No.587726 超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編2013-06-16 00:25:18 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:735 閲覧ユーザー数:697 |
「そんな……バカな……」
目の前の現実に信じられないように呟く中年がソレに近づいた。
そいつの名前は、サンジュと言って、俺達が相手をしたロボットを作った会社の代表取締役だ。
今日は、ラステイションの企業達が日々の技術を限られた時間の中で傑作を造り、展示する総合技術博覧会という祭りごとだったはずだ。
その会場は、もはや原型を留めていない。
意図的に暴走するように設定されていたアヴニール製のロボットの暴威は、他の企業が作品達を木端微塵に破壊尽くし、会場そのものもミサイルや光学兵器なのでボロボロになっている。酷いその一言だけでは表現できないほどの惨状が広がっていた。
「勝率99%がなぜ……!?。イレギュラーだった黒閃の戦闘パターンも小娘共の戦闘データも積み込む徹底的にシュミレーションした。例え我が国の女神が加わったと言っても、ラステイション全ての技術が集約された。このハードブレイカーが負けるはずがない……なのに!!」
両手、両足を切り裂かれエネルギー不足で人形と化したロボットにサンジュが”ありえない”と何度も呟いていた。
「……てて、ありがとう」
「怪我は大したことなかったです」
後ろでは、サンジュを運んでくれたシアンがコンパの治療を受けていた。
俺達が倒したロボットが暴れた際に吹き飛んだ機材が肩に当たったとか、傷はそれほど深くはなく本人の顔色も良かった。
「久しぶりにすっごく疲れたぁぁ……」
「はいはい、お疲れ様。ネプ子、かっこよかったわよ」
「わぁーいーー………」
変身を解除したネプテューヌはあの謎の吸収攻撃が効いたらしく覇気が感じられない声で目を擦っている。
アイエフも傷を負ったが、既に治療済みだ。俺は背中を思いっきり斬られたが、何事もなかったように傷は存在しなかった。
「……アヴニールもこれで終わりね。……一人じゃ無理……だったわね」
戦闘の疲労にお疲れムードのネプテューヌチームから、滅茶苦茶になった会場を見ながらため息を吐いているノワールに視線を移した。
「………あいつ、あの夜天 空という奴は、すごかったわよ」
「……どういうことだ?」
神出鬼没、性格は良くわからん、ただ容姿は超絶美人のあいつが一体何をしたんだ?
「ロボットが暴れ始めて、民衆が大混乱の中であいつは突然そこにいて、小さな子供や老人を的確に安全な場所へ誘導していたのよ。正直言って、あんな状況であそこまで冷静に対処するのは、私でも無理かもしれなかったわ。その後も無差別に暴れるロボットと非難活動を両立させていたのよ?……正直、あの時はあいつの背中を見た時、女神かと疑ったわ」
恐怖は伝染する。兵器だとしても、まさか暴走するとは思ってなかったロボットが突如、無差別破壊をすれば人々はその存在を恐れ慄き、震えることしか出来ないだろう。
そんな、混沌とした状況を救う存在、人の意思を操り総べた空は確かに、この世界の神ーー女神と思うかもしれない。
「これでも色々と努力してきたつもりだったけど、あんな奴が、上がいるのね。世界は広いわね」
「……ノワール」
「弱みなんて、出さないわよ。……私は女神だから、女神として人々が信仰してくれているかぎり、私は女神として在り続けるわ」
凛々しく、その眼は自分の弱さと未熟すら飲み込むほどの気合に満ちていた。
ありのままの現実を受け止め、それに折れることなく更なる成長の糧とするその姿勢のノワールはとても輝いて見えた。
「くはははははははは!!」
「……サンジュ?」
先ほどまで、地面に手と足を付けてブツブツと呟いていたサンジュが立ち上がり服から何かスイッチのような物を取り出した。
「自爆スイッチだ……。ここら一体は、吹き飛ぶだろうな……!!」
理性を失ったように、狂ったように、サンジュの手には赤いスイッチが握られていた。
サンジュの足元に倒れているロボットの顔部は、息を吹き返したようにライトが点滅していた。
