「師匠、本当にやるんですか?」
みんなの避難が終わりいつでも始められるといったときネギはエヴァンジェリンにもう一度確かめた。
「当たり前だ。今更何をいっているんだ。まぁ、最初はあの小娘にけしかけられたからだったが、今はお前がどれほど成長したのか私の全力を持って試してみたいというのか本音だな」
「……師匠」
「ふん、まぁ、ある程度は加減してやるよ。では……いくぞ!」
「はい!」
そう言うとエヴァンジェリンの姿は消え、同時にネギの姿も消えた。
次の瞬間、二人がいた場所の丁度中央のところで音が弾けた。その一瞬、二人の姿が見えた。
二人の魔力の籠った拳と拳がぶつかり合い、それにより弾けた魔力が衝撃波となって周囲へ広がる。
しかしそれで終わりではなかった。拳をぶつけ合った二人は瞬時にその姿を消し、そしてまた別の所で力の衝突が起きた。
何が起きているのか、それを見ている学生や教師陣にはわからなかった。
こちらの世界においてかなりの修羅場をくぐってきたと自負しているはずのコルベールやオスマンでさえ、他の者ほどではないにしろ二人の動きに目が追い付いておらず、ただ超高速で移動し攻撃をし合っているのだろうとしか知ることができなかった。
これでは学生たちの勉強になるかと、オスマンは学生たちを横目で見てみたが、どうやらそれは杞憂だったようだ。
あまりの速さに学生たちは、いや他の教師陣にとっても目の前で何が起こっているかなどわからない。しかし目の前で起きている常軌を逸した戦闘の雰囲気に息をのみ、唾をのみ、目を見開いて、心を高ぶらせ、その場を動けずに本能でその戦闘を感じていた。
目では負えないほどの速さであるにもかかわらず、それでも見逃さないようにと彼らは今、無意識のうちであろうが目の前の戦闘にこれまでにないほどの集中力を費やしていた。
これは予想外に生徒たちにとっていい刺激になったと内心笑みを浮かべる。
あちらこちらで起きる衝突音、それに間を置かず生まれてこちらを襲ってくる衝撃波。
そして、その時々でこれまたあちらこちらで起きる魔法同士の衝突による爆発。このような状況で、不覚にもその魔法同士の爆発が祭のときに行われる花火のようで綺麗だと思えてしまった。
しかしそれも長くは続かなかった。
次の衝突のあとエヴァンジェリンの攻撃に耐えきれず、ネギが弾き飛ばされてしたった。
「くっ!」
「どうしたボーヤ。まだまだこれからだろう? それともお前の力はこの程度だったのか?」
そう言うエヴァンジェリンはネギを嘲笑っているようにも見えた。
「ま、まだまだこれからです! “魔法の射手 光の5矢”!」
ネギから魔法の矢が打ち出される。
無詠唱の分威力は幾分落ちるが速攻で打ち出せる為、この世界の魔法使いなら不意を打たれ攻撃を受けてしまっていただろう。
……しかしそれはあくまでもこの世界の魔法使いならばの話だ。
「ふん、“魔法の射手 闇の5矢”」
つまらなそうに同数の魔法の矢を出してネギの矢を相殺する。
「ボーヤ、こんなに距離が離れていて不意もついてないのに、その程度の魔法の矢が当たる訳ないd『シユッ』」
ネギは瞬動で一瞬でエヴァンジェリンの側に移動すると、
「“魔法の射手 光の6矢”!」
左手をエヴァンジェリンの正面に構え、無詠唱の魔法の矢を打ち出した。
「ふ、甘い!」
エヴァンジェリンはサッとネギの側に移動し、強烈な肘打ちを与えて距離を取る。
地面を何度か転がるが、手のひらで地面を打ち体を浮かして体勢を立て直す。
「まだです! “魔法の射手 光の9矢” “収束”!」
右手に魔法の矢を装填する。
さらに瞬動を使いエヴァンジェリンの目を欺こうと縦横無尽に動きまわる。
エヴァンジェリンはその場を動かない。
その場で目を細めて、じっとネギが攻めてくるのを待っているようだ。
そして数度の瞬動を繰り返し、ネギはエヴァンジェリンの背後を取る。
エヴァンジェリンの視線は先ほどと変わらず前を向いていた。
(今、僕が無詠唱で出すことのできる最大数。これをもろに受ければいくら師匠だって少しは効くはず!)
