No.589239

真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第八節:開戦、呉vs魏・・・邂逅する義王と江東の虎

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2013-06-20 00:14:42 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:6053   閲覧ユーザー数:4513

まえがき コメントありがとうございます。梅雨入りして萎えぽよ状態のsyukaです。さて、今回は魏軍と呉軍がついに動きます。水蓮vs華琳、天はどちらに味方するのか。それと、うちでのほほんと過ごしている一刀くんと桃香がどう動くのか。それではごゆっくりしていってください。

 

 

「今日も快晴、市は活気に溢れているっと。」

「そうですね。」

 

今日はいつもより少し早く目が覚めたから市を散歩中。鍛練中だった愛紗も誘って二人で歩いてるからプチデート気分だ。

 

「もう少し遅い時間だったらどこかで食事出来たんだけどね~。」

「私たちだけで済ませたと知れれば鈴々が拗ねますよ。」

「ははっ、それもそっか。」

 

 愛紗ばっかりずるいのだー!と頬を膨らませる鈴々を容易に想像できる。そして奢った後に財布が軽くなり愛紗にお説教を喰らう俺の図。うん、いつも通りだよな。

 

「愛紗はどこか行きたいとこ・・・って言ってもどこも開いてないか。」

「私はご主人様と一緒ならば、どこでも構いませんよ。」

「またそんなこと言ってー、もっと欲を出してもいいのに。」

「欲をですか・・・そうですね。片時もご主人様の隣にいたい。と言うのが私の欲ですね。」

「それも良いね。愛紗と二人っきりでのんびり庭で日向ぼっこしてさ、俺がお弁当作って愛紗に膝枕してもらうのが理想かな~。」

「私などの膝でよろしければいつでもしてさしあげますよ。」

「本当に!?」

「いつでもとは言っても、流石に会議中や警邏中は無しですからね。」

「えぇ~。」

「そう言われましても・・・。」

「冗談だよ。」

「~~~っ!!」

 

 あっ、真っ赤になった。

 

「ご主人様!//」

「あははっ、ごめんごめん。」

「も、もう・・・//」

 

こういうやり取りも面白いなぁ。そんなやり取りをしながら警邏を終え、城へと戻った。

 

・・・

 

 愛紗は一度お風呂に入るというので、俺は一足先に厨房へ向かった。流石にこの

時間帯ならまだ誰も起きてないだろう。とは思ったんだけど・・・

 

「ご主人様、おはようございます。」

「清羅、おはよう。」

 

まさか先客がいるとは思わなかったな。

 

「今日はお早いのですね。まだ寝ていらっしゃる時間だと思ったのですが。」

「たまたま早く起きたんだ。で、今まで愛紗と市の警邏してた。」

「いいなぁ。羨ましいなぁ。」

「清羅も今度デートする?」

「うん♪」

 

 嬉しそうな顔しちゃって。俺も胸の中がほっこりしてきた。普段のきっちりした言葉遣いも良いけど、砕けた話し方も好きだなぁ。初めて聞いたときはこのギャップに驚いたけど、今はどっちも可愛いから許す!

 

「ところで・・・鍋、泡が吹き出してるよ?」

「え?・・・きゃあああーーーーー!!」

 

 どこか懐かしい香りが漂ってきた。・・・っと、懐かしさに浸ってる場合じゃなかったな。とりあえず鍋の蓋を取って鍋を一度、火の出てないとこに置いた。

 

「はぁ、ご主人様、ありがと。」

「もうちょっと料理にも集中しようね。」

「ご主人様が話しかけてきてくれたから嬉しくて、つい・・・てへ♪」

 

 

 可愛らしくペロっと舌を出す清羅。うん、可愛い。

 

「今美桜さまに教えていただいたお味噌汁を作ってるんだけど、味見してもらえないかな?」

「うん、いいよ。」

 

 なるほど、懐かしい香りの正体はこれだったのね。納得がいった。清羅が味噌汁を小皿に少しよそって渡してくれる。

 

「はい、どうぞ。」

「ありがと。(コクっ・・・。)」

 

 美味しい・・・。口の中に味噌の芳醇な風味が広がっていく。

 

「凄く美味しいよ。もしかして、前にも作ったことあったりする?」

「うぅん、今日初めて作ったよ?美桜さまの教え方が上手だったから、そのお陰かも♪」

「確かに婆ちゃんの教え方って上手いよなぁ。スパルタだけど。」

「すぱるた?」

「とっても厳しいってことだよ。」

「そんなことは無かったけどなぁ。」

 

 ・・・もしかして、俺にだけ厳しかったってこと?

