No.572259

〜なんとなく 壊れている自分 Vol.4〜

夢で見た事を書いている詩集…と言うより散文集です。前の詩集に10編書いたので次の巻に移動してみました。
新しい詩をトップに、以下、下に行くにつれて古い詩になるように並べ替えてます。

◇超短編集のみ、ブログにて展開しています→ http://blog.livedoor.jp/gaeni/archives/cat_1213008.html
◆Vol.8はこちら→ http://www.tinami.com/view/757600

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2013-05-03 00:17:50 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:785   閲覧ユーザー数:784

2014.1.14

「自分勝手ハルマゲドン」

 

青く透き通った空に

突如暗い影が差す

空一面覆いつくす それの正体は

超弩級の大型母艦

 

街の中心部

ビルが立ち並ぶ中へと

降り立つつもりだ

 

水平に降り立てるスペースなんか無いから

垂直に立つように

地面に突き刺さるようにして 降り立つつもりだ

 

遮られた空の向こうから

天使たちのレクイエムが聞こえる

何語か分からない言葉を

声高らかに歌ってる

 

この世に別れを告げるように

 

そう言えば こんな伝説があった

この街が危機的状況に陥った時

英雄が現れ 救ってくれると

 

でも

 

今のこの街は危機的状況に無く

この街に 今 英雄が来ても

 

戦うべき相手がいない

 

なら 英雄は あの母艦は

何と戦うのだろう?

何を破壊するのだろう?

 

混乱無き場所の英雄は

 

 

破壊神と大差ない

 

 

 

 

母艦は今まさに

 

街の中心部

ビルが立ち並ぶ中へと

降り立つつもりだ

 

空が 青から灰色 そして徐々に赤くなっていく

空を覆うほどに巨大な母艦は

いくつものビルをなぎ倒し

地面に降り立とうとしている

 

ああ……

全てが壊れていく

 

空も 街も

大地も 雲も

懐かしいあの場所も

私も あなたも

 

光と 熱に 奪われていく 

 

母艦は探し続ける

“敵はどこだ!?”

そんなもの この街にはもういないのに

それでも探し続けるのだ

 

“敵はどこだ!?”

“敵はどこだ!?”

“敵はどこだ……”

“敵はどこだ!!!!!!”

 

 

2014.1.5

「お家に帰りたい…」

 

細い路地

どこまで行っても細い路地

 

狭い空

どこまで行っても狭い空

 

灰色一色

どこまで行っても灰色一色

 

何にも無かった

どこにも行きようが無かった

 

もう既に夕方の時間帯だろう

私はそう思った

思っただけで 確証は何も無かったけれど

 

それでも延々と彷徨って

彷徨って彷徨って彷徨って彷徨って

やっと一人の男を見つけた

 

虹色のパラソルの下に佇む小太りの男に私は尋ねた

どうやったら抜けられるの?

どうやったら帰れるの?

私の家はどこなの? どこにあるの?

 

男は堂々とこう答えた

ここは素晴らしい迷路だろう?

出口なんかどこにも無い そう思うだろう?

そんな事は無いんだよ

この謎を解いた者は

この迷路の入場料を半額にしてあげるよ

 

私は仰天した

迷路なんかに遊びに来た覚えは無い

ましてや 料金を取られるなど聞いちゃいない

 

私は家に帰りたいだけ

家に帰る為に一本道を歩いていただけ

灰色で何も無い この狭い路地を

いつもと同じように 歩いていただけなのに

 

 

2013.12.28

「結局あなたは誰だったの?」

 

木目調の壁が優しいレストランの片隅で

私はヒーローに会って来たの

節電で薄暗いレストランの中

その名前も知らないヒーローと

私は話をしていたの

 

何を話したのかよく覚えてない

レストランなのに私たち以外に人がいなくて

カメラマンらしき人はいたケド

その黒子のような人は

特に何もしてなくて

 

何も注文せず

ただ水だけをテーブルに乗せ

私はまっ白いヒーローを見ていた

目にあたる部分が黒くなったり白くなったりして

素顔が分からない相手なのに

不思議と恐怖感はなかった

 

私はヒーローと話をしたの

何を話したのかは覚えてないの

だからと言って何も話さなかった訳じゃなく

ヒーローの将来の展望やら 悪者退治の方法とか

そんな

重要なのか

他愛もないのか

分からない話ばかり

していたような気がする

 

私は彼を知っていたのかな?

彼は私を知っていたのかな?

