No.588064

司馬日記 支援の七

くらげさん

抗えなかったよ……

2013-06-16 20:17:57 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:12876   閲覧ユーザー数:7482

11/23のネタをあれだけで終わらせるには忍びない。

そんな思いが私を暴走させました。

「ああ、垂れた乳の褒め方だけはお任せしよう、こちらでは判らないのでね」

「なんじゃ死にたいのか小娘」

「やるなら受けて立ちますが」

 

血の気がサァーッと引いていくのが分かった。祭さん、秋蘭共に本気でキレてるのが分かりたくないけどよく分かった。

ともかく止めないと。まずは落ち着かせないと。と腰を浮かせた。勢いって大事、凄く大事、物凄く大事。

 

「いや二人とも待ってくれ、俺はみんなに育てて貰ってる、二人も含めて本当に感謝している」

 

一応まだギリギリで周囲の声を聞く理性は残っていたのか、秋蘭と祭さんの注意は引けた。

 

「秋蘭ちょっと」

「……なんだ」

 

チラリと華琳にアイコンタクトを試みると、非常に面白くなさそうな顔つきだったけど首は軽く縦に振ってくれた。

秋蘭の腕を引くと、何の抵抗も無く引かれてくれる。

冥琳と祭さん、それに星の怒気が膨れ上がったけど本当にごめんなさい。常人の俺は分身なんて出来ないんだってばよ!

 

「秋蘭ちょっと落ち着けって」

「私は事実を述べただけだ」

「分かってる。秋蘭が俺の事を大切に育ててくれたのは俺だって実感してる。な?後は俺に任せてくれないか?」

「………キチンと、話をするんだな? あの分からず屋の石頭どもに」

「する。ちゃんと話するから、な?」

「………わかった。 私と華琳様が施した教育がどれほど行き届いているか、見極めさせてもらう」

 

よっしゃ第一関門クリア。しかし休憩なんて挟める訳がない。立ち止まるな。

秋蘭の傍を離れる時、背中に物凄い重圧の篭った視線を受けたけど気にしない。だって左右からも受けてるもの。

 

「祭」

「なんじゃ」

「ちょっと話しよう」

 

どうなるかと思ったけれど比較的素直に。けれど不満はありありの表情で後ろを付いてきてくれた。

会議室を出る前に再度部屋を素早く見回したけど、やっぱり即座のフォローが必要なのは主張を始めた四名。

物凄く気になる態度の子もいたけど、騒動を起こした四人の手打ちを図らないとそのフォローにも回れない。

俺はこれより、死地に赴く。

 

 

「………はぁ」

「それで、何の話をするつもりじゃ。寝言は聞かんぞ」

 

俺が呼ぶまで部屋には入らない様にと月と詠に言伝て、祭さんを引っ張り込んでホッとしたのもつかの間。

祭さんが間髪いれずに突っ込んできたので、もう一度腹に力を入れなおす。

 

「いったいどうしちゃったのさ。何が気に障ったの?」

「ケツの青い小娘にあの様な物言いをされれば、誰でも腹に据えかねるわい」

「それは、秋蘭が俺の所有権を主張したから? それとも最後の侮辱?」

「両方じゃ」

 

成る程、やっぱりもの凄い怒ってる。常時の祭さんなら前者は否定する。

 

「あのさ、祭さんなら良く分かってると思うけど、俺がこの世界に来た時は」

「分かっておる。 お前がこの世界の事を何も知らなかったのも、生きていく為の手助けをしたのがワシ等呉の人間だけでは無いという事も」

「誰か一人を特別扱い出来ないし、したくないっていうのも?」

「分かっておるが、割り切ってはおらん。 それに、お前がそう言わなければならんのはワシでは無いと思うが?」

「いや、祭だよ。 俺はまず祭にそれを分かって貰わなきゃならない」

 

正直な所を言えば、祭さんの事を呼び捨てにするのは未だに照れくさい。

背伸びをしてる様な感覚というか、身の丈に合わない事をしてるのが分かるというか。

 

