11月6日
一刀様が地方巡幸に御出立なさった。
御見送りは孫権様と劉備様のみで、曹操様は御欠席との事だが要は昨晩が激しかったということらしい。重臣の方々の多くが不在となり決裁が進まない為、休暇を取っている者も多い。
庁内全体が火が消えたように感じる。
11月8日
久しぶりに亞莎と飲みにいった。凪は御巡幸の御供区間対応の為不在だ。
亞莎に呉での太史慈殿の様子について聞いてみたところ、先日以来亞莎と一刀様の御伽についてちょっと言葉にするのも憚られるような事を質問されるようになり多少困っているという。
「普段は本当に真面目なんですけど、休憩時間とか雑談中に表情を変えずにそういう事を訊かれるので吃驚しちゃいます。そう、まるで…」
と言いさして私の方を見ながらぽかんと口をあけて固まっていたが、
「あ、いえ、ちょっと思っちゃいましたけどやっぱり違いますよね」と慌てた様に手をぱたぱたと振っていた。
その後、つい酔いに任せて太史慈殿から何を訊かれたのかと頬を染めて答え渋る亞莎を問い詰めてしまったが、訊かなければ良かったと後悔するような凄い話だった。
年も下で清純と言う言葉を人の形にしたような亞莎でさえ、そのように大胆に御奉仕を出来ているというのに私ときたら…
…もう寝よう。
11月10日
業務に余裕がある為休暇を取った。こんな時こそ女としての自分を磨く時間と思ったが何から始めたものかさっぱり思いつかず、とりあえず以前連れて行かれた女性用衣料店へ行ってみた。
色々見てみたものの、これぞというものが見つからず、『今売れてます 大人の貴女にお勧めの一組、天の国の「ジャンパースカート・ブラウスセット」』と表示されていたものを購入することとした。
勘定場へ向かうと姜維と士載が居り、何を買っているのかと聞くと合同塾の学生用水着と運動着だという。それらは支給されていたはずだがと言うと頬を染めて答えた事には御伽用の模倣品とのことで、価格を聞くと正規の支給品よりも高い事に驚かされた。店員に理由を聞いたところ正規品よりもかなり薄手に縫製するのが難しく、また胸元に大きく名を入れる場合は受注生産品となる為だという。必要は技術の進歩を促す典型とはこういうものかと妙な感心をしていると、この店員は先の白水着を譲ってくれた時の店員で私に気がつき先の水着の感想を求められた。すっかり忘れていたがこの水着を提供してもらう条件になっていた事を思い出した(※)。姜維達の前で出来る話ではない為、後日書面で提出させて頂きたいと伝えたところ今晩李典殿の部下の女性が来られる予定であり、一席設けるので詳しく語って頂きたいと言われ、再来店する事とした。
※司馬日記20の事
11月11日
昨晩の記憶があやふやな為例の衣料店に行ってみると先の白水着が展示されており、紹介文には
『つまり三行にまとめれば
「えっち!
一刀様ステキ!
あんあんあん!」
オクテな貴女もこれで変身!十分な伸縮性を持たせていますが、切れ目入り仕様も御座います』
と書かれていた。…そんな事を喋っていただろうか?
