No.57918

バレンタインに向けて

さん

いやもう、私にとっては全くと言ってもいいほど関係がありませんが、それでも一応世間一般ではバレンタインデーなので。こんな作品を書きました。

五分小説です。
読みやすいように書いてます。
よろしくお願いします。

2009-02-14 01:22:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:736   閲覧ユーザー数:699

「明日は、何の日かなー?」

姉貴がこれ以上ないようなハイテンションで質問してくる。

全く、いつも撃沈してへこむくせに。

懲りない奴だ。

 

「知るか。」

私は言ってやる。私には関係ない。

 

「だめだなー、ちーちゃん。そういうときは大きな声で、バレンタインデーって言わないと。」

姉貴は人差し指を左右に振る。全然可愛くない。

 

「バレンタインさんが死んだ日がなに?どうかした?」

 

「いいの、バレンタインさんも喜んでこんなことしてんだから。」

 

「絶対喜んでない。」

私はあきれて言う。本当にどうしようもない姉貴だ。

 

「それはどうでもいいの。それよりも明日のことよ。一緒に考えて!」

そう言いながら、机の上に素材用チョコやら型やら、包装用の箱やらを並べ始める。

そして唐突に叫ぶ。

「恋は戦争なのよ。」

 

「はぁ?」

 

「初音さんも歌ってるじゃない。戦わなければだめなの。」

 

「そっちかよ。」

 

「負けるが勝ちなんて言葉はないの。勝ったもんが勝ち。この場合、ターゲットにチョコレートという名のトロイの木馬を渡した者が勝ちなのよ。相手の懐にまんまと入り込むの。」

 

「姉貴、それで戦争に勝ったことがあったか?」

 

「うっ、それは、戦況が悪かったのよ。私のせいじゃないわ。相手がすでに彼女持ちだったり、友達だったら…とか言われたことはあるけど……」

 

「友達だったらって既に負けじゃないの?」

 

「そうなのよ、まったく、思い出しただけで腹が立ってくるわ。」

姉貴はきーとか発狂しながらチョコのマテリアルをボウルに入れる。

 

「姉貴。実はかわいそうなことに今まで全敗?」

 

派手にお湯をこぼす。

「あちちち。別にいいのよ、わたしはそれで。」

そしてチョコを溶かしながらすまして言う。

「こんなの、単なる思い出作りなんだから。」

その姉貴の顔は大人びていて、とりあえず普段のおちゃらけた表情とはどこか違った。姉貴も人並みに苦労してるんだ。そう感じてならなかった。

 

「その思い出が悲惨だったら、つくる意味ないと思いますが?」

 

「うっ。」


 
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