第二章 『三爸爸†無双』 外伝 第四の天の御遣い
『あれぇ?だれか寝てるよ?』
『だれかな?見たことないお姉ちゃんだ。』
うん?子供の声?
『お庭でおひるね♪』
お庭?昼寝?それってあたしの事?
『もしかしたらご病気なのかも!烈夏ちゃん!華佗先生呼んできて!』
かだ先生?加田?鹿田?そんな名前の先生いたっけ?
とにかく起きないと。
騒ぎが大きくなったらまた生活指導の先生に怒られちゃうよ。
「おはよう~♪あたしは大丈夫だから心配しなくてもいいわよ。」
目を開けて上体を起こすと、案の定周りにはちびっ子達が集まっていた。
ニッコリ笑って挨拶するとちびっ子達も笑い返してくれる。
予想通り、初等部の子達だ。
どうやら目の前の金髪ツインテールの子がリーダーっぽいわね。
初等部の子は特別な用事や合同カリキュラム以外は中等部の敷地に入っちゃいけない事になってるのに・・・カリキュラムの予定有ったっけ?
でも、この子達・・・美少女ばっかりだねえ。
いくらお嬢様が集まる聖フランチェスカ学園とはいえここまでの粒ぞろいは無いよ。
そう言えば、あたし何で学園の芝生で寝てたんだっけ・・・・・・・・・あれ?
ここ・・・・・・フランチェスカの中等部じゃ・・・無い・・・・・・。
あたしは中等部からの受験入学組だから初等部側の敷地に詳しい訳じゃないけど・・・・・こんな広い庭が有るはず無い。
高等部は地方都市に有って敷地面積がバカみたいに広いけど、中等部より下は都内に有るからあそこまで広くない。それでも都内に有る事を考えれば充分広いけど。
でもこの庭(?)は・・・・・東京ドーム一個分とでも言いますか・・・その広さに小山有り、小川有り、向こうに見えるのは桃の木の林・・・ここは果樹園かと言いたくなるくらいに甘い香りの実を付けていた。
「お姉ちゃん、だぁれ?」
リーダーの子とは違うぽわぽわした感じの女の子に言われてその子を見ると・・・・・制服がフランチェスカの初等部の物と若干違う。
しかも左肩の校章・・・・・・・あたしんちの家紋!?
なんだか訳分かんなくなってきた・・・・・・・。
「君!大丈夫か!?」
突然の男の人の声に振り向くと・・・・・イケメンが立ってた。
でも、服装が・・・・・ナニこの人?ビジュアル系の軽音部?それともレイヤーさん?
「あの・・・・・・・どちらさん?」
「ああ、俺の名前は華佗。ここの医者だ。」
校医さんか・・・だからさっき『かだ先生』って・・・・・・・医者ぁ!?
「ちょっと動かないでくれよ。今、健康を診るから。」
え?え?
「はああああああああああああああああああっ!!」
な、なに!この気合!?
「ふう・・・・・うん。病魔の姿は無い・・・・・だが・・・」
「あ、あの・・・・・何か?」
「君はもしかして、一刀の肉親か?」
は?
「あ、あの・・・・・『かずと』ってもしかして・・・」
「北郷一刀の事だが・・・」
「兄さんの知り合いなんですか!?」
「あ、ああ・・・なるほど妹さんか・・・」
なんだ兄さん、こんなイケメンの知り合いが居るなら紹介してくれたらいいのに♪
この間、家に来た及川って軽薄なお猿より何十倍もいいじゃない!
身のこなしといい、さっきの気合といい、かなりの武道の達人と見た!
「あたし、北郷一刀の妹で北郷
「え?あ、ああ。字は元化って言うんだ。華佗元化だ。」
「へえ♪『かだげんか』さんですか・・・・・・・あれ?どっかで聞いた事が・・・」
かだげんか・・・かだげんか・・・・・・華佗元化!?それに今、字って言わなかった!?
「華佗!その子が四番目の天の御遣いね!」
若いけど威厳に満ちた女の人の声に振り返ると、金髪のツインテールを巻き毛にした綺麗な人が立っていた。この人もなんかすごい服着てるけど・・・・・・さっきのリーダーの子に似てる・・・お姉さんかな?
「ああ、間違いない!」
「そう・・・・・失礼を承知で言わせてもらうけど・・・貴女、お名前は?」
「は、はい・・・北郷二刃です・・・・・」
存在感だけで圧倒されて、素直に答えてしまった。天の御遣いって何?
