No.587814

がちゆり-櫻子♥向日葵-向日葵誕生日編-

初音軍さん

向日葵誕生日ということで書きました。櫻子の出方がどうか微妙ですがw不調のとこに鈍くなってる頭をフル回転させて作ったお話しです。少しでも楽しんでもらえれば幸い。向日葵誕生日おめでとう!

2013-06-16 08:31:51 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:801   閲覧ユーザー数:788

がちゆり向日葵誕生日編

 

 台所での洗いものをすませてタオルで手を拭いて部屋に戻ると

部屋に中になぜか櫻子が居てその上、ロープのようなもので胴体をぐるぐるに

まきつけられていた。もちろん腕も巻き込まれているから動けない様子だ。

 

「何をしていますの?」

 

 私は呆れながら櫻子に巻きつけられたロープを近くにいってみてみると

それはロープではなくラッピング用のリボンのように見えた。

しかも特大サイズ用のである。

 

 そして櫻子の自信に満ち溢れた表情。

 

「私がプレゼントになってやろう!どうだ、嬉しいだろう!」

「は?」

 

 なにがなんだか意味が不明で困ったわ。

この頭がかわいそうな櫻子は一体自分を縛り上げて何をしたいのだろうか。

それにこんな縛り方は一人じゃできないはずだけれど。

 

「あほらし」

 

 私はハァッと溜息を吐くとそれに反応するように怒り出す櫻子。

 

「なんだ、その反応は!せっかく私が向日葵を喜ばせようと」

「いえ、そんなの求めてませんし」

 

 いつも自分が思ったことをよく考えもせずに櫻子はよく行動を起こす。

だけど今目の前で起こっている変な状況が私のためであるのなら…。

 

「はぁ、気持ちだけは受けとらせてもらいますわ」

「なんだか、スッキリしないけど。それならいい」

 

 私はゆっくり櫻子のリボンのような何かを解きながら何をしてたかを

聞くと、驚くように振り返ろうとする。

 

 解く作業に入ってるのにこれをやられると邪魔で仕方ない。

 

「ちょっと動かないで!」

「ほんとに気づいてないの?」

 

「え?」

「今日向日葵の誕生日なんだよ」

 

 

 話の内容がごちゃごちゃになってしまい、整理するために少し考える時間を要した。

櫻子が言うには私の誕生日のために何かできないだろうかと考えて思いついたのが

これだとか。

 

 そしてリボンを楓に渡して暫くの間、楓に頼み込んだらしい。

なんでそんな必死になるのか私には一生理解に苦しむと思うけれど。

 

 楓も櫻子に色々やらされて可哀想ですわ。

私は我が妹の不運さに同情が芽生えていた。

 

 そして改めてあまりの馬鹿馬鹿しさに少し驚く反応を櫻子の前で表すと。

 

「え、じゃあさっきのはやっぱり…」

「だから私がプレゼントだって言ったじゃん。バカなの?」

 

「バカはあなたですわ」

「ぐぬぬ…」

 

「第一プレゼントのだったらこう全体的に包む感じでリボン結びとかしますでしょうに」

「え、こういう感じじゃなかったっけ」

 

「違いますわよ。これじゃ犯人に拉致られた人みたい…。猿轡もあれば完璧でしたわね」

「お、お前。目がちょっとおかしいぞ。こわいなぁ…」

 

 考えるように曲げた指を口元に当てて考えるように言うと、

それを見た櫻子は汗ばみながら怖がっているようだった。

普段強気な部分ばかり見せるからたまにはこういう反応も楽しく思えますわね。

 

「私、普通のプレゼントでよかったのだけど」

「金ねえもん」

 

「ですわよね…」

 

 哀れみの目を向けながら言うと櫻子は同じことを思ったようで

「哀れみの目を向けるな!」と怒りを撒き散らしていた。

 

 そのやりとりの中でいつから見ていたのか入り口の付近から、こそこそ覗いている

楓の姿を見たから私は楓を手で招いて来てもらった。

 

「櫻子お姉ちゃん。もっと自分を大切にしてね」

「うっ…申し訳ない…」

「まったく、こんな小さな子に説教されるなんて…」

 

 それから楓は友達と遊びにいくって言って家を出ていってしまった。

私達に気を遣ってくれたのかしら。

 

 玄関のある方向へ向けていて視線を櫻子に戻すと涙目になって口を尖らせながら

悔しそうに長ったらしいリボンを片付けていた。

 

「くそう、これ思ったより高かったのに」

「ふふっ、それだったらプッキーでも買ってくれば良かったですわね」

 

「わらうなぁ!」

 

 誕生日であろうとなかろうと、普段のこのやりとりが私はけっこう好きだった。

櫻子は私のこの気持ちに気づいているのかしら。

 

「くそう、おっぱいでかいからって余裕な態度とりやがってぇ」

「胸は関係ないじゃありませんの」

 

 ぎゃあぎゃあ煩く喚く櫻子をなだめながらも、櫻子が私のことを思って

してくれたのだと思うと胸が高鳴るような気持ちが高揚しますわ。

 

「そんなに悔しかったんですの?」

「そりゃ寝る時間惜しんで考えてたんだから」

 

「でもすぐ寝れたのでしょ?」

「まぁな」

 

 ドヤッと得意げに笑う櫻子を見て、私は高鳴る気持ちを抑えるのをやめて

櫻子に近づいていく。

 