「ねぇ祭。 祭は小さくせせこましく纏まる様な男にしたくて、俺の面倒みてた訳じゃないだろ?」

「当たり前じゃ。 だからワシが気に食わんのは其処では無くじゃな」

「いや、其処だよ。 祭はいっつもはぐらかして誤魔化してるけど、結局の所は其処だと思うんだ。そして、其処はもう曖昧にしてちゃいけないと思う」

「お前は何が言いたい」

「ぶっちゃけちゃえば、祭は拗ねてるんだよ。 孫堅さんの事があって、雪蓮達三人に冥琳や他の子達の面倒を見てきた。

でも、祭の所から本当の意味で巣立った人って、俺しか居ないと思うんだ」

「拗ねておる? このワシが? たかが小僧一人の事で?」

「そうやってムキになって言い返すのはらしくないよ、祭。俺の言い分を認めてる様なもんだ」

 

む。と唸って祭さんは言葉に詰まる。まさかそんな事言われるとは思っていなかったんだろう。

此処が畳み掛ける隙だ。祭の肩に手を回して、強引に寝台へ連れていく。

結局俺はこれしかないんだなぁと情けない気分になるけど、仕方ないとは思わない。めっちゃ役得だとは思うけど。

 

「困ったらすぐコレか?」

「祭だからだよ。他の子なら別の方法考えるさ」

「お前に出来る事など他にあったかのぉ?」

「あれ? 俺にこの方法教えたの祭だよ?」

 

む。とまたも痛い所を突かれた祭さんの唇を閉ざして、服を捲り上げる。

ある程度素肌を露にしたら、手を合わせてギュッと握るのも忘れない。祭さんはこういうスキンシップを取ると非常に高ぶってくれるのだ。

 

「祭、俺の祭。 今から抱くから。全部全部抱くから」

「はっ……やってみろ小僧」

 

渾身の思いを込めて祭さんと肌を重ねる。けれど、そのまま眠ってしまいたくなる様な幸せな気だるさが訪れても、今だけは身を任せる事は出来ない。

限界を超えて、祭さんが何度も「もう許して」と泣き言を入れたとしても許さずに攻め立てて気絶させる様に追い込んで、ようやく一区切りついた。

 

 

 

部屋を出ると、月が心配そうな顔で待っていてくれた。

両手で持っていてくれた水差しの水を思い切り飲み干して、ふぅ。と一息だけ零して冥琳が何処にいるかを尋ねると何時の間にか居た詠が呉の執務室に居ると教えてくれた。

月にお礼を言って、詠の頭を一撫でして、気を引き締めて冥琳の元へと向かう。

もう直ぐ部屋の前という所で所在なさげに立っている雪蓮と出くわす。

 

「あ、一刀」

「雪蓮。 冥琳の様子、どう?」

「あー、あはは……すっごい機嫌悪いわー。とてもじゃないけど一緒の空気吸えないって皆出払っちゃって、今は独りで部屋に篭ってる」

「今から説得してくるけど、何か俺が聞いておく事あるかな?」

「んー、一刀なら大丈夫だと思うから言わない。 あ、祭は?」

「俺の部屋で寝てる。勿論全裸で」

「……あのさ、一刀」

「ん? あぁ、大丈夫。別に祭さんの事嫌いになったりとかうっとおしくなったりとか、そんな事これっぽっちも思ってないから」

 

一瞬眼を丸くしてた雪蓮だけど、俺が言った言葉の意味を理解すると唇の端をくいっと持ち上げた。

 

「ごめんね、子離れの出来ないおかあさんで」

「まだ子供扱いしかされない俺の責任だよ。見放さないでくれてありがたいぐらいだ」

 

んじゃ。と右手を軽くあげて、冥琳の説得に赴こうと足を踏み出した時。

 

「祭が一刀の事見放せる訳ないじゃない。大切な息子で大事な子供で大好きな男で愛してる旦那様なんだから」

 

雪蓮は俺の見ずにそう言った。だから返事はしなかったし何の反応も返さなかった。

だってそうだろ。そういうのは本人の口から言って貰いたい。

 

 

「お待たせ」

「随分と遅いご登場で。 もう来ないのかと思っていた所だ」

「ごめんごめん、祭が存外依怙地になっててさ」

 

軽く拭ってきただけだから、直前まで何をしていたのかは丸分かりだろう。

でも祭の名前を出した事で、冥琳の放つオーラが幾分か柔らいだ気がする。

 

(そりゃこんだけのプレッシャー受けたくはないよなぁ。俺は慣れてるけど。いやしんどいけど)

「一刀。 先に言わせて貰うが、あの態度はなんだ」

「何か対応が不味かったかな?」

「夏侯淵に口を出させずとも良かったのではないかと言っている。 結果はこの有様だ。私はその様に教えたつもりはないぞ」

「いや、それについては反論させてもらうよ。 掛けてもいいかな?」

 

