かし、何とか自国で流用出来ないかと考える周喩に、一見すればみすぼらしく映る城壁の厄介さを語るは周泰。
「馬で駆ければ飛び越えられそうで、しかし決して飛び越えられない高さ。
威圧的には映らないこの囲みは、周辺の山賊を誘き寄せる事にも、懐柔する事にも一役買っている」
「確かに、この数年間で一度も賊の被害は出ていませんでしたねー。
まぁ、それを虚偽の申告だと風も含めた誰も信用しようとはしてませんでしたけど」
時は乱世。魏・呉・蜀の三国が並び立ち、英雄達が己の誇りと信念を掛け、命を削りあう時代。
そんな時代に、奪う事が正しい行いだった時代に、何も無かった所から全てを作った男がいた。
男の名は―――
「都を、村を追われた方士達を迎え入れその知識を集め、狂人と蔑まれた武辺者を迎え入れ、しかもその者達をただの一人も離反させる事なく飼い慣らした」
「いくら曹操様といえど、その言だけは聞き捨てならぬ!!」
「貴様!!華琳様に何と言う物言いだ!!」
「やめろ春蘭!! ……これ以上私の顔に泥を塗るな」
曹操の言葉にいち早く反応を示したのは、この街で二番目に古い女。
一番は言うまでもなく件の男であり、彼が街を復興し始めてからの、最初の住人だった。
「貴女の主に向かって無礼を働いたわ。ごめんなさい」
「……」
今にも飛び掛りそうな面持ちで、犬歯すらみせて曹操を威圧する女。
その女に向かって、あろうことか曹操が頭を下げた。
「教えて貰えないかしら。 この城が最前線にありながら、今もまだ成長を続けられる理由を」
「―――五千枚の草苫と六千石の油を常備し、氾濫が起こる前に堤防を作成し、日照りが起こる前に畑に工夫を凝らし、常に民の家には食料が溢れる。
その代わり民には教育を施し、犯罪が起こる前にそれを摘み取り、周辺の賊との交渉には自らが赴かれました。
ご自分の飯は一日一食、毎晩の椀に重石をいれ嵩を増し、少しでも余った分を貯蓄されておりました。
それほどまでに尽くされた町が、発展せぬ道理は有り得ません」
女は泣いた。泣きながら喋った。
先ずは劉備の琴線が触れ、ついで程昱が彼の人となりを思い出し、涙を足元へ落とした。
「……その人物は今何処に。 是非とも、言葉を交わしたい」
「今は伏せっております。ご容赦願えますか」
周喩の、賢人であれば当然の欲求を女は赤くなった眼で射抜き落とした。
「医者は? 華佗の腕前を見せて貰ったわ。あれほどの人物を育成したのであれば、当然城にも何人か―――」
「全て外界に旅立っております。 己の為ではない、民の為の医者だと、そう仰られました」
格が違う。誰かがそう思った。
次に涙を零したのは、曹操だった。
彼女は思い出していた。 男の才を侮り、嗤って、死地に追いやったあの日の事を。
「あのお方は御三方の様な大人物ではありません。 もう、放っておいて貰えませんか。
この町が欲しいのであれば、取り上げれば宜しかろう」
「それは出来ないわ。 二度同じ過ちを犯す訳にはいかない」
「か、華琳様!!」
言葉に熱が篭って行く両者を遮る様に、許緒が華琳の腕を引き、道の先を指差す。
乞食だ。誰かが呟いた。呟くような声色だったのに、その場の誰もがその言葉を聞いた。
「一刀様!!あれほど、あれほど横になって下さいと!!」
「がなるな、悪かったよ」
顔色が悪い。死相すら浮かんでいそうだ。
この場で一番みすぼらしい衣服に身を包んだ男は、しかし誰よりも天の日差しが似合っている。
男がその場に膝を付き、礼式に則った礼をする。
「何か、至らぬ点でもございましたでしょうか、曹操様」
男の口の端には、血痕があった。
それに目敏く気が付いた周喩は眼鏡を直す振りをする。
それが合図だったかのように、男は身体を揺らして咳を二度、三度と繰り返し、口元に当てた手のひらの隙間から血が吹き出る。
「お兄さん!!」
溜まらず飛び出た風に、真っ赤に染まった左手を突き出して静止させる。
その間も身体を上下させながら血を吐く男に、誰も、何も出来なかった。
「げほっ!!ごぼっ……」
「……」
「はぁ……はぁ……どうだ、曹操。俺の国は。この合肥は」
