ギア第4話「エルフの村の暗い影と少年の気持ち」
イシュザークに唯一存在する西地区の裏路地。所狭しと店が並ぶ中に知る人ぞ知る店があった。店の名前はアルガード・ストア。通称ぼったくり商店だ。・・・とは言っても、店主の性格は悪くない。客もそれなりに居るし、繁盛している時は繁盛している。のだが、
「買取単価が安すぎるのが偶に傷なんだよなぁ。」
「そうなの?」
「あぁ。なぁにが安く買って安く売る、だよ。」
そう、これこそがぼったくり商店と言われる所以なのだ。とにかく売っている商品も買い取る時も値段が低い。俺も最初の頃何度ぼったくられたことか・・・、などと浸っていると、
「おい、俺の店の前で営業妨害すんなよ、ルイン。」
店の中から店主のアルガードが顔を出してきた。一応こいつもLivingGod所属のれっきとしたギルメンである。依頼をこなす時は常に前衛を任されてるだけあって、体格はがっちりしている。流石、大地の精霊であるガイアの加護を受ける種族であるノームの出身なだけある。
「んで、今日は何の用だ?」
「さっき、今回の依頼の同行人の武器をこわしたからさ、修理に来たんだよ。」
「珍しいな、同行人の武器とはいえ、お前が壊した武器の修理の依頼をしに来るとは。明日どしゃぶりになるんじゃねぇのか?」
「うるせぇよ、ったく。」
「で、その同行人ってのは誰なんだ?」
「あ、私です。」
と、リィンが返事をした瞬間、アルが俺を店のカウンターに連れ込み、
「おい、ルイン、誰だあの可愛い子は。知らなかったぞ、お前がもうそういう人を作ってたっていうのは」
とまくしたててきたので、
「ちげぇよ、ただの幼馴染だ。変な勘ぐりするな。」
足を踏みつけながら、俺はアルを睨みつけた。
「で、客が困ってるがどうすんだ?」
何がなにやら分かってない様子のリィンを目で指しながら俺はアルを促した。なにやらこちらを意味深な目で見てきたが気のせいだということにしておこう。
「お嬢さん、名前は?」
「リィンっていいます。今日は槍が壊れてしまって修理をお願いしたいのですが。」
「分かりました。では、槍を見せていただけますか?」
「はい、ここが壊れた部分で・・・」
・・・なんだこの違和感。まともに接客してるアルの様子がこうもおかしくみえるとは思わなかった。
「む~、この槍は直すのが少し難しいな。」
アルが珍しく唸る声が聴こえた。武器の修理に関してはこの国で右に出るものは居ないと俺は思っている。そのアルがしかめっつらをしているときは大体材料が無い時だ。
「材料がねぇのか?」
「あぁ、この槍を観た感じだと恐らくエルフの森でしか採取されないというリアナイトが必要なんだ。」
二人で、これをどうするか考え込んでいると、
「あの、その鉱石ってもしかして、これですか?」
リィンが首にかけているペンダントを開けて中身を見せてきた。
「リィンさん、まさしくこれです。でも、いいんですか?大事なんでしょう?これ。」
「いえ、これは私の両親が多分困ったら使えと渡してくれたものですから。」
「それでしたら、使わせていただきます。明日また来てください。直しておきますから。」
リィンは返事をしてアルにリアナイトを渡した。しかし、あのペンダント・・・あいつさっきまで、いや、今まであいつは装飾品をつけたことなんて無かったはずなのに。俺が過去の記憶をたどろうとしていると、
「よし!私おなかすいちゃった。ねぇ、ルイン、どこかレストラン行こうよ!!」
「あ、あぁ。行くか。」
詳しくは飯を食べながら聴くか。そう思い俺は、いつも利用している店に向かった。
店に着いて、料理を頼んで、俺は話を切り出した。
「なぁ、リィン。あのペンダントはどうしたんだ?」
そう聞くと、リィンは俯いてしまった。俺がいぶかしげに見ていると、リィンは顔を上げ
「ルインには、話すね。貴方が去った後の話を。」
そう言って、俺が出て行った3年前の話を始めた。
ルインが出て行ってから、私は、いえ、私の家族はダークエルフに関わっていた者として、嫌われ者の扱いを受けたの。
初めは分からなかったよ。
なんでこんな扱いをされないといけないの?って、それからは地獄のような日々だったのよ。
村を歩けば、侮蔑のまなざしを向けられ、物もろくに手に入らない日々。
そんな生活を始めて1年かな。
母さんが原因不明の病にかかったの。
父さんは、村の奥の遺跡にある薬草を取りにすぐに行ったわ。
それから1ヶ月して帰ってきたんだけど、血だらけだったの。直ぐに手当てをしたけど、だめだった・・・。
母さんもそれから直ぐ死んで独りになったわ。
あのペンダントは母さんが死ぬ前に私に渡したものだったの。
独りになってしばらくは何もする気が起きなかったわ。
そんなある日ね、貴方が王都で非公認ギルドで活動してるって噂を耳にしたの。その話を聞いてから私は苦手だった槍の修行も再開して、魔法も覚えたのよ。
それでね、ここに来る前に族長に、父が血だらけで帰ってきた訳を調べたいから王都に行ってきますって挨拶に行ったの。そしたらね、勝手にしろって言われちゃった。
流石にへこむよね。だって、だって・・・、同じエルフ族なのに、何であんな酷いことを言うのかな。ただ、貴方と一緒に居ただけなのに。居たかったからいただけなのに・・・。どうして・・・
最後のほうは、聞き取れないほどか細い声だった。俺が出て行ってからこんな辛い思いをリィンはしていたのか。なおのこと俺はアノ村が許せなかった。依頼したのは族長ではなく、リィンだったのだ。
俺は、もしアノ村に戻ったとして、自分を抑えていられる自信はなかった。しかし、リィンの手伝いはしてやりたい。・・・そんなジレンマが俺を縛った。
それから料理は食べたが、何も覚えていない。店を出てから宿に向かう際、リィンから
「私の依頼。受けてくれる?」
と聞かれて俺は
「一晩考えさせてくれ。」
としか言うことが出来なかった。別れ際にリィンが見せた救いを求めるような眼差しが脳裏に焼きついた・・・。
といった感じで第4話を御送りいたしました。本編にこれからだんだんと入っていきます。二人を待ち受ける困難・・・、ルインの出した答えとは?そしてエルフの森の真実とは!?
色々展開を考えるのが最近楽しくなってきたニルです。これからも生暖かい視線で見守っていただければと思います。
ではまた第五話で。
次回
ギア第5話「少年は過去の鎖を解き放つ」
追記:相変わらず文章量少ないっすね。申し訳ありません。反省してます。
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皆さん、お久しぶりです。恐らくこれが2年ぶりの投稿になります、ニルです。さて、どこまで進んだかわからなかった状態から書きました、第4話。コメントなんか頂けるとうれしいです。何でもいいです。ただ批判コメは控えてください。