ネギは魔法の矢が込められた拳をその小さな背中に全力で突き出す。
「“桜華崩拳”!」
これが今のネギにできる最大の一撃。
エヴァンジェリンはまだ背を向けていてネギのことが見えていない。
これなら決まる、そう思った……しかし。
(ふむ、そう来るか。だが……)
瞬動で攪乱しようと考えていたネギであったが、その動きは歴戦の魔法使いであるエヴァンジェリンにはしっかりと見えていた。
そして自身の背後に回った時に拳を叩き込んでくるだろうことも、これまでのネギとの修行からすでに予想できていたこと。
エヴァンジェリンは背後の気配を読みながら、自身の背に拳が当たる直前に『クルッ』と回転しネギの拳を受け流す。
「え!?」
「はっ!」
「っ!? ぁぐっ!」
決まると思っていた攻撃、それが外れてネギに一瞬の隙がうまれた。
エヴァンジェリンはネギのその隙だらけになった背中に魔力を込めた拳を打ちつける。
もちろんエヴァンジェリンは全力ではなかったが、背中に拳をモロに受けたことと瞬動の勢いに乗っていたことが災いした。
ネギは地面に落ちると勢いにのって何度も転がり、そして校舎にぶつかったところでやっと止まった。
「……うむ。まぁ、今の連携も悪くなかったぞ? 死角をついたのも有効的だ。しかし私に一撃を与えるにはまだまだ技の練度が低く、策も浅かったな」
「げ、ゲホッ、ゲホッ……くぅ……」
エヴァンジェリンはよろよろと起き上がってくるネギを見ながら言った。
「それでは、今度はこちらから行くぞ。しっかりと対応しろよ、ボーヤ。でないと……死ぬかもな」
まだ満足に動けないネギにそう言って不適な笑みを浮かべる。
エヴァンジェリンは飛び上がりある程度の高さまで来ると呪文の詠唱を始めた。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 闇の精霊29柱 集いきたりて 敵を切り裂け “魔法の射手 闇の29矢”!」
エヴァンジェリンから29本の闇の矢がネギに襲いかかった。
「く! “風楯”!!」
ネギは痛む体を必死に動かし闇の矢から逃れ、それでも当たりそうな魔法を風の楯を出現させて対応する。
しかし、ネギは失念していた。
今のエヴァンジェリンは封印が解かれており、以前よりも魔法の矢の威力がかなりあがっているのだ。
しかも今回はさっきまでと違いしっかりと呪文を詠唱された魔法。
……だから
『ドォォン!!』
数本の魔法の矢が同時に着弾する。
その瞬間、予想以上に強力なネギに猛威を振るった。
出現させた風の楯はその威力にあっけなく砕け、殺しきれなかった衝撃がネギに襲いかかりまた地面を何度も転がる
「……ぅ……うぅ」
「……それで終わりか? ふむ、呆気ないな。まぁ、いい。これで終わりだ」
地面に倒れボロボロのネギを見て、エヴァンジェリンはトドメの一撃を与えるため呪文を唱え始めた。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 来たれ 虚空の雷 薙ぎ払え “雷の斧”!」
高密度の雷が発生し斧の形となった。
エヴァンジェリンはそれを起き上がろうと足掻くネギに容赦なく振り下ろす。
『ズドォォォン!!!』
「ふ、終わったな。……おい木乃香、手遅れになる前にボーヤを治してやれ」
と、エヴァンジェリンは振り返ったがそこには木乃香はいなかった。いや、木乃香だけでない。アスナと刹那もいなかった。
「?」
「どこ見てるのエヴァちゃん!」
「!?」
エヴァンジェリンが振り返るとアスナがネギの前に立ちハマノツルギ(完全版)をかまえていた。どうやら先ほどのエヴァンジェリンの魔法はアスナにより打ち消されていたようでダメージを受けた様子はない。
「あ、アスナさん!?」
「アスナさんだけではありません」
声の方を向くと刹那が純白の翼を背に、愛刀をエヴァンジェリンに向けかまえていた。
「刹那さんまで」
『ポァァン』
「!?」
なにやら暖かく、心地の良い光に包まれたかと思うと体中から痛みが消えていった。
