第一話 誰か俺の息子知りませんか?
俺は先輩を見る、戦う相手の目を見れば、大体の相手の動き方というものが分かってくる。
先輩がこっちを見た・・・・
目だけで笑う先輩。
いつもの自信満々の先輩だ。
その先輩を見て・・・俺は気を引き締めた。
「始め!」
その開始の合図と同時に、沈黙がこの場を支配した。
ピンと張り詰めた空気がこの場に満ちる。どちらも動かない、いや、動けない。
俺も先輩から一本取るために、頭をフル回転させ、一本を取るための流れをイメージしている。
負けるイメージを排除して、勝つイメージだけを思い描く。
(やはり、先手必勝!)
俺はそう思い、前に出ようとする。しかし、眼前に迫っていた竹刀によってその考えは打ち砕かれた。
(!!速い!)
咄嗟に竹刀で受け流し、左に体を滑らせつつ、先輩の篭手を狙う。
予想されていたのか、先輩は左にそれ、俺の右を通り過ぎる。
位置が逆になり、再度向き直る。
それから体制を整える。もう一度攻撃しようとしてくる先輩に向かって、竹刀を上段に構える。すると先輩は、
「ふっ」
攻撃の手を止め、俺の攻撃を受ける構えになる。その動きが速く、なめらかで、そして隙がない。
(だからと言って流れをもっていかれたままなのは不味いよな!)
俺は上段に構えたままの竹刀を振り上げ、詰め寄りながら振り下ろす。
竹刀を横にして受け止められた。
(まだまだ!)
二の太刀、三の太刀、四の、と続けざまに攻撃を行う。
(このまま押し切る!)
そこで先輩の目が笑った気がした。背中を寒気が走り、思い切り後ろへ飛んだ。
さっきまでいた場所に竹刀が横なぎされた。
なんとか体制を立て直そうする、しかし、先輩が二の太刀を放ってきたので、それが出来ない。先輩はそのまま連続して攻撃してくる。
俺はかろうじてその攻撃を防いでいく。
だが、どんどん追い込まれていき
パァンッ!!
道場内に竹刀特有の甲高い音が鳴り響いた。
「そこまで!」
その合図を聞き、俺は面を外し先輩に向き直った。
「ふぃ~~~・・・・・。
また、負けちゃったなぁ~。今日こそはって、意気込んでたのに」
すると先輩、不動先輩も面を外し
「まだまだ、後輩に負ける訳にはいかないからな」
凛々しい顔立ちに、少し汗をかきつつ答えた。
「だが、北郷は強い。
今は私の方が勝っているが、ちゃんと鍛練を行えばいつか私に勝てる日がくるかもしれんぞ」
「そうなれば、良いんですけどね」
「なるさ、だからサボらず鍛練に励めよ」
そう言って微笑む先輩はとても綺麗で、思わず顔を逸らした。
「どうした?顔が赤いぞ?」
「い、いや、いくら冬って言っても、防具を着けているとやっぱり蒸れて暑いですね~/////」
「そうか?私は丁度いいと思うのだがな」
(危ない、先輩の不意打ちの笑顔は反則級だな)
そこへ
「お~い、かずピーまだ終わらんの~」
親友?の及川佑が道場の入口に立っていた
「及川?一体何しに来んだよ?」
「かぁ~!すっかり忘れとるやん自分!」
「忘れる?何か約束してたっけ?」
「してたもクソも!冬休みに入る前に理事長から全校生徒に向けて宿題が出たやろうが!」
「宿題・・・・・・・・・・・・・・・・あー」
敷地内に歴史資料館を造ったから、休みの間に見学して感想文を書けとか言ってたな。
「そういや一緒に行こうぜって話をしてたっけ」
「思い出したかい。・・・んでや。
それを今日、まさに今から行こうやないか、と。そう思ったワケや」
「んで俺を呼びに来たのか。・・・・ま、部活もそろそろ終わりだし
・・・・・・・・・・・先輩、良いですか?」