「なんていうか……この展開はすっごい、ベタだよね」
「ネプ子……あなたよくこんな状況でそんなことが言えるわね……」
「お、落ち着くのです!そんなことしたら、サンジュさんも一緒に巻き込まれてしまうです!」
「黙れ、小娘共!!!」
サンジュの叫びにコンパは、小さな悲鳴を上げた。
直ぐにネプテューヌ達の前に立つが、サンジュが持つボタンが目に入る。自爆ボタンを握っている手は震えていた。
「夢を長年努力を積み重ね、自分の手で作り出した企業は、一度のミスで全てが終わった……。私は自分の手で造り出した物はすべて自分の手で壊してしまったのだ!!。……人間はどんなに努力しても結局、失敗する。ならば、失敗のない機械に委ねる未来こそ正しいのだ!なぜ、それが分からない……!?」
自分を責めているような、嘆いているような、言葉にふとアヴニール本社でこの事件を影から操っていたガナッシュの言葉が脳裏に過った。
ーーー事業に失敗した企業に目星を付け………
その事業に失敗した企業を立ち上げたのは、目の前のサンジュだったんだ。
こいつには、夢があってそれを自分の手で叶えようとした。……だけど、ミスをしてしまい信用を失った。路頭に迷った時に思ったことは、自分は誤っていた……人間など、どうせ失敗する生き物なのだから、間違えることがない機械に任せてしまえーーー、それが今のサンジュなんだ。……同情なんて、するつもりはない……けど、お前は!!
「………お前の言いたいことも分かる」
名乗りを上げようとしたとき、口を動かしたのはシアンだった。
「俺も小さな企業の社長だ。いままで失敗して、お客さんに迷惑をしてきた。どれだけ努力しても結局失敗することもあった」
「なら……!!」
「けど、やめられないんだよ。物作りって奴は」
「ーーーー!!」
物作り、そのキーワードにサンジュの震えていた手が止まった。
「汗水垂らしながら、心血を注いで、時には仲間と激突しながら、苦悩しながら作り出した一作ーーーそれが誰かの役に立っている。誰かの助けになっている……そう思った時、すげぇ感動するんだ。心の底から良かったと思えるんだ。その楽しみを
「……所詮、売れなければ、完璧でなければ……」
「確かにそれは、そうだな……それじゃ夢がないじゃねぇか。夢はいつだって人の手で叶える物だと思っているぜ?」
「夢だけでは、なにもできない!」
「夢と現実を違っても、夢がなきゃ、現実は変わらない!!」
激動する声に、遂にサンジュはボタンに力を込め始めた。
サンジュの瞳は、現実から背ける目だ。夢をあきらめた目だ。
「紅夜、ぶん殴ってやれ!!-------って!!」
「……ああぁ!!!」
シアンの言葉に最後の力を込めて地面を蹴った。そしてシアンから伝わった言葉と思いを拳に込めて
「---
サンジュ目掛けて、振り下ろした。
◇
ーーーこの後のことを話そうか。
紅夜の拳は見事にサンジュを殴り飛ばした。自爆ボタン事ね。
そして、この後に駆けつけたラステイションの教院派にサンジュの身柄は確保され、紅夜たちたちは事情質問の後、解放され、ブラックハートにお礼がしたい後日会う約束をしてその日は宿でぐっすり寝ていた。
そして、次の日、紅夜は多忙の日々より解放されたことを喜びながら携帯を開くとそこには着信102件、メール着信256件と表示されていたんだ。
うん、過保護は怖いよねー。なにするか分からないから。
そんなこんなで紅夜は大慌てリーンボックスに帰る準備をしてノワールと短い会話を後(紅夜が急いでいたので半強制的に紅夜が自分のメールアドレスを書いたメモをノワールに渡していた)、ネプテューヌも一時離脱をなんとか認めてもらい列車に乗り込んでリーンボックスへ向かっていた。
僕は、ハードブレイカーと紅夜チームを観戦しながら(流れ弾を弾きながら)見ていたけど……ダメだね。分かっていたことではあるが、ほぼ全ての力を失っている紅夜を見ているとため息が出る。
でも、それでも、ゲイムギョウ界の女神より強いのは、目に見えていた。
この世界において、女神とは世界の頂点に立つ存在だ。その上を行くことはそれがどんなものであれ悪になってしまうのだ。
………はぁ、なんで紅夜はこの世界に来たのだろうか?
