No.587947

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 491

soranoさん

第491話

2013-06-16 15:47:49 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1047   閲覧ユーザー数:995

ロイド達が外に出ると一人の女性がアリオス達にカメラを向け、写真を何枚も撮っていた。

 

~クロスベル市・駅前通り~

 

「なんだ………?」

女性の行動に気づいたロイドは不思議そうな表情で女性を見つめていた。

「いや~、アリオスさん!またしてもお手柄でしたねぇ!ずさんな市の施設管理の下、危機に陥ってしまった少年たちを鮮やかに救出した手際のよさ………!最新号にバッチリスクープさせてもらいますから!」

「すっげええ!オレたち雑誌に載っちゃうの!?」

「で、でもそれって、何かうれしくないような………」

女性の話を聞いたリュウは興奮し、アンリは表情を引き攣らせた。

「………グレイス。あまり騒ぎ立てないでくれ。確かに市の管理も問題だがこの子達の行動にも問題がある。偏った記事には感心しないぞ。」

一方アリオスは冷静な表情で答えた後、静かに女性―――グレイスを睨んだ。

「いえいえ、あくまで読者のニーズに応えているだけですから♪――――それに今回は面白いゲストもいるみたいですし。」

アリオスの注意にグレイスは悪びれもない様子で答えた後、口元に笑みを浮かべてロイド達を見つめ

「!?」

グレイスに見つめられたロイドが驚いたその時

「クロスベル警察の未来を背負う『特務支援課』初めての出動!しかし力及ばず、いつもと同じように遊撃士に手柄を奪われるのだった!ああ、未熟さを痛感した若者たちは果たしてこの先に待ち受ける数々の試練を乗り越えられるのか!?」

グレイスはロイド達に近づいて何枚も写真を取ながら言った。

「な、なにを………」

(………出るタイミングが悪かったわね………)

(好き勝手言ってくれるね~………あの人間が出てこなくても、我輩達なら一瞬で片付けられたぜ?)

グレイスの言葉を聞いたロイドは戸惑い、ルファディエルは溜息を吐き、ギレゼルはグレイスを見つめながら呟いた。

(おいおい………一体なんだってんだ?)

(マスコミの人間みたいですけど………)

(………どうやら”クロスベルタイムズ”の記者の人みたいね。)

一方ランディたちは小声で会話をしていた。

「――――彼らに関しても決めつけはあまり感心しない。一応、この子たちを最初に助けたのは彼らだ。まあ、ツメが甘かったようだが。」

「!!」

「あらら、やっぱりそうなんだ。ま、記事で色々書くと思うけどあんまり気にしないでね?お姉さんからのエールだと思ってこれからも頑張ってちょうだい。」

そしてアリオスの言葉を聞いたロイドは目を見開き、グレイスは溜息を吐いた後ロイド達を見つめて話し、アリオスに振り返り

「――――それで、アリオスさん。一度、独占インタビューをですね。」

「それに関しても前に断わっているはずだが………」

断りの言葉を言った後去って行くアリオスを追って行った。

「………何でしょう、今の。」

「俺達のことをピエロに仕立てあげようって肚(はら)みてぇだが………結構好みのお姉さんだけどちょいとクセがありそうだなぁ。」

「ふう………そんな問題じゃないでしょう。」

アリオスたちが去った後ティオはジト目でアリオスたちが去った方向を見つめ、ランディは真剣な表情で呟いた後疲れた表情で溜息を吐き、ランディの言葉にエリィは溜息を吐いた後真剣な表情でロイドに尋ねた。

「それでロイド、どうするの?」

「あ、ああ………セルゲイ課長が出した課題はクリアしたし………いったん警察本部に戻ろう。子供たちの件についてもきちんと報告しないと………」

エリィの疑問にロイドが答えたその時、エニグマが鳴りはじめた。

「これは………さっき貰った戦術オーブメント………もしかして通信が入ってきているのか?」

「ええ、そうみたいですね。そこの赤いボタンを押せば通信モードに切り替わります。」

「ああ、これか………」

ティオの助言を聞いたロイドはエニグマに付いているボタンを押して、エニグマに耳を当てた。

「えっと………ロイド・バニングスです。セルゲイ課長ですか?」

「あ、ロイドさん!あの、わたしです。先程受付でお会いした―――」

「あ、さっきの………えっと、一体どうしたんですか?」

「えっと、それがですね………その、急いで警察本部に戻ってきていただけますか?何でも副局長がお呼びみたいで………」

「ふ、副局長………?」

通信相手―――フランとの会話を終えたロイドはエリィ達と共に警察本部に戻って行った。

 