あぁ。と言われたので、近くにあった椅子に手をかけ、思い直して冥琳の座る執務机の上に腰を掛けた。

 

「何の真似だ。まだ仕事中なのだがな」

「近くにいないと冥琳の顔が良く見えない」

「近眼か、労しい限りだな。よほど魏の教え方が合わんと見える」

 

今此処に華琳達がいなくて良かった。他の子がいなくて良かったと心の其処から安堵した俺は、攻められるべきなのだろうか。

 

「なぁ冥琳。 文字も読めなかった俺に手取り足取り、位置から基礎を叩き込んでくれたのは冥琳だよ。それは間違いない」

「あぁ、確かそうだったな。 懐かしい限りだ。覚えているか?あの絵本。確か―――」

 

そう言って腰を浮かそうとした冥琳の腕を掴んで引き寄せる。今だけは煙に巻かれる訳にはいかない。

 

「それはまた今度、早ければ今夜にでも話さないか? 今は目先の問題を片付けよう」

「何かあったかな?」

「ごめん、冥琳の誇りを踏み躙る様な事になった」

「別に私はその様な事で怒っている訳ではない」

「分かってる。冥琳は自分の事は我慢出来る人だよ。 だから、秋蘭や星がカチンときた理由だって分かってくれてる筈だ」

 

冥琳はそっと俺の胸に手を当てて力を込める。

直接的な拒絶じゃないと分かっているけど、一度離れながらもちょっと寂しいと思ってしまった。

そんな感情が顔に出たのか、冥琳はちょっとだけ申し訳なさそうな顔になって咳払いをした。

 

「確かに、祭殿の物言いは立場を慮れば決して褒められた物ではないという事は私とて理解している。

北郷の生活管理及び指導係に魏の司馬懿を配置している事、そして彼女がその役職に就いている事異を挟む余地などまるでない。

だがしかし―――例えそうであったとしても、祭殿は我等の親も同然なのだ!!」

「分かってる。親を馬鹿にされたら俺だって怒るよ。ましてや祭さんだ。相手が秋蘭じゃなかったら、俺がぶん殴ってる」

「……その物言いは減点だ、北郷。仮にも人の上に立つ人間の言っていい言葉ではない」

「うん、俺はまだまだ半人前もいい所だよ。 それでも、皆のおかげで何とかやっていけてる」

 

その言葉を、冥琳は予測していたんだろうか。分かっていたような、寂しそうな顔をして笑った。

 

「皆、か」

「ごめん、これだけは誰が相手でも譲っちゃいけない事なんだ。 どれだけ冥琳に申し訳ないと思っても、それでも」

「分かっている、分かっているよ。 私はお前を褒めなければならない」

「褒めなくていいから泣いてくれ。怒ってくれ」

 

その言葉に冥琳は眼を丸くする。うん、意味解んないよな。

 

「今回の件で一番怒られなきゃいけないのは間違いなく俺だよ。 俺が祭さんにきちんと言い含めて、認めさせなきゃいけなかった」

「北郷はよくやっているよ。 まぁ多少の不満は耳にするが、それも可愛らしいという程度の物ばかりだ」

「ほら、冥琳も肝心な所ではそうやって俺の事甘やかすじゃん。だからこうなっちゃったんだよ。

冥琳が今言わなきゃいけないのは、その言葉じゃないよ。 もっと自分達を大切にしろ。感謝を表せって怒るべきだよ」

「私は別に……不満など、ない」

「あるよ。 俺が冥琳の不満を無くすぐらい頑張ってれば、今回の事だって流せた筈だよ」

「………あるいは、不満を素直にぶつけていれば、内々の事として処理出来たかもしれんな」

 

そういう事。と頷くと、冥琳は眼鏡を外して眼の間を軽く揉んだ。

頭が良いってのは大変だ。人の気持ちが読めるってのはもっと大変だ。

祭さんが呉のおかあさんなら、冥琳はきっと長女だと思う。

冥琳が取った距離はほんの数十センチ。腕を伸ばせば抱きしめられる。

 