『北郷!!』
おわっと!目の前の人に圧倒されて気付かなかったけど、他にも十数人の女の人が来ていた。
「この子は一刀の妹さんだ。一刀の氣とかなり近いから間違いないだろう。」
「やっぱり一刀の妹なのね・・・・・」
『ほっ・・・』
なんか後ろの人達からあからさまな安堵のため息が・・・・・。
目の前の人も表情が柔らかくなったし。
「貴女は今の自分の状況が分かっていないでしょうから、説明してあげるわ。」
今の状況・・・・・もしかして、寝てる間に高等部まで連れてこられたとか?・・・・・世間知らずのお嬢様方は、あたしの常識の斜め上を行くことが多いとこの二年半で学びましたからねぇ・・・居眠りしてる間にこんな所に連れてこられた可能性が大きい。
「ここは、貴女から見て『千八百年前の中国』となるそうよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・え~と。
「・・・・・三国志しばりのコスプレイベント会場?」
「あ♪ご主人さまと同じ事言ってる♪懐かしいなぁ♪」
ご主人さまって・・・この赤い髪の人、誰かに仕えて・・・・・仕えるかぁ・・・あたしもフランチェスカの毒に侵されてるねぇ・・・・・周りがお嬢様とその子に仕える女の子がぞろぞろ居るんだもんなぁ・・・・・・・・でもこの人スゴイ胸・・・。
「正確にはそことよく似た『平行世界』になるのだけど・・・・・」
あたしの言葉を無視して説明が続けられた・・・・・まあ、いいけど・・・。
「並行世界?」
「先に自己紹介をした方が良さそうね。私の名前は曹操孟徳。これは本名よ。」
・・・・・この人・・・本気で言ってる・・・嘘を言ってる人の目じゃない・・・・・。
「で、今のが劉備玄徳。こちらが孫権仲謀。」
「初めまして、二刃ちゃん♪」
「初めまして、よろしくね♪」
孫権さんの瞳が碧い・・・・・ちゃんと『碧眼児』してる。
「は、はい・・・・・初めまして・・・・・。」
う~ん・・・この人たちが揃ってあたしを騙そうとしているとは思えないんだけど・・・。
「あ、あの!質問してもいいですか?」
「ええ、どうぞ。」
三人とも物腰が柔かで、凄く友好的だし・・・まあ、まだ警戒は緩めちゃダメだけど。
「あたしの感覚では、曹操さん、劉備さん、孫権さんが一緒に居るのはどうしてなのかなって思うんだけど。」
並行世界ってロジックを持ち出してきたから、それなりのコジつけは出来そうだけど。
曹操さんがあたしの質問に答えるより先に、意外なところから発言が有った。
「ねえ、媽媽達が一緒にいるのは変なの?」
それはあたしが最初に見た金髪ツインテールの女の子。
「ママ!?」
姉妹じゃないの!?
「先に紹介するわ。この子は私の娘で曹沖・・・・・・貴女の姪よ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・姪?」
「あ、この子はわたしの娘で劉禅っていいます♪この子も二刃ちゃんの姪だよ♪」
「この子は孫登。私の娘で、この子も貴女の姪よ。ここに居る全員が母親とその子供だけど、子供達は全てあなたの姪になるわ。」
「・・・・・・・・・・ほ、本当に?」
「貴女達!爸爸の名前を大きな声で言ってみなさい♪」
『ほんごうかずとー!!』
こんなキラキラした笑顔の子達が嘘を言っているとは思えない・・・・・・つまり・・・。
「(華琳さん・・・二刃ちゃん、驚いた顔のまま止まっちゃいましたよ・・・)」
「ちょっと刺激が強すぎたかしら・・・・・大丈夫?」
「あんの腐れ外道がああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
【華琳turn】
第四の天の御遣い。
一刀の妹、北郷二刃。
名前は一刀から聞いて知っていた。
こんな子だったのね。
「帰る方法を教えて下さいっ!!今すぐあの馬鹿兄貴叩きのめして、みなさんの前に連れて来ますからっ!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
おかしい!彼女の言い方では一刀が正史に居るとしか思えない・・・・・これは・・・。
「「「今の声!まさか本当に二刃がここに来たのかっ!?」」」
城壁の外で流星の飛来を待ち受けていた一刀たちが戻ってきた・・・・・あなたたち、本当に間が悪いわね・・・。
「え!?に、兄さん!?・・・・・・・・・・・兄さんが・・・・・・・・」
まだ、三人に分裂してる事を伝えていないのに・・・・・それは驚くでしょうよ・・・。
「兄さんが老けたっ!!」
「「「グッサアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」」」
「おまけに三人に増えてるっ!!」
「「「先にそっちを驚けっ!!」」」
「うん。このノリは間違いなく本物の兄さんだわ。」
「「「そ、そうか・・・・・・判ってくれて嬉しいが、もう少し心臓に負担のかからない確認の仕方をしてくれ・・・・・」」」
なんなのこの兄妹・・・・・。
「でも・・・・・いったいどうなってるの?家に居るはずの兄さんがここに居て、しかも三人に増えて更に老けてるなんて・・・・・。」
「「「老けてるは余計だ!・・・・・・俺が家に居る!?」」」
やっぱり・・・・・。
「一刀、彼女にはまだ説明をし始めたばかりなの。あなたたちの疑問も解決してあげるから、まずは彼女にここの事を知って貰いましょう。だけどその前に・・・」
子供達には退屈でしょうからちょっと席を外させないと。
「麗羽、子供達を学園で遊ばせて頂戴。」
「はぁ、仕方ありませんわね・・・・・みなさん、学園に向かいますから付いていらっしゃい。」
子供達が庭を後にしたのを確認して、私達は会話を再開する。
「待たせたわね。では、説明を始めるわ。」
「あの!その前にここが本当に『三国志』の世界だと云う証拠を見せて下さい!」
証拠・・・そうね、確かにこの場所ではそれを証明出来る物が何も無いわ。
私は一刀たちを振り返ってみる。
「あそこに登ろう。あそこからなら街並みとか山も見えるし。」
緑一刀が指差したのはこの庭の小山の上にある東屋。
私達はその東屋に移動した。
今この庭に居るのは、二刃、三人の一刀、私を含めた三王、華佗、そして秋蘭、風、稟、冥琳、穏、亞莎、朱里、雛里、大喬、小喬、月、詠の外史研究会の構成員と春蘭、思春、愛紗の筆頭武将三人。
丘の上から見える景色は、庭を取り囲む壁と本城内の建物、その向こうに房都の街並みとそれを守る城壁。