~クロスベル警察本部・副局長室~

 

「――――まったく!いったい何のつもりだね!?任務に関係ないことに首を突っ込んだあげく………!あのアリオス・マクレインに手柄を持っていかれて………っ!お、おまけにそれを『クロスベルタイムズ』にすっぱ抜かれてしまうとは!!!」

「いや、ですが………」

警察本部に戻ったロイド達は副局長――――ピエールに叱責を受け、ロイドは仲間達を代表して言い訳をしようとしたが

「うるさい、言い訳無用だ!」

ピエールはロイドの言葉を一蹴した。

「まったく、だから私は新部署設立など反対だったのだ!あの忌々しいセルゲイのヤツが交換条件を持ち掛けなければこんな事には………!」

「あの、それはどういう………」

「ええい、君達には関係ない!」

自分の言葉に疑問を想ったエリィの言葉をピエールは再び一蹴した後、ロイド達から視線を外して小声で呟き始めた。

「い、いや………そう、そうだな。部下が一人も居なくなればあの疫病神だって動きようが………それに一時的にこっちに配属されるユイドラの令嬢達も状況を知れば、奴の部署を離れるしな………」

そして独り言を終えたピエールはロイド達に振り向いて予想外な事を言った。

「君達、悪い事は言わない。『特務支援課』への配属を一両日中に辞退したまえ。」

「えっ………!?」

「おいおい………どういうことっスか?」

「………意味不明です。」

ピエールの予想外な提案を聞いたロイドは驚き、ランディは目を細めて尋ね、ティオはジト目で呟いた。

「どういう事も、そのままの意味だ。どうせ半年も保たない部署だ。絶対に出世の役には立たないぞ。それどころか、問題に巻き込まれて経歴を汚す可能性もある………バカバカしいとは思わないかね?」

「……………………」

ピエールの話を聞いたロイド達はそれぞれ黙り込んだ。

「ロイド君は捜査官志望だったか?ならば捜査課のどこかに回そう。他の者も、それぞれ適性に合った新しい配属先を用意しておく。なに、悪いようにはしない。一晩じっくり考えてみたまえ。」

その後ロイド達は副局長室を退室し、ロビーに戻った。

 

「…………………………」

「やれやれ………何か妙なことになったな。しかし配属を辞退しろと言ったって………」

ロビーに戻ったロイドは複雑そうな表情で考え込み、ランディは溜息を吐き

「どうやら警察内部でも色々とあるみたいね………噂程度には聞いていたけど。」

「………そうですね。これでは約束が違います。」

エリィは疲れた表情で溜息を吐き、ティオは静かに呟いた。

「あら、約束って………?」

「………いえ、こちらの事です。それよりもセルゲイ課長はどちらにいるんでしょう………?」

「そういや、そうだぜ。課題を出すだけ出しておいて出迎えもナシってのはどういう事だ?かわりに嫌味な副局長ってのにネチネチ絡まれちまうし………」

ティオの疑問に頷いたランディは溜息を吐いた後、元気がない様子のロイドに気づいた。

「なんだよ、ロイド。元気ないじゃないか?」

「配属を辞退しろっていうのがそんなにショックだったの?」

「ああ、いや………何だから思ってた場所とずいぶん違っていたからさ………」

ランディとエリィに尋ねられたロイドは溜息を吐いて答え

(………まあ、警察学校で教わった仕事場とずいぶん違うから、戸惑うのも無理ないわ………)

「??」

「んー……………?」

「………………」

ロイドの様子を見たルファディエルは溜息を吐き、エリィ達はそれぞれロイドを見つめた。するとその時

「よお、新人ども。災難だったみてぇだなぁ。」

年配の刑事と青年の刑事がロイド達に近づいてきた。

「あなた方は………」

「ドノバンだ。捜査二課に所属している。」

「同じく二課のレイモンドだよ。へ~、噂には聞いていたけどこんな小さな子までいるのか。」

年配の刑事―――ドノバンと共に青年の刑事―――レイモンドは自己紹介をした後、興味深そうな様子でティオを見つめ

(…………むっ……………)

(フン………”影の国”での経験を考えれば、戦闘能力や体力の点では既にお前如きは超えているぞ。)

