No.575392

一刀の晋王転生録 第四章十六話

k3さん

何太后の死罪について。

2013-05-12 00:57:15 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2761   閲覧ユーザー数:2419

 姓:司馬 名:昭  性別:男

 

 字:子上

 

 真名:一刀(カズト)

 

 北郷一刀が転生した者。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:懿  性別:女

 

 字:仲達 

 

 真名:理鎖(リサ)

 

 一刀と瑠理の偉大なる母。第三章で死亡した。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:師  性別:女

 

 字:子元

 

 真名:瑠理(ルリ)

 

 母を目標にする一刀の姉。一刀を異性として愛す。

 

 

 

 

 姓:張  名:春華 性別:男

 

 真名:解刀(カイト)

 

 一刀と瑠理の父にして、一刀の師。第四章前編で死亡した。

 

 

 

 

 姓:王  名:元姫 性別:女

 

 真名:美華(ミカ)

 

 一刀に異常なまでに執着する一刀の妻。

 

 

 

 

 姓:鄧  名:艾  性別:女

 

 字:士載

 

 真名:江里香(エリカ)

 

 後の司馬家軍の宿将。司馬家に対して恩を感じている。

 

 

 

 

 姓:賈  名:充  性別:女

 

 字:公閭

 

 真名:闇那(アンナ)

 

 司馬家の隠密。一刀のために働くことを生きがいとする。

 

 

 

 

 姓:王  名:濬  性別:女

 

 字:士治

 

 真名:澪羅(レイラ)

 後の司馬家の水軍の将。一刀を気に入り、司馬家のために戦う。

 

 

 

 

 姓:司馬 名:望  性別:女

 

 字:子初

 

 真名:理奈(リナ)

 

 一刀達親戚で、一刀と瑠理とっては義姉という立場。

 

 

 

 

 

 

 姓:杜  名:預   性別:女

 

 字:元凱

 

 真名:綺羅(キラ)

 

 一刀とは同期。親同士の仲は良くないが、当人達の仲は良い。  

  第十六話

   「何太后、死刑」

 

 

 司馬師暗殺騒動の黒幕として、何太后は瑠理の手により牢獄に入れられた。

 

 瑠理の強引なやり方に当然、反発や異論を言うこのが居た。彼等と話を付けるために瑠理は何太后の処遇についての会議を開く。

 

 会議には馬騰も参加している。

 

 会議が始まった時、彼等はさらに驚かされる。何と彼女は、次に何太后を死刑にすると言ったのだ。

 

「な、何ですと!?」

 

 漢に仕えている文官の一人が悲鳴のように叫ぶ。

 

 それを機に他の武官、文官が次々に異論を言った。

 

「司馬師殿! 一体何故何太后様を死刑にすると言うのですか!?」

 

「確かに暗殺については理不尽であるとは思いますが、あの方は帝の母君。そんな恐れ多いことが許される訳が無い!」

 

「司馬師殿! 貴女は漢を滅ぼすおつもりか!?」

 

 そんな彼等に瑠理は睨みつけるように見渡す。眉間の傷により威圧感は増し、程なくして彼等を黙らせる。

 

 そんな状況で、馬騰は立ち上がり、瑠理を問い詰める。

 

「司馬師殿、それには相応の理由があるのか? あるのなら是非とも聞きたいものだ」

 

「分かった。そのためにお前達を集めた」

 

 瑠理の毅然とした物言いに馬騰は面食らった。

 

 瑠理は立ち上がり、理由の説明する。

 

「まず一つ、いかに太后と言えど、あからさまな罪を許して良いものかどうかと言う事。信賞必罰にもとづけば無罪という訳にはい

 

かない」

 

 一人の文官が立ち、声を上げた。

 

「別に我等は無罪にしろと言いたいわけではありませぬ! 死罪にするべきでは無いと言っているのです!」

 

 彼女は彼を無視するかのように説明を続ける。

 

「二つ、対象が一番に漢に貢献したであろう、何の失態もしていない私だったという事。これはあの女が気に入らぬ者ならどんな人間

 

だろうと殺すことを厭わないという危険性がある」

 

「っ!?」

 