11月13日
公達様より、いまだ一刀様は御巡幸中であるにも拘らず再巡幸の予算化が決まったので計画するようにとの指示を受けた。
各国王様をはじめ今回巡幸に参加されなかった方々より『やっぱり自分達も一刀と旅(先で)したい』との要望が強く、近場でいいからという事で国王権限で予算化してしまったとのことだ。
「華琳様は陳留がいいみたいね。桂花も一度潁川に帰りたいって言ってたから、魏の経路は許昌通って陳留行って帰って位でいいわよ。私はどっちかっていうと密室で色々揃ってる方が好きなんだけど、たまには拉致された村娘とか買われた奴隷とかも良いわね。ま、あんたは概略行程と人員、予算の検討をしなさい」
と言われた。
11月15日
人も少ない為気分を変えて庁舎内の庭園で弁当を食べようところ、劉備様が竹刀の素振りをされているのをお見かけした。特に親しいわけではないが、目が合ったので会釈し鍛錬お疲れ様で御座いますと申し上げると、気さくに挨拶を返して頂いた。
疲れたし弁当にするとの事で隣に座られ、司馬懿さんですよね、知ってますよと言われた。雑談にお付き合い頂いた所によると、運動はしているのだがここのところ太腿が弛んでいるような気がし、また胸が垂れるのを防ぐ為にも少し竹刀を振っていたとのことだ。
また関羽殿が関中へ急遽出張に出られており、本人は理由をなんのかんのと言っていたが寂しくなって関平殿らと一刀様に可愛がって頂きたかったということらしい。
更に、司馬懿さんはご主人様の事がすごく好きって評判ですよと言われ、蜀でそこまで言われているほど露骨な態度を人前で取った記憶が無かったが「微賎の身ではありますが陰ながらお慕い申し上げております、しかし劉備様方と一刀様の御心の触れ合いの邪魔にならぬよう心がけております」と答えた。
私もご主人様は大好き、と仰って微笑まれた劉備様の御顔は曹操様、孫権様と並んで一刀様の妻たるに相応しいものだと感じられた。
加えて、昼食を終えてお部屋に戻られる劉備様の後姿と言うか、お尻から太腿にかけての流線は弛んでいると言うよりも女性的な、いま少し思うところを端的に言ってしまえば男性である一刀様から見れば性的な魅力を備えたものなのではないかと思った。
11月17日
元直が荊州から帰ってきた。機嫌良くお土産を配っていたが、肌つやがよくなっているようだ。水鏡女学院について聞いたところ、「そうねえ、色々な意味で予備軍がごっそりいるわよ?あとあの妖怪ババア、『国有化に伴う費用負担は私の身体で払いますのでどうか』とかホントいい根性してるわよ、ひどい押し売りを目撃させられたわ!絶対年勘違いしてる一刀様に教えてやろうかと思ったわ」という。
将来的にも一刀様を公私共に御支えする人材が多いに越したことは無い。
ただ、私が物心ついた頃には既に女学院はあったと聞いているのだが…。
11月19日
公達様に一刀様再巡幸(魏編)計画案を提出した。
公達様はしばらく読まれていたが、ふと顔をあげると「あんたの名前が無いけど行かないの?」と言われ、はっと気が付いた。
御供させて頂いても宜しいのでしょうかと伺うといいんじゃないの、役得だと思って甘えればとの事で、自分も計画に含める事とした。
一部とはいえ一刀様と旅行…夢のようだ。
11月21日
一刀様が御帰還なさった。
寵姫の方々は三々五々御帰還されていたが、一刀様が戻られるのはやはり活気の出方が違う。御意向により何も式典めいたものは無いが各国王様らが出迎えられ、璃々嬢が可愛らしい笑顔と共にお帰りなさいご主人さま、と言いながら抱きつこうとした。
が、その寸前に気まずげな一刀様の後ろから気弱げな少女がひょこっと顔を見せると場の空気が凍りついた。
無表情になった璃々嬢がねえご主人さまその娘だあれ、と聞くとこの娘は諸葛均といい諸葛亮殿の妹御で、水鏡女学院に住み込みで暮らしていたが事情により都で諸葛亮殿と暮らす事となったと言う。そうなんだ均お姉ちゃんよろしくね、此処の事まだ良く知らないだろうから璃々が色々教えてあげると言うと孫尚香様もシャオも一緒に教えてあげると言って二人で手を引いて屋敷の方へと消えていった。
姿が見えなくなると国王様らが犯罪者を見るような目つきで一刀様を眺めており、それに対して
「無い!無いからそういうことは、そんな目で見るのは止めて!なあ翠、翠は現場見てたんだからわかるよな!?」
「わかるけど…『今後も無い』って言い切っちゃうとあの娘納得しないと思うぜ?また自殺未遂とかさせないために連れて来たんだろ?」
「そ…そうかもしれないけど!少なくとも後数年は無いし、今のあれも麻疹みたいなもんで暫くしたら普通に兄離れって言うか、その…普通になってくんじゃないかって思ってるんだけど?」
等と仰っていたがその場のほぼ全員から「それは甘い」と言われ、気落ちした様子で諸葛亮殿に諸葛均殿の面倒をしっかり見るよう依頼されていた。
…なんと言うか、先ほどの璃々嬢と孫尚香様には言いようの無い迫力があったような気がする。
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その後の、とある文官の日記です。