No.573046 超次元ゲイムネプテューヌmk2+BlackFate その332013-05-05 00:28:13 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1130 閲覧ユーザー数:1026 |
~??? ギョウカイ墓場 ~
紅い空。嘆く肉地。冷たい空気。
再び訪れたこの地は相変わらず陰気くさい雰囲気を出し、ここに訪れた者を引き込もうとしているのが見て取れる。それだけ墓場という場所の意味合いは深いものなのだろう。
私に次いでゲートに飛び込んだかアインス、ファー、チヒロ、ウラヌスと次々とゲートから出てくる。
全員ここに来るのは初めてなためか全員が全員景色を見て目を丸くしている。
「さて、行くぞ貴様ら。場所は我が知っているからな、精々薄灯りの中をおっかなびっくり付いて来い」
「チヒロは了承する」
「……」
「あんま指図しないでよねリーラ」
「あの、お姉さん。いきなりチームワークに不安が…」
「なぁに、問題はないさ」
流石に今まで敵対していただけあり各国間の女神の中は悪い。まぁ仕方はないだろう。寧ろ好都合だ。
しかし、遊撃の私、壁のチヒロ、援護射撃のアインス、魔法砲撃のファー、ワープによる奇襲のウラヌス。戦力構成としては悪くない。寧ろ良い。
さて、どうしたものか…………。
そんなことを考えている間に前回マジェコンヌと会った地点に到着した。相変わらず広いスペースの中心にちょこんと座っていた。前と何一つ変わらない。
「………」
私達が視界に入ったのかマジェコンヌはかすかに微笑んだ。ヤツなりの歓迎なのだろう。
マジェコンヌの正体をはじめて見たのかアインスから戸惑いの声も聞こえた。
「ようマジェコンヌ。我が狩りに来てやったぞ」
「…そう。四国の女神全部が私を殺しに来たんだね」
「そういうことになるわね。大人しく消え去ってもらうわ!」
アインス、チヒロ、ファーと次々と女神化していく。
なにやら威圧感あふれる図面になっていく中、私だけは今だ女神化していなかった。
マジェコンヌもわかっているかのように座ったまま私を見つめている。
「リーラ…?」
「まぁ待て貴様ら。こんなか弱そうなヤツ相手に5対1というのは些か興がないだろう?」
四人を抑えながらその辺りの瓦礫を漁る。
イストワールの言っていたことを鑑みれば…………あった。
私が見つけたのは一振りの剣。深い紫色に輝く見ていて気色の悪い剣だ。遺産とは、まさしくこういうもののことを言うのだろう。
アインスが私の拾ってきた剣を見て声をかけた。
「リーラ。なに…それ…」
「何、拾い物だ。それより折角だ、我もこの剣を使ってみるとしよう。遺産のにおいがする」
どうやらこの剣は女神にとって相当不味いものらしい。正直自分でも持っていて嫌な予感がする。イストワールによる鑑定がほしい逸品だ。
マジェコンヌも変なものをみるような目で見ている。
「さて、マジェコンヌ?辞世の句の用意はできたか?なんなら命乞いも聞くだけ聴いてやるぞ?」
「………!…私は、別にあなたたちと戦いたいわけじゃない」
「何それ、今更命乞い?」
「まぁ待て。懺悔を聞くのも神の仕事だ」
一刻も早く噛み付きたい犬の如く唸るアインスを押さえるのを見ると、マジェコンヌは語り始めた。
自らの宿命、目的。その身に負のシェアが満たされた時、世界は滅びリセットされる。
語り終えた後、マジェコンヌは立ち上がり両側に刃がある天秤刀を抜いた。
「世界を破壊する…結局あんたがするのはそういうこと。ならあたしはそれを止めるだけ!」
「私達はただ、自分の宿命を成し遂げるだけ。それは守護女神が国を護るのと同じこと。私達も、精一杯抵抗するから」
交渉は決裂、互いに武器を構え一触即発の空気が漂う。お見合いは好きじゃない。
だからもういいだろう。見るに耐えない茶番を続けるのはよろしくないからだ。
「さてこの剣。切れ味もよさそうだ。試し切りといこう」
私の言葉に誰も返答はしない。
この場の全員、この後の行動は予想しているだろう。だが、私はその予想の上を行く。
「貴様でなァ!!」
――――――ザシュッ
「………え……」
心地よい肉を斬る音が鳴った。同時に、血飛沫が飛んだ。