「俺は冥琳の事を愛してる」

「だったら、もっと普段から大切にせんか馬鹿者。

常に愛されていなければ生きていけないと言うほど弱くはない。だがしかし限度があるだろうが。

私は確かに我慢強いが、それは我慢しているだけなんだ。確かにお前はここぞという時に顔を見せて、癒してくれる。私を愛してくれている。

しかし私はもう、お前の暖かさを知ってしまっているんだぞ?抱きしめられた時の心地よさも、受け入れた時の充足感も、満足させた時の幸福感も全て知ってしまっている。

私だって本当は―――あぁもう!本当にこの外見も性格も嫌になる!!」

 

一先ずは安心、かな。こういうガス抜きも必要だろう。喜んで当たられましょう。

ただまぁ、泣き言を漏らせば、本当に冥琳達には気を使って貰ってるんだなぁと情けなく思う。

我慢出来る子には釘を刺し、我慢出来ない子にはフォローを入れて、勿論自分なんてのは二の次三の次。

それでも俺の為にと骨身を削ってくれてるのにあんな事言われちゃ、そりゃカチンともくるよな。

しかも言った相手の心情を慮れるのがまた辛い所だろう。きっと血の気が引いた今は罪悪感でいっぱいだ。

 

「もっと私を抱きしめろ。もっと私を見ろ。もっと私を必要としろ。もっと私に縋れ。もっと、今よりもっと誰よりも」

「んー、それやっちゃうと冥琳はもっともっと無理しちゃうだろうから、約束はしない」

「私が自分で頼んでいるのに?」

「あのさ、冥琳。 俺ってね?冥琳が自分で感じてる以上に冥琳の事大好きな訳。わかる?

出来るなら一日中閨の中でいちゃいちゃしてたいし、俺の子供だって産んでほしい。

冥琳が仕事で男と喋ってるとムッとするし、兵士が冥琳の容姿褒めてるの聞くと自慢してやりたいわけ。あれはもう俺のものだって。

そんだけ大事で大好きな人が自分から底なし沼に入ろうとしてたら何してでも止めます」

「あぁ、そう言えば―――私が子供の事を調べていたら、随分頓珍漢な発想に行き着いて随分と気落ちしていたな」

 

あれは見ていて可笑しかった。と思い出し笑いを噛み殺している冥琳。

いや、情けない事この上ないです、はい。

 

「もう忘れてよそれは。当時だって恥ずかしかったのに、今言われると破壊力倍増だよ」

「誰が忘れるか。貴重な一刀のヤキモチだ」

「むぅ……やっぱり冥琳は手強い。中々勝ち逃げは出来ないか」

「当たり前だ。そうそう負けてやる訳にはいかんよ。布団の中以外ではな?」

 

難しい言い回しや暗喩は未だに苦手ですが、お誘いの文句だけは敏感になりましたとも。笑わば笑え。胸張ってやる。

 

「んじゃ、俺に有利な場所で二回戦始めよっか?」

「おや頼もしい。 祭殿に絞り取られたとばかり思っていたよ」

「はっはっはっ―――冥琳、色事に関しては、俺を侮らない方がいい」

 

今日は本気でいくよ?と宣言する俺に、冥琳は珍しく気負されていた。

で、結論から言いますと、久々に冥琳を泣かせました。いやぁ呂律の回らない冥琳とか良いもの見たわ。

軍師勢って皆母性本能が強いんだろうか。好みは多種多様なれど、ぶっ飛んだ状態になると皆同じ様な反応になるという新発見。

 

「冥琳? 冥琳起きてる?意識戻ってる?」

「あ……あ、あ……」

「俺ちょっと行かなきゃ行けないけど、冥琳は寝てたらいいからね。ちゃんと戻ってくるから」

「あ、あぁ……!」

 

寝台から腰を浮かそうとすると、冥琳が俺の手首を掴んでくる。

腰が抜けて、未だにビクついてるのに、それでも俺を行かせまいと何とかうつ伏せの身体を返して寝台に仰向けに寝転ぶ。

 

「いや、だ……まだ、行くな……!」

「………わかった」

 

ごめんよ冥琳。そんな嬉しそうな顔しないで、決意が鈍る。

 

「冥琳、大好きだ。愛してるよ」

 

もうそれだけで甘い声を出してしまうぐらいに出来上がった冥琳に追い討ちをかける。

このまま攻め上げて、俺は先に進む。

 

 

 

「………」

「一刀様。どうなさったのです?」

「ん、あぁ桐花か。 いやちょっと罪悪感と戦ってた」

 

冥琳は最後まで俺を手放そうとしなかった。左腕に手形が出来た。

そこを擦っていると、桐花が目ざとくそれを見つけて物欲しそうな顔で俺を見る。

 