 

見たことのないヒーロー

姿形も分からず

ただ白いだけのヒーローなのに

私は不思議な親近感を感じていたの

 

そうして正体も分からぬまま

用事があるからと言わんばかりにヒーローは立ち上がり

そうして奥の通路に消えていったの

 

そして私だけが

薄暗いレストランの中

水だけをテーブルに乗せ

馬鹿みたいに一人佇んでいたの

 

 

2013.12.04

「本日バーゲンセール中」

 

町の間を吹きすさぶ風には

白い値札がつけられていた

町を包む凛とした空気にも

白い値札がつけられていた

 

赤ペンで修正した跡がある

そうか 君たちは値下げされてしまったのね

既に季節は変わり目で

君たちの出番は無いと

 

君たちは 何も変わっていないのに

勝手に価値を下げられて

君たちは 何も変わっていないのに

他人の決めた“暦”と言う仕組みによって

 

いらないものとされてしまった

 

それでも君たちは 不平不満を口にせず

その町に佇むのでしょう?

何故なら君たちは

自分の身に値段がついている事すら 知らないから

 

そうして何度も値下げされ

値段が限りなく0に近づき

“価値がない”とされた時

君たちは消えてしまうでしょう

 

“新製品”と唄われる

新しい風が吹くのと同時期に……

 

 

2013.10.23

「無色透明新郎物語」

 

誰かと結婚する事になった

誰かって 誰なんだろう?

とにかく私は

その誰だか分からない人と 一緒になるらしい

 

でも 両親は反対するの

相手はどこの誰だか分からないからじゃない

相手は私の兄だと言うの

私と血が繋がっている兄だと言うの

 

でも そんな話は信じられなかった

そんな話は今まで聞いた事が無かった

見かけた事は無いし 一緒に暮らした事も無い

存在しているだなんて 今の今まで聞いた事が無かった

 

大きな図書館に行ったり 大きな本屋に行ったりして

あらゆる書物をひっくり返した

 

けれど どの本にも

その人が兄である事は書いて無かった

 

だから私は両親に言ったの

そんな言いがかりなんかつけないで

兄だと言い張るなら 証拠でも見せて!!

 

でも両親は 証拠と言える証拠は示さなかった

ただ“兄だから結婚は駄目だよ”と繰り返すばかり

 

“駄目だよ”“駄目だよ”“絶対に駄目だよ”

“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”

“駄目だよ”“駄目だよ”“どうしても駄目だよ”

“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”

“駄目だよ”“駄目だよ”“何があっても駄目だよ”

“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”

 

“そんな事をしたら お天等さんが許さないよ”

 

その言葉を繰り返し聞くうちに

兄と呼ばれた新郎の誰かさんは

元々記憶に無かった事もあり だんだん私の頭から消えて行った

 

残ったのは 意味不明のイライラだけ

 

“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”

“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”

“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”

“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”“駄目だよ”

 

何を毎日駄目駄目言われているのだろう?

私が何をしたって言うの?

どうして駄目なの?

いや それ以前に

 

何が駄目なの!?

 

イライラが募りに募り

本当なら両親を殴り殺してやりたかったのだけれど

辛うじて良心がとがめ

居間にあった高そうな絵皿を割るに留まった

 

物凄く大きな絵皿

よく私一人で持てたなと言う重量のそれを

勢いよく床に叩きつける

派手な音を立て

その絵皿は粉々に砕け散った

 

勿論両親が飛んで来た

そばにいる私には目もくれずに

割れた皿の事ばかり気にしていた

“ああ… 世間に知れたらなんという事だろう…”

 

皿が割れた事に両親は絶望し

私はそれを見て 絶望した気分にすらなれなかった

 

……結局 この人達って

世間体だけが大事で

私の幸せなんか どうでもいいと思ってるんだわ……

 

 

2013.8.27

「だってここは家の中」

 

私は何かを探している

ずっと何かを探している

それが何なのか 私自身よく分からないのだけれど

 

家で母親と話をしていたような気がするんだケド

話の内容は全く覚えてなくて

 

話してても埒が明かないから 私は家を出た筈なんだ

 

青い空が広がる屋外

……いや これは屋外なんかじゃない

よくよく見ると 普通の空の筈なのに

屋根のつなぎ目の線が見える

ここは外なんかじゃない

ここはまだ家の中なんだ

 

そうして 空模様の屋根の下

私は宛ても無くトボトボと彷徨った

誰もいない脇道を抜け 大通りを出て更に歩くと

高架橋の下で事故っている車を見つけた

ハンドルを切り損ねてガードレースに激突していた

それだけ激しい事故にも関わらす 周囲には誰もいない

 

その光景を目にした瞬間 真っ先に気になったのは

事故の事でも 誰かの安否でも無く

左腕の時計だった

 

何故だか その事故の光景を目にした瞬間

腕時計が粉々に割れる光景が過った

 

水色の文字盤が砕け 落ち ボロボロになっている様を

 

慌てて私は腕時計を見るけれど

腕時計はちっともそんな事にはなっていなくて

少し表面に傷がついているだけだった

 

私は安心して胸をなでおろす

ああ良かったと安堵の笑みすら浮かべる

この腕時計が無事ならば

ここで車が壊れている事は大した問題じゃない

 

だってここは 家の中なんだから

 

 

2013.06.24

「廃墟ライド」

 

大都会の一角

地下鉄の入口にそれはあった

 

