:広間
「――以上が本日の最終報告になります」
そう言って、春蘭は卓の椅子に着いた。
あれから華琳達は街の居城へと戻ってきていた。
あの穴を見つけてからは何事も起きず、順調に作業を進めて街へ戻って来れた。未だ現場には残し
てきた200人の兵士と秋蘭が周辺の見張りを行っているが、定時の連絡でも商人が近くを通った事
ぐらいの物しか入ってきていない。
周辺の閉鎖が終わり次第帰ってくるよう言ってあるので、明日の朝までには帰ってくるだろう。
「しかし華琳様、あれほどの穴、一体どうやって開いたのでしょうか」
そして今、帰ってきてすぐに開かれた緊急会議を終えたところである。
誰しもが、疑問に思っていることを春蘭が華琳に問うと、華琳は首を振った。
「分からないわ。帰ってきて直ぐに書物や、町人の噂話なんかをあさったけれど、一致するものは
無かったし、町人はあの穴の存在自体知らなかったわ。もしかしたら、本当に星が落ちたのかも知れ
ないわね、春蘭?」
「か、華琳様!」
「ふふっ、冗談よ。まあ何にせよ、今の私達の力じゃあんな大きい穴を埋めることはできないでき
ないし、せいぜい有効活用出来るようにしましょう」
「どのような?」
「そうね、例えば―――」
「きゃああああああああああああああああ!!!」
「な!?」
「春蘭行くわよ!」
「はっ!」
突然響いた悲鳴に一瞬驚いた二人だったが、華琳のほうが一瞬早く動き出した。
そして扉から勢いよく飛び出し、悲鳴がした方向へと駆けていった。
:森
「よし、此処で最後だな」
秋蘭は森で穴の周辺の封鎖工作を行っていた。
簡易なものであったが木で柵を作って囲み、周囲の村々への連絡に行っていた兵もほとんどが帰っ
て来ていた。
街道も近くには通っていないようで、残り数人の兵が戻り次第街へ戻ろうとしていた。
そのとき、秋蘭の後ろの茂みがガサリと音をたてた。
「ッ!」
反射的に弓を構えて振り向き、茂みをじっと睨み付ける。
しばらくガサガサと音を立てていたがそれは不意にやみ、カサリとそれは顔を除かせた。
「ッ!・・・・・・兎?」
引いた弓を放ってしまいそうになったが、確認するとそれは野兎だ。
秋蘭は張っていた気を抜き、弓を下ろした。
「ふう、私も幾らか緊張していたのだな。そら、追いかけたりしないから早く行け」
そう言うと兎は茂みに身を戻した。
「夏侯淵様、残りの兵が戻ってきました」
そこへ丁度兵からの報告が入った。
「うむ、では街へと戻る!そろそろ日が沈む、少しばかり駆け足で戻るぞ!」
「「「応!」」」
そう言い放つと、秋蘭達は森を抜けて街へと戻っていったのであった。
「ピギィッ」
「・・・・・・」グジュルグジュル
茂みの中では、先ほどの兎が見るも無残な姿になっており、その身を白い蛇――チェストバスタ
ーが食らっていた。
:廊下
華琳と春蘭は悲鳴のした現場へと来ていた。
二人が着いた時にはすでに数人の侍女や兵士が来ており、薄い人だかりが出来ていた。
「ええい、どけぇい!道を開けよ!」
そう春蘭が一喝すると、人だかりが割れた。
見ると、一人の侍女がうずくまって泣いている。
「一体何があったの?」
「曹操様!いえ、それが自分にも何がなんだか」
そばの詰め所にいた兵に問いかけてみるが、彼も誰一人さっぱりわからないようだ。
華琳はその侍女に駆け寄り、事情を聞くことにした。
「大丈夫?何があったの?」
「うぐっひぐっ、そ、曹操様・・・」
ガタガタと震えながらも、必死に答えようとするが、やはりショックが大きかったのだろう、声が
出せないでいる。
しかし、手が持ち上がり、その指が廊下の手すりの外の庭の一点を捉えたとき、集まっていた者達
全員が息を呑んだ。
そこにあったのは
「人?そこの貴方!そこで一体何を・・・!」
「?あれは庭師の者では?って華琳様!?」
華琳は春蘭の制止を振り切り、手すりを乗り越えて庭へ出た。
そこにいたのは庭師と思われる男性だった。何故か仰向けに倒れており、動かないでいる。
その庭師のそばへ駆け寄ると、華琳は立ちすくんだ。
「・・・ッ!春蘭!」
「は!」
「城内に警戒網を敷け!侍女も兵士も最低3人での行動を義務付け、業務を終了させてそれぞれ部
屋にこもるように!それと城門を一刻も早く閉めなさい!」
「は、はい!よしお前達、聞いたな。侍女は侍女長に言って通常の業務を終了、兵もだ。それと兵
士は――――」
春蘭は各所に連絡するようその場にいた者たちに命令し、春蘭自身はその場に残り華琳の傍へとつ
いた。
「華琳様!各所への通達終わりました。一体どうなさっ・・・!?」
「・・・・・・」
「華琳様、これは・・・」
庭師は倒れていた、周りに真っ赤な花が咲いたように血飛沫を飛ばせて。
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あらすじの前に少々連絡が。先々週クリエイタープロフィールのほうに、
今週からは2週間ごとの投稿になる事を書いたのですが、こちらのほうへ書くのを忘れてしまいました。すみません。
さて今回は、場面は変わって華琳達の街から始まります。
はてさてカズトは追いつく事が出来るのだろうか、それでは、どうぞ