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真・恋姫無双 刀蜀・三国統一伝 第七節:南蛮大王と元漢女

syukaさん

何でもござれの一刀が蜀√から桃香たちと共に大陸の平和に向けて頑張っていく笑いあり涙あり、恋もバトルもあるよSSです。

2013-05-09 01:12:54 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5744   閲覧ユーザー数:4304

まえがき コメントありがとうございます。いつの間にか5月に突入していて、「今年は時間が経つのが早いなぁ。」としみじみ思っているsyukaです。最近は外もあったかいので絶好調だー!!さて、今回はようやく物語が進みます。第七節、南蛮編突入!にゃん蛮族が出てくるぅ。それではごゆっくりしていってください。

 

 

早朝、いつも通り庭で食事を摂っていると朝廷に向かっていた貂蝉と卑弥呼、それに馬騰さんが帰ってきた。

 

「お帰り、三人とも。馬騰さん、お疲れ様です。」

「大したことはなかったぞ。主犯を見つけることは出来ずじまいだったのでな、戦闘した訳でもなく、少し拍子抜けしたと言ったところか。」

「とりあえず、十常侍たちは黙らせてきたから大丈夫よん。」

「姉様は!!姉様は無事なの!?」

「大丈夫ですよ。卑弥呼、そろそろ出してあげな。」

「うむ。」

 

卑弥呼はどこからか取り出した大袋の紐を解いた。まさか・・・。

 

「・・・っ!姉様!!」

 

袋の中にから劉弁様が出てきた。月のときもそうだったけど、もう少し良い連れてくる方法があるだろ・・・。劉弁様は少し顔色が優れないが、どうにかふらふらと立ち上がった。

 

「薔薇ちゃん、心配をかけてごめんね。」

 

薔薇よりも少し色味の薄い髪が力なく揺れる。薔薇は思わず劉弁様に抱きついた。

 

「いえ。そんなことより早く横になってください。一刀、寝台を貸してもらうわね!」

「うん、劉弁様は俺が部屋まで案内するよ。劉弁様、私も一緒してもよろしいですか?」

「えぇ。すみません、薔薇ちゃんのことで色々とお礼を言いたかったのですが。」

「それは劉弁様が元気になってから、ゆっくり聞かせていただきます。ですから、今は一刻も早くお休みください。」

「分かりました。」

 

俺は劉弁様に気を配りながら薔薇と共に俺の部屋へ向かった。

 

・・・

 

「・・・すぅ・・・すぅ。」

「劉弁様、すぐ眠ちゃったね。」

「あっちにいたら安心して眠ることすら不可能な状況だったのよ。私には馬騰が付いててくれたからいいけど、姉様には誰もいなかったから・・・。」

「けど、今は薔薇も俺たちも劉弁様のそばにいられる。以前よりは心配も減るでしょ?」

「そうね。改めて、姉妹共々お世話になるわ。」

 

薔薇がペコッと頭を下げた。

 

「困ったときはお互い様、でしょ?」

 

薔薇の頭をくしゃっと撫でる。すると顔がほんのり赤くなっていく。

 

「人の頭をホイホイ撫でないでちょうだい・・・恥ずかしいじゃない//」

「薔薇のそういう可愛い顔を見るとつい撫でなくなっちゃうんだ。」

「も、もう!//」

 

顔を真っ赤になりながらもプンプンしてる。薔薇には悪いけど、和むなぁ。

 

・・・

 

薔薇は劉弁様を見ておくと言っていたので、俺は皆の集まっている謁見の間へと足を向けた。

 

「貂蝉さんたちも戻ってきたことですし、保留にしていた南蛮と五胡への対策を練ろうと思います。」

 

軍議が開かれることとなり、皆が定位置に立つ。

 

「その前に儂らが朝廷で得た情報を報告するぞ。」

 

卑弥呼が一歩前に出た。

 

 

