イズマエルの一軒から今日は臨時休校となり、大半の生徒達は精神安定のため特別外出を許可されていた。本来ならば外出させるのは合理的ではないが状況も状況。それに一夏の件もあるため許可が下りた。
一夏は保健室で死んだように眠っていた。そんな一夏の様子を箒達と弾と虚は心配していた。
「一夏・・・・・」
「大丈夫だって。あいつは簡単に死んだりしない。」
「ねえ弾。」
「なんだ鈴?」
「あんたは知ってたの?一夏が・・・・」
「ウルトラマンであったことか?知ってたさ。と言っても俺も知ったのはつい最近だがな。」
「じゃあなんで教えなかったのよ!知ってんなら教えてくれたっていいじゃない!」
「・・・・・・・あいつから口止めされていたんだよ。」
「・・・・・・・え?」
「あいつは「時期が来たら皆に打ち明けるつもりだ」ってな。」
「じゃあアンタはそれを守ったとでも言うの?」
「・・・・・・ああ。それにあいつは言うといったら実行するやつだ。」
「・・・・・確かにそうですわね。」
「一夏の場合そうだし。」
「ならば仕方ないな。」
「それにしてもすごいわよね。「プロメテの子達」だっけ?」
「たった一日で一夏用の特効薬を作ってしまうなんてね。」
そこへ千冬たちと憐と吉良沢が入ってきた。
「一夏の容態は良さそうだな。」
「その様だね。彼はしばらくの間過度な運動は出来ないね。最も、ストーンフリューゲルがあったら完治するだろうけどね。」
吉良沢の言葉に虚は疑問を持つ。
「待ってください。それならどうして織斑君は体のアポトーシスが発生したんですか?」
「簡単なことだよ。今までビーストと戦いでほとんど休む暇がなかった。身体の細胞がそれに追いつけなくなってしまったんだ。それにストーンフリューゲルは傷を完治するだけであって細胞を回復する力はないんだ。それに本格的に直すのなら長い期間を必要とするんだ。最低でも1週間はかかる。」
『い、一週間!』
「ああ。まあ俺は使ったことがないからわかんないけどな。」
「君の場合はバイトがあったからね。急にいなくなったら心配されるしね。」
「あ、あの!」
憐と吉良沢に箒が話し掛ける。
「れ、憐さんは一夏がウルトラマンであることを何時知ったんですか?」
「ああ。あれは一夏がうちの遊園地にバイトしに来た頃だったな。こいつから話しかけてきたんだよ。その頃はウルトラマンとなってまだ間もない頃だったから色々と教えてやったよ。」
「と言ってもその情報は僕を通して話したんだけどね。」
吉良沢に千冬が話し掛ける。
「吉良沢さん、あなたは一体何者なのですか?球に私達の前に現れたり、世界の人と顔が知れ渡っているんですか?」
「そうですね。では簡単に話を進めていきましょう。僕は吉良沢優。憐と同じ施設で育った者同士です。」
「同じ施設?」
「ええ。世界的にも機密にされていました。僕はイラストレーターと言ってウルトラマンやビーストの出現場所がわかる能力を持っているんです。」
「どうしてイラストレーターと呼ばれたんですか?」
シャルロットが訊ねる。
「それに付いては俺が説明するよ。優は一度未来をイラストで描いたんだよ。それでイラストレーターって呼ばれたんだ。」
「最も、憐は未来を変えたけどね。」
『未来を変えた?』
吉良沢の言葉に一同疑問を抱く。
「憐は一度、施設から勝手に抜け出して海に行ったんだ。その時に憐は貝を拾ってきてね。それを僕に渡したんだ。それがこれだよ。」
吉良沢はポケットからタカラガイを取り出す。
「これをもらったことで僕の見た未来は変わった。」
「そうなんですか・・・・・」
「すごいですわね。」
「じゃ、じゃあもう一つ聞いていいですか?」
「なんですか、山田先生。」
「どうして私達の前に現れることができたんですか?」
「僕が得た新たな力です。僕自身の姿を別のところに移すことが出来るんです。最も、これは憐との時には使いませんけど。」