城壁の外に広がる田畑と放牧地、川、森、山々。
「「「どうだ二刃。少なくとも日本には無い風景だろう?」」」
「これはさすがに・・・・・信じるしか無いね・・・」
さてと、ようやく話が進められるわね。
「ここは房陵。荊州の北部になるわ。あそこに見える川が漢水、川を渡って少し行くと新城の街がある。」
私が指を差した方角を二刃が目を見開いて眺めた。
「新城の近くなんだ・・・・・・うん、場所は何となく分かった・・・」
「この房陵は魏、呉、蜀を束ねる帝国、『晋』の都。房都とも呼ぶわ。そして・・・」
言葉を切って一刀たちに振り返る。
「貴女の兄、北郷一刀は晋の初代皇帝で私達の夫よ。」
こうして口にすると改めて実感するわね。
「ああああああああああっ!!思い出した!兄さん!さっきの子供達は全員兄さんの子供なのねっ!?」
「「「あ、ああ・・・そうだけど・・・」」」
「さっき孫権さんがここいる女の人全員が母親だって言ってたわっ!一体何人奥さんが居るのよっ!!」
ああ、そう云えば一刀の居た国は完全な一夫一妻制だったわね。
「「「え、ええと・・・・・・・48、49、50、51・・・・・」」」
「把握しきれてないのかああああああああああああああああああああっ!!!」
「お、落ち着いて二刃ちゃん!みんなご主人さまの事が大好きで奥さんになったんだから!」
桃香に抱きつかれて暴れるのは止めてくれたわね。
「ねえ、二刃。貴女は私達、曹操、劉備、孫権が女だと云う事に疑問は無いの?」
「それは・・・さっき『並行世界』って聞きましたから、それも有りかなって・・・・・まさか奥さん全員が!?」
「先に今ここに居る者だけでも姓名を教えておきましょう。向こうから夏侯惇、夏侯淵、程昱、郭嘉。」
これだけで二刃が驚いていた。
私に続いて蓮華が紹介する。
「甘寧、周瑜、陸遜、呂蒙。」
次に桃香が引き継ぐ。
「愛・・・じゃない、関羽、諸葛亮、龐統・・・・・真名じゃないと呼びづらいねぇ。」
「マナ?」
「「「それは後で教える。こっちが大喬でこっちが小喬。」」」
「あ、大喬さんと小喬さんは女性のままなんだ・・・」
「「「そして賈駆と・・・・・董卓だ。」」」
「えっ!?こんなに綺麗で可愛い人が・・・董卓!?」
「「「驚くのも無理はないと思うけど、三国志演義とは性格も真逆だから。」」」
正史で伝わる董卓は暴君だったと一刀は言っていたものね。それでもこちらで広まってしまった『董卓』よりはマシだと思うけど。
「「「そして彼が・・・」」」
「あ、俺はさっき自己紹介をしてある。」
「華佗さんよね。」
あら?華佗に対しては警戒心が無い・・・と言うか・・・。
「「「さっきの真名についてだけど。これは信頼し合う者同士でなければ呼んではいけない特別な名前の事だ。本人の承諾無しに呼べば殺されても文句は言えない。」」」
「そんな風習が有るんだ。」
「二刃。貴女には私達の真名を受け取って欲しいのだけど、いいかしら?」
「ええ!?あたしはまだ出会ったばっかりだし、何か分かんない事だらけだし・・・そんな大事な名前を受け取るなんて・・・」
「貴女のお兄さんも似たような物だったわよ。貴女は一刀の妹。つまり私達の義妹になるのだから。それにこれまでの貴女を見ていて真名を預けるのに問題無い人物と判断したわ。」
「・・・・・いいんですか?」
「ええ、是非♪」
「分かりました、謹んでお受けします!」
背筋を伸ばして答える姿。好感が持てるわね・・・・・なんか妹の方がしっかりしてるじゃない。
「ありがとう、二刃。私の真名は華琳よ。」
「わたしも!真名は桃香です。改めてよろしくね、二刃ちゃん♪」
「私の真名は蓮華よ。実の姉だと思って気軽に呼んで頂戴♪」
こうしてここに居る者達は順番に二刃へ真名を預けて行った。
「あの、華佗さんの真名は・・・」
「い、いや、俺は・・・」
「(二刃、説明が足りなかったけど、男女が真名で呼び合うのは家族とか師弟以外は特別な意味だと思われるわよ♪)」
こっそりと二刃に耳打ちしてあげた。
「ひゃあ!す、すす、すみませんっ!!」
ふふ♪真っ赤になっちゃって、可愛いわね♪でもこれはいい感じかしら?
三ヶ月前
本城 謁見の間
【緑一刀turn】
「お初にお目にかかります、三皇帝陛下。私の名は菅輅。占い師にございます。」
眞琳、香斗、蓮紅の六歳の誕生日を祝うパレードを終えて城に戻った俺たちに、緊急の会議を開くと連絡があった。
そして全員が集まった謁見の間に現れたのが・・・・・・菅輅。
俺たち三人がこの外史に現れるのを予言した占い師・・・・・いや、前の外史でもそうだ。
炙叉、貂蝉、卑弥呼が周りを固め、菅輅を警戒している。
連れてきたのもこの三人だと報告も受けていた。
つまり彼女はそっち関係の人だと全員が理解した。
「菅輅、久しぶりね。あの予言以来数年・・・・・まるっきり消息が掴めなかった貴女が突然現れるなんて・・・もしかしてこの外史の外に居たのかしら?」
華琳は警戒しながら、あからさまな情報収集を開始した。
「そんなに怖い顔をしなくてもいいじゃない、曹操ちゃん。劉備ちゃんに孫策ちゃんもひさしぶり~♪孔明ちゃんに士元ちゃんも♪あの時は違う名前だったけど覚えてるわよね♪」
なんか想像してたのと違うなぁ・・・・・。
みんなも戸惑っているし。
「菅輅。華琳の言葉を否定しないと云う事はそうなのね。」
雪蓮のこんなに凄みの効いた声を聞くのは久しぶりだ。
「ええ、そうよ。でも私は『敵』ではないわよ。」
「今の私達がその言葉を素直に信じられると思う?」
「あの時も私の言葉を素直に信じていなかったと思うけど?」
「・・・・・・それもそうね。」
菅輅は会話が楽しいのかクスクス笑っている。
「あの・・・・・菅輅ちゃん、今日はお祝いに来てくれたのかな?」
桃香なりに場を和ませようとしたのだろうが、当然上手くいっていない。
「そうだわ、お祝いを言わなくちゃ。この度は皇帝陛下の三人の姫様、曹沖様、劉禅様、孫登様の六歳になられるお誕生日を心から祝福いたします。」
「それで?本当の目的は?」
華琳はつまらない芝居の感想を呟く様に言った。
「予言を伝えに来たのよ♪」
「予言?」
恭しく礼をした菅輅がゆっくりとその紅い唇を開く。
「この菅輅の予言をお聞き下さい・・・・・間もなくこの外史に四人目の天の御遣いが降臨されます・・・・・流星と共にこの房陵へ。」
「「「な、何だってっ!!」」」
俺たちは思わず玉座から立ち上がった。
新たな天の遣い!?
