汜水関で丸一日休息を取った反董卓連合軍は翌日、虎牢関へ向けて出立した。
先陣をきるのは総大将代行である曹操。それに付随する形で比較的被害の少ない馬超、公孫賛、孫堅・袁術、劉備、そして最後尾に袁紹の部隊という順番で行軍していく。
汜水関から虎牢関までは身を隠せる場所などなく、朝議の場でもおそらく虎牢関の前にある少し開けた場所が主戦場になるだろうと予測されていた。だが、曹操はそれを理解したうえで周辺を警戒しながら行軍し、本来であるならば半日で着くはずだった虎牢関に一日かけて到着した。これに対して袁家の二人が不満を漏らしたが皆に黙殺され、この日も重く暗い雰囲気のまま軍議は終了した。
翌朝、連合軍は虎牢関を半円を描く形で包囲し、戦闘の準備を着々と進めていた。その様子を、虎牢関の城壁から監視する影があった。
「本当に……すごい数ですね……」
ほうっと溜息を吐き、感嘆とする徐庶--茜。その目はまさに包囲せんとする連合軍へと向けられていた。
「怖気づいたのか?」
そんな茜をからかうように声を掛けた深。
深もまた連合軍へと顔を向けていたが、その目はある一点のみを見つめていた。
孫の牙門旗……そこにいるであろう者へと思いを馳せて……。
「そ、そんなことありませんよ! あんなのは黄巾党のときに見慣れています!」
深のからかいに真面目に反応する茜。それに苦笑しながらも、連合軍を見つめる目は鋭く細められていく。
「だが、黄巾党とは比較にならないほど精強だよ」
「そう……ですね、失言でした」
「そんなもの、恋殿には無意味ですぞー!」
そこへ、無邪気にだが信頼の証ともとれる声が聞こえてきた。
「恋と音々か。準備は終わったかい?」
そうして城壁へと登ってくる二人に声を掛ける。
「ふん! そんなものとっくに……」
「ん……さっき終わった」
少し誇張しようとした音々を遮るようにして報告する恋。それに対して音々がやや情けない声を出しているが、深と茜はいつもの光景だと苦笑して表情を引き締める。
「相手は数だけ……恋の敵じゃない」
「そうですぞ! 恋殿にとってあんなものは、そこらへんの石ころとなんら変わらないのですぞー!」
「ははっ、それは心強いな。でも……恋の相手は曹操だ。注意しておいて損はないよ」
「……ん、深がそういうなら注意しとく」
深は、不服そうだったが納得してくれた恋の頭を撫でつつ--ちんきゅうきっくは恋が投げ返した--自軍の兵達のもとへと向かっていった。
霞、華雄、茜、音々、恋、そして兵達。皆が揃ったことを確認した深は、一度兵達を休憩させ確認のための軍議を開いた。
「じゃあ、最後の確認をしようか」
ぐるりと周囲を見回し、皆がちゃんと注視していることを確認する。……一名ほどうつらうつらしていが。戦場では彼女が一番働くことになるだろうことは皆わかっているため、そのままそっとしておいてあげた。
「……まず、敵の前曲は曹操だ。これには前もって言っていたとおり恋に当たってもらう……音々、あとで伝えておいてくれ」
「りょーかいですぞ!」
音々はそう言うと、隣にいる恋を起こそうと揺さぶり、それを嫌がった恋に抱きしめられて大人しくなっていた……って、今すぐじゃなくてもよかったのに。というかあれ……息できてるんだろうか。
「華雄は左翼の劉備を頼む。……それと音々を助けてやってくれ、たぶん息ができてないから」
ひとつ頷いた華雄は音々を助けるため、恋の拘束を解きにいった……うん、一緒に抱きしめられたね……これはもう放置しておこう。
「えーっと、霞には遊撃部隊として動いてもらう。どう動くかは……霞の判断に任せるよ」
「任せときぃ!」
霞は武人でいて視野が広いし、伝令を待つよりも的確に動いてくれるだろう。
「そして残った俺は右翼の孫堅に当たる。茜と……音々は虎牢関から撤退の機を計っていてくれ。
「かしこまりました」
そろそろ恋から音々を救出しないとやばい……よな?
「恋……起きろー」
「…………………ん、寝てない」
いやあなた、よだれ出てるよ……。
「あー、とにかく音々と華雄を離してやってくれな?」
「……? 音々、華雄……恋にくっついてた?」
むしろその逆だよ、うん。まあ、離してくれたからいいのか?
