No.574147

真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第八回 在野フェイズ:張遼①・山賊と酒盛りと剣術と(中編)

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです。

中編、それは前後編で収まりきらなかった時に突如として現れる、

その場しのぎの憎い奴、、、本当に申し訳ありません。

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2013-05-08 00:02:31 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7804   閲覧ユーザー数:6599

 

 

呂布らは、予定通り山賊らを役人に突き出し、その後、諸々の事務手続きをするため、呂布には建物の外で待っておいてもらい、

 

陳宮は高順と共に役人から報奨金を受け取る最終の手続きをしている最中であった。

 

 

 

―――しかし・・・

 

 

 

陳宮「これはいったいどういうことですか!?」

 

 

 

バン!という大きな音をたてて役人が座る机を思いっきり叩き、小さな体を目一杯乗り出して陳宮は喚き立てていた。

 

 

 

役人「ですから、報奨金ですと言っているではありませんか・・・」

 

 

 

陳宮の活火山のごときものすごい剣幕に押されながらも、役人は当たり障りのない返答で対応していく。

 

そんな役人の様子に、さらに陳宮が憤慨した。

 

 

 

陳宮「そういう意味ではないのです!!この額はどういうことなのかと聞いているのです!!あまりに少なすぎではないですか!!」

 

 

 

陳宮は机をバンバンバンと叩いて抗議の意を示した。

 

役所にここまで大騒ぎしてクレームを言うような人は、間違いなく役人のブラックリストに入ってしまうだろう。

 

 

 

役人「いえ、ですから先ほども申しましたように、確かに私たちはあの山賊団に手を焼いていましたが、こちらから近付かないようにと

 

民衆に触れを出したところ、今では被害がない状況でした。ですので、以前までならもう少し額も多かったでしょうが今では・・・」

 

 

陳宮「な・ん・で・す・とーーーーーーー!!!」

 

 

 

ついにブチ切れた陳宮は、役人に掴み掛ろうとした。

 

 

 

高順「ねね!落ち着いてください!」

 

 

 

高順はそんな陳宮を必死で取り押さえていた。

 

交渉は難航しているようであった。

 

 

 

 

 

 

【揚州‐荊州付近、とある街宿】

 

 

 

陳宮たちが報奨金の交渉で白熱している頃、張遼と北郷は酒盛りを続けていた。

 

 

 

北郷「そういえば、昨日初めてみんなが山賊退治をしているところを見たけど、圧倒的だったね。いつもあんな感じなの?」

 

 

 

北郷は張遼に注がれた二杯目の酒を一気に飲み干した。

 

 

 

張遼「せや。なんせ三国一の武将である恋に、その恋に次ぐ強さを誇るウチ、ななも相当の使い手やしな。山賊なんか相手にならんわ」

 

 

 

自身の強さを三国一に次ぐと評する辺り、普通なら自惚れともとられかねない発言であるが、

 

実際それほどの実力を持っていることもまた事実である。

 

 

 

北郷「そういえば、ななが戦っているところは見たことないな。昨日も張遼が全員片付けちゃったから何もしてなかったし。

 

どんな感じなの?」

 

 

 

北郷はもうキツくなってきたため、二杯目には手をつけず、張遼にも二杯目の酒を注いでいく。

 

 

 

張遼「せやな~、ウチとしては、ななは戦いたくない武将一やな」

 

北郷「戦いたくない?」

 

 

 

せや、と張遼は肯定すると、二杯目を一気に飲み干し、三杯目を催促しつつ、話を続けた。

 

 

 

張遼「もちろん、仲間やからって意味やないで。ななは独特の戦い方しよんねん。せやから、ドツボにはまったらあっちゅー間に

 

やられてまうやろな」

 

 

北郷「独特な戦い方?」

 

 

 

張遼は北郷に注がれた三杯目をぐいっと一気に飲み干し、話を続ける。

 

 

 

張遼「まあ、味方の戦法バラすんは御法度やけど、北郷やったらええか。でも、ホンマは見てからのお楽しみって言いたいねんけど、

 

今は気分ええし。せやなぁ、実はななはウチや恋みたいな武将と少し違って、偵察や暗殺を得意とする工作が本業やねん」

 

 

 

それは北郷にとって初耳であった。史実の高順といえばバリバリの武闘派である。

 

