No.58183

恋姫†無双 霞SS なんでもない日

今回は霞メイン
姉御肌なキャラは大好きですw

2009-02-15 01:21:54 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:6761   閲覧ユーザー数:5708

青空の下、木陰に腰を下ろし、霞は1人酒をあおっていた。

「これで派手な戦でもあったら最高やねんけどな~」

そんなことを呟きながら用意していたつまみに手を伸ばす。

「ん?」

妙な手触り、ふさふさしていて暖かい。

ペロンっと霞の指を何かが舐めた。

「なんや!?」

自身の左手に視線を移すと首に布を巻いた犬がつまみを食い尽くしていた。

「何してくれとんねん!あ~、折角厨房からちょろまかしてきたのに」

霞は犬の首をつまんで持ち上げる。

「どこの犬や、飼い主にもんくつけっあた!」

霞の脳天に鋭い手刀が振り下ろされた。

「・・・セキト、いじめないで」

「恋!あんたの犬か!」

恋は動じた様子もなく、セキトを抱きかかえる。

「もう・・・、大丈夫」

「大丈夫なことあるかい!人の憩いの時間台無しにしよってからに!」

「詠が・・・、怒ってた。霞が調練抜け出したって・・・」

痛いところを突かれ、一瞬たじろいでしまった霞だが、すぐに平静を取り戻すと反撃に移った。

「せやかて、人様の食いもん勝手に食うのはあかんやろ~?」

「・・・どうせ、厨房から勝手に取ってきた」

全部お見通しと言わんばかりに恋は霞を見つめている。

(こいつ、黙っとるくせに妙な迫力あるんよな~)

「あ~あ~、もうウチの負けや、何も言わんからとっととあっちいき!」

恋は無言で霞の座っている木の裏側に座った。

「何でそこに座んねん・・・」

「セキトが・・・、ここがいいって」

「さよか」

霞は杯を傾ける。

 

それから半刻もたったころ、霞が口を開いた。

「なぁ、恋」

「・・・なに?」

「最近、何とかっちゅう奴が反董卓連合ちゅうの集めとるらしいで。近々、攻めてくるやろうな」

「・・・そう」

動じた様子のない恋の反応に霞は満足げに口の端を吊り上げた。

「はっ、ビビらんか。戦の中に何を見てんのや?」

「別に・・・、なにも」

「理由もなく、あれだけの武を振るえるかい!」

恋は少し考えて、セキトの頭を撫でながら呟いた。

「・・・月が、この子達を好きって」

「月や詠にその犬ッコロ、全部含めてあんたの強さか・・・、分かる気がするわ」

「・・・そっちは?」

「ウチは誰よりも強うなりたい、ウチが1番やって証明する、その中での命のやりとりがウチの生きてる証や」

まるで子供のように理想を語る霞の言葉を恋も黙って聞いていた。

「ウチがここにいるのは、敵が多いからや、強い奴ともたんと戦える」

「・・・嘘」

ここで初めて恋が口を挟んだ。

「嘘な事あるかいな!」

「霞・・・、月達を見る時にいつも優しい目・・・、してる」

霞が逆に黙ってしまった。

「・・・霞は、いつも本心隠してる」

(こういう、感覚で生きてる奴には敵わんな・・・)

霞は残ってた酒を一気に飲み干した。

「不器用なんは百も承知や、こういう生き方しかウチにはできひん」

霞は空を見上げながら言葉を繋げた。

「不器用は不器用なりに生きていき方もあるっちゅうこっちゃ」

「ほぉ~、それじゃあ、不器用なりに調練に参加してもらおうかしらね」

目の前に現れた影に霞の顔が引きつった。

「げっ!」

「げっ!じゃな~~~~い!!!!調練サボるわ、探しに行かせた恋も帰ってこないわで、どれだけ仕事が滞ったか!」

霞は詠の怒号に晒された挙句、首根っこを掴まれ引きずられていった。

「・・・行こうか、セキト」

恋も腰を上げてそのあとを追った。

 

まもなく戦の始まる、何でもない日のことであった。


 
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