甘述(かんじゅつ)……一刀と思春の子。一刀にとっては第六子にあたる。一人称は「わたし」
一刀の事をとーさま、思春の事はかーさまと呼ぶ。 性格はおとなしめ。その為周りの子に比べて大人びている雰囲気がある。両親の事は大好きなのだが、気を遣ってしまうちょっと控えめな子。あれだ、微妙に凪みたいな感じです。
甘述が気を遣っているとは気付いてない二人はあの子は良くできた子だからみたいに思っている。
こういう設定にした理由は呉の最後の場面で一番控えめだったからという簡単な理由です。これからもあのCGを参考に深読みをしていきます。(ちなみに作者はこういう控えめな子供が好きなのである)
「思春、あなた最近ずっと働き詰めじゃない?少しくらい休んでも良いのよ」
「いけません蓮華様。今は呉にとって重要な時期です。そのような時に休んでなどおれません」
「確かにそうかもしれないけれど……甘述はいいの?」
「あの子はそれ程子供ではありません。今がどれほど大切な時期であるか理解しています。そのように教えておりますので」
「そうなの?でも一刀も忙しいのだし少しくらい一緒に居てあげても……」
「忙しいのは皆同じです。私だけが休むわけにはいけません」
蓮華にそう説明しながらも黙々と政務を続けている思春。その日も遅くまで仕事をし、終わったのはもう大分遅くになってからであった。思春が部屋に帰ると甘述は一人本を読んでいた。
「ただいま甘述。すまん、今日も遅くなった」
「おかえりなさいかーさま。おつかれさまです」
「今日も雪蓮様達と?」
「はい、そうです」
雪蓮と冥琳は後任に地位を譲った後、所謂ベビーシッターをしているのでる。(といってもほとんど冥琳が世話をしていて、雪蓮は一緒に遊んでいるだけなのだが)
「そうか。今日は何をしていたのだ?」
「きょうは竹けりをしました!」
「竹けり?何だそれは?」
「はい!とーさまが教えてくれた天の遊びです!」
そして竹けりの説明を始める甘述。(竹けりとは缶けりの事だ!この時代には缶ないし竹でいっか by一刀)
「ふむ、それは中々面白そうな遊びだな」
「はい!とっても楽しかったです。雪蓮さまはとっても強かったです!」
「そ、そうか。(あの人のことだ…どうせ子供だろうが手加減などせずに本気でやっていたのだろうな……)」
「それとこれはかーさまには言っちゃだめっていわれたけど……きょうはとーさまもとちゅうから一緒に遊んだからとってもうれしかったです!」
「…………そうか。それは良かったな甘述。(あいつ仕事中に何をやっている……)」
「はい! (でもわたしはかーさまとも一緒に遊びたいです…… (ボソボソ」
「ん?何か言ったか?」
「な、なんでもないです!述は眠たくなったのでもう寝ます。おやすみなさいかーさま!」
「あぁ、おやすみ甘述」
「…………………………………」
――――――――――翌日、雪琳託児所 ←一刀命名
「陸延ちゃ~ん、帰りますよ~」
夕方になり続々と子供の迎えに来る母親たち。手を繋ぎ部屋へと戻っていくその姿をじっと見つめている甘述。この場に残った子供は甘述と周循のみとなっていた。
「甘述、あなたの母上も忙しいのですね。さすがは孫呉の懐刀と呼ばれているお方なのです。立派な御両親です。……北郷の事は知らないですけど」
「はい、かーさまはとってもすごい人です。でも周循姉さま、とーさまもすごいよ?」
「あいつは…………まあまあです…」
「えー、とってもすごいのに…そういえば周循姉さま、またごま団子をつくるのが上手になりましたね。きょうのおやつもとってもおいしかったです!とーさまにもあげたの?」
「!!な!な、な、な何故、私が北郷などにあげなくてはいけないのですか!」
「えー、おいしいのに~」
「ほ、北郷などに…や、やらん!」
「そうですね周循。確かに‘直接的には’一刀にはあげてませんねぇ」
「は、は母上!??何を言うのですか!?」
「いや我が子があまりにもアレだったものでついついな………それとすまんな甘述。あなたのお母さんは蓮華様の側近ゆえ多忙なのだ。あなたには寂しい思いをさせてしまっているな」
「だいじょうぶです冥琳さま。かーさまととーさまがいそがしいことはわかってます。それに周循ちゃんもいるからさびしくないですよ」
「お母さんとお父さんと遊びたくはないのか?」
「それはいっしょにいたいですけど……そう思うのはみんな同じです。わたしだけがわがままをいったらだめです。それではそろそろ戻りますね冥琳さま」
そうニコニコと笑いながら言う甘述。しかしその姿は冥琳には無理をしているようにしか見えなかった。
「無理してるわね…あの子」