斬られた奴、いやその場の全員が私を見ている。だが、そんなものは関係はない。
切り上げた剣を治し、胸元に突き刺した。
「…なん………」
「怨むなら我と、我の妹として生まれた運命を怨め。さらばだ」
手を捻り、剣を押し込む。カフッ、と空気を吐きだす音と共にウラヌスの体が光と変わり、剣に吸収されていく。そういう剣だったのか、これは。
可愛かった妹、ウラヌスの消滅。何の思いも湧かない。だが、他の連中はそうは思っていないようだ。
「リーラ…!?あん…た…!」
「まぁそう憤怒を起こすなアインス。女神らしくないぞ」
口に出したのはアインスだけだが、ファーやチヒロも疑問の目を向けている。
まぁそれもそうだろう。マジェコンヌ討伐を言い出したヤツがいの一番に裏切るなど誰が予想するか。
だが実際にそうしたんだ、普通もなにもない。
ゆっくりと歩を進め、マジェコンヌを横にした地点で振り返る。
全員(アインスが顕著だが)、私のしたことはわかっているようだ。
「さて、貴様ら。守護女神は人間を護り、人間は女神を信仰することにより安全を約束される。これは対等な関係か。否、我々女神は人間の使い走りだ。信仰とは意思だ。安全とは事象だ。我々は人間の意志一つで使い潰される存在だ。昔ならまだいいだろう。だが今は違う。人間は女神に替わる武器を手に入れ、自衛が可能となってしまった。女神の存在価値とは何か、人間を守護することだ。だが人間が守護を必要としなくなってしまえばどうだ、我ら女神は用済みだ、使い捨てられるだろう。そんなものを許してはおけん!我らが我らとして存在できる世界、それを確立せねばならん!なれば!!!」
剣を強く地面に投げ落とし、代わりに愛用の大鎌を抜く。
紫というより赤紫色のそれは、命を持つかのように脈動していた。こんな気分は、初めてだ。
「この世界の
体の力を抜き、女神化を開始する。いつもとは違う力が流れ込んでくる。
おぞましい怨嗟の声が自分の中で鳴り響く。だが、不思議と心地良い。
「これは革命だ、国なんてちっぽけなものではない、世界、運命に対する革命だ!下らないルールを砕き、運命を変えるために!我らは蜂起する!我らはマジェコンヌ、女神を解放する者だ!我が名はサーダナ、又の名を…マジック・ザ・ハード!マジェコンヌの兇刃!命が惜しくない奴からかかってこい!」
私の名乗りに一瞬呆気にとられならがも全員構える。
飛びかかろうとはしないのが懸命だ。アインスは武器が飛び道具、ファーは魔法型、チヒロは迎撃、防御に秀でているため攻撃を仕掛けるの不得手。つまりは先陣を切れるようなやつがいない。そういうのは確かに私の領分だ。
「マジェコンヌ、貴様は下がっていろ。どうせその武器も使ったことないのだろう」
「………」
私の言うとおりにマジェコンヌは武器をしまい、椅子に座りなおした。若干表情…というか眉が立っている。恐らく図星なのだろう。白の女神かと思うほどに密かな感情表現だ。
ルウィーの女神はそんなんばっかなんだろう。魔法という独自の文化と同時に女神の性根まで独自(意味深)な方向に吹っ飛んだんだろう。
しかし、誰も指一つ動こうとせず状態は膠着している。流石に三対一、しかも防御特化の女神がいる集団に突っ込むほど命知らずではない。何よりこちらとしては攻める理由がない。
時間が経てば経つほど状況はこちらに有利になるのだ。ゲートを呼ぶビーコンは私が持っているし、女神不在の時間は長ければ長いほど国は混乱に陥る。こちらは殺せれば万々歳、撃退でも万歳なのだ。攻める必要なんかはない。それに【かかってこい】と言ったのだ。自分から突っ込んでは格好が悪い。
「どうした貴様ら、かかってこないのかァ?貴様ら揃いも揃って命が惜しいか愚者どもめ、国背負って立つつもりがあるんなら命を捨て次代に継がせる覚悟ぐらい見せろ!」
「次代を殺して国を捨てたあんたが言えることか!!」
私の挑発に激昂したアインスが大きめのナイフを持って突貫してきた。
投げずに直接切るつもりだったようだが片手剣サイズのそれで大鎌を弾くのは無理があるというもの。柄で受け止め、さらに回して横から叩き剣を弾く。してやったりと言いたくなった。
「貴様の専門は投擲だろう?挑発に釣られて前に出るとは愚行だな。死んで省みるといい」