吉良沢の言葉にまたしても疑問を抱く一同。
「俺と優はテレパシーで会話ができんだよ。まあ、一夏とも出来るんだが今回はこいつのDNAが必要だったからな。」
「そうなんですか。」
その時千冬の携帯が振動する。
「はい。」
千冬は電話越しに会話をする。
「・・・・・・・その人の名前は?・・・・・その人だったら一夏の知り合いです。通してください。」
千冬は電話を切る。
「織斑先生どうかなさったんですか?」
「山田先生、すまないが玄関に一夏に用がある人が来ていますのでここまで招いてもらえませんか?」
「はい。わかりました。で、その人の名は?」
「弧門一輝だそうです。」
「弧門!」
憐がその名を聞いて驚く。ラウラが聞く。
「お知り合いですか?」
「ええ。彼はTLTの隊員でこの星の未来を変えたデュナミストだからね。」
「そ、そんなにすごいんですか!」
「ああ。弧門がいなかったら俺は今ここにいないくらいだぜ。」
「しかも彼は我々と関わっていく内に次第に心も体も強くなっていった。最初はリスのように怯えていたのが今では闘犬のように強くなっているよ。」
吉良沢の話しを聞いていると山田先生が弧門を連れてきた。
「こんにちは。弧門一輝です。」
「よう、弧門。」
「久しぶりだね、弧門隊員。」
「憐!それに吉良沢さんも!」
「どうしてここに?」
「彼がイズマエルと戦っているところをテレビで見てね。戦いが終わったすぐにお見舞いに来ようと思って。あ、これつまらないものですが。」
そう言って弧門は千冬にフルーツの入ったバスケを渡す。
「これはどうも。」
「それにしても彼頑張っていましたね。守りたいがために無茶をしまくって。まるで姫矢さんや憐みたいだ。」
「姫矢さんともお知り合いなんですか?」
楯無が訊ねる。
「ええ。あなた達はどうやって知ったんですか?」
千冬がネクサスによって今までの戦いの流れを聞いたことを話す。
「ウルトラマンが・・・・・」
「・・・・でもなんか納得できるな。」
「そうだね。それにさっき聞いた千冬さんの周りで起こったメフィストのことも弧門君と似ていますし。」
「メフィストが!」
「と言ってもそれは君と同じ大事な人がなったがね。」
箒が弧門にどういうことか聞く。すると弧門は口を紡ぐ。
「すみません。ぶしつけな質問をして。」
「・・・・いえ。ただ少し辛くて。俺が昔愛していた女性がいます。名前は山邑理子。遊園地で何度もあって付き合うようになっていたんだけど・・・・・・」
「どうかしたんですか?」
「彼女は僕と出会う前に死んでいました。」
弧門の言葉を聞いて千冬はマドカのことを思い出した。
「彼女は両親をビーストに殺され、溝呂木に理子を殺されました。溝呂木は主犯格に利用されただけと聞いていても少し許せない気持ちはあります。理子はダークファウストの姿で今まで戦っていました。俺は姫矢さんを殺そうとする彼女に銃を向け、放ちました。その瞬間だけ彼女は操られていなかった。でも・・・・・」
「彼女はノスフェルによって殺されました。彼女は彼を庇って。」
「・・・・・・理子は光となって消えました。でも彼女はいつも側にいます。」
その弧門の言葉に皆は感動し涙を流した。
「今は凪と一緒に過ごしていくつもりです。」
「そういや結婚していたっけ。」
『け、結婚!』
「シャルロットちゃんは知っているはずだよ。」
「え?」
シャルロットは記憶の中を探る。
「・・・・・・あっ!あの時!」
「思い出したかい?」
「はい!すっかり忘れてました。」
「仕方ないよ。」
「そうそう。人間ってのは短い期間の記憶を脳の奥底に締まっておくものなんだ。記憶を忘れたというのは間違いであって本来は覚えているんだが徐々に奥にしまっているため思い出せないのが本当なんだ。」
弧門は時計を見る。
「あっ!」
「そうした弧門?」
「そろそろ行かないと。これから少し予定が入っているんだ。」