「もう、終わりだし、構わんぞ」
「ありがとうございます・・・・・そんじゃ及川少し待っててくれ」
言いながら、傍らに置いていた道具を片付ける。
「先輩、お疲れ様でした!」
そう言って俺は先輩に背を向け更衣室に向かった。
・・・・
・・・・
歴史資料館に向かう並木道には、俺たちと同じような目的を持った学生たちがちらほらと見受けられる。
「それにしてもえらく急に思い立ったな。
いつ行くか決めてなかったのに」
「ま、ついでって奴?」
「ついでー?何のついでだよ?」
「で・ぇ・と♪に決まっとるやないかー♪」
「・・・チッ爆発しろ!」
「ふふふ、そう僻むなって」
「それで、今日は誰とデートなんだ?」
「ムフッ♪な・い・しょ♪」
「内緒にする必要ないだろ。・・・・・あ~、あの芹沢って娘か?」
「グサッ!」
「それとも綾戸って娘に紹介された水泳部の娘か?」
「グサグサッ!」
「・・・・なんだ、違うのか?」
「シクシク・・・(ノω;)・・んなもん、とっくの昔にフラれとるわーっ!」
「フラれたにしては、次の恋が早すぎないか?」
「当たり前やないか、青春時代はたったの三年しか無いねんで!一に恋あり、二に友情あり、三四と五にはセクロスありや!!」
「・・・・猿だね~」
「おうさ!猿さ!猿だとも!」
「良いなぁ~、俺も猿になりてぇ~」
「おう、なれなれ!やっぱ若い頃は猿やないと男やないからなっ!」
「いや・・それはどうかと思うが・・」
「ふふーん♪ま、かずピーは独り身やしぃ?そう思うんは仕方ないな~」
(・・・・・・・・・・・・畜生。爆発しないかなコイツ
ちょっと自分には彼女が居るからって、いい気になりやがって)
「あーっ、クソ。俺も彼女がほしいなぁ・・」
「あんじょう気張りや、人生の落伍者くん?」
「うっせ!偉そうに言うな!」
同情した目で俺の肩を叩こうとする及川の手を逃れながら抗議した
「それより、さっさと行こうぜ。お前だって時間がないんだろ?」
「おおっと、せやせや。時間無いねんっ!ほら、かずピー急ぐで!」
「へいへい」
・・・・
・・・・
「へぇ~~~っ!また立派な資料館だな」
「さすがフランチェスカと言うこっちゃな。どんだけ金かけとんねん」
「何億って掛かってんじゃね?」
「やろうな。そのくせ俺らの授業料はそこまで高くないし。・・・・・裏で悪いことでもしてんとちゃうか」
「悪いことって例えば?」
「そやな、例えば・・・・隠された地下室に設置された調教ルームで、フランチェスカの女子生徒たちが夜な夜な調教され、資産家や悪徳政治家たちの餌食に・・・とか」
「・・・・・・・それなんてエロゲ?って言えば良いのか?」
「ええやん、ネタやねんしぃ~♪」
「はぁ~ホントおまえって、頭の真ん中のめちゃくちゃ大切なパーツのネジが一本だけ緩んでるって感じだよな」
「褒めても何もでーへんで~♪」
「褒めてねぇよ。・・・それより少し静かに見て回ろうぜ。警備員が睨んでやがる」
「おーけいほーけい。んじゃ適当に見てまわろか」
「・・・・・・・・・」
「?・・・なんよ?」
「いや、つまんねーこと言うな、と」
「・・・冷静にツッコまれると恥ずかしくなるから止めて・・・」
珍しく顔を赤くした及川と共に、陳列されている古代の武具やら掛け軸なんかを見て回る。
「これっていつの時代のモノなんだろうな?」
「パンフレットには後漢後期とかってかいてあるで」
「後漢後期っつーと・・・・三国志の時代か。すげーな。1800年前ぐらいの遺物かよ」
「・・・・すげーな、かずピー」
「なにが?」