 ここだけの話、全盛期に美桜が行っていた兵の鍛錬は一刀が受けていたものの何倍も厳しかったとか。自分の度量と同等の練度を求めていたのが祟っていたと後の影刀談。

 

「もうすぐ出来上がるから庭で待ってて。」

「俺も手伝うよ?」

「じゃあ、お皿出してもらえる?」

「了解。」

 

 二人で少しの間だけ厨房で料理作りを楽しんだ。

 

・・・

 

 清羅の朝食に舌鼓を打った後、俺は再び市へと舞い戻った。今度はちゃんとした警邏だ。いや、朝のもちゃんとしたものだったんだけどね。今の時間の方が人は多いし、やり甲斐があるってもんだ。

 

「一刀くん、久しぶりね。」

「あ、愛璃さん。お久しぶりです。」

 

 そう、こんな感じで久しぶりな人に会うことも・・・。へ?

 

「愛璃さん!?どうしてここにいるの!?というか、どうやってここまで入ってきたの!?」

「金髪の女性に許可はいただいたわよ?」

 

金髪の女性?うちの子だと・・・麗羽は絶対ないだろ?とすると・・・

 

「朝からいないと思ったらどこに行ってたの、鈴?」

 

 背後からこっそりと近づいてくる鈴に尋ねる。完璧に気配は消してるんだけど、何かそれが違和感を醸し出してるんだよなぁ。

 

「散歩がてら城壁をぐるっと回っていたら、たまたま見知った顔と遭遇したからな。連れてきたのだ。」

「私は驚いたわ。まさか黄竜がいるなんて思ってもみなかったし。」

「そりゃそうですよね。呉では勾玉の中に入ったままでしたから。」

「へぇ、出入り可能なのね。」

「出入りというよりは、勾玉を経由して姿を変えているからな。」

「それは俺も初耳なんだけど・・・。」

 

 少しだけ勾玉の重みが増した気がするよ・・・。

 

「それはともかく、俺に用事じゃなかったんですか?」

「そうだったわ。一刀くん、用件が用件だから将の方たちを集めて欲しいのだけど、良いかしら?」

 

 愛璃さんの真剣な表情から重要なことだと容易に読み取れる。

 

 

「分かりました。」

 

 誰か近くにいないかな・・・おっ!近くの露店で服を物色している蒲公英が丁度いいところに。

 

「おーい!蒲公英~!」

「ん?ご主人様、どうかしたー?」

 

 物色を中断してこちらに近づいてきた。

 

「謁見の間に将を皆集めてくれるかな?緊急事態なんだ。」

「よく分かんないけど、とりあえず集めてみるよ。とりあえず翠姉様と兄様にも頼んでみるね。」

「うん、よろしくね。」

「どれ、私も手伝おう。一刀は彼女を謁見の間に案内しておくといい。」

「二人ともお願い。」

「はーい♪」

 

 二人は揃って市を散策し始めた。ご主人様の隣にいた人だれー?っという会話が聞こえてくるけど、まぁ後で分かることだしいいか。

 

「ごめんなさいね、またお手を掛けることになるかもしれないわ。」

「前にも言いましたが、困ったときはお互い様ですよ。」

「ありがと。」

 

 俺は愛璃さんを連れて謁見の間へと向かった。

 

・・・

 

「えーと、程普さん。私はご主人様と太守をしている劉玄徳です。その、成都まで来た用件を聞いていいですか?」

「えぇ。今、私たち孫呉は魏と戦中です。私たちには孫堅文台様、孫策伯符様を筆頭に英傑が揃っていますが、如何せん兵数差が開ききっています。情報だけで三倍以上との報告が来ているほどです。」

 

 三倍以上・・・数字だけ見ても圧倒的なほどの差が開いているのは明らかだ。

 

「私たちは今の領土、呉という国を守れればそれで良いのですが、あちらの魏王はそうは行きません。行く行くは今残る三国を統一する目論見でしょう。」

「だろうな。曹操ならそこまで視野に入れていても何もおかしくはないだろう。」

「あのくるくる娘がそこまで考えるかしら?」

「少なくとも麗羽よりは考えてると思うぞ?」

「あの小娘より私のほうが劣ると言うのですか!?」

「・・・。」

 