「朝廷で十常侍どもを牛耳っていた奴らじゃが、左慈と于吉と言う男じゃ。」

「この二人は前々から私と卑弥呼で見張っていたのだけどねん。私たちの目を盗んで暗躍していたらしいわ。」

「私が劉協様と朝廷にいた頃はそのような者、噂に聞いたことすら無かったのだがな。」

「まぁ、こうして表に出てきただけでも良しと考えるべきじゃろう。ずっと裏に篭られていても儂らが苦労するだけじゃからな。」

「そうね。で、あの二人の側に劉弁ちゃんを置いておくのは危険と判断したから成都に連れてきたの。」

「分かった。薔薇もこれで安心するだろうし、三人ともよくやってくれたよ。ありがと。」

 

劉弁様も無事だってことも確認できたし、ひとまずは一安心だ。元気になったら色々とお話ししよう。

 

「儂らからの報告は以上じゃ。」

「それでは本題に戻ります。南蛮と五胡への対策ですが、現状は南蛮、五胡ともになりを潜めています。」

「軍師たちから見て、どう対処した方がいいと思う?」

「私は南蛮を先に対処した方が良いと思います。村を襲い拠点とされることで村民の食料が枯渇し、餓死する者も出てきています。五胡も村や邑を襲っているので対処すべきですが、あちらは元々襲ってくる周期がありますので、不規則的に行動を起こす南蛮を叩く方が先決かと。」

「私も朱里ちゃんに賛成です。村民は食料を奪われれば、飢えを満たすために食料を求めて成都へと押しかけてくるでしょう。そして、益州の全ての村民の飢えを満たすだけの食料は準備出来ません。」

「それもそうだな・・・じゃあ、南蛮に進行するってことでいいかな?」

「御意。」

 

皆の同意も得られたことで、俺たちは南蛮へと進軍することとなった。

 

・・・

 

ん?この気は・・・もの凄く嫌な気がするわ。こんな気を出すのはあの二人しかいない・・・。この外史に来ていたのか。二度と会いたくはなかったが仕方ない。様子を見に行くとしよう。

 

「にゃ?祝融、どこに行くのにゃ?・・・行ってしまったにゃ。」

「だいおうさま、どうしたのにゃ?」

「大丈夫にゃ。ご飯の時間には戻ってくるにょ。」

 

ご飯の時間に戻って来れるかしら?けど、あいつらに会うために食事抜きは痛いわね。さっさと済ませましょう。

 

・・・

 

「暑い・・・。」

 

俺たちは南蛮に到着し、森の中をただただ歩いている。こんなとこに誰か住んでるのか?絶対に熱中症で倒れるぞ・・・。

 

「愛紗~、暑いのだ~。」

 

鈴々もいつもの元気はどこかに飛んでいったようで、足取りが覚束ない。

 

「私だって暑いんだ、我慢しろ。」

 

愛紗も額の汗を拭っている。歴戦の武将でもこれだけの暑さには勝てないか。というか・・・、あまりの暑さに胸元をパタパタして風を通らせてるから目のやり場に困る。

 

「兄貴、女の子たちの胸を見るには今が好機だぞ。」

 

俺の隣にいる蒼が耳打ちしてきた。

 

「見たら色々と終わるから。ほら、星がこっちをにやにやしながら見てるし。」

「主よ、私がどうしたのですかな?」

「・・・いや、なんで汗ひとつかいてないのかなって思ってさ。」

 

危なかった・・・、危うく悟られるとこだった。けど、星のことだから口に出さないだけで気付いてるのかも。

 

 

「何を言っておられるのだ?私だって汗の一つや二つかいていますぞ。」

「そうは見えないんだけど、どこに?」

「谷間。」

「ぶっ!」

 

やられた、まんまと誘導されてしまった。

 

「主が、桃香様や愛紗たちの胸元をちらっと見ていれば私でも分かります。まぁ、睨んでいる者もいますが。」

「ん?」

「・・・なんで兄貴は即座に俺に視線を送るかな?」

「いや、だって他にいな・・・いたよ。」

 

