真・恋姫†無双~赤龍伝~第119話「赤斗対張飛・魏延」
赤斗と張飛・魏延が立ち合いをする為、赤斗たちは中庭に集まっていた。
赤斗「すー、はーー。…………よし」
深呼吸で息を整えて、赤斗は気を高める。
藍里と亞莎の軍師二人は、朱里や雛里とともに話し合いをしていて、この場にはいなかった。
その代わり恋、月、詠は傍で赤斗を見守ってくれていた。
月「はぅ~赤斗さん、怪我しないよう気をつけてくださいね」
恋「…赤斗、がんばれ」
赤斗「ありがとう月、恋」
詠「まったく使者で来たくせに、何で戦うことになってるのよあんたは」
赤斗「まあ、色々あったんだよ。それで、張飛ちゃんと魏延さんのどっちから始めますか?」
鈴々「もちろん、鈴々からなのだっ!」
張飛が勢いよく前に出てきた。
赤斗「張飛ちゃんからか」
星「赤斗殿。ああ見えても鈴々は我が軍を代表する武将。くれぐれも油断しないようお気をつけて」
赤斗「分かってますよ。相手は燕人張飛。油断できる相手じゃないですからね。それよりも星さんや桔梗さんは僕側について下さるんですか?」
桔梗「ええ、遠慮なくやって下され」
星「赤斗殿の方についた方が面白そうでしたからな」
蒲公英「たんぽぽもいるよ♪ 赤斗君、焔耶なんかコテンパンにしちゃえ!」
赤斗「あはは……」
翠「それじゃあ、そろそろ始めるぞ」
鈴々「応なのだっ!」
赤斗「はい」
審判役の馬超に促され、赤斗と張飛は中央で向かい合う。
張飛は蛇矛を、赤斗は二振りの小太刀をそれぞれ構えた。
翠「よーし、準備はいいな。時間無制限一本勝負、…………始め!」
鈴々「はーっ!」
開始の合図と同時に張飛は赤斗に突進してきた。
赤斗「おっと!」
赤斗は張飛の猛攻を、奥義浮葉で流れを読み、全て紙一重で躱していく。
鈴々「にゃーーっ! ちょろちょろ避けるななのだーーっ! こうもっと、しっかり受け止めろなのだーーっ!」
赤斗「無茶言わないでよ。僕は張飛ちゃんと力比べするつもりなんてないよ」
鈴々「にゃーっ!」
赤斗「よっと!」
赤斗(昨日はただ単調な動きだと思ったけど、今日の動きは自由奔放って感じだな。……これが本来の張飛ちゃんの動きなんだろうな)
鈴々「がるるるるるるるるる……!」
赤斗「はは……」
赤斗(何だか獣と戦ってるみたいだな)
蒲公英「うわーーー」
桔梗「鈴々の攻撃をあそこまで綺麗に躱すとはさすがじゃのう」
星「だが、まだまだ本気を出していないように見えるが……」
恋「うん。赤斗、まだ本気、出してない……。本気の赤斗は、もっとすごい」
星「ほう。それは楽しみだな。……おや、鈴々が本気になったようだな」
鈴々「………………………………」
獲物を見定めた肉食獣のように、張飛がぐっと身体を屈める。
赤斗(す、すごい気迫だな。さすが五虎将ってところかな)
四肢に充分にエネルギーを溜めて、赤斗に襲いかかろうとした。
赤斗(……来るか!)