見つめられたティオはジト目になり、ラグタスは鼻を鳴らした後レイモンドを見つめた。

「………初めまして。ロイド・バニングスです。」

「エリィ・マクダエルです。」

「ランディ・オルランド。よろしくッス。」

「おう。ようこそ、クロスベル警察へ。そうか、オメーがあの………」

ロイド達の自己紹介を聞いたドノバンはロイドを見つめ

「………えっ………」

「警部………?」

(………相変わらずガイの事は警察内では有名のようね………)

(んあ?ガイっていうと……ロイドの死んだ兄か。ふ~ん………)

見つめられたロイドは戸惑い、ドノバンの様子に気づいたレイモンドは首を傾げ、ルファディエルは静かに目を伏せて呟き、ルファディエルの言葉を聞いたギレゼルは興味があまりなさそうな様子で呟いた。

 

「………いや、何でもねえ。………(奴の弟なら知っているかも知れねえな………)………そういえば話はかわるが”叡智”のルファディエルの消息は知っているか?」

「えっ、ルファ姉の?え、ええ……確かに知っていますが、どうしてですか?」

「いや、なに………あいつには俺達捜査二課が随分世話になった事があるからな。ちょっと気になっていたんだよ。」

「捜査二課が………ルファ姉に?」

「………というか何ですか、その2つ名。」

(お?一体何をしたんだよ、お前。)

(………別に。普段世話になっているガイに恩を返す為にガイに頼まれて、警察に少し助言をしただけよ。)

ドノバンの話を聞いたロイドは首を傾げ、ティオはジト目で呟いた。また、ギレゼルは不思議そうな様子でルファディエルに尋ね、尋ねられたルファディエルは静かな様子で答えた。

「ああ。昔、ある事件の捜査に行き詰っていた時に捜査一課のある男が助言役として相応しいからと紹介してくれた一般人の女でな。最初はなんで一般人の女を事件に関わらせるんだって思ったんだが………実際奴が考える推理は的確で、奴の推理のお蔭で解決できた難事件が数件あった上、逃走して隠れている犯人の場所も推理して、逮捕できた件も数件あったんだぜ。………奴が持つ豊富な知識量から警察内部からは”叡智”と称されていて、奴の功績を知った警察本部が奴を何度もスカウトしたこともあったんだ。………捜査一課の刑事としてな。実際、捜査官の資格も満点を取って受かっていたしな。」

「へえ………美人の上、知的とか最高ッスね。」

(ハッ。シェヒナと渡り合う奴の知恵に普通の人間の知恵が敵うはずないよ。)

ドノバンの説明を聞いたランディは感心した後ルファディエルの姿を思いだして口元に笑みを浮かべ、エルンストは嘲笑し

「まあ………」

(当然の評価だな。あの方は我等天使軍にとって参謀の役目であられたからな………)

エリィは驚きの表情になり、メヒーシャは静かな表情で呟き

「……………………」

(………どうやらルファディエルは数年前から既にこの世界に飛ばされていたようだな………)

ティオはロイドに視線を向け、ラグタスは考え込み

「ル、ルファ姉が捜査一課にスカウト!?しかも捜査官の資格を持っているなんて………おまけにあの難しい問題を満点だなんて…………し、知らなかった………(初耳なんだけど、ルファ姉!何で、教えてくれなかったのさ………!?)」

(別に私は刑事になるつもりではなかったから、言う必要はないと思っていたのよ。)

ロイドは驚いた後ルファディエルに念話を送り、ロイドの念話にルファディエルは苦笑しながら答えた。

「へ~………そんな女性がいたんですか。………美人なんですか?」

一方レイモンドは感心した様子で呟き、ドノバンに尋ねた。

「まあ、美人だが………お前では無理だな。お前みたいに奴の容姿に目が眩んで声をかける男共もいたが、全員相手にされていなかったからな。………それで奴は今でも生きているのか?」

尋ねられたドノバンは答えた後ロイドに尋ね

「え、ええ。今でも元気にしていますし、最近クロスベルに戻って来ましたよ。」

尋ねられたロイドは答えた。

「そうか。もし奴に会ったら伝えといてくれ。………できればお前も警察に来てほしいと。」

「は、はあ…………(というか実は目の前にいるんだけどな………ハハ………)」

(だ、そうだぞ、ルファディエル?どうするんだ?かかかっ!)