 彼は時が止まったかのように言葉が止まる。

 

「三つ、私を殺そうとしたのがこれが初めてでは無いという事」

 

「!?」

 

 ここにいる皆はある事件を思い出す。それは十常侍と結託して司馬家を皆殺しにしようとした事だ。

 

「我等司馬家はあの時の事を水に流し、あの女を十常侍の魔の手から救い上げた。そしてその後はあの女の指図に逆らわず、忠実に動

 

き、漢のために働いた……だが、その結果あの女は私に何をした……無慈悲にして理不尽な暗殺ではないか」

 

 場は沈黙した。ほとんどの者が、何太后の所業を改めて聞かされると皇族だからと許していいものか思ってしまいそうだった。

 

 だが、一人の武官が別の方向で死罪を取り消そうとする。

 

「しかし、何太后を死罪にしてしまったら漢室はどうなるのです? 皇族の者が部下に殺されたとなったら間違いなく力が弱くなりま

 

す。漢のためにならないのならやはり死罪にするべきではありません!」

 

「逆、あの女を生かしておくと、かえって漢が滅びの道を辿る」

 

「は?」

 

 彼女の言っている意味が分からず、彼は口が塞がらなかった。

 

「先ほども言ったがあの女は気に入らぬ者がいたらどんな人間だろうと殺すことも厭わないし、失敗しても何度も同じことをするだろ

 

うという事。ここであの女を許したら最初の内はともかくいずれまた暗殺などを企てるだろう。自分の気が済むまで」

 

「そ、それは……」

 

「また、その対象は我等司馬家に留まらないだろう」

 

「え!? それはどういう」

 

「あの女が私に対して暗殺を企てた理由は我等の名声が理由」

 

 実は、一刀の父を殺した事での爵位剥奪は、かえって司馬家の名声が上がったのだ。自ら罰を志願した事で邪な思惑があった訳では

 

無いという証明になり、剥奪されたことでたとえ弟でも、身内でも公平に罰則を与えるという宣伝にもなったのだ。一昔前の漢の事を

 

知る民や将兵達にとって、二人は理想的な君主のように見えたのだ。

 

 何太后はそれが気に入らず、ついに暗殺を決行した。

 

「つまり、自分や息子以上の名声を持つものは例外なく対象とされる……それを考えるとお前達もいずれ暗殺の対象となる可能性があ

 

る」

 

「な!?」

 

「そのような事を繰り返し行えば民や将兵が漢に対して良く思わなくなるのは必然。結果、漢のために働こうとする者がいなくなる、

 

それをどうにかするためには無理やり人を動かそうとする悪政を敷かねばならず、ますます漢の求心力は無くなる……そしてまた民の

 

反乱が起こる」

 

 もうここまで来ると、誰も反論が出来なかった。

 

「皇族としての権利を奪えば良いと思う者がいるかもしれないが、それでも内乱を引き起こすだけの発言力を持っている可能性は高

 

い。結局のところ、あの女の生存は漢のためにならないと私は言っている」

 

 瑠理はさらに釘を刺すように死罪にする理由を加えたところで皆を見渡す。

 

「聞こう、あの女は死刑にするべきか、それとも先ほど言った危険を許してまで生かしても良いと思うか?」

 

 此処にいる者全てが黙った。この場では沈黙は肯定と同義であった。それは今まで黙って聞いていた馬騰も含まれていた。

 

(何太后の死刑は止められんか……)

 

 馬騰も諦めざる負えなかった。そちらの方が漢のためになると証明された以上、彼女にも止める理由が無くなってしまったのだから。

 

 こうして瑠理は何太后の死刑を実行を移す事が出来たのだった。

「母上! 母上!」

 

「辯! 辯!」

 

 劉辯は泣きながら、母が死刑台に連れて行かれるのを見ている事しか出来なかった。

 

 何太后は死刑台に繋がれる。そして兵が剣を構え振りかぶり、何太后の首が飛んだ。

 

「母上ぇー!」

 

 ――その夜、劉辯は自室で壊れたようにぶつぶつと何度も呟く。

 

「司馬家ぇ……滅ぼす……滅ぼす……」

 

 それは翌日の朝まで続いた。


 
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