脇腹に刃をぶち込もうとすると鎌に強烈な衝撃が走る。多少体が吹き飛んだが逸れは問題ではない。武器を弾かれるのは致命的だ。
見返すと私のいた所に一対の大盾を持った女神の姿があった。恐らく突進でもしたんだろう。堅いヤツはそれだけで有利だから困る。
「チヒロ達とあなたの数の違いを一瞬でも忘れたあなたのミス。チヒロは挑発する、死んで省みろ」
うっぜぇ。ここまで無機質にひとの神経を逆撫でするのは才能なのではないか。」
「ハッ、ならば我一人に対し圧倒できなければプラネテューヌの制覇もあったかもしれんなぁ?このようにな!」
私が鎌を地面に突き刺す。すると地面がところどころ浮き上がり、空中やら地上に多数の肉塊が現れることになった。
…こんなことができたんだ。知らなかった。
「地面の重力を適当に弄くらせてもらった。ここの地面は土よりも結合が柔らかい。だから重力の違いでこうも障害物を作れる。さぁ、我を見つけてみろ!」
地面を蹴り次々と肉塊の上に乗り移る。出来るだけ高い位置を維持すれば発見もされないだろう。卑怯?勝てばよかろうなのだよ。
見当たる限り最高度にある肉塊に乗り、あたりを見渡す。あの三人は違いをカバーしながら私を捜索している。流石に散開するほど愚かでもない。こちらから出向いてやるか。
近いところから飛び移り少しずつ近づく。流石に真っ向からは出向かんよ。もう一度言うが勝てばよかろうなのだ。
「解析終了、データリンク」
「なにッ…!?」
チヒロの無機質な声と同時に三人の視線が一斉にこちらを向いた。まっすぐ見据えているところから完全に見破られているのだろう。迂闊だった。あんな機能まであったのかあいつ。
ともかく、これではただの弾除けの障害物にしかならん。だが位置が完全に特定されているのなら寧ろ弾除けにすらならない。なんだこの圧倒的不利な状況は、どっちがボスだまったく。
ああもうまだるっこしい、性に合わん。
「まずは貴様だファー!【スラッシュウェーブ】!」
物陰かた飛び出すと同時に大鎌を振り衝撃波を飛ばす。様子見の一発だがあっさりとチヒロの持つ大盾に弾かれる。待ち構えていたかのように後ろからは炎や氷をまとったナイフ…というより長剣が飛んでくる。
大鎌は使えるため回して弾くこともできるが迂闊に弾いたところで分散され囲まれるのがオチだ。そこでこうする。
投げられた長剣は炎なりを纏ってはいるが投げる際に邪魔にならないためか持ち手には炎はない。女神の動体視力があれば掴むことは容易。そして、近場の肉塊に深く突き刺す。これで問題はなくなる。
血のようなもの滴る肉塊に包まれれば抜くのも一苦労抜いても血みどろで切れ味も悪化するだろう。流石に無尽蔵というわけでもないだろうから着実に手札は削れるということ。ボスのやることじゃない小細工なのはわかっているがな。
「インフェルノ」
突然真横の肉塊が爆発した。
弾き飛ばされた剣もピタッとこちらを向いて空中停止。直後に飛んでくる。
再度受け止めて刺そうとしても今度は別の肉塊が爆発する始末。なんだこの、攻略されていく感は。
気付けば私の周囲の肉塊は悉く爆破され完全に姿が晒された。隠れるのが無駄ともいえこれはまずい。
「サンダークラウド」
三人、正確にはファーの周囲に黒い雲が現れる。こちらに放とうとはしないが帯電していることから機雷か何かだろう。対策はできる。
まず大鎌を投げる。刃に当たらずとも投擲打撃武器としては鎌は優秀だ。無視はできないものになる。同時に私も前進、鎌を盾のように前にして突っ込む。
「攻勢防禦」
「だと思っていたさ!!」
鎌に反応してチヒロが盾を構え、私ごと弾き飛ばそうとする。
その直前。私は鎌を掴み、【盾ごと弾かれた】。大きく体が飛び、三人の頭上に位置する。
「よう貴様ら。得物を弾いて得意げになりたかったようだが、こうすればその行動は逆効果だ。既に射程圏内に入っているぞ?」
とても、1秒が長く感じる。一瞬で通り過ぎるはずの頭上が延々と続くように感じている。
アインス、ファーの表情は驚愕。チヒロも私を目で追っていたようで、無表情ながらも少しだけ驚いたような目をしていた。
狙うは、ファーの首。刃でもいい、柄でもいい。当てればしとめられる。そう思って鎌を振り下ろした。
――――――カキィン!