「それは北郷くんにとても近い人。それも女の子よ♪出血大サービスでここまで教えちゃう♪」
「「「俺に近い女の子って・・・・・・まさか・・・」」」
「ご主人様・・・まさかあちらでの恋人・・・ではないでしょうな。」
「「「愛紗・・・・・疑り過ぎだって。」」」
向こうじゃモテて無かったって言ってるのに・・・・・。
「一刀・・・あなたに近い女の子って・・・もしかして・・・・・」
「「「ああ、華琳・・・・・・・たぶん、俺の妹だ・・・・・」」」
それから俺たちは軍を動員して流星の飛来を昼夜監視し、二刃をすぐに保護できる体制を整えた。
房陵の何処にいつ現れるかまでは分からないと菅輅が言う以上、人海戦術を取らざるを得ない。
そして菅輅の予言から三ヶ月後。
流星が飛来した・・・・・・なんと後宮の中庭に・・・。
しかも俺たちが城を離れ城壁の外に行っている時に。
【二刃turn】
「では二刃、先程貴女には『並行世界』と言ったけど、貴女の世界の歴史を『正史』として、私達の居るこの世界を『外史』と呼称するので覚えて置いて。」
「はい。」
『三国志』と『三国志演義』の関係と思えば納得しやすいもんね。
「私達の主観での話から始めるわ。貴女は正史での『三国志』に詳しいと一刀たちから聞いているわ。その歴史と照らし合わせて聞いて頂戴。」
「わ、解りました。」
これは三国志好きの家族に感謝だわ。
「先ず、一刀たちがこの世界に現れたのは十年以上前。当時は漢王朝の時代。」
「黄巾の乱の直前くらいだ。」
紫の鉢巻みたいなのを巻いた兄さんが補足してくれたのをあたしは黙って頷く。
「世が乱れている時に菅輅という占い師が『乱世を鎮める天の御遣い』の降臨を予言したわ。そして現れたのが貴女の兄。私、桃香、孫策の前に一人ずつ現れたのだけど、あの当時はまだ一刀たち自身も含め、一刀が三人居るのを誰も知らなかった。」
んん?現れた場所の都合が良すぎる上に兄さん自身も三人になってるのを知らなかったって事だよね?
「何ヶ月か経ってから目の前の一刀以外に『北郷一刀』を名乗る者が居ると噂が流れてきて、私達は互いにその情報を探り始めたの。これが黄巾の乱の頃。三人の一刀が顔を会わせたのは反董卓連合直前。桃香からの呼びかけでこの三勢力だけで集まった。あの時私が得ていた情報では桃香と孫策の所に居る一刀が、私の所の一刀と酷似していたので是非とも会ってみたかったわ。渡りに舟だったからそのまま便乗させてもらったの。で、会ってみたらこの通りよ。」
兄さんはこの時初めて自分が三人に分かれているって判ったんだ。
「私達はその場で同盟を組んだわ。」
その場で同盟って、なんでそんな簡単に納得しちゃうの!?
「その後、私達は董卓軍の守る汜水関、虎牢関、洛陽を攻略していくのだけど、一刀たちの知略と活躍で大きな被害もなく二つの関を突破したわ。」
「兄さんが知略と活躍!?」
三人に分裂してるよりそっちの方が驚きだわ!