「ウチもいるえ、ネギくん」
振り向くと木乃香が扇を両手に持ってネギの近くにきていた。どうやら木乃香のアーテイファクトの力による者のようだ。
『ギュッ』
木乃香はネギを包み込むように優しく抱きしめた。
「よかった、ネギくんが無事で」
「木乃香さん……」
そんなネギ達の様子を見ていたエヴァンジェリンはドスのきいた声で言ってきた。
「お前達、どういうつもりだ?」
しかしそれくらいで気後れするアスナ達ではない。
「どういうつもりも何も、どう見たって力の差は歴然じゃない。こんなの特訓なんて言えるものじゃないわよ」
「そうですね。それに特訓なら私達も一緒に受けさせてくれるべきです。せっかくエヴァンジェリンさんが本気状態になっているんですからね」
「そやね。そうやなかったら不公平やもんなぁ」
「……いいだろう。お前達4人とも相手をしてやる。まとめてかかってこい!」
アスナ、刹那、木乃香の言葉にエヴァンジェリンは顔をこわばらせていた。
「皆さん、どうして」
「言ったでしょ? 不公平だって」
「まぁ、本気になったエヴァンジェリンさんとは戦ってみたいですし」
「それに、ウチらはパートナーやろ? ネギくんが戦うんやったらウチらも一緒に戦うんは当然や!」
「皆さん……そうですね。皆さんの力、僕に貸してください!」
「「「ええ(喜んで)(もちろんや)!!!」」」
◆◆◆◆◆
アスナ達がネギを助けに出る前の観客席サイド。
ネギ達からかなり離れた所で見ている観客達(生徒・先生)はネギとエヴァンジェリンの戦いを見ていて呆気にとられていた。
「なんなのよ、これ」
その中でルイズは誰にともなくそうつぶやいていた。それもそうだろう。こちらの世界でこれほどの戦闘を見ることなどないに等しい。スピード、魔法の威力、体術、どれをとってもこちらの世界で比較にできる物をルイズは知らない―――魔法の威力なら虚無・先住魔法ならタメはれるかもしれないが―――。
……だから
「ネギくん、最近動きに一段とキレが増してきたんやないかな?」
「はい。瞬動も完璧に物にして今では縮地レベルにまできていますね」
「そやね、ネギくんいつも頑張ってるもんなぁ」
「そうね。でもエヴァちゃんもさすがよね。まだまだ余裕ありげだし……って、あ、エヴァちゃん少しずつ力だしてきた」
隣にいたアスナ達が平然とそんなことを言っているのが信じられなかった。
「あ、あんた達、なに平然と話してんのよ!? それにあんなに速いのにどうして目がついていけんのよ!」
「どうしてって言ったって、いつもやってることだし、ねぇ?」
「はい」
「ウチはなんとかついていけるって程度やけどな」
(う、うそ、木乃香まで!?)
ルイズは驚きを隠せないようだ。見るからにルイズよりとろそうな木乃香がルイズでも目で追えないのに―――実際ルイズには消えていて、所々で衝撃が起きているようにしか見えていない―――何とかという程度でも追えているということが信じられないのだ。
「あ!」
その声に顔を戻してみるとネギが吹っ飛ばされて転がっているところだった。
「ネギくん! ……せっちゃん、アスナ!」
木乃香の呼びかけに2人は木乃香の言いたいことを理解して頷き、ネギ達の方に歩きだした。
「ち、ちょっとあんた達! まさかとは思うけどネギを助けようっていうの? 無茶よ! あんな戦いに加勢しに行くなんて!」
ルイズは3人のしようとしていることを理解し引き止める。しかし
「大丈夫よ。こんなのいつものことだしね」
「それにネギ先生だけに戦わせるなんて出来ません」
「そうやよ。なんたってウチらは……パートナーなんやから!」
「!?」
「「「アデアット!」」」
その言葉により出現した装備をまとい、アスナ達はネギのもとに駆け出した。
「……パートナー? ……訳わかんない」
ルイズは彼女達の言葉を行動をまだ納得できないでいた。
◆◆◆◆◆
「それでは作戦を説明します」
アスナ達はネギの言葉に耳を傾けた。アスナ達に作戦が告げられる。
「お前ら、戦場で敵が悠長に待っていてくれると思うなよ!!
リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 氷の精霊19柱 集いきたりて 敵を切り裂け
“魔法の射手 氷の19矢”!」
エヴァンジェリンから氷の矢が放たれる。
「皆さん、お願いします!」
するとネギ達はそれぞれが行動に移った。作戦は無事伝え終えたようだ。
「やぁぁ!!!」
「神鳴流奥義 斬空閃!」
アスナはハマノツルギで氷の矢を打ち消し、刹那は剣から気を飛ばして破壊した。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 風の精霊51柱 集いきたりて 敵を射て
“魔法の射手 雷の51矢”!」
アスナと刹那が防いでいる間にネギが呪文を完成させて雷の矢を放った。
(呪文は間に合わんか)
「魔法の射手 氷の11矢!」
無詠唱で氷の矢を放ち、直撃と誘爆により雷の矢を半分ほど打ち消し、高度を少し下げ残りの矢をかわした。
「まだです!」
「むっ!」
虚空瞬動により刹那はエヴァンジェリンの上に移動していた。
「神鳴流奥義 “極大雷鳴剣”!」
まさに落雷のごとき一撃がネギの雷の矢を巻き込みさらに威力を上げエヴァンジェリンに振り下ろされる。
「何の! “エクゼキューショナーソード”!」
振り向きざまにビーム状の剣を出現させ、刹那の攻撃を受け止めた。
……しかし
「私がいることも忘れるんじゃないわよ!」
「くっ!」
こちらも瞬動で移動してきたアスナがハマノツルギを振るいエヴァンジェリンの“エクゼキューショナーソード”を破壊した。
「今よ、刹那さん!」
これで自分の役目は終わったとばかりに、アスナは虚空瞬動で刹那の攻撃範囲から離脱した。
「はぁぁ!!!」
『ゴォオォォン!!!!!』
刹那の渾身の一振り。
そして、直撃による爆発。
流石に戦闘不能にまでは至っていないにしろ、十分にダメージは与えたはず。
「こっちだ!」
しかし、背後から聞こえるその声に振り向くと若干ボロボロになったエヴァンジェリンが手の平を刹那に向けていた。
「“氷瀑”!」
振り向いた刹那の腹部に当てられた手の平から氷属性の爆発が起こる。
不意打ちの直撃を受けた刹那は、悲鳴を上げることもなく意識を失い地面へと吹き飛ばされた。
「……一瞬ヒヤリとさせられたよ。なるほど、確かにお前たちは確実に強くなっているようだ」
それは純粋にネギ達を称賛する言葉だった。
刹那の攻撃が直撃する瞬間、瞬時に“氷楯”を作り出してダメージを軽減した。封印解放状態であるため、無詠唱であってもそこらにいる魔法使いが使う呪文詠唱後の魔法の楯以上の効果がある“氷楯”の防御力は高く、刹那の威力が増幅された“極大雷鳴剣”の威力を大部減少させた。
そのため、ボロボロである外見に比べてダメージとしては大したことはない。
しかし、エヴァンジェリンに与えたダメージ以上に、エヴァンジェリンに対して攻撃を当てたネギ達のコンビネーションに素直に称賛した。
さて、これで模擬戦は終了しようかと思い降下しようとしたとき、自分の体を何かが縛る。
「なに!?」
見ると、それは魔法の矢、それもネギが使う“戒めの風矢”だった。
「“解放”」
背後から聞こえた声に首だけで見ると、手の平を向けた状態でネギが自分の少し上空を飛んでいた。
そして、先ほどネギが放った「“解放”」の呪文により、遅延魔法が発動する。
ネギの周囲には嵐のように吹きすさぶ風、そして雷が迸っていた。
「これで決めます! “雷の暴風”!」
ネギから放たれた雷と風の奔流にエヴァンジェリンは巻き込まれ、そのまま地面に直撃する。
しかし、ただ直撃するだけでは止まらない。直撃してなお、これでもかというほどにネギの魔法はその場に流れ込んでいく。
数秒後、雷と風の奔流がようやく収まり、巻き上がった土煙も風に流されたとき、魔法が直撃した地面には巨大なクレーターができていた。
そして、その中央には先ほど以上にボロボロになり少なからず血が流れているエヴァンジェリンが、上空を浮かぶネギを見上げながらたたずんでいた。
あれほどの威力の魔法を受けて、この程度のダメージしか受けていないのかという周りのざわめきが聞こえてくる。
しかしネギは気づいた。エヴァンジェリンが周りにはわからないくらいだが息を乱していること。ネギが全力で放った“雷の暴風”は確かにエヴァンジェリンにダメージを与えていた。そんなことを考えているとエヴァンジェリンがネギに近づきながら話しかけてきた。