「一刀様ぁ……」

「ごめん、今は一秒が惜しいんだ。 星が何処にいるか知らない?」

「あぁ、あれの尻拭いですね。 お労しい限りです」

「そんな事はないさ。 それよりごめんね、しばらくは相手する余裕ないかも」

「一刀様のご決断が私の全てです」

 

普段であれば重たいと感じる桐花の言葉も、今はただただ有難い。

が、これだけタイミング良く出くわした事に違和感も感じる。

 

「桐花。華琳達は何か言ってた?」

「……バレました?」

「流石にちょっとね。 もしかして、他の子から不満が出てるとか?」

「無礼を承知で言わせて頂きますと、不満を抱いていない物の方が少ないと思います。

言った物勝ちか。と思っている者も多少は居るでしょうが―――それは主に古参の重臣です。

ただ、魏に関しては華琳様が意思統一をされるので心配はせずともよい。との事です」

「そっか。 華琳が言うなら安心だ」

「その華琳様も危険なんですけどね……」

 

あぁ、そりゃそうだ。秋蘭がプツッといったのを喜ぶべきかなこれ。

 

「先に秋蘭が怒ってくれて助かりました」

「あー、やっぱそう思う?」

「勿論。 彼女が制していなければ確実に仲達が物申していましたから。そうなると、もう全面戦争は避けられなかったと思いますよ。

アチラさんも引っ込みがつかなくなったでしょうし……」

 

そうだ忘れてた仲達さんの存在orz

ある意味一番の危険人物だよ。

 

「……仲達さんも怒ってるの?」

「えぇ。ですが仲達の怒りは黄蓋殿の物言いに関してですし、一刀様の事に関して思い上がる様な女ではありません。まぁ一応釘はさしておきますが」

「助かるよ。あ、でも仲達さんが間違ってる訳じゃないから」

「解ってますよ、ご安心を。……ただ、あの子のあの性格はどうにか矯正出来ない物でしょうか」

「……似たような子知ってるけど、難しいと思うよ」

 

焔耶は、なぁ……崇拝する人物を増やすってのはどうだろう。

 

「そのお考えは残念ながら」

「ばれてーら」

「仲達の一刀様への崇拝を他者にすり返る手段を選ばれるぐらいなら、全員参加の生き残り一刀様争奪戦を開催するほうが手っ取り早いかと」

「俺がめっちゃ頑張る方向で行く事にするわ」

「ご自愛くださいませ。 趙雲殿は現在別室にて待機させております」

「……一応聞くけど、縄とか手枷とか、座る所が三角になってる木馬がある別室じゃないよね?」

「あら違いましたでしょうか? 袁紹殿が『躾け直すのであればあの場所以外有り得ない』と力説されておりまして、私も同感でしたので」

 

だめだこいつら、早くなんとかしないと……

 

「思春が恐ろしい目つきで部屋に入る趙雲殿を見送っていましたよ。具体的には嫉妬心全開で」

「いやその理屈はおかしい!」

「何やらボソボソと愛紗さんと密談をされておりましたが、捕まえておきますか?」

「どうしてこうなった……どうしてこうなった……」

 

 

「謝りません」

「うん、ちょっと待って。とりあえず縛られてる腕解くから」

 

あーこれ縛ったの麗羽だわ。間違いないわ。手首に思いっきり痕が残ってるもの。彼女好みの荒縄だもの。

 

「なぁ星。言いたい事があるのは分かってるし、星の主張が間違ってるって訳でもないけどさ。だからって何も火に油注がなくても……」

「私は何も間違った事は言っておりません。 思い上がっているのは連中の方ではござらんか」

「いやだからね? 秋蘭や祭さんが思い上がってるんじゃなくて、俺は皆に育てて貰ってるって話なの」

「そもそも主を一番最初に保護したのは我等三人です!」

「うん、分かってる。有難いと思ってるし感謝してるよ。 でも、それとこれとは」

「同じ事です! 私が主を救わなければ今は有り得ないのですよ!」

 

駄目だ、こりゃ駄目だ。

何が駄目ってしばらく言いたい事言わせてもクールダウンしてくれそうにないのが一番駄目だ。

 

「秋蘭が主を育てたと自負するのは結構。祭殿が主の事を我が子同然に慈しんでいるのも実に結構。好ましい限りです。で・す・が!」

「うん分かってる。でもそもそも星がいなければその関係は成り立ってないって言いたいんだよな?そして其処を皆感謝しろと」

「メンマを横から掻っ攫われた気分ですぞ……」

「でも皆感謝してないなんて言ってないだろ? 星には一目おいてるよ皆」

 

仕方ない。その場しのぎになるから本当はやりたくないんだけど、まだラスボス(秋蘭)と本当のラスボス(祭さんと冥琳が覚醒した姿)と真のラスボス(四人全員)が待ち構えている。

裏ボス(割りくったその他の皆)はどうした?あーあーきこえない!今はきこえない!!