 誰の目から見ても明らかだとは思うけど・・・言わないでおいてあげよう。機嫌を損ねられて、後で面倒なことになりそうだからとは言うまい。

 

「とりあえず、うちの周瑜からの言伝を預かっています。・・・二国、呉と蜀が同盟を組み魏を舞台から退場させることで二国で大陸を統一する。いかがでしょう?」

「朱里、どう思う?」

「私個人の意見でしたらそれも一理あるとは思いますが、ご主人様と桃香様は他の考えをお持ちでしょうから。」

「流石朱里ちゃん、よく分かってる~♪皆で力を合わせて、大陸の皆を幸せにできた方がいいもんね。」

 

 話を聞いていた愛璃さんが少し首を傾げる。

 

「と、言いますと?」

「俺の口から説明しても良いかな、桃香?」

「うん。」

「桃香と俺・・・いや、ここにいる俺たちが目指しているのは大陸にいる皆が幸せになることなんです。俺が偶然ながら知り合った愛璃さんたち、呉の人たちもそうだし、魏の曹操さんたちも例外じゃないんですよ。今は敵同士でも分かり合えるって信じています。俺たち蜀将はそれを知ってますから。」

「数名はご主人様に惚れ込んだから。という子もいますけどね。」

「美以はご主人様に一目惚れだったにゃ♪」

「ご主人様への愛なら誰にも負けないわよん♪」

「貂蝉、一刀様の困るような言動は謹んでください。さもなくば私が直々に制裁を下しますよ?」

 

 

「ほう、貂蝉と管轤が仕合うのか。それは必見じゃな。」

「二人とも、今はそんなことを話してるときじゃないから。話し合いが終わったらいくらでもやっていいから、ね?」

「分かりました。」

「分かったわ。」

「管轤さん、徹底的にやっていいからね。」

「一刀様がお望みとあらば喜んで♪」

 

 本当に嬉しそうに微笑む管轤さん。微笑み方がちょっと婆ちゃんに似てるなぁ。

 

「すみません、話が逸れました。つまり、私たちが望むのは三国同盟。現存している国は我が蜀、孫堅様の治める呉、曹操さんの治める魏。桃香と孫堅様と曹操さんが力を合わせれば、この大陸の平和と安全はより磐石なものとなります。」

「ご主人様も一緒だからね!」

「それは分かってるよ。王、将、民の幸福を願うなら三国同盟こそが最良の形。これが俺たちの望み、願いです。」

「そうですか、分かりました。」

 

 愛璃さんの表情が真剣なものから穏やかなものへと変わった。

 

「やはり、私の目に狂いはありませんでした。劉備様と北郷様の懐の深さは、私たちの予想の遥か上を行くものだと実感出来ました。」

「俺は呉の人たちと同盟を組んでも良いと思う。皆はどう?」

 

 皆が黙って頷いた。これは問題無しだね。

 

「俺たちも呉と同盟を組みましょう。」

「ありがとうございます。では、早速にでも移動したいのですが・・・そちらの用意もありますので明日の早朝でよろしいですか?」

「はい。程普さん、よろしくお願いします♪」

「えぇ。」

「じゃあ皆は各自、自分の隊の兵に通達しておいて。一応、激しい乱戦になるだろうから参加するかしないは確認しとくこと。俺も無理はさせたくないから。」

「御意。」

「それでは各自解散。明日までしっかり休養を取ること。お酒も飲んでもいいけど程々にね。」

「よっしゃ、飲むでー!」

「焔耶、今夜は付き合え!紫苑もな。」

「えぇ。」

「・・・お館様、さっそく明日に支障が出そうなんだが。」

「・・・頑張って。」

 

 焔耶の顔色が飲む前から真っ青になったのをよそ目に各々解散した。

 

・・・

 

謁見の間には俺と桃香、それに皇帝の劉姉妹と愛璃さんが残った。

 