いくら三国志の知識が有っても・・・特に活躍って・・・だって虎牢関には・・・。
「ええ♪特に虎牢関で呂布を相手にした時の事は今でも庶人に人気のある話よ。」
「「「ちょっと、その話は・・・」」」
「いいじゃない、別に。いずれは耳にするのだから。」
みんながクスクス笑っているって云う事は・・・・・・・。
「呂布さんも女性なんですね・・・・・・それを兄さん達が・・・・・」
「「「待て待て!襟首掴んで拳を振り上げるな!お前は何か勘違いをしているっ!!」」」
「当たらずとも遠からずって所かしら。」
「「「か、華琳っ!!」」」
あ、華琳さんが楽しんでる。と云う事は兄さんが三人がかりで襲いかかったとかじゃないんだ。
「そしてとても重要な事が一つ。反董卓連合として私達は参戦していたけど、虎牢関戦の後から目的が月と詠の救出に変わったわ。」
月さんと詠さんの救出・・・・・改めて二人を見ると・・・確かに月さんは囚われのお姫様役って合いそう・・・大体想像がつくけど後で詳しく教えてもらおっと。
「さあ、一刀。あなたたちが三人揃った所から今の所まで、あなたたちの事を教えてあげて。」
「揃った所からって・・・その前の所も少し補足しとくか。」
今度は赤い鉢巻をした兄さんが説明してくれるらしい。
「俺たちが集まる前に色々と情報収集してたって華琳が言ったろ。あれのお蔭である程度予測はしてたんだ、もしかしたらってね。あの時は今の二刃と一緒で自分が何故ここに居るのか判らなくて、それを知る手掛かりが僅かでも欲しかった。でも、三人が集まっただけじゃ特に何も判らなかったよ。」
「え?それじゃあ今も肝心な所は分からないって事!?」
「そう焦るなって。三人だけじゃ判らなかったけどそこにもう一人、別のが加わって俺たちは記憶を取り戻した。」
「記憶を取り戻したって、まるで記憶喪失みたいじゃない?」
「ある意味そんな感じかな?俺たちはこの外史に現れる前に、こことよく似た外史・・・つまり別の並行世界を一度経験していたんだ。」
「・・・・・それって・・・・・ループって事?」
「俺たちの主観ではそうなる。だから俺たちは汜水関と虎牢関を攻略する案を立てられたし、月と詠を助け出す提案も出来た。」
「それってかなりチートだよね・・・・・」
「「「チートで死人を減らせるなら幾らでも使うさ。」」」
「あ・・・・・・・・・戦争だもんね・・・・・・・回避できるならそうするべきだね・・・」
「「「そういう事だ♪」」」
兄さんたちがあたしの頭を撫でた・・・・・もう、子供扱いして・・・。
「所で兄さんたちの記憶を取り戻してくれた人って誰なの?」
あたしが照れ隠しの意味もあって訊いてみると、兄さんたちは困った顔になった。
「え~と・・・・・今から呼ぶから気をしっかり持てよ!」
「は?」
「「「貂蝉!卑弥呼!カーム・ヒアッ!!」」」
貂蝉!?それに卑弥呼って!?まさかスゴイ美人さんが・・・。
「「は・あ~~~~~~い♥」」
・・・なんか不気味で野太い声が空から降って来た・・・・・。
「「呼ばれて飛び出てコンニチハ♪」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「「華佗・・・・・悪いが気付けの鍼を頼む。」」」
「こっちが貂蝉でこっちが卑弥呼。貂蝉、卑弥呼、俺の妹の二刃だ。」
「はじめまして~♪二刃ちゃん♪」
「うむ、御主人様の妹だけあって中々に良き乙女である。」
こ、この二人が・・・・・・貂蝉と卑弥呼・・・さん?
「は、はじめまして・・・・・」
「(二刃、この二人に慣れる事が最大の難関だと思うわ。)」
華琳さんの耳打ちに大きく頷いた。
「見ての通り不思議な物体・・・いや、人物だけど外史に関する事は一番詳しい。何しろ二人は外史の管理者だからな。俺たちが記憶を取り戻したのも貂蝉と再会した時だった。」
前世の記憶が蘇ったみたいな感じだよね・・・・・あたしも自分の記憶の走馬灯を見た気がするわ・・・・・。
「さてと、貂蝉と卑弥呼が来たから、もう一つの疑問も解いてしまいましょう。」
「あらあ?何かご質問?スリーサイズは今も秘密よん♪」
「ううむ、漢女の個人情報は特別保護法で守って欲しいのぉ。」
「「「それは特別天然記念物か?ワシントン条約か?」」」
「訳の解らない事言ってないで。貂蝉、卑弥呼、二刃の話では一刀が実家に居るみたいなのだけど、どう云う事かしら?私の考えとしては二刃が『正史』から来たと言うのも怪しいと見てるのだけど。」
それって・・・どういう事?
「あ~ら、さすが華琳ちゃん。鋭いわねぇ。」
「「「二刃、そもそもそっちの俺はどうして実家に居るんだ?フランチェスカの寮じゃなく。」
「それは・・・兄さんが三ヶ月くらい行方不明になって・・・・・今は自宅療養って事になってるから・・・・・」
そう・・・あの日、兄さんが寮から姿を消したと聖フランチェスカ学園高等部から連絡が有った。
それから三ヶ月間一切の手掛かりが掴めなかった。
だけど兄さんは消えた時と同じ様に突然学園に戻って来た。
兄さんは武者修行に行っていたと説明したけど、学園は事件か事故に巻き込まれたと判断して休学と自宅療養を勧めた。
兄さんは素直にそれを受け入れ、浅草の家に戻って来たのだ。
再会した兄さんはとても大人びていた。
家での兄さんはひたすら木刀で素振りを続けていた。
あたしが様子を見に行くと決まって優しい顔を見せてくれた。
「俺は待ってるんだ・・・・・俺が向こうに行くか、向こうがこっちに来るか判らないけど・・・・・・」
あたしはその時、兄さんが武者修行でライバルと呼べる人に出会ったのだろうと思った。
「だけど、次は二刃の番かもな・・・・・・向こうであいつが待ってる。」
兄さんの言葉の意味が解らなかった。
「家に居る兄さんは見た目が若いけど中身がおじさんっぽかったな。こっちの兄さんたちの方が行動は兄さんらしい。」
あたしが語り終わると華琳さんが一度頷いた。
「今の話で私が立てた推論は、その一刀が幾つかの外史を経験した後で三ヶ月後の世界に戻った。どうかしら、貂蝉?」
「まず間違いないわねぇ。」
この時になってあたしは桃香さんや蓮華さん達が悲しそうな顔をしてるのに気が付いた。
さっきは兄さんが桃香さん達みんなや、あの子達をほったらかして家に居た事を怒ったのに・・・・・・あたしはバカだ。
「「「大丈夫だ、二刃。俺たちはみんなや子供達を置いてここから居なくなったりしない。」」」
あたしの落ち込みにすぐに気が付いてそう言ってくれた。
こんな所もやっぱり兄さんらしい・・・・・。
「丁度良い機会だ、貂蝉。卑弥呼。一つ確認させてくれ。」
二人は黙って頷いた。
『外史の管理者』って言ってたけど、きっと伝えてはいけない事とか有るんだろうな・・・・・そういうのって定番だし・・・。
「俺たちは夢で向こうに戻っている所を見る事がある。しかも状況が一貫していない。これは向こう側も外史だって事なんじゃないのか?」
ええ?でもさっきあたしや兄さんの居た世界が正史だって定義したんじゃなかったっけ?
