No.590246

謝罪

nebokoさん

@バンチ8月号ネタです。ギョウを去る曹操と荀彧の話です。

2013-06-23 00:24:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:763   閲覧ユーザー数:762

「申し訳ございません」

ギョウの城門が随分と遠ざかったところで、突然荀彧が口を開いた。

普段謝罪などほとんど口にすることのない荀彧の言葉に、曹操が驚いたように振り返る。

だが荀彧の顔の半分はフードに隠れ、口元だけしか曹操の目には入らない。

「ん? 何がだ?」

謝罪されるようなことは何もないはず。

むしろ宿に戻ったときに、自分が叱られるだろうと覚悟していただけに、余計に曹操を驚かせた。

荀彧は曹操からわざと表情を隠すように俯いたまま、小さい声でつぶやいた。

「わたくしの油断で、術が破られたことです」

「なんだ、そんなことか。当初の目的は果たせたし、それ以上の収穫もあった。十分ではないか」

そこで曹操は手綱を引き、馬の脚を止める。

少し後ろで馬を操っていた荀彧が、曹操の動きについてけずに、少し先行したところで馬を止めた。

荀彧も有力豪族の生まれだけに馬術に心得はある。

だが戦場を駆け回る曹操には遥か及ばない。

曹操が荀彧の隣に馬を少しだけ進めれば、そこでようやく荀彧が顔を上げた。

「ですが、袁公と話したいことがおありだったのでは?」

その言葉に曹操は思わず苦笑いを浮かべた。

軍師相手では隠し事一つできないらしい。

(それとも荀彧だからか?)

「なに、どのみちあの男が簡単に口を開くとも思えん。それに、もともと予定にはなかったことだ。あまりに上手くいきすぎて欲をかいただけだしな」

「……」

「それに、術が破られたからこそ思わぬものが得られた。違うか?」

「郭嘉、ですか」

あのとき、荀彧の術を一人で破り、同時にあの場の空気を一瞬にして変えしめた能力。

おそらく彼は気付いてはいまい。

ほんの一瞬でのあの場を支配したことの意味と、己が発した言葉の影響力に。

思わず曹操の目が輝き、さも楽しそうに口元に笑みが浮かぶ。

「天子を弑逆すことを厭わぬ、か」

「……」

荀彧がチラリと視線を曹操に向けてくる。

その視線の意味に曹操は一つ頷くと、

「そう、違う」

そこで一旦言葉を区切り、確かめるように頷きながら、

「あれは、天子を殺すことをためらわないのではない。人を殺すことに躊躇いがない」

「ある意味、軍師として恐ろしい才覚と言えます」

「勝てるか?」

意地悪そうな笑みを浮かべて己の軍師に尋ねれば、だが王佐の才はフイと顔を正面に向けて、表情をフードに隠してしまうと、

「さあ」

とつれない一言。

これには曹操も困った様な、むっとしたような表情で、上半身をかがめて己の軍師の顔を覗き込むと、

「おい、勝ってもらわねば困るんだがな」

「ならば聞き方を変えるべきです」

そんな子供っぽい一面をのぞかせた曹操に、荀彧はサラリと返した。

曹操は「ふむ」と一つ頷くと、上半身を起こし背筋をただした。

一度深呼吸をしてから、腹の底から力強く発する。

 

「勝つぞ」

「はい」

 

鐙でポンと馬の腹を蹴り、駒を進める。

ほぼ同時に荀彧も馬の脚を進めた。

 

 

@バンチ8月号に萌えたので、そっこう吐き出してみました。

いろいろ思うところはあるので、たぶんまだまだ吐き出すつもりです。

モヤッとしたものは山ほどあるのですが、今後の漫画の展開で解消してくといいな。

 

ところで、あれマントが黄泉の道開いてたように見受けられたのですが、マントどうしちゃったんでしょ? あと、鐘おっこっちゃったけど、今後もちゃんと使えるのかな?

ちなみに曹操は気性の荒い大柄な馬に乗ってますが、荀彧はおとなしくて小柄な馬に乗ってることになってますwww えへ。


 
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