「焔耶、大丈夫なの?宴の時はいつもだけど真っ青だったわよ?」

「焔耶ちゃんは大丈夫だよ~。何だかんだで翌日にはケロッとしてるもん。」

「問題・・・ないのか?」

「も~、ご主人様は心配性なんだから~。」

「いや、宴で酔い潰されている印象が強いからさ・・・桔梗に釘を差しといたほうがよかったかも。」

「一刀さん、明日は私も行ったほうが良いですか?」

「百合は薔薇と一緒にお留守番。月と璃々ちゃんも残るし、護衛には馬騰さんがいてくれるから。」

「では皆さんの帰りを待っていますね。よ~し、月ちゃんに料理のコツを教えてもらいましょ~♪薔薇ちゃん、頑張ろうね♪」

「は、はい。」

「ふふっ。」

「愛璃さん?」

 

 不意に笑みを浮かべた愛璃さんに視線を向けると、どこか面白そうにくすくすと笑っていた。

 

「ごめんなさいね。ただ、どうもあなたたちが主従関係のように見えなくて。仲の良い兄妹にしか見えなかったのよ。」

「私は薔薇ちゃんのお姉さんですから当然ですよ~♪」

 

 

「お姉様、程普が言いたいことはそっちではないですよ・・・。」

「ほぇ?」

「えぇ。一刀さんがお兄さんで仲良しの三人の妹さん。」

「三人とも劉姓だし、姉妹って言われてもおかしくはないかもね。本質的なところは似たところあるし。」

「私、桃香やお姉様みたいにのほほんとしてないわよ?」

「そんなことないと思うけどな~。」

「薔薇ちゃんもたまにのほほんとしてますよ~。」

「してませんよ。」

「してましたよ~。先日、一刀さんがなかなか部屋に戻って来なかったときも・・・。」

「わーー!わーー!お姉様!!//」

「?」

「そこで首を傾げないでください・・・。」

「あはは♪」

「そうだなぁ、姉よりしっかり者でどこか抜けてる三女の薔薇。自分の空気を崩さない天然の次女の百合。お姉ちゃんぶろうとするも上手くいかない甘えん坊の長女の桃香。ってとこかな。」

「そして、世話好きでたくさんの女の子から好意を持たれる長男の一刀さんですね。」

「三人が妹だったら楽しそうだね。桃香は義妹だから大体分かるけど。」

「毎日寝癖直してもらってるからね~。いつもお世話になってます♪」

「一刀さんが弟にいたら絶対溺愛するわね。弟離れ出来そうになくて怖いわ♪」

「その割にはえらく楽しそうですね。」

「えぇ♪あ、そうだった場合、確実に雪蓮様・・・孫策様の遊び相手になっていただろうけど。周瑜と一緒に頭を抱える光景が目に浮かぶわね。」

「それはそれで楽しそうですね。」

「孫策様が聞いたら喜ぶわよ。あの方も一刀くんを気に入ってたから。むしろ今からでも遅くないわよって言いそうなくらいだもの。」

 

 俺が呉に落ちていた場合はそうなっていたのかもしれないな。それはそれで悪くないかもね。武官として働きながらも冥琳さんや愛璃さんの手伝いをして、雪蓮に

 

「暇だから付き合いなさい。」

 

とか言われて市まで遊びに行ったりね。

 

「そっか、ご主人様は呉の人たちと面識があるんだよね。」

「うん、皆良い人ばっかりだよ。年齢層はうちより少し高めかなって印象。孫堅様がご健在だからそれが大きいのかも。」

「うちの年長者は紫苑さんと桔梗さんだけだもんね~。」

「管轤と祝融はどうなのよ?」

「婆ちゃんの下で武官してたくらいだから紫苑たちより年上かもね。それを言えば漢女二人もそうだけど。」

「漢女二人も頼りにはなるよ。けど・・・どうも俺の貞操の危機を感じてならないんだよなぁ・・・。」

「そんなに悪い人ではありませんよ~?見た目がちょっと特徴的ですがね~♪」

「あれでちょっと・・・。」

 

 百合の人を見る感性は流琉並みということが分かった。あの二人に毒されて妙な育ち方をしないように目を光らせといたほうが良いかな。

 

「とりあえず、愛璃さんは長旅でお疲れでしょうから部屋に案内します。」

「ありがとう。私としてはもう少しあなたたちとお話しても良いかなって思っていたのだけど。」

「話になら俺が客間で付き合いますよ。」

「そうね。」

「じゃあ私は薔薇ちゃんと百合ちゃんと市を回ってくるね~。」

「了解。」

 

 俺は桃香たちと分かれて愛璃さんを客間へと案内した。

 