「雪蓮…戻っていたのか。確かにそうだな……全くあそこは親子揃って素直じゃないな」
「それはどこぞの親子にも言えるんだけどな~。しかし甘家も不器用よね~。甘述もちょっとくらい甘えても良いのにへんに大人なんだから。思春は甘述が大丈夫と言えば絶対それを信じるだろうしね~。頼みの一刀はちょっと今可哀想なくらい仕事がたまってるしね…………ならここは私達の出番ですかね元・大都督様?」
「ええそうかもしれませんね、先代王よ……」
「「フフフフ………」」
――――――――翌日、荊州は長江の畔
「なぁ思春、これは一体どういう事だ?」
「知らん。雪蓮様の命令なのだ。私に聞くな」
今朝早々に雪蓮、冥琳の二人に呼び出された二人は荊州への視察を命じられていた。
「待ってくれ雪蓮、俺は今日中に済まさないといけない政務が山のようにあるんだ」
「一刀、そこは私に任せろ。あなたにできて私にできないわけがないでしょう」
「雪蓮様、私もまだ政務が残っておりますし、蓮華様のお側を離れるわけには……」
「そこは私に任せておけば大~丈夫。あの子の事なんか手に取るように分かっちゃうんだから。それに今回はあなた達にこそ行って欲しいのよ。
赤壁の戦いから時間が経ったとはいえ戦場となった荊州の復興はまだまだなのよ。だから思春、あなたの水上の知識と指揮が必要なのよ。そして一刀は呉の新しい大都督としてこういう時にこそ民の前へと立たねばいけないのよ。分かった?」
「「はぁ……」」
そしていざ荊州へとやって来たのだがもう町の復興はほとんど終わっており、兵の動きも思春が指揮をとらなくとも十分と精錬されており、一刀の出番などは全くなかったのである。
「……ハメられたのか?」
「だから知らん。私に聞くな」
「ハメられたとしか思えないんだよな~………だって…………」
「とーさまーー、かーさまーー!!」
そう、二人の視察には甘述も連れて行くよう命じられたのだ。一刀は賛成であったが、思春は仕事の妨げになるのではと思い躊躇っていた。しかし雪蓮に押し切られ連れて行く事になったのだ。
「んー、どうした甘述?」
「わたしもかーさまみたいに船にのりたいです!」
「船?そうだな一緒に乗ってみるか!!なぁ思春!」
「……あぁ構わん」
そして船着き場で小さな船を借り、河へと繰り出した3人。
「甘述、まずはとーさまが手本を見せてあげよう!」
そう言って船を漕ぎ出す一刀。しかしここは池や沼ではなく河である。勿論水流があるため見事に流されていく船。
「あら?おやや? 何故?」
「………何をしているのだお前は。貸してみろ」
漕ぎ手が思春に変わった途端、船は流されることも逆らう事もなく見事に静止していた。
「ふん、このくらいは造作もない。子供でもできるぞ」
「むっ、初めてだったんだから仕方ないだろ」
「なら最初から見栄を張らず私に任せていればよかったのだ」
「別にそこまで言うことないじゃないか!」
その後も徐々に口論が熱くなっていく二人。その為、この場にもう一人居るという事をすっかり忘れていた。
「………………カ…………いで…………ん……………………ら」
「「!!!!」」
二人がハッと我に返った時はもう遅かった。二人には泣き出してしまった甘述の姿が目に入った。
「ケ、ケンカ…しない……で…とーさま、…かーさま……もういっしょに…遊びたいって……わがままいわないから………さびしくても…がまんするから……」
先日雪蓮に両親と一緒に遊びたいかと聞かれた時に自分が「はい」と答えたから雪蓮さまが今回の事を仕向けてくれたと思った甘述には、二人がケンカをしているのは自分が我儘を言ったせいなのだと思ってしまっていた。そのため涙ながら必死に二人に謝っていた。
「ご…めん………なさ…い。とーさま…かーさま」
「違う!違うよ甘述!甘述は何も悪くないんだ……俺達二人が幼稚だっただけなんだ…バカな俺達を許してくれ…」
「私はダメなかーさまだな……こんなに寂しがっているお前に何も気づかなかったのだな……すまないっ……甘述っ…」
甘述を優しく包み込むように抱きしめる一刀と思春。その間「とーさま、かーさま」と言いながら二人に縋り泣き続ける甘述。そして泣き疲れたのか甘述はとうとう一刀の腕の中で眠ってしまった。
「やっちゃったな…思春…」
「そうだな…全く、我々は情けない両親だな……」
「甘述は他の子と比べてちょっと大人びてるから大丈夫だと思ってたけど………まだ子供なんだよな……クソッ、そんな当たり前の事を忘れていた自分に腹が立つ!!」
「それは私もだ一刀……あの子の言葉を鵜呑みにして大丈夫だろうなどと思ってしまっていた…雪蓮様たちはその事に気付いて甘述の為に今回の件を仕向けたのだろうな。………それがこのザマか…」