「それじゃあ僕もここいらでおいとまするよ。各国首相に話を付けに行かないとね。」
そう言って吉良沢は消えていった。
「それでは。」
弧門は軽くお辞儀をして部屋を出て行く。
「お見送りします。」
弧門は山田先生と共に部屋を後にした。
「じゃあ俺も。一夏に伝えといてください。俺みたいだったって。」
憐は部屋を出て行った。
「なんだか・・・・・すごかったですね。」
「そうですわね。」
「一夏のために動いてくれる人がこんなにもいたんだね。」
「僕らもその仲間だよ。」
「そうだな。」
「でもこれからもっと大変になるわよ。部活動への貸し出しや雑務もあることだしね。」
「あ、あんまり無茶させないでね。」
「ん、ん・・・・・・」
「っ!一夏!」
一夏はゆっくりと上体を起こす。顔には痛いと出ている。
「無茶をするな。あの後の戦いだ。身体は相当ダメージが来ている。」
「わ、わかったよ。」
「それと・・・・」
「?」
ゴンッ
「痛っ!」
「これは私達の気持ちだ。」
「は、はい・・・・」
「全く。いくらなんでも今回ばかりは本当にダメかと思ったぞ。」
「本当ですわ!」
「今回は生き残れたからいいけど。」
「下手したら死んでいたかもしれなかったんだよ。」
「今後こんなことをしたらいくら怪我をしていても手を出すからな。」
「覚悟しなさいよ。」
簪以外の皆の威圧が一夏に迫る。
(こ、恐・・・・・・ビーストより恐いな。)
「わ、わかった・・・・」
「い、一夏君。」
「なんだ、簪?」
「一度倒れた手からまた立ち上がったけど・・・・・・どこにそんな力があったの?」
「ああ、あの時か。いやなんていうか・・・・・今まであったウルトラマンやウルトラマンになった人の声が聞こえてきたんだ。」
「それって・・・・・あの人たちのこと!」
鈴が驚きの声を上げる。
「ああ。皆して『進め!そして未来を掴め!』って言ったんだ。」
「あの人たちが一夏を助けてくれたんだね。」
「何言ってんだよ。皆だって俺の力になってくれたじゃないか。」
一夏の言葉に疑問符を浮かべる一同。
「ラフレイアのおかげでメタフィールドに穴をあけられた時だよ。」
『ラフレイア?』
「あ~・・・・そういやわかんないか。花粉を拭くビーストって言ったらわかると思うけど。」
『ああっ!』
「思い出した?あの時に皆を守ろうと思ったから俺は立ち上がれたんだ。」
「そっか・・・・」
「おい、一夏。」
「弾、それに虚さんも。」
「すっかり二人の存在を忘れたいたわ。」
「鈴おめえひでえな!」
「仕方ないじゃない。あんまりしゃべんないあんたが悪いんだから。」
「それを言うな!!」
「あはは・・・・で、何だ弾?」
「ああそうだった。さっきお前の先輩からの伝言。『俺みたいだった。』って。」
「あ~~。」
「なんでお前納得したんだ?」
「多分箒達は見ているかもしれないけど憐さんがネクサスだった頃にイズマエルと戦ったんだ。」
「あのビーストとか!」
「憐さんも身体がもはや死に掛けだった状態だったって聞いたぜ。その時にあの技を放ったって。」
「あの技って・・・・・・シュトロームソードとアローレイ・シュトロームが合わさった技か?」
「なんで弾が知ってんのよ。」
「いや前に一夏に聞いたら教えてくれたから。」
「ああ。あれはオーバーアローレイ・シュトローム。結構光を使うからそう何度も打てないんだ。」
「そっか。で?」
「で?」
「明日からどうすんだよ。吉良沢さんはしばらく過度な運動は禁止だって言ってたぜ。」
「う~ん・・・・・・とりあえず喉風邪を引いたってことにしとけば大丈夫か?」
「まあその方が得策だな。一夏、身体が回復するまではマスクの着用を義務付ける。」
「わかりました。」
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イズマエル戦の後IS学園は急遽休校になった。箒達は一夏の様子を保健室で一緒に見ていた。