・・・

 

 その頃、某所では一人の男が荒野で佇んでいた。

 

「ようやく魏と呉が動きましたか。呉王と接触したときが好機ですね。その一瞬を狙いましょう。呉王を狙い、蜀との繋がりを絶たせていただきましょうかね。まったく、左慈の人使いの荒らさは相変わらずですね。ふふっ♪」

 

 不敵な笑みを浮かべる男の背後には白装束を身に纏った者たちが待機している。その中には一人、魏兵の鎧を身に纏う者がいた。

 波乱の波は着々と大きなうねりとして一刀たちに近づいていた。

 

・・・

 

 

 翌日、俺たちは兵を率いて愛璃さんと共に呉陣営の構える拠点へと向かった。歩くことおよそまる一日。ようやく到着した。

 

「水蓮、お久しぶりです。」

「ようやく到着か。すまないな、急な申し出をしたとは分かっている。」

「愛璃さんと同じことを言いますね。困ったときはお互い様ですよ。」

 

 そこにいたのは水蓮、雪蓮、冥琳、穏、孫権さんだ。やはり魏との戦ともなると総出になるのは当然か。

 

「愛璃様、お疲れ様です。」

「このくらい、どうということはないわ。私としては戦前の息抜きがてら丁度良かったし。」

「皆、紹介するよ。この人が呉王の孫堅文台様。」

「はじめまして!ご主人様と一緒に太守をしている劉備玄徳です!よろしくお願いします!」

「あ、あなたが劉備か?」

「はい♪」

「・・・随分若いわね。」

「元気が有り余ってる感じね。」

「?」

「すまない。私が現呉王、孫堅文台だ。こちらの急な同盟を組んでいただき、感謝する。」

「ご主人様も言ってましたけど、困ったときはお互い様です。これからは、私たちが困ったときは助けを求めるかもしれませんので。」

「あぁ、その時は必ずそちらに赴くと約束しよう。」

 

 うん、出だしは順調みたい。桃香のことだから人あたりは良いし、あまり心配はしてなかったけどね。

 

「そして、こちらが娘さんの孫策伯符様。」

「私と一刀の仲なんだから様付けなんていらないのに。」

「いや、公の場なんだからさ・・・。」

「冗談よ。蜀のほとんどの者には初対面ね。私が孫策伯符、連合の件以来かしら。」

「そして、軍師の周瑜公瑾さん。」

「私の発案に乗っていただき感謝する。」

「あれ以来、体の調子はどう?」

「自分でも驚くほど快調だ。一度は諦めた人生、こうしていられるのも一刀たちのお陰だ。改めて礼を言わせてくれ。」

「そんな必要はないよ。冥琳がいれば呉はもっと安定する。それに、雪蓮のお目付け役がいなくなったらそれこそ心配でしょ?」

「そうだな。私も迂闊に天に召すことは出来ん。」

「何よ~、私が問題児みたいに言わないでちょうだい。」

「一刀の言い分に間違いはないだろう?」

「私ほど出来た人間はいないわよ♪」

「自分でそこまで言えるのは一つの魅力ではあるけどね。」

 

 雪蓮も相当なマイペースだよな。知ってたけど。

 

「そして、もう一人の軍師の陸遜伯言さん。」

「よろしくお願いしますね~。一刀さん、私からも一言お礼を言わせてください。今回の同盟は呉には欠かせない案件でしたから。」

「そんなことないって。呉も十分戦力は整ってるんだから、穏や冥琳みたいな優秀な軍師もいるしね。」

「おだてても何も出ませんよ~♪」

「いや、本当だって。」

 

 そして最後の一人、孫権さんに視線を送るんだけど・・・表情は固い。

 

「ねぇ雪蓮、孫権さんはそっちで紹介してもらえると助かるんだけど、良いかな?」

「あの子とはまだ和解してなかったのね。はぁ、相変わらず堅いんだから・・・。良いわ、こっちで紹介する。」

「助かる。」

「最後に、この子が私の妹の孫権仲謀よ。」

「我らが呉と同盟を結んでいただき、感謝する。」

「相変わらずあんたは硬いわね~。もう少し砕けても良いんじゃない?」

「雪蓮姉様が砕けすぎているんです。もう少し王族としての自覚をですね・・・。」

 

 

 孫権さんが王族の自覚云々を語る間も雪蓮は、はいはい。と言いながら聞き流している。この感じ、どこか愛紗に似ているものを感じる。

 

「と、とりあえず朱里、今回の同盟の件について説明を・・・朱里?」

 

 彼女を見ればジト目で俺を見てくる。朱里だけでなく何人かは同じような視線を俺に送っている。な、何で?