 

 

張遼「せやから、一騎打ちとかになると、めっちゃややこしいんや。アイツ袖ん中にいっぱい武器隠しとるさかい、

 

どんな攻撃されるか予測できんのや」

 

 

北郷「なるほど、暗器使いってとこか」

 

 

 

北郷は二杯目を一気に飲み干そうとするが、飲みきれず半分で止めた。

 

すると、張遼はテンションが上がって来たのか、別に北郷が聞いてもいないことを小声で語りだした。

 

急に小声になるのは、内緒話をする人としての心理なのだろうか。

 

 

 

張遼「あと、ななはキレたらホンマヤバいから、北郷も気―つけや」

 

北郷「え?本当に?あの冷静なななが?」

 

 

 

まあ、普段おとなしい奴ほどキレるとすごいっていうからなぁ、と北郷はぼんやりと考えていると、

 

酔っているのか、普段から饒舌な張遼はさらに話し続けてきた。

 

 

 

張遼「ウチも一度しか見たことないねんけどな。確かあの時は兗州で曹操軍と戦かっとった時のことや。あの時曹操軍が恋のことを

 

めっちゃバカにしよってな。もちろんねねもキレとったけど、それを聞いたなながぶちギレ。後で本人に聞いたら、目の前が赤くなった

 

とかなんとか、よー分からんけど、ほとんど覚えてへんかったらしいわ。結果、曹操軍の陣営を悉く落としよって、曹操軍は総崩れ。

 

あと少しで曹操を討ち取りそうなまで追い詰めよったんや。結局、あの時は典韋に阻まれて討ち取れんかってんけど、結果として

 

一時期兗州を曹操軍から奪う形になってもーてん。まあ、もともとななは陷陣営っちゅう異名があるくらい、陣営潰すんは定評のある

 

武将やってんけどな」

 

 

北郷(ななにそんな過去が・・・怒らせたら殺されるな。というかこの話を聞いたって知られただけでも殺されるかも・・・)

 

 

 

北郷は身震いがした。今の話が本当なら、下手をすれば初期の段階で曹操軍が滅んでいることになる。

 

 

 

張遼「なんや北郷、手が止まっとるで!ほれほれ、もっと飲みや!」

 

北郷「お、おう」

 

 

 

北郷は杯に残った酒を飲み干し、三杯目を注いでもらった。

 

 

 

北郷(やっぱり三人とも本当にすごい武将なんだな・・・)

 

 

 

ふと、北郷は昨日のことを思い返していた。

 

 

 

北郷(昨日は相手との力の差が圧倒的だったからよかったけど、いつも相手が弱いとは限らないよな。もし同じくらいの力を持った

 

相手だったら、オレは完全に足手まといになってしまう・・・)

 

 

張遼「ん?どないしたんや北郷?まさかもう無理とか言うんちゃうやろな?」

 

 

 

注がれた杯に手もつけず、何か考え込んでいた北郷に張遼は挑発するが、北郷は聞いていないようである。

 

 

 

北郷(・・・そんなの嫌だ!)

 

 

 

そして、何かを決意した北郷は、突如改まって張遼に言った。

 

 

 

北郷「張遼、ちょっといいか?」

 

張遼「なんやねん、改まってからに」

 

 

 

張遼は自ら自身の杯に酒を注いでいたが、北郷の様子を見て手を止めた。

 

 

 

北郷「オレに剣を教えてくれないか?」

 

張遼「どないしたんや急に?」

 

 

北郷「オレもこの世界で生きていくからには強さが必要だと思うんだ。張遼や恋のような強さとまではいかなくても、せめて、

 

自分の命は自分で守れるくらいには・・・」

 

 

張遼「自分の命・・・か・・・」

 

 

 

張遼は北郷の言葉に引っかかる所があったのか、そうつぶやきながら、酒の満たされた杯を見つめていた。

 

そして、一気に飲み干すと北郷に告げた。

 

 

 

張遼「北郷、ひとつ言っとくけどな、自分のためにいくら強うなろうとしても、強くなんかなれへんねんで」

 

 

 

張遼の言葉には明らかに含みがあった。

 

北郷が怪訝そうな顔を張遼に向ける中、張遼の頭の中には過去のある時の光景が目まぐるしくフラッシュバックしていた。

 

 

 