(………私はロイドを見守る為にロイドと一緒にいるのだから、どれだけ頼まれても刑事になるつもりはないわ。)

そしてドノバンの言葉を聞いたロイドは心の中で苦笑しながら頷き、ギレゼルは興味深そうな様子で笑いながらルファディエルに尋ね、ルファディエルは溜息を吐いて答えた。

 

「しかしセルゲイのヤツも無茶なことを考えやがるぜ。こんな新人どもばかり集めて市民どもの人気取りとはなぁ。」

「えっ………」

「それは………いったいどういう事ですか?」

ドノバンの話を聞いたロイドとエリィは驚き

「なんだ………また話を聞いてないのかよ?うーん。マズイ事を言っちまったか?」

ロイド達の様子を見たドノバンは意外そうな表情をした後考え込んだ。

「いや~、しかし君達も貧乏クジを引いちゃったよね。大変そうな割には報われなさそうだし僕だったら辞退してるんだろうなぁ。」

「………………………………」

「オメーはもうちょっと根性入れた方がいいじゃねえか?今からでもセルゲイの所に預けてやってもいいんだぞ?」

そしてレイモンドが呟いた言葉を聞いたロイドは黙り込み、ドノバンは注意した。

「や、やだなぁ、警部。カンベンしてくださいよ。」

ドノバンの注意にレイモンドは慌てた様子で言った。

「ま、大変だとは思うがセルゲイに付き合うかどうか、一応考えてみてやってくれ。ただ、無理はすんなよ?何だったらまとめて二課で引き取ってもいいからな?」

「ど、どうも………」

「それじゃ、頑張ってね~。あ、エリィちゃんだっけ?今度一緒に食事でもどうだい?実はいいレストランを見つけて――――」

そしてドノバンの話を聞いたロイドは苦笑しながら頷き、レイモンドは気楽な様子で言った後エリィにナンパしようとしたが

「オラ、とっとと行くぞ!」

「あいた!単なる社交辞令ですよ~。」

ドノバンの頭をはたかれて中断し、ドノバンと共にエレベーターの中に入って行った。

「………………………………」

「はー、何だか知らんが散々な言われようだったな。」

「………貧乏クジはともかく大変そうなのはイヤかも………」

「とにかく課長本人から詳細を聞いてみないと………受付で聞けばどこに居るかわかるかしら?」

ドノバン達が去った後ロイドは複雑そうな表情で考え込み、ランディとティオは溜息を吐き、エリィは溜息を吐いた後ロイドに尋ねた。

「あ………うん、そうだな――――」

エリィの疑問にロイドが頷いたその時、ロイドのエニグマが鳴りはじめ、ロイドはエニグマを通信モードにして耳にあてた。

「もしもし。ロイド・バニングスです。」

「おー、キツネの小言と嫌味は終わったみてーだな。なかなかウンザリするだろ?」

「ええ、それはもう………―――じゃなくて!一体どこにいるんですか!?警察本部で待ってるって言ってたじゃないですか!?」

通信相手―――セルゲイの言葉に頷きかけたロイドはすぐに状況を思いだして突っ込んだ。

「ああ、お前らの荷物が届いたから引越し屋に立ち会ってたんだ。なかなか親切な上司だろう?」

「荷物って………ひょっとして寮ですか?」

「ああ、詳しい話はそこで改めてしてやろう。待ってるからとっとと来い。」

「ふう………わかりましたよ。それで、寮っていうのはいったい何処にあるんですか?」

「ああ、正確には寮じゃないぞ。」

「へ………」

「正確には、クロスベル警察『特務支援課・分室ビル』だ。そこの2階と3階がお前達の部屋になっている。」

その後セルゲイとの通信を終えたロイドはエリィ達と共にセルゲイに教えられた場所――――中央広場にある雑居ビルに向かい、到着した。

 

「ここは………あの雑居ビルじゃないか。」

「なんだ。ずいぶんボロイ建物だな。あっちのデパートと比べると古ぼけて見えるっていうか………」

「築30年………取り壊し間近って感じです。」

「………本当にここが『特務支援課』の分室なの?」

「あ、ああ。間違いないとは思うけど………」

雑居ビル―――特務支援課の分室を目の前にロイド達が話し合っているとドアが開き

「おう、遅かったな。」

セルゲイが現れた。

「セルゲイ課長………」

「とっとと中に入れ。この『特務支援課』がどういった部署なのか………お前達の疑問の全てにちゃんと答えてやるからよ。」

そしてセルゲイに促されたロイド達はビル内に入って行き、課長室でセルゲイから説明を受けた。

 

~夜・特務支援課~

 