「ご主人さまたちだけじゃなく、外史研究会のみんなも気がついてるみたいねぇん・・・」
「うむ・・・外史と接点を持った世界はその時点で外史となる。御主人様の言う通りだ。」
「あの・・・・・それじゃあ正史って無くなっちゃうんじゃないの?」
あたしの言葉に一人の女性が前に出た。
「次は私が推論を述べよう。」
えっと・・・冥琳さん・・・だよね。美周郎が女性化すると本当に美人だ。
「一刀がこちら側に来た時、つまり正史から一刀が姿を消した時が外史となった瞬間と云う事だろう。では、正史はどうなるのか?それは一刀が消えなかった並行世界が正史として存在すると云う事だ。」
「は?え?それって・・・・・」
「外史だけが並行世界と云う訳ではない。正史もまた無数の並行世界が有るのだろう?」
「うむ、見事に正解だ。さすが美周郎よ、がっはっはっはっ♪」
「なんだか混乱して来たんだけど・・・・・」
「二刃よ、お主は御主人様の妹であるから特別に教えてやろう。」
う・・・・・顔が近い・・・・・。
「外史とは只の並行世界では無い。外史が存在するには人の意志が大きく関わる。人が強く望み、観測することでその存在が確認されて初めて外史となるのだ。特に御主人様は外史の基点となる存在に確定しておる。それ故、御主人様が居る外史は御主人様に関係する望みが反映するのだ。」
「・・・・・・なんかますます解んなくなった・・・・・」
「そうねぇん、例えばこの外史はご主人さまが三人いるけど、それは誰かがそれを強く望んだからなのよん。」
「誰かが望んだからって一体誰が・・・・・・・」
そう言えばさっき兄さんたちは奥さんの数が50人を超えてたわよね・・・・・。
「それは何となく分かったからいいわ・・・・・それじゃあ家に帰ってきた兄さんは!?あの世界も既に外史なら・・・」
そこまで言って気が付いた・・・・・そんなの決まってる・・・あたしたち家族が帰ってきて欲しいって望んでいたじゃない!
「「「それはもしかしたら俺たち自身かも知れない。」」」
「兄さんっ!?」
ダメだよ!そんな事言っちゃ!
「「「俺たちはお前や母さん、父さんとじいちゃんに心配を掛けてるって気にしていた。だから俺が戻って来たんだ。」」」
でも・・・でもそれじゃあ・・・・・ここに居る奥さん達やあの子達は・・・・・。
「「「心配すんな。戻った俺が言ったんだろ?待ってるって。」
「それは・・・・・そういう事なの?」
「「「お前もすぐに判るさ。みんながどれだけ凄いかってさ♪」」」
兄さんの言葉にみんなが笑っていた。
本当に・・・・・・みんなが兄さんを愛してくれているのが判って・・・・・嬉しい・・。
「「「でも、そうなると二刃をこの外史に呼んだのは誰なんだろう?」」」
「・・・・・・・・兄さんじゃないの?」
「「「あの子達をお前と父さん母さんじいちゃんに逢せたいとは思ってたけど、二刃だけが来た時点で違う気がする。」」」
「それを知っていそうなのが一人居るけど・・・絶対に言わないでしょうね、あいつは。」
華琳さんが凄く不機嫌そう・・・。
「そう言うなよ、華琳。菅輅だって管理者なんだから言えない事が多いんだ。」
「菅輅って・・・・・兄さんたちが現れるのを予言したって云う占い師さん?」
「ええ。三ヶ月前に突然戻って来て、貴女がやって来る事を予言したわ。」
「それで対応が早かったんだ。」
「それもあるけど・・・そう言えばこの場所が何なのか教えて無かったわね。」
「お城の中庭ですよね?建物の構造で何となく分かりましたけど・・・」
「間違いではないけど、この区画の事よ。ここは後宮の中庭なの。」
「・・・・・・後宮・・・・」
また何か生々しい言葉が・・・・。
「「「二刃!後宮って言ってもお前の想像してるのとは違うぞ!!」」」
「へえ・・・どう違うの?」
「「「だから睨むな!ここは産婦人科と保育所を合わせたみたいなもんなんだ!妊娠してから入る所なんだよ!」」」
「考えてみたら、貴女は一番安全な場所に降りてきたわね。ここに入れる男はこの場に居るので全員だから。」
そうだ・・・・・あたし寝てたんだ。これがもし盗賊とかの前だったりしたら・・・・・。
「さてと、そろそろ全員が城に戻った頃でしょう。一刀たちは先に行って指示を出してくれるかしら?」
「「「ええ!?」」」
「二刃と女同士の話がしたいの♪」
「「「いつものやつか・・・いい女には秘密が必要だって言うんだろ?」」」
「華佗も悪いけど談話室で待っていて頂戴。」
「ああ、了解した。」
「貂蝉と卑弥呼も・・・」
「あらん・・・わたし達は仲間外れなの?」
「う~む、漢女としては寂しいのぅ・・・・・」
ああ・・・・・やっぱりそっち系の人だったんだ・・・。
「二人には一刀たちの手伝いをお願いするわ。」
「さあ行っきましょう、ご主人さまあ♪」
「べったりくっついて離れんからな♪」
「「「ぎゃあああああああああああああああああっ!!」」」
あっと言う間に見えなくなっちゃった。
あの二人も兄さんが好きなんだ・・・・・。
「心配しなくても大丈夫よ。貂蝉と卑弥呼はああ見えても結構初心だから♪」
「あの見た目で初心って言われてもなあ・・・・・」
「それよりも重要な話があるのよ!」
「な、何ですか?」
全員揃って真剣な顔してる。
「向こうの世界で一刀がモテなかったって本当なの!?」
あ・・・・・そこかぁ。
「それ、兄さんが言ったんでしょ。そんな事ないです。子供の頃から兄さんモテてました。」
『やっぱり・・・・・』
おっと、これは早くフォローしないとマズそうだ。
「でも、兄さんって極度の恋愛音痴だったから全っ然!気がつかないんですよね。そんなんだから恋人とか居ませんでしたよ。」
『やっぱり・・・・・』
同じ言葉なのにさっきとは意味が正反対・・・・・全員が溜息って・・・・・。
「みなさん苦労したでしょう・・・・・ありがとうございます、兄さんを好きになってくれて♪」
「こちらこそごめんなさいね。大好きなお兄さんを取ってしまって。」
「あははは、所詮は兄妹ですから・・・・・そう言えばあたしが名前を言った時に驚いている人達がいましたけど、もしかして向こうの奥さんだと思いました?」
「予言が有った時に一刀たちが妹だって言ったのに、いつの間にかそんな噂が広まってしまってね・・・みんな不安だったのよ。」
そう言う華琳さんもそうだったんじゃないのかな?