「まだまだ未熟だな俺達は…」
「そうだな……」
「思春」
「なんだ」
「ごめん。 それから俺はもっと頑張るから…甘述が誇れるようなとーさまになれるように……そして思春、君にも認めてもらえるように……ね」
「フン、期待せずに期待しておこう」
「何だよそれは……」
「だから期待せずに期待しておくというのだ」
「だからどういう意味だよそれは!」
「何度も言わせるな。期待せずに期待しておくと言ったのだ」
「だから何だy…………フフフッ…」
「フフッ……」
「「フフ、フハハハハハーー!!」」
大声を上げて笑い始める二人。もうケンカをしていた事などさっぱりと忘れたようである。その声に眠っていた甘述も目を覚まし、まだボーっとしているものの呟いた
「んー………どうしたの…とーさま……かーさま………」
「いや、何でもないよ甘述。また三人でお出かけしような。今度はどこに行こうか?」
「!! どこでもいいのです……とーさまとかーさまと一緒ならわたしはどこでもうれしいのです」
「そっか。なら今度は甘述が泣かないようにしないとな~」
「そ、それはもう忘れて欲しいのです……」
そうじゃれ合いながら話し合う父と子を思春は優しく、穏やかな目で見つめていた。
「(私がこのような気持ちになる日が来るとは思っていなかったな…。これが母というものか……良いものだな………。それと一刀、あなたは私に認めてもらえるようにと言っていたが私はとっくにあなたの事は認めている。だからもう特に期待などしていないのだ。……だがこれまで以上に私と甘述を悦ばせてくれるというのなら期待はするがな)」
「んっ、どうかしたのか思春?」
「いや、何でもない。それではそろそろ戻るか……………………で、ここは何処だ?」
「さぁ?」
「まさかずっと流されてきたのか!?これまで何をしていたのだお前は!!」
「それは思春だって同じ………」
「……………………………(ジーッ」
「!!!…それじゃ急いで戻るか。思春、漕ぎ方教えてくれるか?」
「!!そうだな。あなたも船ぐらい一人で漕ぐことができるようになってもらわなくてはな」
「「(危ない……また繰り返す所だった…)」」
思春は一刀の背後につき、一刀の手を取りながら二人一緒に船を漕いでいく。
「どうだ?漕ぐ感覚はつかめたか?」
「あ、あぁ……(背中に当たる他の二つの感覚の方が良く分かるがな!)」
「ニヤニヤ」
「ん、どうしたんだ甘述?」
「うーん、さっきからとーさまうれしそうだn…………」
「アーーーー、甘述はまだ漕いでないよな!こっちにおいで!俺が教えてあげるから!!」
「はーい♪」
「?」
その後無事に元の港に着いた3人。翌日からは折角貰った休暇だという事で精一杯満喫していた。その3人の顔はとても幸せそうな表情であった。
――――――――――後日談
「蓮華様、期限が本日までの政務は終わりました。それでは私は失礼します」
「最近早いわね思春。ちゃんと政務はこなしているから問題はないのだけれど……何かあったの?」
「今日は甘述と町へ行く約束をしておりますので。それではお先に失礼します」
「えぇ…お疲れさま。(あの視察の後から思春が凄く変わった……一体何があったの!?一刀も思春に対しての態度が今までとは何か違う……私には休暇貰えないかしら……不公平よ…)」
「甘述、迎えに来たぞ……………一刀!?何故ここに?」
雪琳託児所へとやって来た思春。そこには子供達+雪蓮にもみくちゃにされている一刀が居たのである。
「甘述からかーさまと買い物に行くと聞いてな。俺も一緒に行っても良いかい?」
「あぁ構わん。………なら行くか」
「「はーーい」」
仲良く手を繋ぎ町へと向かう三人。その姿を呆然と見詰める子供達と雪蓮、冥琳。
「これは思っていた以上の成果が得られたようですね雪蓮。…………雪蓮?」
「冥琳!私にも休暇………」
「あげません」
「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁぁ………しどい……」
「私もお父さんと出かけたーい!」
「ボクも!」
「あたしも~」
「母上!これは一体どういう事ですか!?ふ、ふ、不公平なのでは!?」
子供達+雪蓮に群がられる冥琳。
「分からん……何もかも分らん………そして私も休みたい…」
呉は今日も平和です。
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皆様ごきげんよう。
2作目となりまするは思春デス。
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