 

「ご主人様、相当嬉しそうですね・・・。」

「全くだ。もう少し慎みを持ってですね・・・。」

「愛紗よ、嫉妬深い女は嫌われるぞ?主が女を惹きつけることなど、今に始まったことではないではないか。」

「ば、馬鹿を言うな!私は嫉妬などしていない!//」

「愛紗ちゃんも若いわね~。恋する女の子してるじゃない♪私も負けてられないわ。」

「からかうな!//」

「一刀はやっぱりそっちでもモテるのね。予想どうりだわ♪」

「それは良いから。朱里、成都で話し合ったことを呉の人たちに話してもらえるかな?」

「むぅ・・・分かりました。」

 

 朱里は水蓮たちに三国同盟の詳細を話した。三国が手を取り合えば全てが丸く収まると。

 

「なるほど、良い案だ。流石は伏竜鳳雛と呼ばれるだけのことはあるということか。雛里と名を連ねるものなのだと再確認したよ。」

「はわわ・・・呉の美周郎さんにそこまで言われるなんて// ・・・えへへ♪」

 

 おーっ、もの凄く照れてる。相変わらず褒められるのには弱いみたい。

 

「私的には伏竜鳳雛より、はわわ軍師とあわわ軍師のしっくり来るわね。」

「はわわ!」

「あわわ・・・。」

「あはは♪本当に言うのね~。」

 

 名軍師もこれさえなければ威厳があるんだけどなぁ。可愛いから全然OKなんだけどね。

 

「とりあえず、私たちがここですべきことは魏兵の兵数を可能な限り減らすこと。間違いないか?」

「うん。問題ないよ。」

「了解した。愛璃、お前はそろそろ前線に戻れ。美々だけにしているから手綱を持つ人間がおらぬのだ。」

「分かりました。ですが・・・うっかり私もやりすぎるかもしれませんが♪」

 

 愛璃さんが意味ありげな言葉を残して前線へと駆け出した。

 

「あれで本職が軍師っていうのが驚きだよなぁ・・・。」

「え!?程普さんって軍師さんだったの!?」

「桃香・・・成都を出る前に謁見の間で聞いたよね?」

「え、えへへ~。」

「ごまかしても駄目だよ。」

「まぁ、分からないでもない。私よりも頭が切れる方であるにも関わらず、武官並みの実力を持っている方だからな。ゆえに一人で戦場に出てもやっていけるし、誰かの補佐に回ることも出来るのだ。ある意味、雪蓮と似たようなものだな。」

「私には冥琳がいるわよ♪」

「お前の戦場の勘には負けるがな。」

「そんな謙遜しなくてもいいのに~♪」

「孫策さんと周瑜さんって仲が良いんですね~。」

「子供の頃から一緒だからね。連れ添った時間がモノを言っているのよ。」

「子供の頃から苦労させられてきたがな。」

「へぇ~。私も小さいときからご主人様と一緒だったら二人みたいになれてたのかな?」

「一刀ならぜーんぶ任せてもやってくれそうだけどね。」

「頼り甲斐のある男だというのは私も認める。」

 

 ベタ褒めされても何も出ないよ?・・・というか、褒められてるのかな?ちょっと複雑な気分になってきた。

 

「はいはい、世間話はそこまで。とりあえず、前線にそちらからも出陣してもらえるか?なにぶん魏兵の数が多いのでな。」

「言われなくても。皆、呉の人たちと協力して魏兵を減らそう。貂蝉と卑弥呼はやり過ぎないように。」

「じゃあ私は本気を出しますかね♪」

 

 

「ご主人様、管轤ちゃんがこんなこと言ってるわよん。ほっといたら魏兵全員皆殺しにしちゃうわよ?」

「そんな物騒な女ではありません。」

「私と管轤で三十万ずつというのはどう?」

「いいですね。」

「祝融、抜けがけはなしじゃぞ!三等分で二十万ずつじゃ!」

「あんたら、くれぐれも皆殺しだけはしないでね。うーん、残り十五万ぐらいになるまでなら許すよ。」

「御意。」

「私たちも貂蝉たちに負けてられないな。関羽隊、行くぞ!」

「張飛隊!目標、魏兵の殲滅なのだ!突撃なのだー!」

「あっ、ずっこいぞ!馬超隊、関羽隊に続けー!!」

 

