第六十一話「第二強化」
『さて、善吉は見事姫ちゃんに負けたわけだ』
車椅子に座った零は善吉に向け笑顔でそういった。
善吉は不服そうな顔をしたが目が見えていない零には関係がない。
『第二強化に入ろうか、なに、簡単さ、安心院さんに再教育されるだけ』
「へ?」
善吉がマヌケな顔をしたのも無理は無い。
今の自分は安心院にも勝てるという確証があり、
なぜもう一度教育される必用があるのかが疑問だったからだ。
「おいおい、零、忘れないでくれよ?
一応今の俺は安心院さんに勝ったこともあるんだぜ?」
『そうかい、まぁ説明は安心院さん、よろしく』
善吉の疑問をさらりと流して、零は安心院に説明を任せた。
「うん、任されたぜ零くん
まぁまずは僕が教育する理由だけど、これは簡単だ、
僕が一番の年長者で、人生経験が豊富という点にある
善吉くんはもう僕に勝てるけれど、戦闘技術は僕の小指の先くらいだ。
だから、今回はそれを僕が君に叩きこむ」
「は、はぁ」
「というわけで、善吉くん強化メニュー第二弾!
『技術を磨くためだけに二億年ほど費やしてみよう!』作戦~!」
安心院が高らかに宣言する。
善吉はそれを見て口をあんぐり開けた。
周りの人間は善吉が面白かったのか肩を震わせて笑いをこらえていた。
安心院は胸を張って元気よく話し始めた。
「簡単なことさ、零くんに頼んで時間の伸びた強化空間を作ってもらう。
時間を引き伸ばしただけだから老化も引き伸ばされるから安心してくれ、
これに入って、約二億年間、僕の持つ知識を完全に叩き込んでやるぜ」
「二億年……それで足りるのか? 三兆年の知識が」
善吉が疑わしい目で零を見る。
零は軽く笑うといい笑顔でこういった。
『失敗すれば廃人確定だよ』
「おい!」
零の言葉に善吉が大きな声を上げる。
零はそれをニヤニヤした表情で受け流す。
『ははははは』
笑うだけの兄を見て不安そうな善吉。
そんな二人に創が苦笑しながら補足を入れた。
「安心しろ、娯楽くらいは持って行ってやる、楽しみくらいはないとな」
「そ、そうか、じゃあ安心……かな?」
善吉はまだ不安そうだ。しかし、
そんなことは知らないとばかりに零は車椅子の隣に黒い扉を出した。
創がその扉に手を当てて何事かをつぶやく。
『ほい、この扉の向こうは引き伸ばし空間だ、
安心院さんに連れられて一週間ほど旅してこい』
零の言葉に善吉が首を傾げる。
「え? 一週間? それってどういう……」
首を傾げた彼からの疑問は答えられなかった。
後ろから廻が突き飛ばしたからだ。
「私は出番なかったからね、
これ位はやらさせてもらうわ、行ってらっしゃい☆」
黒い扉が開き善吉が吸い込まれる。
善吉が吸い込まれた後、安心院が扉の前に立った
「じゃあ僕も行ってくるぜ、第三強化まで大丈夫かい?」
『問題ない、獅子目までの尺は合わせるよ』
「そう、じゃあ任せたぜ」
そう言って安心院は扉に入っていった。
「さて、半纏さんはどうする?」
一人残った悪平等に創が問いかける。
男はいつもどおり背を向けたまま背中で語った。
「なるほど、このまま待ってるの、
じゃあ俺達は不知火の邪魔でもしてこようか」
そう言って終姉弟は出て行く。
零は神姫の顔を合見ながら、つぶやく。
「獅子目でも調べるか」
そう言って、空間を飛んだ。
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「よう不知火」
創が私の前に姿を表した。
予想はしていた。彼らのことだから私のすることも全部知っていて、
その上でその歴史を変えて、人吉でも強化しようとすることくらいは予想していた。
おそらく安心院さんも零側だ。私が逃げるのは少し手間がかかるようだ。
「やあ、お二人さん、今日もお熱いね、今日はどうしたのかな?」
「いやいや何も? 出て行きたそうな少女と少しお話がしたいだけだよ?」
「そうそう、ついでに一週間くらい寝ててもらえたら嬉しいかな?」
そう言って創は私の頭に手を置こうとする。
それが催眠でもかけようとしていることはすぐに解った。
私はその場から飛び退くと駆け足で廊下を駆けた。
「ゴメンね、今回はトンズラさせてもらうよ!」
そう言って創たちに背を向ける。
正直これで逃げれるわけがない、二人は学園が誇る二大論外。
後ろを向いた時にはすでに視界には廻がいた。
「寝るのが嫌だったら一週間ぶっ通しトークでもいいから」
「それもなんだかなぁ」
目の前の二人が私のお願いを聞いてくれるとは思えない。
戦うなんていうのは結果がわかりきっている。
うーん、万事休すってことかな?