 

 

 

<ウチは強いヤツと戦って、自分が一番強いっちゅーのを証明したいだけや!>

 

 

 

<城内へ敵が侵入したとのこと!>

 

<今はそれどころやない!コイツを倒してからや!>

 

 

 

<まったく、力に溺れる将兵ほど弱い者はおらんのう>

 

 

 

<貴様は董卓様の何を知っているというのだ!!!!>

 

 

 

<まあ、儂としては、主を侮辱されて馬鹿正直に突っ込んでくる奴は嫌いではないがな>

 

 

 

<どうせ死ぬのなら、せめて仲間の命をお救い致そう>

 

 

 

 

 

 

張遼「自分のためにやっても、なんもならんのや・・・」

 

 

 

張遼はそう告げると黙り込んでしまった。北郷は誤解を与えてしまったかもしれないと思い、言葉を付け加えた。

 

 

 

北郷「それは誤解だよ。といってもこじつけになるだけかもしれないけど。オレが自分の命を守れるようにっていうのは、

 

自分の命欲しさってわけじゃないんだ」

 

 

張遼「どういうことや?」

 

 

 

張遼は再び自身で杯に酒を注ぐと、またぐっと一気に飲み干した。北郷は杯に注がれた酒を波立たせながら話を続ける。

 

 

 

北郷「ほら、昨日オレは簡単に山賊に捕まっただろ。あの時は相手が弱かったからよかったけど、この先みんながみんな弱いとは

 

限らないだろ。そうなってくると、オレは明らかにみんなの足手まといになってしまう。仲間に迷惑をかけないためにも、

 

せめて自分の命ぐらい守れる程度には強くなりたいんだよ」

 

 

 

北郷の言葉を聞いた張遼は酒を注ごうとした手を止めてきょとんとしていた。

 

北郷はやっぱり駄目かなと思い始めたその時、張遼は急に吹きだし始めた。

 

 

 

張遼「ぷっ、あーはっはっは!」

 

 

 

張遼の予想外の反応に北郷は一瞬怯んだ。

 

 

 

北郷「な、何だよ、オレそんなに変なこと言ったか?」

 

 

 

しかし、張遼はまだ笑っていた。

 

そして、ようやく笑いの波が治まったかなと思った時に北郷と目が合い、再び笑いの波が来たのか、今度はお腹を押さえて笑っていた。

 

 

 

張遼「変や変!ぜーったいおかしいて北郷!くふふっ、迷惑かけたくないからやて。ウチらそんなんで迷惑やなんて思わへんて!」

 

北郷「で、でも―――」

 

 

張遼「足手まといやなんて、アンタそんなこと気にしとったんかいな。ねねを見てみーや、ねねかて強くないけど、

 

アイツがそんなん気にしてる感じするか?」

 

 

北郷「それは・・・」

 

 

 

確かに、軍師が自身の非力さを足手まといと悔いるなど聞いたことがない。

 

 

 

張遼「つまりは適材適所っちゅーことや。ウチは力はあるけど頭では勝負できん。逆にねねは力では勝負できんけど、

 

頭では誰にも負けんやろ。北郷かて、力がなくても天の知識があるやろ。その知識でウチらを支えてくれるつもりやなかったんか?」

 

 

北郷「それはそうかもしれないけど・・・」

 

張遼「絶対そうやて!気にすることなんかあらへん!」

 

 

 

張遼は満面の笑顔で北郷の肩をバンバン叩きながら励ました。北郷はそう言われると納得したが、それでもここは退かなかった。

 

それは、ひとえに女の人に守ってもらうのが前提というのを認めたくないちっぽけなプライド。

 

 

 

北郷「そうか・・・でもある程度戦えるか戦えないかでもだいぶ違うと思うんだ。それに、強くなっても損はないだろ?」

 

 

 

そう言うと、北郷はニッと余裕の笑みを浮かべた。

 

当然、その笑みは半分以上が強がりの笑みだったのだが、その様子を見た張遼は、悪戯っぽくニヤッと笑った。

 

 

 

張遼「ふ、確かにそうやな。ホンマおもろいな北郷は。よっしゃ!その意気やよしや!気に入ったで北郷一刀!ウチが面倒見たる!」

 

 

 

張遼はパンと自身の膝を叩き、北郷の願いを受け入れた。

 