「……!?」
「なん、だと……?」
軽やかな金属音を発し、鎌が受け止められた。それはいい、問題は【誰が】受け止めたかだ。
チヒロの大盾ならまだいい。だが、その壁の主は思わぬ人物だった。
ベヤーズハートの片割れ、ファーだったのだ。手に持つ杖に仕込まれた刀で、私の鎌を受け止めている。
何の冗談だ、これは。チヒロでもなく、アインスでもなく。はたまた近接戦闘の心得があるミィでもなく。魔法しか能がないこのファーが、何故平然と私の鎌を受け止められているのだ。
「ベヤーズ!……くっ!!」
アインスが咄嗟に剣を投げつける。鎌を引き剣を弾き飛ばすが結局離れざるを得なくなった。
着地場所はマジェコンヌのすぐ横。始まったときと変わらず暇そうにしている。なんとなく殴りたくなった。いやじっとしてろみたいなこと言ったのは私なのだが。
しかし、思ったより一筋縄ではいかない。体の構成要素が変わったぐらいじゃあそう変わらないってことか?そうでもないと思ってはいたのだが。いや、女神三人相手に【一筋縄じゃいかない】程度に相手できるまでには強化されているということか。
「だが足りんな。やはり使おう」
左側に落ちている、というより刺さっている剣。先ほどウラヌスを殺した剣。本来なら一度刺したぐらいじゃあ死にはしない女神を即死させる逸品だ。女神に対する特効性があるとみて間違いはない。
右手に大鎌、左手に魔剣。なんともアンバランスだが両方手になじむのなら問題はないだろう。
「さて、第二ラウンドだ。あまり抵抗してくれるなよ?狙いが外れるからなァ!」
三人の命目がけ跳ぶ。
鎌を振ったと同時にチヒロが反応し大盾で防ぐ。後ろの二人が攻撃してきたとしても対処は可能、のはず。
「プリズムミサイル」
「I have control♪」
陽気な声と同時にチヒロの背後から虹色が飛んで来た。
いや、正確に言えば虹各色の弾丸らしきもの。咄嗟に離れるも魚か何かのように追いかけてきた。
あの地味黒、魔法も操れたのか…!
三人を中心に円を描くように逃げ回る。
ファーは魔法維持、アインスは機動制御、チヒロは護衛に専念しているのか固まり動く気配がない。
範囲攻撃なりがあればいいのだが…あいにくそんなものはない。
「ああもうしゃらくせぇ!」
方向転換、三人の中央。鎌を回転させ盾にして突っ込む。
咄嗟の行動に一瞬ひるんだがチヒロが前に出た。
「馬鹿の一つ覚えねリーラ!」
「どうかな!」
チヒロが構える重なった大盾に鎌を突き刺し、蹴り飛ばす。
これでチヒロは無力化した。後は……
「二人目だ女神ィ!!!」
先ほど抜いた魔剣を振りかぶり、降ろす!
盾は既に私の鎌ごと吹き飛ばした。護る手段はない。
―――――――――ザクッ
肉を刺した音。
確かに聞こえた。そのはずなのに、目の前のチヒロに向けた剣は刺さってはいない。
見にまとう装甲に阻まれていた。まさか、こんな堅いだなんて思ってはいなかった。ウラヌスのものは貫通していたしな。
……では、今の音は…
「……こほっ…」
息が毀れた。
口から赤い液体が漏れでている。これは、血…………
「あんたの敗因。それは、自ら武器を手放したこと……。慣れてない武器を使おうとしたのが間違いだったわね」
私の腹から、鎌の刃が生えている。
いや、背中に刺さったのが貫通しているのか。
「っくは、はは……すまんなマジェコンヌ、大口叩いておきながらこの様だ」
一瞬見えたマジェコンヌの表情は、酷く歪んでいた。すぐにでも泣き出しそうなほどに。
出合って数日もかかってない私に対して涙を流すようなお前にほれ込んだのだろう。
「貴様ら、満足か………?こんな世界で……」
ゆっくりと、両手を上げ、言葉を投げかける。
誰に向けているのか、それは、私にもわからない。
けど、確かに誰かに言っていた。
「我は……嫌だね…………」
~現代 ギョウカイ墓場 元四女神の間~
「……ッ!?」
突然、目の前が暗がりから真っ白に変わった。
急激に力が抜け、自分が入っていた入れ物から転がり落ちる。
肉のような質感の地面に落下し、全身にぬちゃっとした感覚が走った。気持ち悪い。
「目が覚めたかね」
頭上から声がした。見上げると、赤い女の子のようなぬいぐるみが長い袖をぶら下げながらふわふわと浮いて私を見下ろしていた。
……見たことあるような、ないような…
「初めまして、だな。我輩の名はシャルロット。またの名を…トリック・ザ・ハードと言う」
咄嗟に身構えた。
トリック・ザ・ハード。名前だけは聞いたことあるマジェコンヌ四天王の一人。
……ぬいぐるみだったんだ
「まぁ待て。我輩と貴様に最早戦う理由なんぞあるまい」
「………?」
「ほれ。これで己が姿を見てみるがよかろ」
トリックが取り出したのは…鏡?