「ほおら、不知火ちゃん」
目の前の廻が私に飛びつく。
身長が低い私の目の前には彼女の大きなスイカが。
苦しい、息苦しい事この上ない。創はなんだかずるいとか叫んでいるがこれのどこがいいのか。
「ガールズトークなんてどう?
自分の好きな人のいいところを語り合ってニヤニヤするなんて面白そうじゃない?」
「むぐむぐむぐ」
それが面白いのは廻だけだ! いや、姫ちゃんも乗るかもしれないけれども。
「なんにしても、今回の私達の目的はわかってるんでしょ?」
「ひひおふ(一応)」
胸に覆われた口からくぐもってよくわからない声が出る。
廻はそれでもわかったようで、顔が先程よりも強く押し付けられる。
「不知火! 変われ、今すぐにだ! 俺のものであるねーちゃんの胸をとるなああああ!!」
とった覚えはないんだけど……
といううかそろそろ本気で生きが苦しくなってきた。
私は廻の手を叩いて限界の意を示す。
「ん? もっと? えいっ!」
「ああああああああああ!!」
「むぐふっ!」
何故か逆方向に受け取った廻が、更に胸を押し付ける。
本当に苦しくなってきた、意識が薄れてきたし、
そろそろ本当にやばいかもしれない。
「まぁまぁ拒否権は元からないし、レッツゴー☆」
「あ、待てよねーちゃん! 俺は? 不知火ばっかズルいぞー!」
「創は、夜にいっぱいしてあげる」
「え、あ、うん」
ちょっとまって、私が連れて行かれることはもう決定したのか。
え、このあとは何するの?
「じゃあ、善吉くんのことをどう思っているかを全部話してもらおうかな」
「!!」
「そうだねぇ、どんなことを妄想してたかとか色々……自白剤で履いてもらおう」
それ犯罪ですよ!? やばい、私の純情が、
私の清い恋が色々色付けされる気がする!
「ああ、暴れないで」
動やったら暴れないで要られるのか!
「連行ー!」
「むぐぐぐー!」
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やあみんな、こんにちは、今日も論外な零だよ。
まぁまぁやってきたことはわかってるだろう。
敵の調査だ。獅子目の強さがどれくらいか測ってきた。
その結果。
『今の俺で十分対応できるのか』
なんとも期待はずれである。
いや、まぁ圧倒的破壊力は適応されるらしい、が、
回復不能がつかない、俺が別世界の人間というのも関係してるかもだが、
俺が攻撃されても回復できることがわかった。どうやって調べてかというと、
奥の間で閉じ込められてた獅子目くん。
体を強化した状態で爪に触ってみた。傷がついたから、破壊力は有効。
回復の技をかけると回復できたから、回復不能は無効ということだ。
さて、俺が今どこにいるかというと、
『ふん!』
「…」
『てい!』
「…」
『そいやっ!』
獅子目(分身)を相手に戦闘訓練中だ。
動かない手足を、『念々ころり』で動かしてだが、
しかし、目が見えないまま戦うのは面倒だ。
善吉のように訓練したわけでもないから、
攻撃を先程から何度も受けてしまっている。
おそらくバランスもとれていないだろう、さっきから足がふらつく。
『神様とやらと一回戦っただけでこれか』
なんとも面倒だ、
面倒で仕方がない、ちっ、死ねばいいのに。
…なんか気分が悪くなってきた。
「…」
『黙ってんなよクソ英雄!』
分身の獅子目が上半身を爆発させて地面に崩れ落ちる。
血しぶきによる血生臭さで正気に戻った。
なんだか最近精神面でも不安定だ。
世界基準を無理やり改変した反動は相当なものらしい。
『さっさと養生したいね』
そのためにも、善吉を強化しないと。
『眠い』
そうつぶやいて、見えない目を閉じた。
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神様と転生した主人公が
めだかで原作に入るお話
※注意※
めだかボックスの二次創作です
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