 

 

北郷「本当か!」

 

張遼「おう!その代わりウチが面倒見るからには手加減せーへんからな、覚悟しときいや!」

 

北郷「ありがとう張遼!」

 

 

 

すると、張遼は突然驚くべきことを言ってきた。

 

 

 

張遼「それとウチのことはこれから霞って呼びや!」

 

北郷「え?それって真名じゃ・・・いいのか?オレなんかが呼んでも・・・」

 

 

張遼「最初会った時に言うたやろ。ウチは認めた相手にしか真名を呼ばせへんて。つまりはそういうことや。アンタは弱いけど、

 

もっと別の大切なもんが強いっちゅーのも分かったし、ウチはアンタを認めたる。まあ、ウチが何年もかかってようやくたどり着いた

 

答えをすでに知っとったっちゅーのは、ちょいムカつくけどな」

 

 

 

張遼は、見ているこちらも笑顔になってしまうような極上の笑顔で北郷に真名を呼ぶことを許した。

 

しかし、北郷は今の張遼の言葉の中で一つ引っかかることがあった。

 

 

 

北郷「答え?」

 

張遼「今のはこっちの話や。とにかくこれからは真名で呼んでや!一刀!」

 

 

 

しかし、あまり触れられたくないのか、張遼は話をはぐらかした。

 

そして、張遼が自然に北郷のことを一刀と呼んだことに北郷が気づいたらしく、その反応を見て張遼が説明をした。

 

 

 

張遼「別にええんやんな?天の国では親しゅーなったら下の名前で呼ぶんやろ?なんか勢いで呼んでしもたけど・・・」

 

 

 

張遼はなぜか少し恥ずかしそうにしている。少なくとも、北郷はよほど変な呼称でない限り、呼ばれ方を気にするタイプではない。

 

 

 

北郷「ああ、構わないよ。わかった。これからよろしくな、霞」

 

 

 

北郷の容認の言葉を聞いて、張遼は再び気持ちの良い笑顔に戻っている。そして、ニカッと笑いながら酒壺を持つ。

 

 

 

張遼「ほなら、記念に乾杯のし直しや!」

 

北郷「まだ飲むのかよ」

 

 

 

北郷はゲッソリした。北郷はまだ三杯目とはいえ、張遼はもはや何杯飲んでいるかわからない。

 

これが酒豪と言う人種か、と北郷は感心せざるを得なかった。

 

そして、杯を空にするよう張遼に促され、再び一気に酒を飲み干した北郷は、間髪容れずなみなみと注がれる四杯目の酒を眺めながら、

 

本気で倒れるのを覚悟するのであった。

 

 

 

 

 

 

しかし、北郷はやはり先ほどの張遼の言葉が気になっていた。

 

張遼の意味深な言葉といい、答えといい、昔何かあったに違いなかった。

 

北郷は思い切って聞いてみようと思ったのだが、同時に聞くのは野暮なのだろうとも思っていた。

 

しかし、気になってしまったらどうしようもない、ということで、北郷はこの乾杯の機にさりげなく聞き出すことにした。

 

恐らく無理だろうと思われたのだが、予想以上に張遼のテンションが上がっており、あっさり話してくれた。

 

 

 

張遼「まあ、ちょっと昔の話になるんやけどな。実は恋がウチの四人目の大将になるんやけど、昔のウチはやたら強さを求めてた

 

時期があったんや。もちろん今でも求めてるけど、そん時は異常なくらいでな。役目そっちのけでとにかく戦いまくっとった。

 

そのせいか、一人目二人目と次々と大将を失ってったんや。それでも当時は戦いで人が死ぬんは当然やと思って気にすることなく

 

生きとってん。それでこのままやとアカンってことに気付くんは三人目の大将が討たれたときやった・・・」

 

 

 

テンション高く、そこまで一気に話しきった張遼であったが、最後の方になるにつれて、徐々に表情が寂しげになっていくのを、

 

北郷は見逃さなかった。

 

 

 

張遼「ウチはアホやから、三人も大将が殺されるまで気づかんかったんや・・・」

 

 

 

張遼の瞳が、徐々に潤いを帯びていく。

 

 

 

張遼「目の前の仲間も救えんかった・・・」

 

 

 

一筋の涙が張遼の頬を伝う。

 