以前 地下鉄建設が計画されていた

所が 何かの理由で頓挫して

観光客を乗せるライドとして作り直された

 

決して大勢いるとは言い難い客を乗せ

ライドは薄暗い中を進み続ける

 

そのうち トンネルの向こうに紫色の空が見え

そこを抜けると 眼下に廃墟が広がっていた

 

崩れたビル 跡形も無く崩れ去った大都会

しかし 無残と言う印象は無く

意図的にそう整備されたかのように

瓦礫は一つ一つ輝き

そこを走る車もピカピカに整備されていた

 

作られた廃墟 偽りの廃墟

観光客の呼物にしようとした廃墟

何故 そんな事をする必要があったのかは分からない

ただ私は ライドに乗りながら

違和感だらけの廃墟の中を通り過ぎて行った

 

何度も何度も往復した

 

作られた廃墟を 偽りの廃墟を

 

ある時は 遠足の子供たちと一緒に

またある時は 幸せそうなカップルと共に

 

何度も何度も その廃墟を見た

 

ねえ この町は大都会でしょう?

本来は摩天楼が立ち並ぶ大都会でしょう?

観光なら他に見る所があるんじゃないの?

何で私はずっとこのライドに乗っているの?

どこか他の所に行かないの?

他の所に行かないの?

 

 

2013.06.10

「新説 オオカミ少年」

 

オオカミが来たぞ!!

 

少年は言い続けた

 

醜くて可愛いとは言い難い少年の話を

世間は誰一人として聞く耳を持たなかった

 

あらゆる世間から隔離され

あらゆる人から拒絶された少年は

それでも雄叫びを上げる事をやめなかった

 

オオカミが来たぞ!!

 

僕を決して受け入れようとしなかった

この世界を

僕は変えて見せる!!

 

オオカミが来たぞ!!

 

少年は言い続けた

 

そして満月の夜

雄叫びを上げながら

少年はオオカミになった

 

この世界に

変革をもたらす為に

 

 

2013.05.23

「黄色い雰囲気」

 

室内なのに

壁がどこにあるのかも分からないような

広大なファーストフード店

 

だだっ広いカウンターで注文して

そうして 人の波をかき分けて

空いていた黄色いテーブルにトレーを置いて

ハンバーガーをかじりながら

私はフと思ったの

 

別れた あの子は 元気かしら?

 

もう会わないと決めたのに

気が付くと私は

食事もそこそこに席を立ち

フラフラと歩き始めていた

 

どこまで歩いても

ファーストフード店の

フワフワした黄色い雰囲気からは

逃れる事が出来なかったけれど

それでも歩いていると

草木の手入れが成されている

小さな木造の建物に辿り着いた

 

可愛らしい草木が出迎える庭先

その奥にある玄関のドアの脇

ポツンと置かれた椅子の上に

“あの子”は座っていた

一言も喋らず 俯いたまま

微動だにせず 座っていた

 

私は敢えて あの子の前に姿を現さず

物影からジッと見てた

人の気配が無い 時が止まったかのような空間で

あの子は黙って座っていた

 

まるで クマのぬいぐるみみたいね

ううん 比喩とかじゃなくて

本当に クマのぬいぐるみ みたい ……

 

黄色い雰囲気の中

草原の中にある小さな家のような

幸せな雰囲気に包まれながら

 

時も 空気も 微動だにしなかった

 

 

2013.05.02

「応えてちょうだいよ」

 

目の前の大きな扉を開けると

そこにはコンサートホールのような

広い空間が広がっていた

 

ステージに集まる沢山の光

ステージの上に立っているのは

この世界では割と有名なヒーロー達だ

世の中の流れに疎い私でも分かるような

有名なヒーロー達だ

 

けれども そんなヒーローが出る舞台だと言うのに

とても広いコンサートホールだと言うのに

お客さんの数はめっきり少なかった

ホールの半分も埋められず

閑散とした印象は拭えなかった

 

それでも お客さんはめげなかった

盛大な歓声を上げ

声だけを聞いていれば

ホール一杯にお客さんがいるような感じだった

それに答えるようにヒーロー達は手を振って

お客さんに応えていたけれど

私はそれを遠目で見るばかりだった

 

閑散としたホール

その更に閑散とした一番端の席

出入り口付近にぼんやりと立っていた私

歓喜の声援の中

ただぼけっと突っ立っていた私の姿は

ある意味 異様だっただろう

 

それでも私は場に合わせて歓喜を上げるような事はせず

極めて冷静になって考えていた

 

何故ここに来たのだろう?

 

何故有名人を見ても ときめかないのだろう?

何故みんなは あんなに歓声を上げる事が出来るのだろう?

一人 私だけ 暗澹とした気持ちで

どうしてここに立っているのだろう?

 

何故だろう

分からない

理由なんて無いかも知れない

 

ねえ 舞台に立つヒーローの皆さん

貴方達なら応えられる? 私の疑問に……


 
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