朱里と雛里が恨めしそうに桃香や紫苑たち・・・もとい、胸元を見ている。

 

「二人とも、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?私もそんなにある方じゃないけどね。」

「胡花ちゃんは着痩せしてるんです!脱いだらバインってなるの知ってるんですから!」

「桃香様や愛紗さんほどは大きくないですよ?」

「大きいのもそんなに良いものじゃないよ~。肩は凝るし、うつ伏せになったら胸が潰れて苦しいもん。まぁ、ご主人様に見てもらえるのは嬉しいな。ちょっと恥ずかしいけど//愛紗ちゃんもだよね?」

「わ、私に振らないでください//というより胡花!なぜ私なんだ!胸の大きさなら紫苑や桔梗がいるだろ!」

「愛紗さんは私の目標ですから咄嗟に・・・綺麗ですし強いですし優しいですし・・・理想のお姉さんです!」

「~~~~~//」

 

愛紗の顔がみるみる真っ赤になっていく。相変わらず、褒められるのには耐性がないみたい。

 

「鈴々、愛紗の妹分として一言どうぞ。」

「怒ると怖いけど、自慢の姉者なのだ!」

「一言余計だ!」

「あはははは!!!」

 

皆の笑い声が森を木霊する。そんなこんなで足を進めていると、一匹の子象?に出くわした。

 

「ご主人様!あの子可愛い♪連れて帰っていい?」

「こらこら、捨て猫じゃないんだから・・・。」

 

桃香のとんでも発言に苦笑いしてると、子象がどんどんこちらに近づいてくる。

 

「あなたたち、こんなところに何しに来たのかしら?」

「!?」

 

声が聞こえたと思ったらどうでしょう。小さな象がスタイルの良いお姉さんになったではありませんか。烈火の炎のような紅の長髪。キリッとした鋭い目付き。突然のことに少し後退してしまった。

 

「え、え~と・・・あなたが南蛮の族長さん?」

 

桃香が先陣を切って彼女に話しかけた。チャレンジャーだな。

 

「違うわ。族長ならこの奥にいる。それで、私の質問に答えてくれないかしら?」

「あらん、懐かしい声がすると思ったら祝融ちゃんじゃな~い。」

「・・・ちっ。」

 

あからさまに嫌そうな顔で舌打ちしたよ!

 

「あんたらは相変わらず醜い面してるわね。」

「なんじゃ、ここは感動の再会という場面じゃないのか?」

「私があんたらと会って感動することなんて億に一つもないわ。」

「酷い言い草ね~。同じカマの飯を食べた仲じゃないのよん♪」

 

・・・何か文字が違うような。

 

「あれは私の黒歴史よ。忘れなさい。いや、忘れろ。」

「あらん、その射抜くような視線も素敵よん♪」

「腰をくねらせるな、気持ち悪い。」

 

 

「その・・・祝融さん。」

「ん?なにかしら?」

「今の話を聞いていて聞くのもあれですけど、この二人と知り合いなんですか?祝融さんみたいな綺麗な人がこんな二人との接点が見つからなくて・・・。」

「私としてもあの筋肉ダルマどもと接点があるのは不本意なのよ。それとあなた、私を口説いているのかしら?」

「?」

「私のこと、さらっと綺麗って言ってくれたし。」

「・・・はっ!?い、いや!ただ本当にそう思っただけで・・・//」

「ふふっ、からかっただけよ。」

 

からかわれたのか・・・。

 

「ジトーーーーー。」

 

あぁ、背後から桃香たちの視線を感じる・・・。迂闊な発言には要注意だ。

 