「市民の安全を第一に考え、様々な要望に応える部署………!?」

説明を聞き終えたロイドは驚きの表情で叫び

「そう、それが新たに設立された『特務支援課』の行動方針だ。市民の生活に密着できるよう、こんな街中に分室も用意された。クク、なかなか合理的だろう?」

セルゲイは静かに頷いた後口元に笑みを浮かべた。

「で、でもそれって………!」

一方ロイドは慌てた様子になり

「完全に遊撃士協会(ブレイサーギルド)の真似っていうか………」

「ありていに言えば、パクリですね。」

「だよなぁ。」

エリィは疲れた表情で、ティオは呆れた表情で呟き、ランディは溜息を吐いて頷いた。

「知っているかもしれんが、現在、このクロスベルにおいて遊撃士協会の評判は大したもんだ。A級遊撃士アリオス・マクレイン―――”風の剣聖”なんて呼ばれているあの男に加えて、かなりの実力者がクロスベル支部に常駐している。それが警察のお偉方にとって何を意味するかわかるか?」

「そ、それは………」

「警察とギルドとの比較評価と組織としての問題点の指摘………更には自治州政府への批判に繋がっているんですね。」

そしてセルゲイに尋ねられたロイドは答え辛そうな表情になり、エリィが複雑そうな表情で答え

「なるほど、そういう事か。要はギルドのお株を何とか奪って人気取りをしようって肚なわけだ。」

「………なんか露骨ですね。」

(ククク………いいねぇ!あたいは賛成だよ、その”奪う”という考えは!)

ランディは納得した様子で頷き、ティオは呆れた様子で呟き、エルンストは不敵な笑みを浮かべていた。

「ま、ぶっちゃけて言うとお前らの指摘する通りだ。さらに加えて言うと警察、警備隊共に1年前の無抵抗の”闇夜の眷属”を討伐しようとした件で市民からの信頼はどん底に落ちているからな。どん底まで下がった信頼をせめてどん底に下がる前の状態に戻せば上出来な方だぜ?」

「えっ!?」

「む、無抵抗の”闇夜の眷属”を討伐!?」

「一体、なんでそんな事になったんですか………?」

そしてセルゲイの話を聞いたエリィとロイドは驚き、ティオは静かな表情でセルゲイに尋ね

「………あー………あの件か………」

ランディは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「ランディ、知っているのか?」

ランディの様子に気づいたロイドはランディに尋ね

「クク、当時警備隊にいたお前なら例の件にも関わっただろうから知っているだろうな。」

セルゲイは口元に笑みを浮かべて呟いた後ロイド達に1年前に突如現れた巨大な怪獣を警察と警備隊の上層部が市民への人気取りの為に、何も罪を犯していない怪獣を討伐しようとしたが、闇夜の眷属の女性とその護衛達、後からかけつけた遊撃士達の介入によって討伐が妨害され、その結果警察と警備隊の信頼がどん底まで落ちた事を説明した。

「………………」

「そ、そんな事が1年前のクロスベルにあったなんて………」

事情を聞き終えたロイドは口をパクパクさせ、エリィは冷や汗をかいて疲れた表情で溜息を吐き

「それにしてもよく表沙汰にならなかったですね…………そんな事があったら、間違いなく各国に知られると思いますし………何よりメンフィル帝国が黙っていないんじゃないですか?」

ティオは呆れた表情で呟いた後、尋ねた。

「クク………黙っているも何も、当時警察官と警備隊の軍勢を止める為に戦った”闇夜の眷属”の女性ってのがあの”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”だぜ?メンフィル皇室にはとっくに知れ渡っていると思うぞ。」

「ええっ!?プ、”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”って言えばあの………!」

「………”英雄王”リウイ陛下と”闇の聖女”ペテレーネ様のご息女にしてメンフィル皇女………あの方がクロスベルに来ていた上、クロスベル警官や警備隊員と戦っていたなんて………」

「それって最悪なんじゃないですか?メンフィル帝国の皇女を傷つけようとするなんて………」

そしてセルゲイの説明を聞いたロイドは大声で叫び、エリィは表情を青褪めさせ、ティオは疲れた表情で呟いた。

「まあ、普通に考えたらそうなるな。しかもその事件が起こった時期がリベールで結ばれた”不戦条約”が締結される最中の時期でな。幸いプリネ姫もその事を考えてか、公にしないように市長に掛け合ったお蔭で表沙汰にはならなく済み、当時の件に関わっていた連中の御咎めもなしになった。ま、そのお蔭で罪に問わられなくて済んだ連中が今でもまともに働けているって訳よ。」

「………プリネ姫の慈悲に感謝としか言いようがないですね………」

「…………………………」

(まさかここであの人達の話が出るなんて予想外ですね………)