愛紗「おや? 模擬戦でもしているのですか?」
鈴々「ひゃぶっ!?」
中庭に現れた愛紗に気を取られ、鈴々に隙ができた。
赤斗「はっ!」
鈴々「にゃ!?」
その瞬間を赤斗は見逃さなかった。
鈴々「あ……っ、う、ううぅ~~~~~~」
赤斗「勝負あり……だね♪」
鈴々の手から弾かれた蛇矛がくるくると回転して背後に落ちる。
翠「風見赤斗の勝ちだな」
鈴々「にゃ!? い、今のは違うのだ……愛紗が急にっ」
翠「真剣勝負の最中に気を抜くのが悪いんだろ?」
鈴々「う~~~~」
張飛は唇を尖らせて、それ以上の反論は引っ込める。
鈴々「愛紗も、ちょっと気をつかうのだ」
愛紗「知らん! 模擬戦とは、戦いを模すと書く。実戦の最中でお前はいちいち気を抜くのか」
鈴々「うぅ……」
愛紗「将たる者、雨が降ろうが地が揺れようが敵を討つまでは気を抜くな」
鈴々「もう! 愛紗はガミガミうるさいのだっ」
愛紗「う、うるさい……だと!? わかった。……もう何も言わん」
鈴々「黙って見てるのだ! 今の一本はしょうがないから赤いお兄ちゃんにあげるけど、もう一本、勝負なのだ」
赤斗「……いや、一本勝負だから、これで終わりだよ張飛ちゃん」
鈴々「えええぇぇぇーーーーーっ!!」
赤斗「それより関羽さん。身体の方は大丈夫なんですか?」
愛紗「一晩寝れば、これぐらいの傷」
関羽は大丈夫だと斬られた肩を叩く。
愛紗「それで、何で鈴々と赤斗殿が模擬戦をしているのだ?」
赤斗「まあ、色々と理由がありましてね。……次は魏延さんですね」
そう言うと赤斗は魏延の方に振り向いた。
焔耶「分かっている」
魏延は金棒を持ち、すでに戦闘準備は出来ていた。
翠「どうする? 少し休憩してから始めるか?」
馬超は赤斗に尋ねる。
赤斗「いいえ。このまま始めても大丈夫ですよ」
翠「そうか。わかった。それじゃあ、焔耶もいいな」
焔耶「あぁ」
赤斗と魏延が中央で向かい合った。
翠「じゃあ、時間無制限一本勝負、…………始め!」
焔耶「うおおおおおおおおっ!」
魏延の金棒が赤斗に振り下ろされた。
ドオオオオーーーーン
振り下ろされた金棒は赤斗に当たらなかったが、轟音とともに地面に大穴が開いた。
焔耶「鈴々との戦いの時もそうだったが、たいした回避能力だ。どうやら速さでは、お前が上のようだな。だが、体力や腕力なら私の方が上だ。いつまでも避けられると思うな!」
さらに魏延は金棒を振りかぶり赤斗にせまった。
赤斗(まあ確かに、今の僕がこっちの武将に勝るものといったら、それぐらいでだろうね。……でも)
焔耶「どりゃああああああああっ!」
赤斗「陽炎」
焔耶「何だと!?」
振り下ろされた金棒が赤斗の身体をすり抜けた。
赤斗「こっちですよ」
焔耶の背後から赤斗の声がした。
焔耶「うりゃーーーーっ!」
横薙ぎに振り払われた金棒は、またしても赤斗の身体をすり抜けた。
焔耶「だぁーーーーっ!!」
赤斗「ハズレですよ」
焔耶「うぉーーーーっ!!!」
魏延の攻撃はことごくと赤斗の身体をすり抜けて行った。
焔耶「はぁ、はぁ……、お前、いったい何をした?」
息を切らせながら、魏延は赤斗を睨みつける。
ただ攻撃が避けられるなら兎も角、攻撃がすり抜けてしまうなんて不可解極まりない。
その事が魏延の冷静さを徐々に奪っていた。
赤斗「うーーん。何をしたと言われてもね。ただ、僕の流派にある独特の足運びが残像を残して、魏延さんはその残像を攻撃しているだけですよ」
焔耶「残像……だと?」
赤斗「わかってもらえました?」
焔耶「あぁ……わかった」
魏延はそう言うと大きく深呼吸をした。
赤斗(ん? ……ちょっと落ち着いたようだな)
魏延の様子を見て赤斗は武器は構え直す。