「お義姉さん達!これからも兄さんたちの事、よろしくお願いします♪」
【エクストラturn】
東屋から談話室に戻る途中。
二刃は華琳と話しながら歩いていた。
その後ろで桃香が二刃に聞こえない様に声を潜めて話しかけた。
「(蓮華さん、月ちゃん、気付いた?)」
「(二刃の視線の事?)」
「(うふふ♪気付きましたよ。頻繁に華佗さんを見てましたね♪)」
三人は一度二刃を見て小さく笑った。
「(お兄さんよりも気になる男性に目が行っちゃうなんて、二刃ちゃんも女の子だねぇ♪)」
月の横に居た詠が桃香の言葉に目を丸くした。
「(あれって華佗を警戒してたんじゃないの?)」
「(もう、詠ちゃんったら・・・それじゃあご主人さまを鈍いって言えないよ。)」
月に言われて詠はがっくりと肩を落とした。
「(華琳も気付いているみたいだけど何も言わないわね?)」
蓮華の言葉に今度は後ろから風が参加する。
「(それはやはり華琳さまが時期尚早と思われたからですよ~。)」
「(私もそう思います。二刃ちゃん自身はまだ興味があるって云う程度みたいですし。)」
「(あのぉ・・・桃香様、蓮華殿、月。今の話の流れだと二刃さんと華佗をその・・・恋人同士にしようと・・・)」
桃香の横から愛紗も話に加わった。
「(やだなあ、愛紗ちゃんったら♪)」
「(そ、そうですよね・・・あははは)」
「(二人をどうやって結婚させようかって話じゃない♪)」
「!!!」
愛紗が大声を上げそうになったのを思春が口を押えて止めた。
そして愛紗の代りに思春が話に加わる。
「(本気ですか、蓮華様?)」
「(ええ。華佗に家庭を持たせようと色々手を打っていたのは知ってるでしょ?)」
「(それは存じておりますが・・・)」
逡巡する思春に月が困った顔で説明する。
「(メイド隊の子は全員玉砕しちゃったの。新しく入ってくる子も先輩たちから話を聴いてるから尻込みしちゃって・・・)」
「(二刃は一刀たちの妹よ。そこに望みを託すのよ!)」
蓮華の言葉に後ろで聞いていた軍師達が納得した。
「(しかしそれでは二刃が一刀たちみたいに・・・・・その・・・男達を次々と骨抜きにする様な女に・・・)」
「(思春、それは心配いらんだろう。)」
冥琳が蓮華の横で言った。
「(二刃は一刀たちに妻が何人も居る事を怒っていた。一夫一妻と云う倫理観を強く持っている証拠だ。惚れた相手には一途になるのは間違いない。むしろ問題は華佗の方だな。)」
「(あの・・・華佗さんの二刃ちゃんへの接し方が他の女性と違った気がします。)」
「(本当?大喬ちゃん。)」
月が大喬に振り返り、身を乗り出した。
「(はい。たぶん一刀さまの妹さんだから気を回してくれていたんだと思いますけど・・・)」
「(どんな形でも特別視しているのならやり様は有ると思う。すぐに紫苑さんと音々さんに相談しなくちゃ♪)」
月は踊りだしそうな程喜び、使命感に燃える瞳でもう一度二刃の後ろ姿を見た。
北郷二刃は背後の義姉達がそんな話をしているとはまるで気付かず、華琳との話に夢中になっていたのだった。
あとがき
作品説明にも書きましたが、大事なことなのでもう一度。
『北郷二刃(ふたば)』
この名前をご存知の方も多いと思われます。
マスター様の書かれた
真・恋姫無双~推参! 変態軍師~ 第一話 http://www.tinami.com/view/375294
にて登場しております。
雷起がマヌケにも今回の話を書き終えるまで他の方が使用されているのをチェックし忘れていました。
この度は投稿前にマスター様へ『二刃』という名前の使用をご連絡したところ
実に温かいお言葉でご快諾を頂けました。
マスター様!本当にありがとうございましたm(_ _)m
という訳で
二刃ちゃんが外史にやってまいりました!
いかがだったでしょう?