「とにかく、恋は前曲で曹操を抑えてくれ」
「ん、わかった」
約二名ほど、息を切らしているやつがいるが……一通り布陣は伝えられたな。
「作戦は事前に伝えたとおりだ。……恋、首を傾げないでくれ……あとで音々に聞いてくれな? これは生き残るための戦いだ。絶対に敵の挑発には乗るなよ? 特に華雄」
何人かには釘を刺したし、もう時間もない……か。
「じゃあ、最初は派手に決めようか!」
さて、ここからが鬼門だぞ……。
董卓軍が軍議を開いている頃、反董卓連合側でも軍議が行われていた。
袁紹の時とは違い明確な作戦指示、何通りもの策を展開できる布陣、兵の少ない劉備軍に少数とはいえ兵の貸し出しまでも行い、その手腕、器量に皆が驚いていた。
汜水関の武将に加え、飛将軍呂布のいる虎牢関。
それを抑える布陣として、曹操は前曲に袁紹、右翼に孫堅・袁術、左翼に劉備・公孫賛・馬超、本隊を曹操の部隊を配置する提案をした。諸侯の軍師もこの提案は妥当だろうと了承したが、袁家の二人がこれに反発。だが、諸葛亮・周瑜によって正当性を突きつけられ、曹操の一言によりぐうの音も出なくなりすごすごと退散。またもや殺伐とした空気のまま軍議は終わった。
しかし、ここにきて二人の袁家の不満が爆発。前代未聞の暴挙に出ることになる。
袁紹は親衛隊を使い、劉備軍から諸葛亮、曹操軍から郭嘉を。袁術は七乃の指示によって動いた兵達により、孫堅軍から陸遜を人質として確保。その人質を用い劉備・曹操・孫堅を強請り連合軍の全権を再び自分達のものにした。
劉備達は諸葛亮を必ず助けると心に誓い合い、曹操達は郭嘉を絶対に取り戻す算段とともに、どのような罰を与えるかを画策していた。
そして孫堅達は……。
「あやつら、穏を人質に取るとはなんということじゃ!」
「穏様を……許せません!」
「あの娘達、よっぽど死にたいようね……」
孫呉の将達は皆異様に殺気立っており、それが兵達にも伝染していた。常に冷静沈着である周瑜でさえ、唇を噛み締め必死に感情を押さえ込もうとしていた。そんな将達でさえも近付きがたい雰囲気を纏う人物が一人、少し離れた場所で佇んでいた……。
「……どんなときも、天は過酷な選択を強いるのね。でも、私は……」
一人呟いたあと皆のところに合流する孫堅。その眼には怒りがあるのではなく、ただ哀しみだけが浮かんでいた。
「孫呉の兵達よ! 刃引きした武器を元に戻せ! これより我らは眠りにつく龍を叩き起こすことになろう! 臆せば己が、引けば隣の友が、大切な者が死ぬことになる。仲間を信じ、我を信じよ!!」
陣営のいたるところから歓声が響く。その声が大きくなるたび孫堅は己の哀しみを押し殺し、心の中でただひたすらに謝辞を述べる。自分を信じると言った男へと向け、信よりも家族を取った自分を戒めるためただひたすらに……。
龍は逆鱗を震わし、悪夢は再び蘇る。
彼の雄たけびは敵を震え上がらせ、その牙は死地へと誘う。
全ての罰を背負うと決めたその者へと向けて……。
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■拠点予告■
今回は試験的に投票制にしています!
●1話につき、1人2票までの投票
●投票は#25から#27が更新されるまで →つまり2話分です
例1)この話 → 周泰(明命)に2
次話 → 周泰(明命)に1、孫策(雪蓮)に1
例2) → 明命2
例3) → ⑧1、⑨1
★ 前回と同様に、ネタの提供もお待ちしていますよ! ★
例4) → 明命2 お猫様とのもふもふ合戦が見たい など
※ネタ提供は御1人様1つまで! 1人で複数寄せられた場合はスルーさせていただきます
こんな感じで、必ず【キャラと投票数が判るように】して頂ければOKです
そして、気になる対象のキャラとは!!
①黒纏(影華) ②徐庶(茜) ③張遼(霞)
④華雄 ⑤呂布(恋) ⑥陳宮(音々音)
⑦孫堅(蓮根) ⑧周泰(明命) ⑨???
???はお楽しみです
この中から上位2~3人の拠点パートを書きます
説明が長くなりましたが、皆様の投票 心よりお待ちしております
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【拠点投票 中間結果】
★ 1位 ★ ⑥ 陳宮(音々音) 3票
☆ 2位 ☆ ① 黒纏(影華) 2票
④ 華雄
3位 ⑦ 孫堅(蓮根) 1票
⑧ 周泰(明命)
⑨ ???
ランク外 ② 徐庶(茜) 0票
③ 張遼(霞)
⑤ 呂布(恋)
今のところこんな感じですね。
華雄人気に少し驚きつつも、恋が0票とかどういうことだ! と思っていたりします。
この回で順位が変わるのかどうか……見物かもしれません。
【あとがき】
こんばんわ。九条です。
前回から5日も経ってる……申し訳ないです。
投票の為、3日は空けようとか考えて怠慢してました(汗
艦これやったりカオスヒーローズに手をだしてみたり……
200話超えているweb小説読み始めたりと
自ら自分の首を絞めている状態でしたね、はい。
書き始めたらきりがなくなってしまったので、3000字ぐらいでずばっと切りました。
なので今回も短い……。
袁家がまたやらかしているところでキリが良かったのです。
駄名家が頭から離れない(笑)
次回もまた時間がかかるかもしれませんが
ゆっくりとお待ちいただければと思います。
ついでに拠点投票もお願いします(ペコッ
ではでは、次回も楽しんでいただければ~
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遅くなりました。#26更新です。
長くなってしまったので分割……しすぎた?
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