「封印が解けている状態の私に4人がかりとはいえ―――木乃香は実際なにもしてなかったが―――これほどのダメージを与えるとはな。お前達のコンビネーション、以前よりさらに磨きが掛かっているようだな」
ネギの前につき立ち止まるとふっと微笑んだ。そしてネギの頭の上に手をおくと
「フッ……まぁ、未熟な点は多々あるが、とりあえずは合格だ」
といい撫でた。
「師匠……ありがとうございました!!」
ネギはこれ以上ないくらいの笑顔を見せた。
……だが
『ギュゥゥゥ!!!』
「い、いたたたた!!! ま、師匠、なにを!?」
ネギがエヴァンジェリンを見ると彼女はいつもの不適な笑み浮かべてネギの頭を鷲掴みにした。
「ああ、確かに合格といった。しかしそれはアスナ達が手助けに入ってからのことだ。その前のあれは何だ! 私がちょっと本気を出した途端にあのザマとはな。あっちに帰ってからの特訓、覚悟しておけよ?」
「そ、そんなぁ。ま、師匠ぁ~~」
さっきまでまさに死闘を繰り広げていたとは思えない光景。集まってきたアスナ達はネギとエヴァンジェリンのやりとりを見て笑いあっていた。
周りの生徒、先生達はさっきまでの戦いの凄まじさから一転してこのどこかほのぼのとした空間に若干置いてけぼりをくらったかのような感情が生まれ、暫くの間呆然としていた。
◆◆◆◆◆
「みなさん、短い間ではありましたがお世話になりました」
エヴァンジェリンとの戦いの後、怪我を負った面々は木乃香に治療してもらいついに帰る時間となった。
「いや、ワシらは特になにもしとらんよ。それよりこちらこそいいものを見せてもらったよ。まさかあれほど凄まじい戦闘を見せてもらえるとはな。このハルケギニアでは、あれほどの戦闘などそうそう見ることは叶わぬだろう。生徒達にもワシら教師達にもこれ以上ないほどの刺激になった」
刺激が強すぎてショックを受けている人もいることは口には出さない。
「では、そろそろ戻るとするか。でないとあのジジイがぶっ倒れかねん。まあ、私としてはそれでも構わんがな」
「そ、そんなこと言ってはだめですよ、師匠!」
そう言うとネギはもう一度みんなの方に向き直りもう一度別れの挨拶をした。そしてルイズを見る。
「ルイズさん、次はちゃんとパートナーを呼び出せるといいですね。ひとりの先生としてあなたを応援しています」
「え、えぇ」
ルイズはネギのその純粋な笑顔に耐えることができず顔を背けてしまう。
「召還できてもその性格を直さなくちゃ召還した奴といい関係は築けないだろうけどね」
「な!? よ、よけいなお世話よ!」
「なによ! せっかく人が心配してやってるっていうのに!」
「……でも、アスナとやったらいいパートナーになれそうやな」
「ですね。どことなく二人とも似ているような気がしますし」
「「どこがよ!!」」
「……息ピッタリやん」
「「うぅ~」」
漫才にも似た会話にみんな思わず笑いがこみ上げてくる。これから別れの時とは思えない雰囲気だ。
「……名残惜しくはありますが、そろそろお別れです。師匠、お願いします」
「ああ、いくぞ」
そう言うとエヴァンジェリンはカシオペアを取り出しスイッチを押す。するとネギ達の体が光り始めた。
「皆さんのことずっと忘れません、さようなら!!」
そういい残し、そしてネギ達はこの世界から消えた。
「……行ったようじゃな」
「……はい」
そこにはさっきまでの愉快な空間が嘘のように、ただ静けさが残っていた。
◆◆◆◆◆
ネギ達が元の世界に帰ってから数日が経った。
あの騒がしかった面子がいなくなって寂しいとは思わないが、どことなく物足りなさを感じ日々を過ごしていたルイズ。
そのためかどうかはわからないが、今日再び行われるサモンサーヴァントは初めて行う時以上にとても待ち遠しく感じていたように思える。
そんな気持ちが自分の魔法に現れたのか、今回は失敗することなくたった一度で魔法が成功した。
……そして
「……」
「……」
「……えっと、ここはどこなんだ?」
「……ま、また、なの……?」
ルイズは頭を抱えてうずくまってしまう。
「??」
突然呼び出された“少年”は、何がなんだかわからないといったように、頭に?マークを浮かべていた。
First kissから始まる二人の恋のhistory……それが始まるはいつになることか。
~ The end ~
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はい、これでネギまとゼロの使い魔のクロスは完結を迎えます。
たった5話という短い間でしたが、お付き合いいただけた視聴者の皆様には感謝の念が絶えません。
それでは、最終回である第5話の本編をどうぞ!