浅草生まれの浅草育ちなので江戸っ子風にしたかったのですが
今回はあまりそんな感じじゃないですね。
今後は江戸っ子カタギな二刃を出せるよう努力します。
真名交換シーンで端折られた人達は
今後の回想などで書きたいと思っています。
今回名前の有った人達の分だけでも楽しい会話になっていそうなのでw
《次回のお話&現在の得票数》
次回は一刀の息子誕生(華琳② 12票)となります。
次次回は☆璃々 47票 です。
以下、現在の得票数です。
春蘭 47票
二喬 46票
猪々子 43票
真桜 43票
沙和 41票
斗詩 38票
霞 38票
穏 32票
稟 32票
季衣 31票
音々 30票
桂花② 22票
思春② 19票
紫苑② 17票
鈴々② 13票
翠② 10票
小蓮② 8票
ニャン蛮②7票
冥琳② 6票
音々音② 6票
雪蓮② 5票
風② 5票
月② 3票
凪② 1票
星② 1票
璃々② 1票
※「大喬と小喬」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。
②は二回目を表します。
リクエスト参戦順番→猪々子 穏 斗詩 二喬 春蘭 稟 璃々 真桜 季衣 冥琳② 霞 沙和 思春② 紫苑② 鈴々② 桂花② 風② 雪蓮② 凪② 音々 小蓮② 翠② ニャン蛮族② 華琳② 音々音② 月② 星② 璃々②
過去にメインになったキャラ
【魏】華琳 風 桂花 凪 数え役満☆シスターズ 秋蘭 流琉
【呉】雪蓮 冥琳 祭 思春 美羽 蓮華 七乃 小蓮 亞莎 明命
【蜀】桃香 鈴々 愛紗 恋 紫苑 翠 蒲公英 麗羽 桔梗 白蓮 月 朱里 雛里 詠 焔耶 ニャン蛮族 音々音 星 華雄
子供達一覧
1)華琳の長女 曹沖(そうちゅう) 眞琳(まりん)
2)桃香の長女 劉禅(りゅうぜん) 香斗(かと)
3)蓮華の長女 孫登(そんとう) 蓮紅(れんほん)
4)思春の長女 甘述(かんじゅつ) 烈夏(れっか)
5)愛紗の長女 関平(かんぺい) 愛羅(あいら)
6)風の長女 程武(ていぶ) 嵐(らん)
7)桂花の長女 荀惲(じゅんうん)金桂(きんけい)
8)雪蓮の長女 孫紹(そんしょう) 冰蓮(ぴんれん)
9)冥琳の長女 周循(しゅうじゅん) 冥龍(めいろん)
10)祭の長女 黄柄(こうへい) 宴(えん)
11)恋の長女 呂刃(りょじん) 恋々(れんれん)
12)紫苑の次女 黃仁(こうじん) 露柴(ろぜ)
13)紫苑の三女 黃信(こうしん) 崔莉(ちぇり)
14)蒲公英の長女 馬援(ばえん) 向日葵(ひまわり)
15)翠の長女 馬秋(ばしゅう) 疾(しつ)
16)麗羽の長女 袁譚(えんたん) 揚羽(あげは)
17)桔梗の長女 厳逹(げんたつ) 竜胆(りんどう)
18)凪の長女 楽綝(がくりん) 濤(なみ)
19)七乃の長女 張路(ちょうろ) 八倻(やや)
20)天和の長女 張甲(ちょうこう) 九蓮(ちゅうれん)
21)地和の長女 張大(ちょうだい) 四喜(すーしー)
22)人和の長女 張吉(ちょうきつ) 一色(いーそー)
23)炙叉の長女 迷当(めいとう) 直(なお)
24)白蓮の長女 公孫続(こうそんしょく) 白煌(ぱいふぁん)
25)秋蘭の長女 夏侯衡(かこうこう) 鈴蘭(すずらん)
26)月の長女 董擢(とうてき) 春姫(るな)
27)美以の長女 孟節(もうせつ) 花鬘(かまん)
28)トラの長女 ベンガル
29)ミケの長女 マンクス
30)シャムの長女 ペルシャ
31)桂花の次女 荀俁(じゅんぐ) 銀桂
32)朱里の長女 諸葛瞻(しょかつせん)龍里(るり)
33)雛里の長女 龐宏(ほうこう)藍里(あいり)
34)詠の長女 賈穆(かぼく) 訓(くん)
35)焔耶の長女 魏覚(ぎがく) 焔香(えんか)
36)春蘭の長女 夏侯充(かこうじゅう) 光琳(こうりん)
37)星の長女 趙統(ちょうとう) 螢(けい)
38)大喬の長女 愛喬(あいきょう)
39)小喬の長女 華喬(かきょう)
40)亞莎の長女 呂琮(りょそう) 茜(ちぇん)
41)明命の長女 周邵(しゅうしょう) 藍華(らんふぁ)
42)華雄の長女 華剛(かごう) 树莓(しゅうめい)
43)桂花の三女 荀詵(じゅんしん) 丹桂(たんけい)
桂花の四女 荀顗(じゅんぎ) 連翹(れんぎょう)
A)鈴々の長女 張苞(ちょうほう) 爛々(らんらん)
B)流琉の長女 典満(てんまん) 枦炉(ろろ)
C)桂花の五女 荀粲(じゅんさい) 黄梅(おうめい)
D)小蓮の長女 孫仁(そんじん) 蕾蓮(らいれん)
E)音々音の長女 陳守(ちんじゅ) 音音(ねおん)
F)美羽の長女 袁燿(えんよう) 優羽(ゆう)
G)桂花の六女 荀淑(じゅんしゅく) 來羅(らいら)
※アルファベットは仮順です
引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。
リクエストに制限は決めてありません。
何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)
よろしくお願い申し上げます。
今回のマヌケ晒し
「あたし、北郷一刀の妹で北郷【
「え?それじゃあ今も肝心な所は【分からい】って事!?」
「「「【ちょと】、その話は・・・」」」
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ついに来ました!一刀の妹が降臨です!!
名前は『北郷二刃(ふたば)』
この名前をご存知の方も多いと思われます。
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