「私のことより、何故あのダルマどもがあなたたちと共に行動しているのか。それが不思議だわ。」

「祝融よ、ご主人様は美桜殿と影刀殿の孫なのじゃ。儂らが力添えするのも当然というものじゃろうて。」

「なるほど。納得がいったわ。」

「へ?もしかして、祝融さんも婆ちゃんと爺ちゃんを知っているんですか?」

「あのお二人にはかなりお世話になったわ。それにしても、あの二人のお孫さんか。名前は?」

「一刀です。」

「一刀くんね。私は祝融。この南蛮で孟獲と部族を取り仕切っているわ。」

「あ、あの~・・・。」

「ん?桃香、どうしたの?」

 

俺の背後で愛紗たちと待っていた桃香が、おずおずと俺の隣まで出てきた。

 

「祝融さん、私たちは南蛮から益州の村に襲撃されたと報告を受けてこちらにやってきました。けど、祝融さんのような話の分かる人がいるなら話し合いで解決したいんです。だから、孟獲さんと会って話すことは出来ませんか?」

「私としては和解してもいいんだけどね、あの子は少し扱いが難しいから。まぁ、会って話すことは難しくないわ。私でよければ案内しよう。」

「本当ですか!ありがとうございます!」

「祝融ちゃんもすっかり丸くなったわねん。」

「昔のように漢女に戻れば・・・」

「ええい!その話を蒸し返すな!」

 

ん?今聞き流してはいけないワードが聞こえた気がしたんだけど・・・気のせいかな?

 

・・・

 

俺たちは祝融さんの案内で森の奥へと進んだ。何でも孟獲はニャン蛮族という族の王らしい。ニャン蛮族ってなんだ?

 

「孟獲、戻ったわ。」

「・・・誰にゃ?」

「祝融だ。いつもお前の頭の上に乗っていただろ。」

 

そう言うと祝融さんの姿がピンクの子象へと変化した。変身は自由なのかな?

 

「確かに祝融にゃ。」

「納得したか?」

 

そして再び人の姿へと戻る。

 

「したにゃ。」

「お前に会わせたいものがいる。」

 

その言葉で俺たちは孟獲さんのもとへと歩み寄った。

 

「ご、ご主人様・・・。」

「ん?」

 

 

振り返ると愛紗が頬を染めて俺の裾を握っていた。

 

「その・・・私はこの愛くるしい生き物と戦うことは出来ません。」

「だよなぁ。」

 

愛紗の可愛い物好きセンサーが反応したんだろうな。俺も純粋に可愛いと思うし。あの猫耳に尻尾、極めつけは掌の肉球。あぁ、あの肉球をぷにっとしてみたい。

 

「愛紗、恋を見とけ。そっちも癒される。」

「恋・・・はぁぁ~~~~~♪」

「? 愛紗、変。」

「恋のこと可愛いなぁって見てるだけだから気にしなくていいよ。」

「?」

 

恋にメロメロな愛紗は置いとこう。

 

「はじめまして、孟獲ちゃん。成都で太守をやってる劉玄徳です。」

「孟獲にゃ。南蛮大王だにゃ。」

 

ひとまずは桃香に任せよう。

 

「えと、益州の村で食料の盗難が頻繁しているんだけど、もしかして孟獲ちゃんたちがやったの?」

「確かに美以がやったにゃ。美味しそうなご飯があったから貰ったのにゃ。」

 

う~ん、罪の意識がないのかな。盗んだって言ってる割には返答が軽い。これはちょっとお説教しないといけないかな。

 

「こらこら、人のものを勝手に盗んだらダメだろ。」

「っ!!お前、ちょっとこっちに来るにゃ。」

「?」

 

あれ?お説教しようと意気込んだらお呼ばれ?俺、まだ何もしてないよ?