「三国志とか1800年前とか。よーそんな知識もっとったなぁ、自分」
「なんで?こんなの常識じゃね?」
「そんなもんが常識でたまるかい!!かずピーってもしかして歴史マニアかなんか?」
「マニア・・・かもなぁ。田舎の爺ちゃん家にその手の本がめちゃくちゃ沢山あってさ。ガキの頃は休みのたびに遊びに行って、修行の合間に読みあさってたんだ」
「だから、かずピーってテストの成績良いんやね」
「いや、それは日々勉強してるからだよ」
「ところで、かずぴーって田舎どこやっけ?」
「鹿児島。・・・つっても、俺自身は生まれも育ちも浅草だけどな」
「ほー。・・・・ってか、修行って何のよ?」
「剣術だよ。俺の家系は昔から道場をやっててな。俺も強制的にやらされてたんだ」
「・・・かずピー、ホンマに今の時代の人間か?修行とか剣術とか。なんかキモイわ」
「言うに事欠いてキモイってなんだよボケ」
「いやいやマジで。現代の男子高校生が修行とかって、マジでおかしいで」
「仕方ないだろ。古い家系なんだから。道場主の息子が弱いのは許せないって考えなんだよ。俺の爺ちゃんもオヤジも」
「よーグレへんかったな、かずピー」
「ま、剣術は好きだったし。辛くはあったけどイヤではなかったからなぁ」
「んで、フランチェスカに来て剣道部に入って・・・・そんなに強くなって何がしたいん?」
「今の目標は不動先輩に勝つことかな。それより後のことはわかんね」
「あんな化け物じみた人に勝つことが目標って」
「化け物ってなんだよ、失礼だな」
「そやかて。一年ときから全国一位の無敗の女剣士様やで。・・・・まあ、その女剣士様と勝負出来てるかずピーも軽く化け物やけどな」
「勝負出来てるだけで、勝ててないけどな」
「ま、がんばんなさい」
励ますように俺の肩をポンポン叩いた及川が
「・・・あかん、トイレ行きたなってきた。かずピー、ちょいと行ってくら」
「ハイハイ、行ってらっしゃい」
及川が曲がり角に消えるのを見送ってから、少し離れた場所の展示物に興味を惹かれて近寄った。
「へぇ~、銅鏡か。1800年前のモノにしては随分綺麗だな」
なんとなしに、銅鏡に自分の顔を写した。
(悪くはないはずだ。彼女が出来ないのは縁がないからだな。うん。そう思っておこう)
そんなことを考えていると、銅鏡に写った自分の顔が急に知らない美少女の顔になった。
「は!?えっ!?誰?!」
次の瞬間、銅鏡は光輝き、俺はその光に包まれ、・・・俺の記憶はそこで途切れた。
・・・・
・・・・
「お~い、かずピー、お待たせ~。・・・・・あれ、かずピー?どこいったん?」
トイレから戻ってきた及川佑は友人の姿が見当たらないため、資料館の中を探し、携帯に連絡をとろうとしてもつながらず。デートの待ち合わせ時間ギリギリまで一刀を探していた。しかし一刀が見つかることはなく。仕方なしに彼はデートに向かった。
そして北郷一刀と及川佑はこのあと、二度と出会うことはなかった。
・・・・・
風が気持ちいい。目を開けると青い空と白い雲が真上にあり、その周りを緑が囲っていた。
・・・うん。
いい天気だ。
「・・・・・・・・・・・」
でも・・・・俺はどうして外に居るんだろう?
眠っていて目が覚めたのなら、寮のプレハブ小屋の天井が見えるはずなんだけど・・・
「はあっ!?」
青空が見えるってことは、朝じゃないか
いそいで学校に・・・って!
「・・・・・・・・・あれっ!?」
なんだここ?あと寝起きのせいか声が高い?・・
「えーっと・・・」
なんだろ、ここ。
マジで見たことがない景色なんですけど。
というか・・・・森の中?