私の全身が丸ごと映るその鏡。映っていたのは勿論私、だけど………
「私………?」
私の数少ない自慢だった薄紫色の長髪が、赤紫……というより真っ赤に染まっていた。
赤………マジェコンヌのイメージカラー。なんで、そんな色になっているのか……
「そう。貴様だ」
「サーダナさん……」
私の背後にはサーダナさんが佇んでいた。
その表情は優しく、私にそっと手を差し伸べている。
「立てるか?」
「……はい」
サーダナさんの手を取り立ち上がる。こうしてみると、サーダナさんの体躯は私より小さい。
………私が体験したあれが、サーダナさんのものとほぼ同一とすれば……
不思議と、敵意がわかなかった。あれは、お姉ちゃん達と、私を酷い目にあわせた張本人なのに。
「それで?我になった感想はどうだ?」
「………あれは、本当にあなただったんですか?」
「そうだよ。あれは我の記憶を再現したものだ」
今でも脳裏に鮮明に残っている映像。自らの手で妹を殺し、寝返り、殺された。
生々しい感覚が全身に広がっていき身を抱かないと体の震えが止まらなくなってくる。
「サーダナさん……私に、何を……?」
「そう難しいことはしてはいないさ。シェア供給が断たれ消えかかっていた貴様を保護し代わりの供給ラインを繋げたまでだ。それまで暇だから我の疑似体験でもしてもらったがな」
「シェア供給……私に流れ込んでいるシェアは……」
「100%、マジェコンヌのものだよ。貴様にも聞こえるだろう?人間の怨みの声が怒りの声が哀しみの声が。マジェコンヌのシェアはただの
私の体の根底。女神全員にあるコアともいえる心臓部分。いつも感じていた温かい感覚はなくただ冷たい何かを感じていた。ただ、それと同時に溢れ出そうなほどに湧き出る力も同時に存在していた。
自分が丸ごと作り変えられていく。自分の全てが置き換えられる感じに恐怖と同時に不思議な高揚感もあった。
「どうだ紫天使?我になった感覚は」
「……はい、不思議と、心地よく感じます」
私の返答にサーダナさんは機嫌を良くしたのか悪い笑顔で薄ら笑いを浮かべている。
非常に不気味。
「さて、紫天使。仕上と行こうじゃないか。そうだな……プラネテューヌに今いてはならない女神がいたはずだ。あいつにしよう紫天使よ。ヴィオラハート、キャストリームを狩れ。それで貴様は完成される」
「………」
返答代わりに女神化で姿を変える。
身を包む光が禍々しい赤紫色をしている。でも、身が治まって心地いい。
女神化を終えた瞬間、私は驚愕した。
プロセッサユニットが大きく形を変え、マジックのもののように鉄の翼が生えていた。右手にはMPBL、左手には大鎌が握られていた。私と、サーダナさんの武器。
もう、後戻りはできないんだな、とますます思い知らされるけどこれでいい、と思う自分もいた。
「……往きます」
「よし往け紫天使。我の期待を裏切るなよ」
地をけって飛び出し、割れた空に向けて一直線に進む。
ゲイムギョウ界へ繋がる途。私はもう違う私になってしまった。それを認めるために。
私は、逝くんだ。
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久々のBF。どれぐらいぶりだろなぁ……
(正直サーダナ編引き伸ばしすぎて半ば無理やり終わらせたなんていえない)