 

「(くんくん)」

「・・・祝融さん、俺は一体何をされているんでしょうか?」

「匂いを嗅がれているのよ。」

「いや、それは見れば分かりますが・・・。」

 

突然のことに俺も身動きを取れないでいた。

 

「はにゃ~~~♪」

「!?」

「お前からいい匂いがするにゃ。お前、美以の嫁になるにゃ!」

「・・・へっ!?」

「えええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!?」

 

俺の驚きの声と桃香たちの絶叫が森の中を木霊する。

 

「孟獲、一刀くんをもらう場合は嫁でなく婿よ。」

「そうだったのにゃ。つい、うっかりにゃ。」

 

孟獲と祝融さんは何事もなかったかのように話を続ける。

 

「な、なぁ、一つ聞いてもいいかな?」

「なんにゃ?」

「匂いで婿を取ったりしてるの?」

「お前の匂いは特別にゃ。この匂いなら毎日嗅ぎたいにゃ。(すぅ~~~)はにゃ~~~♪」

「流石に俺が婿に行くのは無理だけどさ、良かったら俺たちと一緒に来ないか?美味しいご飯も毎日食べられるよ。」

「分かったにゃ。お~い!!」

 

孟獲の一声で森の奥からニャン蛮族の子たちがぞろぞろと・・・ぞろぞろと・・・・・・。

 

「多いよ!!」

 

軽く片手では数えられないほどの子たちが出てきた。

 

「だいおうしゃま~どうしたのにゃ?」

「ごはんのじかんにゃ?」

「ふみゃ~~~。」

 

 

「この二人がこれから美以たちのご主人様にゃ。」

 

にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー・・・。

 

「主よ、意思疎通は出来るのか?」

「俺に聞かれても・・・。」

「ところで、お前の名前はなんにゃ?」

「俺?俺は北郷一刀だよ。ちなみに、字と真名はないからね。」

「美以の真名は美以にゃ。ご主人様、これからお世話になるにゃ。劉備たちにも真名を許すにゃ。」

「私の真名は桃香だよ、美以ちゃん。これからよろしくね。祝融さんも遠慮なく真名で呼んでください。」

「えぇ。桃香ちゃん、かずくん♪」

「か、かずくんですか・・・。」

「えぇ。こっちの方が親しみがあっていいでしょ?」

「何か恥ずかしいなぁ。」

「細かいことは気にしないの♪それにしても、雰囲気は影刀様に似てるわね。」

「そうですか?言われたことないですね。」

「纏っている雰囲気はね。顔立ちが整っているのは美桜様に似たのかしら♪これからよろしくね、かずくん♪」

 

ということで美以と祝融さん、それから南蛮兵のトラとミケとシャムたちが仲間になった。ちなみに、美以と南蛮兵御一行は恋の部屋に寝泊りすることになった。祝融さんはと言うと・・・

 

「私、絶対こいつらと同じ部屋で寝るなんてぜっっっっっっったいに嫌よ!」

「恥ずかしがるようなことはないじゃろうに。」

「嫌なだけだ!!というか、華佗はよくこんな奴らと同じ部屋で寝れるわよね。」

「別に俺の命を狙っている殺し屋ではないんだ。悪い奴ではないし、特に問題はないぞ。」

 

命じゃなくて他のものを狙われそうで怖いんだが・・・。華佗は肝が座ってるなぁ。

 

「そうだ。祝融さんにも黄竜の鈴のこと、紹介しておくね。」

「一刀の寝床は渡さんぞ。」

「・・・でてきて早々なんてこと言うのさ。」

「この者が一刀の隣を狙っていそうな気がしてな。」

「あら、まだ会ってないのによく分かったわね。」

「ふふん、私を出し抜こうなど千年早いわ。」

「かずくん、私が隣に寝たらダメかしら?」

「うぅ・・・上目遣いはずるいです。」

「ご主人様の隣は私のだもん!」

 

凄い勢いで桃香が俺の腕に抱きついてきた。おぉう、一瞬腕が持って行かれたかと思った・・・。

 

「桃香、ずるいぞ!私だって!!」

 

鈴まで!?ちょっ!鈴の力だったら洒落にならん・・・。

 

「鈴!ちょっと手加減して!腕がイカレちゃうから!!」

「おぉ、これはすまん。」

「貂蝉よ、これは儂らも便乗して・・・」

「来るな!!」

 