 各々前線に向けて突撃していく。俺は軍師の皆と一緒に出遅れちゃった。

 

「もう、なんでうちの将たちは皆、戦になると落ち着きがないの?ご主人様を見習って欲しいわ。」

「戦の時くらいそれで丁度いいんだよ。それに、なんだかんだ愛紗や紫苑、桔梗あたりが手綱を握ってくれるから。」

「ご主人様がそう言うのなら私は何も言いませんが・・・。」

「明里ちゃんはご主人様には素直なんですよね。」

「にゃっ!朱里ちゃん!//」

「こらこら、軍師が落ち着きを持たないでどうする?」

「うっ・・・すみません。」

「じゃあ、俺も行きますね。北郷隊、俺に続け!」

「どれ、私たちも支度が済み次第、移動するぞ。」

 

 俺は軍師たちを連れ移動を開始・・・しようとした。何か、視線に違和感を感じ思わず水蓮たちの方を振り返る。

 

「ん?どうかしたか?」

「・・・いや、何でもない。・・・っ!!」

 

 いや、見つけた!拠点のまだまだ後ろ。何か詳しくは見えないが、遠方の一点の光は見間違える訳が無い。矢の矢尻だ。狙いの先は・・・やばい!間に合うか?俺と彼女の距離にしておおよそ八歩分。俺の体は言葉を紡ぐ前に動いていた。

 

「どうしたのだ、血相を変えて?」

 

 間に合ってくれ!

 

「この風切り音・・・まさか!母様っ!」

 

 事態に気付いた雪蓮が水蓮の前に立つ。雪蓮じゃ駄目だ!鈴の力を持ってる俺じゃないと!

 どうにか一刀は間に合わせることが出来た。体を大の字に広げ構える。腹部で受ければ大した傷にはならず毒に耐性のある一刀には問題はない。そうなるだろうという一刀の考えは一陣の風によって破られた。矢は進行方向を若干上に変え・・・

 

「ぐああああああああああっ!!」

「一刀!」

「ご主人様ぁ!!」

 

 一刀の左目へと突き刺さった。

 ぐっ!全痛覚が左目に集まってるみたいだ!けど、とりあえず矢を抜いて体勢を立て直さないと・・・あ、あれ?体がどんどん傾いて・・・。

 

「馬鹿者・・・無茶をしおって・・・。」

 

水蓮が倒れる一刀を支える。

 

「私を庇わずとも良いだろうに・・・。」

「一刀!大丈夫か!」

 

 軍師と共にいた華佗がこちらに近づいてくる。

 

「すまない。一刀を頼む。」

「了解した。」

 

 

 一刀を華佗にそっと渡し、私は狙撃手へと視線を送った。・・・しかし、そこに当人の姿を見受けることは出来なかった。

 

「孫堅、連れてきてやったぞ。」

 

 そこには私を狙った狙撃手と首根っこを掴んだまま威圧感を放出し続けている黄竜がいた。確か、鈴といったか。

 

「孫堅、孫策、これを魏王の下まで持っていけ。この家畜にも劣る外道をな。」

「えぇ。曹操には、それ相応のことをしてもらうわよ。」

 

 自分の中がこんなにも怒りで満ちたのは初めてだ。愛する一刀に致命傷を負わせたこと、黄竜の名のもとに・・・制裁を下してやろう。

 

「ねぇ!ご主人様!目を開けてよ!大丈夫だよって言ってよ!ご主人様ぁぁぁあああ!!!!!」

 

 桃香の慟哭が戦場に響き渡る。呉王は怒りを露わにし、黄竜は勾玉へと戻り・・・真の姿、竜の姿へと変貌を遂げていた。

 

 

あとがき 読んでいただきありがとうございます。第八節:開戦編はいかがでしたか?怒りを隠しもしない呉王、竜へと変貌を遂げた黄竜。戦場はいつもより多くの血が降るでしょう。次回 第八節:暗躍する影、怒りと混乱と悲しみと・・・ でお会いしましょう。次回もお楽しみに!

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
26
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択