説明を聞き終えたロイドは疲れた表情で溜息を吐き、エリィは複雑そうな表情で黙り込み、ティオは静かな様子でプリネ達の事を思い出していた。

「いや~、後で知った時、驚いたぜ。まさかメンフィルのお姫さんと刃を交えたなんてな。」

「え”。」

「ま、まさかランディ。あなた………」

そして陽気な様子で呟いたランディの言葉を聞いたロイドは表情を引き攣らせ、エリィは驚きの表情でランディを見つめ

「おう。俺も戦ったぜ。それも護衛や遊撃士じゃなく、メンフィルのお姫さん自身とな。………ま、結果は手を抜かれた状態で、完膚なきまで実力差を思い知らされてやられちまったけどな。ハハ………」

見つめられたランディは呑気に答えた後苦笑し

「……………………」

「笑いごとじゃないでしょう………プリネ姫が寛容でなかったら、あなた確実にプリネ姫を襲った事でメンフィル帝国に重い罪に問われていたわよ………?」

(まあ、当然の結果でしょうね………)

ロイドは絶句し、エリィは疲れた表情で溜息を吐き、ティオはプリネの強さを思い出し、納得していた。

 

「ま、そんな最大の汚点を残しちまって、警察も人気取りに必死な訳という訳だ。………だが、警察の基本理念は治安維持と自治州法の選守……市民へのサービスっていのは本来、二の次ではあるわけだ。だからこそ、警察内部ではそうした人気取りを快く思わない声も多くてな。『便利屋』だとの『ニセ遊撃士』だの『猿回しの猿』だの………まあ、早くも散々な陰口を叩かれてるってわけだ。」

「……………………」

「なるほど………色々と合点がいきました。」

「やれやれ、そんな部署で俺達を働かせようってか?」

「………正直、想定外でした。」

セルゲイの説明を聞いたロイドは口をパクパクさせ、エリィは疲れた表情で頷き、ランディは目を細め、ティオはジト目で言った。

「まあまあ、そう急くな。――――聞いているかもしれんが配属を辞退することは可能だ。」

「あ………」

「正式に配属された場合、やってもらう仕事は様々だ。今日みたいな、魔獣退治の仕事なんかも入ってくるし………落し物探しや、本部の手伝いなど細かい雑用も入ってくるだろう。―――その気がない人間に勤まるとはとても思えんからな。」

「「「「………………」」」」

「一晩、考える時間をやろう。配属を辞退した場合、他の部署に配属されることになるが今ならデメリットはない。全てはお前達次第というわけだ。

その後ロイド達はそれぞれの自室に行き、今後の事を考え始めた。

 

「………………」

自室のベッドに座ったロイドは数年前の自分、人間の姿のルファディエル、生前の兄―――ガイ、そしてガイの婚約者であった女性が映っている写真を見て複雑そうな表情で考え込んでいた。

「………何だかとんでもない場所に回されたみたいだな………遊撃士の真似事か………そんな事をするために警察に入ったんじゃないんだけど………」

独り言を呟いたロイドは再び考え込み

「………兄貴が所属してたのはたしか『捜査一課』だったよな。大事件や政治的・国際的な案件を一手に引き受けるエリート集団………やっぱり遠すぎるよな……………………(ルファ姉やギレゼルはどう思う?)」

溜息を吐いた後念話でルファディエル達に尋ねた。

(我輩は今の所の方でいいと思うぜ?他の所に行ったって、つまんなさそうだしな~。)

尋ねられたギレゼルはあまり興味がなさそうな様子で答え

(………ロイドの将来がかかっているんだから、そんなふざけた理由で答えないで。………私は貴方の進む道が間違った道でない限り、口を出すつもりはないわ………どうするかは貴方自身よ、ロイド。)

ルファディエルは顔に青筋を立てながらギレゼルに答えた後、気を取り直し、静かな表情で答えた。

「(そっか………)………他のみんなはどうするつもりなんだろう?あの3人………警察学校も出てないみたいだし、色々訳アリみたいだったけど………ちょっと話を聞いてみるか。」

 

その後ロイド達はエリィ達に話を聞く為に自室を出た………………

 

 

 

今回の話で驚いたと思いますがルファディエル、警察内で実は有名な存在です♪当然、遊撃士協会もルファディエルが有能な事は知っています♪なお、セルゲイの話にあった無抵抗の闇夜の眷属を討伐しようとした事件の詳細については大分前に書いた外伝”真の守るべきもの”を読めばわかります。………感想お待ちしております。


 
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