辺り一面に木が生い茂っており、その中を獣道のような細い道が続いている。俺はその道の真ん中に寝転んでいた。
「・・・・・・・」
・・・・・・・・・・
「森ぃぃぃぃぃぃ!?!?」
ぼんやりとしていた意識が、後頭部をハンマーで殴られたような衝撃と共に一気に覚醒する。
「ちょ・・・なんだよ、これ。どこだよここは!?あとまだ声が高いままなんだけど!?」
周りには人工物は存在せず、車の音すらしない。そんな場所東京にはないだろう。
「ちょっと待て待て!考えろ考えろ、俺!」
ここは一発、深呼吸でもして気持ちを落ち着けようじゃないか。
そうだ、爺ちゃんも言ってただろ「ホットな時間は終わりだ、クールになれ」って・・・・・・・・・って言ってねーよ!捏造するな俺。
確か、冷静さを欠いては物事を判断してもろくなことが無いって言ってたな。
「スーッ、ハァーッ、スーッ、ハァーッ・・・・・」胸一杯に空気を吸い込んでは、声を出して大きく吐き出す。
それを数度繰り返し、動揺していた気持ちが徐々に落ち着いてきた。
「・・・よし」
深呼吸を幾度か繰り返したあと、冷静さを取り戻したという実感と共にもう一度現状を把握しようと頭を巡らせる。
「昨日、及川と二人で歴史資料館に行ったよな。そのとき、及川がトイレに行ってその間、周りのモノを見学していた。うん。そんで、銅鏡が目に入って、気になって見てたら、写ってた自分の顔が急に美少女になってそのあと急に、光始めて、・・・えっと・・それから・・ダメだ。そこまでしか記憶に無い。」
・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・」
「・・・落ち着いて考えても意味が分からんな。声がホントなんか高いな。」
どうして俺はこんな森の中でグースカ眠ってたんだか。
「もしかして、誰かに拉致られた?・・・でもその割には別に拘束されてないしなぁ」
ホントどうしよう。
「そうだ携帯!」
そう言って携帯を取り出そうとして気付いた。
「あれ、袖から手が出てない?というかブカブカ?」
手を伸ばしたのにも関わらず、手が袖から出てこない。
「服がでかくなった?・・・・・・アレ?俺の手こんなに小さかったか?」
やっとのことで袖から出した手を見て違和感。
取り敢えずポケットから携帯を出して、っとダメだ。電池が切れてる。
真暗な画面を見てため息をつき、そして大変なモノに気づいてしまった。
「画面の中に銅鏡に写った美少女がいる!?」
いや、具体的に表すと、携帯の暗くなった画面に写った自分が美少女なのだ。
「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『俺は携帯の画面で自分の顔を見たんだ。そしたら携帯に写っていたのは見知らぬ美少女だった』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごくん。
そして俺は震える手を抑えつつ、そっと手を伸ばし、自分の足と足の間を確認した。
・・・・・・・・・・・・いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや
まさかそんな有り得ない。
そう思いもう一度確かめようと手を伸ばした。
・・・・・・・・・・
ペタン。
無い。
とてもとても大切な宝物が無い。
未だに一度も使ったことのない伝家の宝刀が無い。
マイサン。
我息子よ。
私の息子が無い。
「誰か私の息子を知りませんか?」
そう言って北郷一刀は意識を手放した。
はじめましてチョコです。
今回ははじめての投稿になります。
自分は理系の高校を卒業し、理系の大学に通っています。
つまり
国語力がほとんどありません。
下手な文章に、いろんなものをパクっています。
また今回は無印の冒頭をほとんどコピペです。
それでも良いと言う方は是非これからもよろしくお願いします。
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北郷一刀は友人、及川佑と共に歴史資料館に訪れ、そこで不思議な銅鏡に興味を惹かれる。すると銅鏡が光だし、気がついたら・・・・・・・・・美少女になっていた!?