「貴方がこの町に費やし生み出した物は、私の想像を超えているわ」
その言葉に男は笑う。してやったりという笑みではなく、どうだみたか。という笑みでもない。
「勝ったぞ、曹操!」
子供が誇らしげに、自分で書き上げた絵を見せ付ける様な、いっそ微笑ましいとでも表現したくなるような笑顔で、その笑顔には相応しくない宣言を上げる。
そうして男は倒れる。今度こそ、縫い止められた足を動かして皆が駆け寄る。
―――その男、姓を劉、名を馥、字を元穎。
この男の真名は、一切の正史に残っていない。それどころか、彼の功績は虱潰しに探してもホンの三行で収まる程度である。
合肥に赴き、
合肥を直し、
合肥で散る。
ただそれだけ。
にも係わらず、逸話の数で言えばこの時代で一、二を争う程に多い。
ifモノ。よくある【もし呉ルートで雪蓮が生き延びていたら】
やばい、やばい、寝坊した、寝坊した。
ワタワタと子虎と共に駆けて行く男の子に、城の女官達は目尻を下げる。
その子を見守る様に、しかし決して見守っている事がバレないように後を付ける重臣の祭の姿を何人かは見つけ、よくもまぁここまで過保護になれるものだ。とちょぴり呆れ返る。
「遅いっ!!」
大して遠くはない王座の間への距離だが、それは大人の足での事。
息を切らせて駆け込んだ息子に、玉座に座る母・雪蓮のキツい叱責が飛ぶ。
「何をしていたの、元宗」
「……」
「まただんまり? もういいわ。幼台、具合はどう?」
「え、えっと……」
つまらなそうに手を振り、もう一人の自分の子に声を掛ける雪蓮。
話を振られた双子の姉である幼台は、弟へ何度も視線を送っては口篭る。
流石に諌める声が上がった。
「姉様、何もそこまで……まだ雪刀は幼いのですから」
「さ、雪刀様。此方へ」
何時の間に追い付いたのか、元宗の背後に現れた祭が肩に手をかけるが、それを振り払った元宗は玉座の間から走って飛び出す。
部屋を出るか出ないかの辺りでステンと転び、思わず腰を浮かせた雪蓮だったが直ぐに元宗は立ち上がって、転ぶように逃げる。
「お姉ちゃん」
「な、なによ」
「やりすぎ」
全員を代表してシャオが物申し、異論は無いのか全員が首を縦に大きく振る。
そして全員の攻める視線にたじろいだ雪蓮はうぐっと呻くと、観念したかのようにため息を吐いた。
唇を尖らせ、元宗は子虎の親、周々の背に乗って山を進んでいた。
突如その背中にばふん!と倒れたり、寝返りを打って空を眺めたりするものだから自然、周々の歩みは遅くなる。
こういう時は何時も、孫家代々のお墓に行くのが決まりだった。
実際母の叱責が飛ばない日はないので、毎日の日課になっているとも言える。
そこには祖母、孫堅と共に双子の父。北郷一刀も眠っている。
遅々とした歩みだったので普段よりも時間が掛かり、墓所に着いたのは昼を少し回っていた。
「……」
ぱん。と手を合わせて眼を閉じ、暫し二人に祈った後でお腹がぐるるーっとなる。
「……」
気遣わしげに自分を見る周々の頭を撫で、さて昼御飯を取ろうと川面に足を踏み入れた時である。
「雪刀」
「……」
「また此処にいたのね。お婆ちゃんとお話かしら?」
「……」
一歩近づけば、一歩遠ざかる。
両者の歩幅からすれば、確実に近づいているのだが、その事実は雪蓮の心を慰めはしない。
「ちょ、待ちなさい!!雪刀!!」
迷わず背後に背負った河に入り、途中で周々の背に乗って速度を上げる。
捕まえようとしたのか、抱きしめようとしたのか、未だに答えを出せた事が無い腕をそっと降ろすと、愛する二人の墓石へ振り向く。
「ねぇ母様、一刀。 お母さんって、難しいわね」
天の御遣いの血を孫呉に取り入れようとし、結果孕んだのは自分一人。
一刀は二つの命を雪蓮に託し、志半ばで雪蓮を庇って死んだ。
姉は孫静、弟は孫晧と名づけられ、それぞれの真名に愛する男の名を分けていれた。
「自分で言うのもなんだけど、アタシってほら、天才じゃない? だから、子育てぐらい簡単だって思ってた」
姉の一蓮(いーれん)は亡き母、文台が生まれ変わったかと思うぐらいに瓜二つで、当然雪蓮とも蓮華とも小蓮とも似ている。