赤斗「それじゃあ、次は僕から行きますよ」
今まで攻撃を躱すだけだった赤斗が攻撃に転じた。
焔耶「ふんっ」
赤斗「はあぁっ!」
焔耶「はっ」
赤斗の連続攻撃を魏延は金棒で難なく受け止める。
焔耶「次は私の番だ! どりゃああああああああっ!」
魏延の金棒が赤斗を襲う。
赤斗「陽炎」
赤斗が再び陽炎を発動させる。
そして、金棒は赤斗の身体をすり抜けるはずだった。
焔耶「そこだぁぁーーーっ!」
赤斗「なに!?」
魏延の攻撃は、赤斗の本体を捉えた。
赤斗「くっ!」
魏延の金棒を赤斗は足で受け止めて直撃を避けたものの、赤斗の身体は衝撃で宙に飛んだ。
赤斗「よっと」
赤斗は空中でバランスを取り、難なく地面に着地する。
赤斗「あー、びっくりした」
焔耶「だぁーーーーっ!!」
焔耶が休まずに追撃をしかける。
赤斗「おっと」
焔耶「うぉーーーーっ!!!」
赤斗「ちっ」
焔耶「ちょこまかと、しぶとい奴だ……いい加減に諦めろ!!」
一気に追い詰めるべく、魏延が大きく踏み出し攻撃をした瞬間……。
赤斗「かかりましたね。神鹿っ!」
赤斗の対武器用カウンターの掌底が魏延に決まった。
焔耶「がはっ!!」
綺麗な弧を描きながら魏延の身体は宙を舞った。
ドサッ
魏延は背中から地面に落ちる。
魏延「ぐぅぅ……」
翠「しょ、勝負あり!」
赤斗「大丈夫ですか?」
焔耶「触るな!」
身体を起こそうとして伸ばした赤斗の手を、魏延は思いきり叩いた。
焔耶「……笑いたければ笑えばいい……」
赤斗「はい?」
焔耶「どうせ、腹の底ではバカにしているんだろう。あんなに邪魔者扱いしたのに、お前に負けた私の事を……」
赤斗「はあー。何でそうなるんですか。そんな事ないですよ。むしろ……」
焔耶「……むしろ?」
赤斗「むしろ、楽しかったですよ」
焔耶「………………は? た、楽しかっただと?」
赤斗「えぇ。魏延さんと張飛ちゃんと戦っていて、本当に楽しいと思いました。殺し合いは嫌ですけど」
焔耶「…………」
赤斗「ありがとうございました、魏延さん」
焔耶「……礼を言われるような事なんてした覚えがないぞ」
赤斗「だから、僕と戦ってくれたお礼ですよ」
焔耶「…………お前はおかしな奴だ。お前と話していると、調子が狂う」
赤斗「別に……自分ではおかしいとは思っていないんですけど……僕っておかしいんですかね?」
焔耶「本当におかしな奴だな、お前は」
赤斗「あ……」
焔耶「……どうかしたか?」
赤斗「魏延さんがそんなふうに笑った顔を初めて見ました」
焔耶「? 私だって普通に笑う事くらいあるに決まってだろう?」
赤斗「だって、今までずっと、険しい目で睨まれていたから……ギャップがあって可愛いななんて思って……」
焔耶「な!?」
赤斗「どうしました?」
驚いた顔をして、魏延が後ずさる。
星「どうですか桃香様。二人を立ち合わせてみて正解でしたでしょう」
桃香「そうですね♪ 二人とも仲良くなってくれたみたいですしね♪」
焔耶「と、桃香様っ!」
今まで離れて見ていた桃香たちが、赤斗たちの近くまでやってきた。
桔梗「焔耶よ。これで赤龍殿に力添えを頼んでも文句はないな?」
焔耶「はい。まだ少し納得がいかない事もありますが……この男の実力は分かりましたので」
赤斗「ありがとうございます。魏延さん」
焔耶「だから、礼を言われるような事なんてした覚えはないぞ」
赤斗「ふふ……僕がただ言いたいだけですから、気にしないで下さい」
焔耶「お前って、本当におかしな奴だな」
そう言って魏延は笑うのであった。
つづく
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