「明日は、何の日かなー?」
姉貴がこれ以上ないようなハイテンションで質問してくる。
全く、いつも撃沈してへこむくせに。
懲りない奴だ。
「知るか。」
私は言ってやる。私には関係ない。
「だめだなー、ちーちゃん。そういうときは大きな声で、バレンタインデーって言わないと。」
姉貴は人差し指を左右に振る。全然可愛くない。
「バレンタインさんが死んだ日がなに?どうかした?」
「いいの、バレンタインさんも喜んでこんなことしてんだから。」
「絶対喜んでない。」
私はあきれて言う。本当にどうしようもない姉貴だ。
「それはどうでもいいの。それよりも明日のことよ。一緒に考えて!」
そう言いながら、机の上に素材用チョコやら型やら、包装用の箱やらを並べ始める。
そして唐突に叫ぶ。
「恋は戦争なのよ。」
「はぁ?」
「初音さんも歌ってるじゃない。戦わなければだめなの。」
「そっちかよ。」
「負けるが勝ちなんて言葉はないの。勝ったもんが勝ち。この場合、ターゲットにチョコレートという名のトロイの木馬を渡した者が勝ちなのよ。相手の懐にまんまと入り込むの。」
「姉貴、それで戦争に勝ったことがあったか?」
「うっ、それは、戦況が悪かったのよ。私のせいじゃないわ。相手がすでに彼女持ちだったり、友達だったら…とか言われたことはあるけど……」
「友達だったらって既に負けじゃないの?」
「そうなのよ、まったく、思い出しただけで腹が立ってくるわ。」
姉貴はきーとか発狂しながらチョコのマテリアルをボウルに入れる。
「姉貴。実はかわいそうなことに今まで全敗?」
派手にお湯をこぼす。
「あちちち。別にいいのよ、わたしはそれで。」
そしてチョコを溶かしながらすまして言う。
「こんなの、単なる思い出作りなんだから。」
その姉貴の顔は大人びていて、とりあえず普段のおちゃらけた表情とはどこか違った。姉貴も人並みに苦労してるんだ。そう感じてならなかった。
「その思い出が悲惨だったら、つくる意味ないと思いますが?」
「うっ。」
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いやもう、私にとっては全くと言ってもいいほど関係がありませんが、それでも一応世間一般ではバレンタインデーなので。こんな作品を書きました。
五分小説です。
読みやすいように書いてます。
よろしくお願いします。