 

 

張遼「ウチがもう少し、もう少し早う仲間のことを考えれるようになっとったら・・・」

 

 

 

一粒、二粒と張遼の瞳から涙がとめどなく零れ落ちていく。

 

 

 

張遼「そしたら・・・アイツらやって・・・」

 

北郷(自分のため・・・答え・・・そういうことだったのか。これは聞いちゃいけないことを聞いちゃったな・・・)

 

 

 

北郷はぽろぽろと涙を流している張遼の頭にポンと手を置いた。

 

 

 

北郷「ごめん、霞。辛いことを思い出させちゃったね・・・」

 

張遼「ひぐっ、一刀・・・」

 

 

 

不意に張遼は北郷を見つめた。

 

 

 

北郷(ぅ、これは・・・)

 

 

 

ちょうど目線だけを北郷の方に向けたせいか、自然と上目遣いになってしまい、涙で潤んだ張遼の上目遣いは、

 

北郷の胸にこの上なくグサッと刺さった。

 

しかし、今は潤んだ瞳で上目遣いの女性がどうのこうのと議論しているところではない。

 

北郷は出来るだけ言葉を選びながら張遼に語りかけた。

 

 

 

北郷「でも、人は失敗を重ねるほど強くなるとオレは思うんだ。確かにその失敗は霞にとって決して忘れられない

 

悲しい出来事かもしれない。それでも、その出来事があったから、下邳の時もそうだったけど、霞は誰よりも

 

仲間を大切に思えるんじゃないかな」

 

 

 

北郷は穏やかな表情で張遼の頭を撫でながら出来るだけ優しく宥めるように語りかけた。

 

 

 

張遼「それは、そうかもやけど・・・やっぱキツイで・・・」

 

北郷「もちろん、過去の過ちがなくなるわけじゃないし、死んだ人が生き返るわけでもない。でも、オレたちはこれからも

 

生きていかないといけない。月並みだけど、その人たちの分までね」

 

 

 

北郷は張遼に優しく微笑みかけた。

 

張遼も北郷の語りかけに物思うところがあったのか、少し頬を赤く染めつつ、しばらく北郷の顔を見つめた後、

 

 

 

張遼「ぐす、せやな、うじうじしとってもなんもならんな。ウチらは死んでいった人のためにも、早う乱世を終わらせなアカン」

 

 

 

張遼はグシグシと涙をふき取ると、ニッと笑って見せた。

 

 

 

張遼「すまんな、みっともない姿見せてしもて、もう大丈夫や」

 

北郷「オレの方こそ、変なこと聞いてごめんな・・・」

 

 

 

しばし沈黙の時が続いた。すると張遼が、

 

 

 

「あの、やな・・・その、手・・・」

 

 

 

張遼は頬を赤く染めて、恥ずかしそうに北郷から顔をそむけながら言った。

 

北郷は今の今まで、この沈黙している間もずっと張遼の頭を撫でっぱなしだった。

 

 

 

北郷「わ!ご、ごめん!」

 

 

 

北郷は零コンマ一秒ほどのものすごい速さで手を引っ込めた。

 

 

 

北郷「オレの悪い癖なんだ!昔妹をなだめようとしてよく撫でてたせいか、普通の女の子にまで同じように―――!」

 

張遼「いやいや!ウチは全然気にしてへんよ!ただ、こういうの初めてやったから、あんま免疫無いねん!」

 

 

 

気づけばお互い顔が真っ赤である。

 

再び気まずい雰囲気が部屋を支配していた。

 

 

 

 

 

【第八回 在野フェイズ:張遼①・山賊と酒盛りと剣術と(中編) 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

第八回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

今回は終始酒盛りでした。

 

本来、次回投稿予定の剣術のくだりで無事前後編になるはずだったのですが、

 

それだとせっかくの在野フェイズなのにずっと真面目だしなぁと思いまして、

 

あれこれ加えている内に気が付けば幻の中編が現れたという訳です。

 

やっぱり霞の良さは、意外と純情という普段とのギャップにあると思うのですがどうでしょう?

 

 

そしてたまに出てくる回想シーン、いつかは回収しないとなと思ってます。これは本当です。

 

 

 

それでは次回お会いしましょう!

 

 

 

 

 

霞のセリフ長いな、、、 汗

 


 
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