俺たちは慌ただしくも成都への道のりを着実に進んでいった。

 

・・・

 

成都に到着した夜、私はあのダルマどもに呼び出され城壁へと向かった。まぁ、聞かれる内容は薄々察しているのだけどね。

 

「何よ、こんな遅くに。」

「お主がこの外史におるとは露にも思わなかったのでな。」

「祝融ちゃんがエン陵の戦いで晋の軍勢に囲まれ、消息を絶ったときは皆心配したのよん。美桜ちゃんなんか怒り狂って百花繚乱を発動させちゃったくらいなんだから。」

「それは悪いことをしたわね。けど、美桜様があれを発動させたのなら勿論勝利したのよね?」

 

 

「当たり前じゃ。敵兵の細切れになった死体しか残らんかった。美桜殿はあれから一週間は落ち込んでおったぞ。私が一人で軍勢に向かわせたせいだとな。一人で自分を責めておった。正直、儂らも死んだと思っておったしの。」

「私もあの時は死を覚悟したわ。まぁ、絶体絶命のところで私は光に包まれこの外史に降り立っていた。おそらく管轤の仕業なのだろうけど。」

「それなら管轤に感謝せねばな。それよりも、祝融は漢女に戻ろうという気はないのか?」

「断言しておいてあげる。ないわ。それと、私が元漢女だってこと。絶対にかずくんたちに言わないこと。もし言ったらあんたたちを地獄の果てまで追いかけてやるんだから。」

「あらん、それは怖いわねん♪私のタマがきゅってなっちゃったわよん。」

「ガハハ!!それだけ悪態を付けるのならもう大丈夫じゃわい。儂らの心配も杞憂に終わってなによりじゃ。」

「ったく・・・。まぁ、心配をかけたことについては素直に謝るわ。」

 

共に戦場を駆け抜けた戦友っていうのは変わらないのだからな。可能なら美桜様たちにも謝りたいのだけど・・・それはかずくんの手伝いをしながら方法を考えましょう。

 

「今日は私も寝るから、あんたらも早く寝なさいよ。」

「分かっておるわい。」

「おやすみなさい、祝融ちゃん♪」

「えぇ、おやすみ。」

 

・・・

 

さて、私はかずくんのお部屋にお邪魔しましょうか。あの黄竜は少しやっかいだけれど、おそらく大丈夫。私は意を決してかずくんの部屋の扉を開けた。

 

「すぅ・・・すぅ・・・。」

「すぅ・・・かずとぉ・・・すぅ・・・。」

「すぅ・・・。」

 

あ、あれ?さっきの鈴・・・だったかしら。あの黄竜じゃない。この双子?ちゃんがかずくんにくっついて寝てる!くっ、先を越されたか・・・。

 

「明日こそ必ず・・・。」

 

私は一言呟いてかずくんの部屋を後にした。ずっといて気配で起こすのも悪いもの。

 

「今日は恋ちゃんのお部屋に泊めてもらおうかしら。ふふっ、かずくん待ってなさいよ。」

 

人気の無くなった夜の市を散歩した後、私は恋ちゃんの部屋へと向かった。・・・私、恋ちゃんの部屋の場所知らないわ。・・・困ったわね。それからしばらく途方に暮れる祝融なのであった。

 

 

あとがき 読んでいただきありがとうございます。さて、またまた新登場が二名。劉弁様と祝融さん!劉弁様のイメージはほんわか天然系です。桃香とはちょっと違った天然でございます。祝融の姉御は悪戯好きの姉といった感じでしょうか。劉弁様の髪色は桃香と月の色を足して2で割ったような極力白に近い桃色。祝融姐さんは恋ちゃんの紅よりもう少し強い色の紅です。この二人も好きになってもらえれば幸いです。それでは次回 第七節:嵐の前の静けさ でお会いしましょう。次回もお楽しみに。

 


 
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