No.590203

見捨てられたる地

この地区一体をガミラスはラマザと呼ぶ。もちろん原住民も住んでいる。彼らは水の沸く泉や川の周辺で時代遅れの技術で農耕をやり、糊口をしのいでいる。 我々や文明をもった者たちがやってきてもほとんど関心なし。たまに基地やこのへんの中心都市ガウの市場で現金収入を得るのが文明の接点である。 基地は孤立した乾燥地帯のど真ん中。ただし幸いなことに水源から水路を通したのでいくぶん住みよい。 一応仮想とはいえ敵味方なのに我々は同じテントに放り込まれた。経費のせいだろとミーナ少尉は言う。問題なのは機体だからパイロットなんか二の次さ。 炎天下では何もはかどらない。特別のミッション以外は、飛行は明け方か夜になる。昼間はひたすら日陰で消耗を防ぐ。これは整備など他の連中も同じだ。 さすがに口をきくのも億劫になるが、たまにボソボソと四方山話を交わす。 「ラマザに行くといったら姉貴が気をつけろよだってさ。」ミーナはぶつぶつ。「メルダ、スノウホワイトって聞いたことある?」 「やばい麻薬だって話じゃん。帝都の下町で流行ってるって。」 「姉貴はおまわりで、今それの取締官やってる。この惑星と他のもう一箇所がスノウホワイトの原産地の疑いが濃いんだってさ。だから現地の連中には注意して接触しろって。」 「接触も何も、一日中テントか操縦席だろ。会うチャンスなんてないだろ。」 「まあね。姉貴も苦労性だしさ。」 毎日輸送機が物資の補給に飛んでくる。これだけは戦役当時に比べれば格段に便利になった点だ。なにしろ、当時は陸上からの補給なしで2週間戦い抜いたということもあったのだ。どんなに人外魔境の地でも基地は動かせなかった。当時のエネルギーの主力化石燃料の採掘地利権が絡んだからだ。みんなが何かを得ようとするとき必ずワリを喰う者がでてしまう。戦争に限らない。 「明日はまた早朝から空戦シミュレーションかあ。」 「コンプレッサー、ちゃんと直ってればいいけど。」ぼそっとミーナが言った。午後の便で交換部品を運んでくる手はずになってるんだけど。最近あてにならないことが多い。自分と同じように飲料水のボトルを空にしたのを見て言った。 「ミーナ、烹炊所で何か飲み物もらってこようか?」 「ありがと、でもいい。少し寝るわ。」

2013-06-22 23:23:00 投稿 / 1705×1267ピクセル

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