しかし、弟の外見は違っていた。
南の生まれには有り得ない、白い肌。
孫家を象徴する桃色の髪ではなく、愛する男と同じ淡い栗毛。
唯一雪蓮に似ている所といえば釣り上がった瞳だけで、紹介されなければ孫家の血縁だとは思われないだろう井出達だった。
「……思ってたんだけどなぁ」
家族皆の誰とも違い、姉は生まれつき身体が弱く、自然意識はそちらに向かう。
大陸統一を果たした孫呉ともなれば、当然多くの乳母や養育係が付けられたのだが、聞こえてくる陰口に雪刀は敏感だった。
「最後にあの子の声を聞いたの、何時だったかな……」
大陸最強にして新時代を築く孫家の後継者にして、唯一天の御遣いの血を他の女に撒ける雄。
もしかすると、皇帝よりも重い立場に生まれてしまったのが雪刀だった。
親としてそんなものに係わらせたくないという思いと、有効に使うべきだという統治者としての計算が雪蓮を蝕む。
「やっばい……赤壁の方がよっぽど楽だったわ……」
ふわりと、雪蓮を気遣う風が舞ったのだが、彼女にそれを気付く余裕はなかった。
あとがきというなの作品説明と言い訳。
一つ目は多分ありふれてるチート一刀の転生モノ。
たった一話だけの登場ですが、蒼天○路に出てくる劉馥の話のインパクトが強すぎて忘れられなかったのでつい。私個人では三番目ぐらいに好きな話です。
私の書き方が悪い所為で勘違いされてしまうかもしれませんので注釈をつけておきますと、劉馥さんはちゃんと実在されております。
めちゃめちゃ面白い一刀転生?のif物を読んだので、ムラムラして書いた。後悔も続編も無い。
二番目のお話は『恋姫のなにか』とどちらを投稿しようか悩んだ末に止めたオリ主モノ。
『もし雪蓮を庇って一刀が死んだら』という多分誰もが思った雪蓮生存モノでした。
こちらも続編を投稿する予定はございませんのでオチだけ書いておくと、雪刀と一蓮で大陸を二つに分けた殺し合いをして、雪刀が負けて終わりです。
妄想してるとオリ主&オリキャラ満載になったので、本編の登場人物も併せて書ききれる気がしませんでした。
なら投稿すんなと突っ込み受けそうですが、ムラムラしたんです、ごめんなさい。
お礼返信。
要様 たまにはいいかなーと思いました。要望もありましたので。
七夜様 何時から逃げて!!だと錯覚していた?
HIRO様 逃げて!!フィルターが無い世界なら華琳様は最強です(キリッ
misura様 デスヨネー
zero様 お薬だしときますねー
アザトク様 マジっすか。その発想はありませんでした。
月光鳥~ティマイ~様 同時投稿の司馬日記支援作をごらんくだしあ!!
ちきゅさん様 案外これぐらいなら平気ちゃうかなー(棒
ノワール様 霊界探偵にでもなって頂きましょうかw
hujisai御大 Do it. それをやれ!!
mkm様 何時もニコニコあなたのお傍に!
げんぶ様 おくすり(ry
よしお。様 「たまには」ねーw
悠なるかな様 折角幸せにしたのにーw
ゴーストチャイルド様 華琳様は書きやすいのでマジ天使です
ミドリガメ様 おいやめろww
いじり様 アメンボじゃねぇんだぞ華琳は。 どうでしょうネタじゃなかったらイミフですんですいません。
Alice.Magic様 御気に召して頂けたら幸いですー(>Д<)ゝ”
呂兵衛様 つまりスケスケの黒キャミソにピンクのおぱんつに黒尻尾で誘惑ですね!
MiTi様 私は基本巨乳黒髪のおねーちゃんが大好きなんですが、アルトネに関してはジャクリ一択です!
shirou様 やりたかった……ワイも期待に応えたかったんや……
疎陀 陽様 たまにだからいいんですよこういうのはw
観珪様 ほら、作者は華琳イジメできないとやる気無くすから……
SRX-001様 一番虚しい気持ちになるのは誰だかわかってやがるのかっ!!w
D8様 華琳様の貴重な幸せシーンです。
happy envrem様 エーww
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本編にはかすりもしていません。いつものノリをお求めの方はご注意を。