とりあえず褒め殺しだ。

 

「なぁ星、実は俺ちょっと嬉しかったんだ。あそこで星があぁ言ってくれて」

「そ、そう、ですか?」

「うん。星って皆の前ではズバッと自分の本心言ったりする性質じゃないだろ? あぁいう風に所有権を主張してくれて、あー俺って星に心底惚れられてるんだなぁってしみじみ実感したよ」

「ま、まぁそれはその、当然の事と言いますか。 いや主も人がお悪い。言ってくださればそのぐらいいつでも……」

 

YES!客観的に見ると後ろ手に縛られた星の喉をゴロゴロしながら褒めちぎっているという、洗脳一歩手前のこの状況。誰に見られても言い訳出来ない。

 

「うん。でもさ、良く考えてごらん? 何でも出来る星が俺の事何でもやっちゃったら、他の皆が可哀想だろ?それに星が怨まれちゃうよ」

「ま、まぁ確かにそれはそうかもしれませんが……あ、主? 何故その、足を広げさせるのです?」

「星は本気出しちゃうとあっと言う間に俺の心持っていっちゃうんだ。 その事をちゃんと分かっていれば、皆がどういう風に主張しようと大丈夫だろ?違う?」

「主!あ、主! 分かりました、分かりましたから、その……この様な格好は、あまりに……」

「だーめ。星が魅力的なのがいけない」

「い、いけませんこの様な……これでは、まるで犬ではありませんか……ずるいですぞ、私が拒否出来ないのを承知で……」

 

 

「ご主人様の犬で何が悪いっ!!!」by蜀代表

「ふざけるなおい其処変われ今すぐにだ!!!」by呉代表

 

 

「……なんか聞こえた気がするが、きのせいだまちがいない」

 

休憩したい。今すぐ布団に潜り込みたい。

でもこれ以上秋蘭を待たせる訳にもいかない。いかないと。

あ、星の縄解くの忘れてた。

 

「星? 星、大丈夫?」

「お、おゆるし、ください……もうはいりませぬ……」

 

いかん、星が懇願するとかムラムラしてしまう。

このまま二回戦を始めてしまいそうなので、慌てて部屋を出たんだけど、雰囲気出す為に扉がすんごい重厚なのね。ギギギィとか鳴るのよ、開け閉めすると。

『主ぃ……』と星に呼び止められながら部屋を出る。罪悪感半端ないっすorz

 

 

「ただいま……お待たせ秋蘭……」

「おかえり。随分と「しゅーらーん……」おっと!」

 

胸にばふん。と飛び込めば優しく抱きしめてくれる。

やーわかい感触を楽しみつつ秋蘭の反応を探っていると、頭を優しく撫でてくれた。

 

「お疲れのようだな」

「んー。でもまだ頑張れるよ」

 

ん!と顔を起こして秋蘭の顔を見て驚いた。悲鳴上げて逃げそうになった。

眼が完っ全っに座ってる。そして表情そのものが笑ってない。怖い。

 

「あ、あの……もしかして落ち着いてくれたかなーとか期待、してたんだけど?」

「んー? んふふふ……華琳様が先ほど来られてなぁ?お労しい事に『あまり一刀を追い詰めちゃだめよ』と仰るんだ。

なんとも気丈な方ではないか、そう思うだろう一刀?」

「そうですね」

「あの場で一番心を掻き乱されたのは華琳様に違いないというのになぁ。

何処の馬の骨とも分からんお前を寛大にも受け入れ、男であるというのに側近の様な扱いまでをお与えになり、お前が一番効率良く成長出来る様に寸暇を惜しまずに工程をお考えになった。そうだろう一刀?」

「仰る通りです」

「そうだろうそうだろう。 その華琳様が場の調和を考えて自らの意見を封じられたというのに―――あンの大年増は!!」

「わかったちょっと落ち着いて秋蘭」

「落ち着いている。大丈夫だ、問題ない」

 