 すぐ傍まで来たときにようやく櫻子は私の存在に気づいた。

 

「だったらこれだけでいいですわ」

 

 言って相手の返事を待たずに私は櫻子の頬にキスをした後、驚いて振り返った

櫻子の唇に口付けをすると、櫻子の顔はみるみる内に赤くなっていった。

 

「なっ・・・!」

「櫻子からのプレゼントはこれでいいですわ」

 

「私は許可してないぞ!」

「いいじゃないの。減るもんじゃなし」

 

 櫻子は私の言葉にカッとなって思い切り立ち上がるとふらついて倒れそうになっていた。

 

「ちょっと、大丈夫ですの?」

「うーん、朝からちょっとふらふらしてる。ただそれだけ…」

 

「それだけって…」

 

 私は嫌な予感が過ぎって急いで櫻子の額に手を当てると、すごく熱く感じる。

速やかに体温計を取り出して櫻子に測らせた。

 

「38℃って…」

「ほぇ?」

 

 熱があるのがわかって今度は私が自分の唇に手を当てて震えていた。

キスしたのだから当然…。今櫻子と接触してドキドキと体の熱さを覚えたのだが

もしかしたらこれは…。

 

 

「ただいま、お姉ちゃんたち~」

 

 玄関から楓の声が聞こえてパタパタと走ってく音が聞こえる。

そして私達のいる部屋で止まると悲鳴にも近い声が聞こえた。

 

「きゃ、お姉ちゃんどうしたの!?」

「あ、楓…」

 

 妹が見た光景はどれほどのものだったろうか。姉たちが弱々しく項垂れているから

何事かと思って玄関に向かって叫んでいた。

 

「お母さん~!」

 

 その後、別部屋に布団を引いて仲良く寝かされる私達。

ふわふわとしてはっきりしない意識の中。布団の中で私は櫻子の手を

探していると櫻子が途中で気づいて私の手をしっかり掴んでくれた。

 

「ありがとう…」

「え?」

 

 私は櫻子を見ないで天井に向きながら小さい声でそう呟いた。

風邪がうつって散々だったけど、本気でプレゼントを考えてくれてたのは嬉しかった。

 

「風邪で頭がぼやけてるから言ってるだけだから。今の内に言ってるだけですわ」

「うん…」

 

 小さく頷く櫻子。風邪を引くのがわかると途端に大人しく弱々しくなるところが可愛い。

胸が打つ鼓動が煩いのは本当に風邪だけなのだろうか。だけど、言えると思った今なら

櫻子に伝えられると思い切って話しかけた。

 

「もらったプレゼント二つ。風邪と・・・」

「嫌味か!」

 

「ふふっ、あとは櫻子をいただけたわ」

「向日葵…」

 

「ずっと前から思っていたけれど、私は櫻子のこと好きみたいですわ」

「…」

 

「櫻子?」

 

 言い切った後、返事が怖くて目を瞑っていたが。一向に返事が戻ってこなくて

私は恐る恐る櫻子の顔を覗き込むと、小さな寝息を立てて櫻子は眠っていた。

 

「もう、せっかく言えましたのに…」

「スー…スー…」

 

「仕方ないですわね」

 

 だるくて熱く重くなった体を起こしてもう一度、櫻子の唇を私の唇と重ねた。

いつもと違う匂いと感覚に頭をクラクラさせていた。

 

 寝ようかと思って起こした体を布団に沈めると、寝る前に横にいる櫻子を見て

目を瞑った。眠りに就く前に気のせいだろうか、

櫻子の頬が赤くなっていたような気がした。

 

 

「待ってよ~向日葵!」

「早くしないと遅刻しますわよ」

 

 慌しく訪れる日常。一日しっかり休んで養生して治して。

私達は何も変わらないままいつもの日々を迎えていた。

 

 いや、正確に言えば少しは変化してはいた。

先に前に歩こうとする櫻子が私を抜き去る際に手を掴んで引っ張る。

 

 その状態で私は熱にうなされて出来なかったことを歩きながら思い出していた。

頭の中で指を折って数えるようなイメージで。

 

(私は櫻子から、風邪と櫻子自身をもらった。ついでにキスも…)

 

 でもあの日の出来事を櫻子は覚えているのかは定かではない。

何せこちらが話を振っても無視するような形で歩いているのだから。

 

(お返ししないといけないですわね。今度クッキーでも作っていこうかしら。

次の勉強会の息抜きのためにも)

 

「向日葵、何か言った?」

「いえ、別に…」

 

 声にでも出ていただろうかと一瞬びっくりするが、内容は櫻子には聞こえなくて、

私がぶつぶつ言ってることがもどかしかったのか。いきなり私の方に向き直って。

 

「…!もう!」

「どうしましたの、急に」

 

「私も好きだよ。好きに決まってるじゃん。じゃなかったらこんな長く付き合わないよ」

「櫻子・・・」

 

「もうほんとに行くよ!」

「えぇ」

 

 私達は互いの手を取って歩き出す。これは何も今のことじゃなくて未来へも続いて

いそうで安心できた。

 本当にダメな子で疲れることもあるけれど、本当の私が出せる唯一の子だから。

 

「本当に…色々大変だったけれど、良い誕生日でしたわ」

 

 私は櫻子の好きという言葉を頭の中で何度も何度も再生させて

幸せな気持ちに浸りながら今日という日を生きていく。

 

お終い


 
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