確かに、他の世界よりは安全で、快適で、平和だ。逆に言えばそれだけだ。
僕の管轄に入ってきたのだから、なんとか対処しないと、紅夜の体の中ーーー正確には『((死界魔境法|ネクロノミコン・ディザスター)9』の核である『アザトースの種子』……あれが咲けば、それだけでこの世界は破滅する。アザトースという存在は、この世界の器に入りきらないのが理由だ。
今日も監視カメラを飛ばして、紅夜の様子を観察、観察……勘違いしないでね。これはストーカーではなく、立派なお仕事なんだから!………誰に向かって言っているんだろう僕……。
とにかく、この事件の首謀者ガナッシュ、アヴニールの社長サンジュは監獄行き、世間ではアヴニール事件として広まっている。女神の存在がいるにも関わらず不安が充満してしまった。っで、そこで僕の本当の仕事が始る訳だ。
「これまた……増えたね」
見える景色は、鮮血のような真っ赤な空、広がり大地は魑魅魍魎の群れで蠢いている。
ここは人の『負』が集まる場所、女神が人々の希望を集める柱なら、ここは人々の醜い感情が集まる世界。
さて、一つネタバレをしよう。実はね、モンスターは女神でしか殺せないだ。
うんうん、どこから聞こえるね『物語で紅夜はバッサ、バッサ切り裂きまくっているじゃん』とね。実はね、紅夜やコンパ、アイエフ達はモンスターを倒せてはいる……けど、そのモンスターの魂までは殺せていない。
この世界は、そんな憐れで、邪悪で、人だったことすら忘れるほどの暗黒思考がモンスターの生命の元なのだ。
女神だけが、そんな魂魄を浄化できる。消し飛ばすことができる……つまり、紅夜達のしていることは立派に見えて、実はその場凌ぎでしかない。……これを本人が聞けば、酷い顔になるんだろうな……デペアは既に気づいていそうだから、紅夜もいずれこの真実に触れてしまうのは時間の問題だ。
「………さて」
モンスターを消滅できるのは、女神の力のみ。
そして僕の手には、女神の力の結晶、シェアクリスタルが握られている。
人間には出来ない、僕だけの特権。シェアクリスタルを握り砕いて、その欠片はこの醜悪な世界を照らすように輝き始めた。
僕のその中央で、静かに聖句を唱えた。
「世に福音に満ちることを願い。
世に禍音が満ちることを憎む。
虹神の骸殻にして理を掴み、汝の名を世界に示す。ーーー
砕けれたシェアクリスタルは更に輝き始め、形を造った。
プロセッサユニットーーー女神が信仰を形にして身に纏い自身を強化する戦闘アーマー。
女神の力を元を糧に、ゲイムギョウ界の女神属性を一時的に得ることで、この姿へと昇華することができる。この姿ならモンスターを問答無用で浄化できる属性を得ることが出来た。
「凱旋の始まり」
唱えるように、宣言するように、バックプロセッサを手を広げる。
大地を覆い尽くすモンスター。飢餓特有の獰猛な目つきは、この世界唯一の光に気づいたのか、咆哮を上げた。
互いに喰いあっていたモンスターも声を上げる。まるで世界が女神と言う存在に憎悪しているように、それに僕は笑顔で答える。正しき世界の在り方に喜びを感じながら、剣先をモンスターに向けて宣教師が聖書を読むように、明るく希望溢れた声音で、
「ここには。
女神の加護も、
女神の慈悲も、
女神の守護もない。
絶望に枯れ果てろ亡者達。
殺戮に溺れろ狂える殺人達。
口が裂けるほどの哄笑を響かせろ道化師達。
ここは、『冥獄界』ーーーすべてが許される紅夜の世界だ。」
さぁ、
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その26
今回の話でラステイション編は終わります。