大丈夫じゃない、問題だ。

あとなんで俺の頬っぺたを両手で挟むのかな。なんで舌入れてくるのかな。

 

「んちゅ……なぁ一刀? 何も私は自分がお前を育てたのだと居丈高に吼えている訳ではないのだぞ?そうだろう一刀」

「いえす、まむ」

「んー……なぁ一刀、答えてみようか? この大陸になくてはならない人物とは、誰だ?」

「み、皆必要なんじゃないかな?! 誰か一人欠けても俺は嫌だよ?」

「そうか、では質問を変えよう。んちゅっ……んふふ♪ 一刀?お前の事を一番考えている曹魏の立役者とは誰だ?」

 

その質問はズルイよ……答え一つしかないじゃん……

 

「か……「か? 後の言葉は?」華琳、かな……?だって、魏の代表「そうだな、華琳様に違いない」

 

脅すかべろちゅーするかどっちかにしていただきたい。勿論言えやしないけど。

 

「秋蘭? あのね?是非とも落ち着いて聞いて欲しいんだけどね?

別に祭さんも冥琳も星だって、華琳より自分の方がって本気で思ったんじゃないと、思うんだ?

でもほら、やっぱりさ、立ち居地とか年齢とか、色々あるわけじゃん?」

「内容によっては搾り取るぞ」

「うん、それは望む所なんだけど、今はちょっと我慢しようか。

それでね? さっき秋蘭も言ったじゃない、華琳は確かに俺の面倒を見てくれたし、教育だってしてくれたよ。でもそれだけに心血を注げた訳じゃないじゃない?

魏で言うなら秋蘭だってそうだし、春蘭だって桂花だって、なんなら部下だったけどあの三人にも俺は助けられてたと思うんだ。それについては異論はないだろ?」

「ん……まぁ、それはそうだが……」

 

クールビューティーの弱点を初公開、秋蘭はお尻撫でられるのが弱い。

いや本人が自主的に公言したんでホントかどうか知らんけど。

 

「秋蘭の言い分は分かるよ。でもさ、それは他の子達だって同じだと思う「同じであるわけがないだろう」うん違う!違うね!皆違って皆良いもん!

でもほら、華琳は俺の乗馬訓練や戦闘訓練に一から十まで付き合った訳じゃないし、政務のやり方だって『誰々に付いてやり方を学べ』みたいな指示が多かったと思うんだ。

そうしたらさ、実際に俺にやり方を教えてくれた子なんかは『あれ?』って思う、と、思うんだ……?」

「……それだって、私が教えてやれたんだ。 第一華琳様が指示されたから教えただけであって、そもそもの始まりは華琳様である事に違いはない筈だ」

 

どうすればいいのこの状況。

 

「もしかして、だけどさ。 秋蘭、拗ねてたり、する?」

「なんの話だ」

「いや、思い上がった発言なんだけどさ? 秋蘭って華琳の代打出来るぐらい優秀な訳じゃん?本職の内政組に比べると流石に負けるけど、それでも優秀な事に変わりはないし。

そんでもって軍の中でもかなりの実力者なわけで、そこから考えると―――悔しかったのかなぁって、今ふと思ったりしたんだけど」

「……続けろ。合っていたら褒めてやる」

「んー、じゃあ続けるけど。 あの時気が立っちゃったのは、他の皆が俺に何の教育したのかを考えて、それぐらい全部自分で教えられたって思っちゃった。とか、どうかな?この推理」

「……大当たりだよ!」

「うわっ?!」

 

ぽーいとぶん投げられて寝台の上に辿り着いて、顔を起こすと圧し掛かられた。

 

「冥琳も、祭殿も、星も朱里も雛里も愛紗もその他の誰も必要ない!お前には私達がいればそれでいいんだ!!女だって私が教えたんだ!!私だ!!星じゃない!!」

「秋蘭」

「顔を見るな……酷い顔をしている自覚ぐらいある……」

「わかったよ。じゃあこのまま全部ぶちまけな。それぐらいの度量はある」

「……何故最初に私を孕ませなかった!そうすれば親になる喜びだって私が教えてやれたんだ!

やりたい事があるなら私に相談すればいい!女に奉仕させたいのなら私に命令すればいいだろう!?

くそっ、どいつもこいつも……一刀を育てたのは、私なんだぞ……私が磨いた玉だ……」

 

秋蘭の泣き言を、俺は後何回ぐらい聞かせて貰えるんだろう。

皆強いからなぁ。好きな時に当り散らせて上げられればいいんだけど。

 

「ごめんな。 でも、秋蘭だけが特別じゃない」

「分かっている!喋るな!」

「やだよ。 言うこと利くのは秋蘭の方だろ。秋蘭は俺の女なんだから」

「それ以上、喋るな」

「よっと!」

 

馬乗りになられてたけど、体勢を上手いこと入れ替えて俺が秋蘭を組み伏せる。あまり閨での私を舐めない方がいい(キリッ

 

「ま、ようするに、だ。 どうにもならない事を考えさせなけりゃ良いってだけの話だよな」

「今日だけは絶対に誤魔化されないぞ」

「あれ、秋蘭は俺とはもうしたくない?」

「話をすり返るんじゃない……お前を育てたのは誰かという話の筈だ」

「皆だよ。秋蘭だけじゃない」

「一刀」

「先に会って来た皆にも同じ事言ったよ。皆それは納得してたし、納得させた。次は秋蘭が納得する番だ」

「こ、こら! 服を捲くるな!」

 

秋蘭の説得は骨が折れそうだ。

しかしやるしかない。種馬の本気、とくとみよ!

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……祭、さん……秋蘭にごめんなさいは?」

「す、すまんかった……」

「秋蘭?」

「こ、こちらこそっ! も、申し訳ないことをしました。言った!言ったから……」

「んじゃ二人とも、休んでいいよ。  さて、冥琳と星は?まだ良い子になれない?」

「少し大人気無かった。すまない」

「いや、こちらこそ……あ、主、お願いですから、普通に……私は愛紗の様な好みではありません……」

 

ようやく終わった。本気で疲れた。

途中で何度か綺麗な川の前に逝ったもの。渡る所だったもの。

何故か思春と愛紗が手招きしてる美人さんをフルボッコにした後で「あの部屋予約しましたから!」って舌なめずりしながら言って来たけど、当方では一切関知しておりません。

 

(あー……そういやまだ裏ボスが……)

 

次に眼を覚ましたら、私は清く正しく生きたい。

hujisai様本当に申し訳ございませんでした。いや、あの、言い訳をしますとですね?

あれだけ極上のネタを振られたらそりゃあ引っ掻き回したくなりますって、これ真理。

秋蘭と冥琳が似てるby雪蓮 とあったので、心情の吐露とか被ってるのはそういう理由です。

苦し紛れに桐花ちゃん出してみました。何故かちゅーたつさんより出しやすいです。

hujisai様の書かれる一刀に似せたつもりではありますが、やっぱり所処その後と噛み合わない箇所があります。

もうその辺りは眼を瞑ってお楽しみ下さい。お願いします。

 

時系列としては11/23のすぐ後、風ちゃんの前になります。無論脳内設定です。

よしお。様          ハッパかけていただけて感謝しております。見限らないでいて下さって有難い限りです。

 

月光鳥~ティマイ~様     デスヨネー

 

前原 悠様          やった!ようやく忠犬ちょろたつが書けた!

 

HIRO様            性能的に『対諸葛亮◎』ついてる感じですね。

 

Alice.Magic様        ちょろたつの可愛さは恋姫一ぃ!

 

hujisai御大         朱里が血涙流しながらおっぱいを測っている話とか見たいなぁチラッチラッ

 

悠なるかな様         うん、つまり最初からだね。ちょっと落ち込んでくるノシ

 

D8様             D4Cは璃々ちゃんのスタ○ドっぽいので、苦肉の策ですよげへへ

 

SRX-001様          夫に押し倒される新妻という頭の悪いプレイだよ、言わせんな恥ずかしい。

 

happy envrem様       当店では死体蹴りは仕様となっております(キリッ

 

blendy様          ほら、ちゃんと名称つけられてないからよ?

 

ミドリガメ様         ご指摘を受けてもう一度読み返しました。かなり間違えてますね、恥ずかしい事この上ない。

 

観珪様            全く、これだから荀家は……

 

shirou様           続きは各自の脳内で!!

 

2828様            マジレスすると恋の幽波紋が発動しますよ。星の白銀がね(キリィ

 

kaz様             月様「最っ高にハイッってやつです!」

 

帽子屋様           仲達「HANASE!!!」桐花「MOTTO MOTTO!!」


 
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